marantz PM-95
DIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER ¥350,000
1988年に,マランツが発売したプリメインアンプ。当時の同社の最高級プリメインアンプで,それまでの同社のアンプ
を大きく超えた内容と,洗練されたデザインをもつ1台でした。また,同社初のD/Aコンバーター内蔵型プリメインアン
プでもありました。
当時,フィリップスグループの一員であったマランツだけに,D/Aコンバーター部には,フィリップス製の”TDA-1541A
-S1”LSIが搭載されていました。TDA-1541系列は,当時のフィリップス製の16ビット系のD/Aコンバーター・LSIで
マランツ製,フィリップス製のみならず,ヨーロッパ製,アメリカ製など海外製のCDプレーヤーに多く搭載されていました。
TDA1541A-S1は,当時のTDA-1541系の最新ディバイス”Aバージョン”の中からさらに厳選されたセレクテッドタ
イプで,型番とともに最上級を意味するクラウンマークが刻印されていました。D/Aコンバーターとして,全温度幅で,微
少信号時には0.5LSB,通常のレベルで1LSBという高いリニアリティが確保されており,同時期のマランツの高級CD
プレーヤーCD-95にも搭載されていました。この高性能LSIと16ビット4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターと
相まって,高精度なD/Aコンバーター部となっていました。
PM-95は,D/Aコンバーター搭載型プリメインアンプでしたが,D/Aコンバーター部以降は,基本的には入力信号がボ
リュームからダイレクトにパワーアンプ部に送り込まれるシンプルな構成となっていました。
パワーアンプ部は,初段はカスコード接続の差動増幅で,FETとバイポーラ・トランジスターの組み合わせによって十分
なゲインが確保されていました。出力段は,パワーMOS FETを採用したトリプルプッシュプル構成が採用されていまし
た。しかも,スイッチの切換でA級動作とAB級動作の選択ができるようになっており,A級動作では40W+40W(6Ω)
AB級動作では155W+155W(6Ω)の出力が実現されていました。
電源部は,大型のトロイダルトランスと大容量のLowESR(等価直列抵抗が低い)型コンデンサーから構成され,余裕
のある電源供給が可能となっていました。配線材には直径1.53mmの無酸素銅線を使用し,また,デジタルノイズのア
ナログ回路への回り込みを防止するために,それぞれ独立した電源部が採用されていました。アナログ系には,ローノ
イズ広帯域の高集積度ICを駆使した安定性の高いハイスピード電源を搭載していました。さらに,コンデンサー取り付け
金具には非磁性体の銅板を用いるなど,徹底した配慮が行われていました。
内部,筐体等の構造においても,銅メッキを施したダイキャストをベースにしたシャーシに,ダイキャストサイドパネルが
採用されて,機械的な歪みが生じにくい構造で,高剛性と大重量を同時に達成し,しっかりした制振効果が確保されて
いました。ヒートシンクは左右独立構造で,高強度アルミ材が使用され,無共振で効率の良い自然空冷が確保されてい
ました。
ボリュームノブには精巧なアルミ削り出し仕上げが採用され,プリント基板にはポリエステルをベースに70μm厚の銅
箔パターンが採用され,無共振化が各部に徹底して行われていました。さらに,デジタル部とアナログ部を完全に遮断す
るシールドや,ファンクション切換への25個もの高性能リレーの採用,パターン配線の最短化など各部にしっかりとした
つくりが見られました。
PM-95は,CD,DAT,BSチューナー等,当時の新しいソースを想定したプリメインアンプとして設計され,フォノ入力は
搭載されず,デジタル入出力とラインレベルのアナログ入出力のみという構成になっていました。デジタル系は,コア
キシャル(同軸)4系統(CD2,DBS,DAT1,DAT2),オプティカル(光)2系統(CD1,DAT1)で,DAT1,DAT2には
PLAY/RECという入出力両端子が装備されていました。さらに,デジタルプロセッサー用端子1系統(IN/OUT)が装備
されていました。アナログ系は,入力5系統(CD/AUX1,AUX2,TUNER,TAPE1,TAPE2)出力2系統(TAPE1,
TAPE2),スピーカー端子2系統(A,B)が装備されていました。
また,アナログ系,デジタル系ともREC OUTセレクターが装備され,再生ソースとは独立して録音ソースが選択でき,1→
2,2→1といった相互ダビングもできるようになっていました。
なお,コマンドメモリー(学習機能)付きリモートコントロール,RC-95PM(¥40,000)が別売で用意されており,他の
AV機器等のリモコン操作も統合して行えるようになっていました。

以上のように,PM-95は,デジタルオーディオが主流となっていったこの時代に合わせて,より先進的な設計がなされた
高級プリメインアンプでした。洗練されたデザインと共通するような,MOS FETの良さを引き出した明るく繊細な音は,マ
ランツの新しい方向性を示した1台だったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



待ちつづけた感動がここにある。

音楽の息づかいが,感動となる。
D/Aコンバーター搭載。
デジタルインテグレーテッドアンプ。

◎デジタルオーディオ時代に対応する,
 D/Aコンバーター内蔵のデジタルアンプ。
◎生命力にあふれた音楽を再生するために,
 A級,AB級動作で出力のクオリティを確保。
◎音質重視の電源部で余裕のある電力供給を行う,
 大型トロイダル・トランスと大容量コンデンサー。
◎剛性にすぐれたコンストラクションで,
 振動や共振を一切シャットアウト。
◎多彩な音楽ソースに対応可能な豊富な入出力端子と,
 集中操作が可能な学習機能付リモコン対応。





●PM-95 SPECIFICATIONS●


●総合特性●

定格出力(20Hz〜20kHz,両ch駆動) ABクラスモード
 120W×2(8Ω)
 155W×2(6Ω)
 190W×2(4Ω)
Aクラスモード
  30W×2(8Ω)
  40W×2(6Ω)
  50W×2(4Ω)
ダイナミックパワー 230W×2(6Ω,ABクラスモード)
300W×2(4Ω,ABクラスモード)
460W×2(2Ω,ABクラスモード)
全高調波歪率 0.008%(20Hz〜20kHz,8Ω負荷)
混変調歪率 0.008%(SMPTE)
出力帯域幅 10Hz〜40kHz(8Ω負荷,THD0.04%)
周波数特性 10Hz〜150kHz(+0,−3dB)
ダンピングファクター 200(8Ω負荷,1kHz)
入力感度/入力インピーダンス 150mV/33kΩ(1kHz)
S/N比 106dB(Aネットワーク)



●D/Aコンバーター●

デジタルサンプリング周波数 32kHz,44.1kHz,48kHz
S/N比 106dB(EIAJ)
歪率 0.003%(EIAJ)
ダイナミックレンジ 98dB
デジタル入力 0.5Vp-p/75Ω(COAXIAL)
−15〜−25dBm(OPTICAL受光電力)
デジタル出力 0.5Vp-p/75Ω(COAXIAL)



●電源部,その他●

電源電圧 AC100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 330W(電気用品取締法)
最大外形寸法 454W×170H×457Dmm
重量 27.2kg

※ 本ページに掲載したPM-95の写真,仕様表等は1988年12月のmarantz
のカタログより抜粋したもので,日本マランツ株式会社に著作権があります。し
たがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
ますのでご注意ください。


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