Nakamichi 1000mb
Compact Disc Player ¥550,000ナカミチが1991年に発売したCDプレーヤー,というよりもデジタル出力専用のトランスポートで,あのDAT
システム「1000」シリーズの一員として作られた高級CDトランスポートでした。その音の良さ,高い機能性
などで高い評価を得た名機でした。1000mbの最大の特徴は,空気振動の影響をもシャットアウトしようとした「アコースティック・アイソレーショ
ンシステム」でした。これは,外部及び内部の振動がピックアップ部やディスクを振動させてサーボ電流の変
動を招き,電源電圧の振れなどによる音質劣化を招いていた事実は従来から知られており,各社のCDプレ
ーヤーでは様々な振動対策がとられていました。1000mbでは,スピーカーの音圧などの「空気振動」の影
響にも着目し,その影響を排除しようとしたものでした。
「空気振動」の影響を排除するためにアルミ押し出し材による一体型のメインシャーシを採用し,それを分厚い
外板シェルで覆い,極めて剛性の高いボディを構成するとともに,シャーシ結合部にシール材を充填していまし
た。さらに,ディスクトレイドアをゴムパッキンでシールドし,あわせて9mm厚のアルミドアを使用して,メカニズ
ム部を完全密閉構造とし,かすかな空気の流入も許さない高い気密性を持たせていました。高い気密性は,反面内部からの共振に弱いことになります。そこで,アルミ押し出し材の一体構造重量級・高
剛性シャーシとし,さらに鉄板シャーシとの異種素材の組み合わせとして様々な振動モードに対応していまし
た。そして,ピックアップベースには,高剛性で良好な減衰特性を持つ亜鉛ダイキャストを採用し,スピンドルモ
ーターと一体化することで,ピックアップとの相対的な位置精度も向上させていました。また,大きな振動源で
ある電源トランスを,メカニズム部やオーディオ回路から遠く隔離したコンストラクションをとり,振動そのものを
内部から起こさないように対策がなされていました。また,電源部/メカニズム部/サーボ部をシールド板によ
り完全に分離し,電気的な干渉や振動伝達を排除していました。振動源をつぶしても完全に振動をなくすことは難しいという観点から,発生した振動を効果的に吸収するために
「ダブルサスペンション方式」がとられていました。これは,特殊ゴムブッシュによってピックアップベースをメカニ
ズムから浮かせ,さらに,メカニズムを取り付けたサブシャーシをコイルスプリングと特殊ゴムダンパーによって
メインシャーシからフローティングさせる二重の振動吸収機構でした。1000mbには,ナカミチ自慢の「ミュージックバンク・システム」が搭載され,マルチプレイ機能の利便性と
シングルディスク・プレーヤーのシンプル操作を両立させていました。これは,通常のCDプレーヤーのように
トレーに1枚のCDを載せて再生する感覚で,内部のストッカーに6枚のCDを内蔵させることができる機能を
持たせたもので,結果として1枚+6枚で計7枚の任意のCDの任意のトラックを自由に再生できるオートチェ
ンジャー機能が実現していました。そのほか,シャフト長を長くとって,スリコギ状の振れを抑えたブラシ&スロットレス・モーターをスピンドル駆動
に搭載し,また,高剛性と振動減衰特性に優れた液晶ポリマー製のディスクスタビライザーを採用して,ディス
クそのものの振動を抑えていました。デジタル出力には,ジッターを低減するプッシュプル方式のオプティカル/コアキシャル(金メッキ)2系統の端
子を備えていました。1000,1000P同様にプラグインユニット方式を採用し,将来の発展性を考慮した設計
になっていました。
ナカミチは,1000mbと接続されるデジタルプロセッサー「1000P」に標準搭載のD/Aコンバーターユニット
「DA-101P」と互換性を持ち差し替えができる「DA-111P」を発売していました。プログラマブル・ロジックLSI
のよるデジタル加算部のLSI化2層構造基板による配線材の排除などのノイズ対策の徹底,アナログ回路の純
粋DCアンプ化と完全ディスクリート化によるオーディオ回路の改良などが「DA-101P」との違いでしたが,ナカ
ミチはこの「DA−111P」をCD再生により適したD/Aコンバーターとして推奨していました。実際,音場の描写
がよりクリアになる感じがあったようです。
1000mb+1000Pの音は,まさに磨かれた音というか,非常にクリアで透明感のある音でした。全てが見渡せ
るようなその音はとても印象的で,ナカミチらしい音の名機だったと思います。
Nakamichi 1000mb/i
Compact Disc Player ¥700,000デジタル出力専用機(つまりCDトランスポート)であった1000mbにD/Aコンバーターを内蔵した一体型CD
プレーヤーとして同じく1991年に発売されたのが「1000mb/i」でした。筐体等はほぼ「1000mb」と同一で
D/Aコンバーターとしてナカミチ独自の「EL(Enhanced Linearity)20ビットD/Aコンバーター」を搭載して
いました。この「EL20ビットD/Aコンバーター」は,「エンハンスド・リニアリティ=直線性補強型」と名付けられたナカミチ
独自のD/Aコンバーターでした。CDからピックアップされた信号データを,デジタルフィルターで20ビット化し,
20ビットデータを再演算によって−24dBを境に高/低2組の16ビットデータに変換し,(データとしては,1〜
4,400と4,401〜の2つに分ける)2つのデータをそれぞれ2基のD/Aコンバーターによって別々に処理し
変換後に合成するというものでした。この方式では,−24dB以下(つまり4,400以下)のローレベル信号が
デジタル的に16倍に増幅されて処理されており,元の16分の1のデータに戻すことにより変換誤差が圧縮さ
れローレベル信号では,通常の16倍の精度が保証されるというものでした。デジタルオーディオでは,信号を
分解,処理,復元が可能であることを利用したナカミチらしい理詰めの方式でした。また,1000mb/iでは,16
ビットのデータを処理するのに18ビットタイプのD/Aコンバーターを使用し,動作が安定した上位ビットのみを使
用することにより,より高い変換精度を確保していました。この強力なD/Aコンバーターに最新の20ビット8fsタイプデジタルフィルターを組み合わせ微少レベルの解像
力を確保していました。さらに,後段のアナログフィルターには,ICを使わずディスクリート部品で構成したことに
より裸特性を高めた全段プッシュプル構成の3次リニアフェイズ・ベッセル型を搭載し,高い位相精度を実現して
いました。このように,1000mbゆずりの強力なトランスポート部と筐体に高性能なD/Aコンバーターを搭載した一体型
CDプレーヤー「1000mb/i」の音は,当時「磨きあげた大吟醸」と評されたほど,別格の透明さと繊細さを誇る
高性能CDプレーヤーでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
空気振動の征服が,CDサウンドに新次元を拓く。
Nakamichi 1000mb◎”空気が伝える振動”に着目した新技術
<アコースティック・アイソレーション・システム>。
◎アルミ押し出し材による一体型シャーシと
亜鉛ダイキャスト製ピックアップベースを採用した
高剛性ボディ。
◎「6+1」ディスク再生が可能な
<ミュージックバンク・システム>を搭載。●ジッターを低減するプッシュプル方式の
オプティカル/コアキシャル(金メッキ)2系統デジタル出力端子
●シャフト長を長くとり,スリコギ状の振れを抑えたブラシ&スロットレス・モーター
●高剛性と振動減衰特性に優れた液晶ポリマー製ディスクスタビライザー
●電源部/メカニズム部/サーボ部をシールド板により完全分離。
電気的な干渉,および振動伝達を排除
●制振効果の極めて高い大型インシュレーター
●将来の発展性をも見通したプラグインユニット方式
●極太タイプAC電源コード
●8センチCD対応(シングルモードのみ)
●多彩なプレイ機能:2ウェイランダムプレイ(オール/シングルモード),
ディスクスキャン,シンクロ録音,タイムデータ・メモリー,リピートプレイ,
メモリープレイ,システムリモート対応
●ワイヤレスリモコン付属
型式 | デジタルオーディオシステム(コンパクトディスク方式) |
読み取り方式 | 非接触光学式(半導体レーザー使用) |
エラー訂正方式 | CIRC方式 |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
標本化周波数 | 44.1kHz |
量子化 | 16ビット直線 |
ディスク回転速度 | 約200〜500rpm(線速度一定) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
周波数特性 | 5〜20,000Hz±0.5dB |
S/N比 | 105dB以上(IHF A-WTD) |
全高調波歪率(1kHz) | 0.0025% |
全高調波歪率+雑音(1kHz) | 0.003% |
チャンネルセパレーション | 100dB以上 |
デジタル出力 | 75Ω同軸/光(パラレル) |
出力レベル/インピーダンス
(1kHz,0dB) |
2.0V/600Ω |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 最大23W |
大きさ | 435(幅)×133(高さ)×370(奥行)mm |
重さ | 約16kg |
「空気振動の征服」の恩恵を,ひとりでも多くのオーディオマニアに。
Nakamichi 1000mb/i◎”空気が伝える振動”に着目した新技術
<アコースティック・アイソレーション・システム>。
◎アルミ押し出し材による一体型シャーシと
亜鉛ダイキャスト製ピックアップベースを採用した
高剛性ボディ。
◎微少レベルの解像力を高めたEL20ビットDACと,
ディスクリート構成で裸特性を向上させたアナログ
フィルターを搭載。
◎「6+1」ディスク再生が可能な
<ミュージックバンク・システム>を搭載。
◎将来のバージョンアップに備えたプラグインユニット方式。●シャフト長を長くとり,スリコギ状の振れを抑えたブラシ&スロットレス・モーター
●高剛性と振動減衰特性に優れた液晶ポリマー製ディスクスタビライザー
●電源部/メカニズム部/サーボ部をシールド板により完全分離。
電気的な干渉,および振動伝達を排除
●制振効果のきわめて高いバイブレーション・インシュレーター
●オーディオ用,サーボ用それぞれ専用の電源トランスを装備。さらにアナログ
フィルター用,D/Aコンバーター用を別巻線とした,入念なマルチレギュレーテッド・
パワーサプライ方式
●厳選を重ねた高品位オーディオパーツを使用し,オーディオ信号系から配線材
を追放
●金メッキ・アナログ出力端子(Fixed)
●極太タイプAC電源コード
●8センチCD対応(シングルモードのみ)
●多彩なプレイ機能:2ウェイランダムプレイ(オール/シングルモード),
ディスクスキャン,シンクロ録音,タイムデータ・メモリー,リピートプレイ,
メモリープレイ,システムリモート対応
●ワイヤレスリモコン付属
型式 | デジタルオーディオシステム(コンパクトディスク方式) |
読み取り方式 | 非接触光学式(半導体レーザー使用) |
エラー訂正方式 | CIRC方式 |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
D/A変換方式 | EL20ビット・デュアルD/Aコンバーター |
標本化周波数 | 44.1kHz |
量子化 | 16ビット直線 |
ディスク回転速度 | 約200〜500rpm(線速度一定) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
周波数特性 | 5〜20,000Hz±0.5dB |
S/N比 | 105dB以上(IHF A-WTD) |
ダイナミックレンジ | 100dB以上 |
全高調波歪率(1kHz) | 0.0025% |
全高調波歪率+雑音(1kHz) | 0.003% |
チャンネルセパレーション | 100dB以上 |
デジタル出力 | 75Ω同軸/光(パラレル) |
出力レベル/インピーダンス
(1kHz,0dB) |
2.0V/600Ω |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 最大23W |
大きさ | 435(幅)×133(高さ)×370(奥行)mm |
重さ | 約18kg |
※本ページに掲載した1000mb及び1000mb/iの写真・仕様表
等は1991年のNakamichiの資料及びカタログより抜粋したもの
で,ナカミチ株式会社に著作権があります。したがってこれらの写
真等を無断で転載, 引用等をすることは法律で禁じられています
ので,ご注意ください。
※本ページを制作するにあたり,小船様より貴重な資料のご提供を
いただきました。ご協力ありがとうございました。
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