PIONEER A-008
STEREO AMPLIFIER ¥120,000
1977年にパイオニアが発売したプリメインアンプ。DC化,AB級動作など,「Magni-Wide Power Range」
を標榜して,広帯域,高出力,低歪みというアンプの性能を追求した新しいシリーズの中でA-0012に次ぐ2番
手のモデルとして発売されました。
A-008は,A-0012の設計思想をそのまま受け継ぎ,音の入口から出口まですべての増幅段(MCヘッドアン
プ,イコライザーアンプ,フラットアンプ,パワーアンプ)をDC化した4DC構成が採用されていました。増幅回路の
NFBループ内にある位相歪みの原因となるコンデンサーがないため,すぐれた位相特性と過渡応答
特性によ
る安定したアンプ動作を実現していました。
パワーアンプ部には,新開発の集団トランジスターRET(Ring Emitter Transistor)が採用されていました。
RETは,高周波特性に優れた小電力用トランジスターを数百個並列合成したもので小電力用トランジスターの高
速スイッチング特性を損なうことなく破壊強度を上げて大電力化を図ったものでした。構造的には,エピタキシャ
ル・プレーナー型トランジスターで,ベース電極の周囲にドーナツ状のリングを形作ってエミッターが配列されてい
るため,リングエミッター・トランジスターと呼ばれ,通常のパワートランジスターに比べ,スイッチング特性が極め
てすぐれ,信号の応答性が良く,キャリア蓄積(スイッチング歪み)が少ないという特性を持っており,大出力素子
ながら優れた高域特性を持っていました。
低域における特性向上に対しては,DC化とともに,電源部の強化が行われていました。電源部は,L・R独立の
大型トランスと,15,000μF×4の大容量コンデンサーを使ったものでした。さらに,パワー部からスピーカー端
子までの配線には,抵抗値が従来の1/4に減少する極太14番線(2.03φヨリ線)を使用するなど,低インピー
ダンス化が図られていました。
さらに,さらに,通常の音楽再生の大部分を占める小出力時の領域をスイッチング歪みが本質的にないA級動作
としたAB級
動作で,大出力と低歪みの両立を実現し,80W+80Wの大出力を0.01%(5Hz〜30kHz)の低
歪みで実現し
ていました。
DC構成のイコライザーアンプは,初段差動部にローノイズデュアルFETを採用していました。さらに,カスケード接
続した3段直結で,入力コンデンサーを除去したICL回路となっていました。ここで採用されたデュアルFETは,素
子自体がきわめて高SN比であるほか,カスケード接続によってFETのドレイン−ゲイト間の電圧を抑えて,ノイ
ズの発生を防ぐ効果などにより,PHONO SN比90dBというすぐれた特性を実現していました。
MCヘッドアンプは,NFBが安定にかかるDC構成で,初段にローノイズトランジスターを使用した3段直結SEPP
で,SN比73dB(IHF-Aネットワーク,ショートサーキット)を実現していました。
さらに,イコライザーアンプには,カートリッジロード切換が装備され,負荷抵抗が100Ω,10kΩ,25kΩ,50kΩ
100kΩの5種,負荷容量も100pF,200pF,300pF,400pF,500pFの5種がそれぞれ独立して選べ,合
25種のカートリッジロードが設定できるようになっており,各種のカートリッジに対応できるようになっていました。
機能として特徴的なものとしてトーンコントロールがありました。通常のBASS/TREBLEのメイントーンコントロ
ールの他にサブコントロールとしての超高域/超低域のコントロールツマミが設けられた方式となっていました。
BASSは,100Hzのメインコントロール(±8dB)と50Hzのサブコントロール(±6dB),TREBLEは,10kHz
(±8dB)と20kHz(±6dB)という設定になっており,メインだけ,あるいはメインとサブを組み合わせて,より微妙
なトーンバランスの調整が可能となっていました。また,トーンコントロールはトーンON-OFFスイッチによってバイ
パスすることもできるようになっていました。
15Hz以下をカットするサブソニックフィルターは6dB/oct,12dB/octのスロープ特性が2段切り換えになっており
プリ部,パワー部はスイッチひとつで分離使用できるようになっていました。
入力は,PHONO2系統,TUNER,AUX,TAPE2系統が装備され,デュプリケートスイッチによって,TAPE1・2
相互のダビングも可能となっていました。
以上のように,A-008は,カチッとしたオーソドックスなデザインが示すように,各部をオーソドックスにしっかりと構
成したプリメインアンプで,操作性もカチッとした手ごたえのしっかりした使いやすいもので,バランスのとれたしっか
りとした音を持っていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



DC化を極めた4DC構成。
80W+80Wの
マグニワイド・パワーレンジ。

◎フルパワーで超広帯域再生。
 忠実な音楽再生のための
 マグニワイド・パワーレンジ設計。
◎オーバーオールな特性を向上させた
 4DC構成。
◎音のクオリティと
 ダイナミックレンジの広さを両立。
◎PHONO SN比90dB(MM)。ダイナミック
 レンジの広いレコード再生を追求。
◎DC構成のMCヘッドアンプを内蔵。MC
 カートリッジがダイレクトに接続できます。
◎カートリッジの性能を十分に発揮させる
 カートリッジロード切換え。
◎きめ細かな音質調整ができる
 ツイントーンコントロールを装備。

●連続可変デシベル表示アッテネーター型ボリウム
●15Hz以下をカットするサブソニックフィルター
●トーン回路をパスしてフラットな特性が得られるトーンON-OFFスイッチ
●テープデュプリケートスイッチ
●プリ部・パワー部の分割使用可能




●主な仕様●


(パワーアンプ部) 

実効出力
(両ch駆動 8Ω)
80W+80W(5Hz〜30kHz,THD0.01%)
80W+80W(5Hz〜70kHz,THD0.05%)
高調波歪率 0.01%(実効出力時5Hz〜30kHz,8Ω)
混変調歪率 0.01%(実効出力時50Hz:7kHz=4:1,8Ω)
出力帯域幅 IHF両ch駆動,8Ω
 5Hz〜50kHz(THD0.01%)
 5Hz〜100kHz(THD0.05%)
周波数特性 5Hz〜200kHz+0−1dB(1W出力時)
ダンピングファクター 40(5Hz〜30kHz,8Ω)
SN比 115dB(IHF,Aネットワーク,ショートサーキット)


(プリアンプ部) 

入力端子
(感度/入力インピーダンス)
PHONO1・2(MM):2.5mV/100Ω,10kΩ,25kΩ
                    50kΩ,100kΩ
PHONO1・2(MC):250μV/100Ω
カートリッジ負荷容量
 PHONO1・2(MM)/100pF,200pF,300pF,400pF,500pF       
TUNER,AUX,TAPE PLAY1・2:150mV/50kΩ
PHONO最大許容入力 MM:300mV MC:30mV(1kHz,THD0.01%)
出力端子
(レベル/出力インピーダンス)
TAPE REC 1,2:150mV
PRE OUT:2V/1kΩ
高調波歪率 (5Hz〜30kHz)/0.005%(1V出力),0.01%(10V出力)
周波数特性 PHONO:20Hz〜20kHz±0.2dB
TUNER,AUX,TAPE PLAY:5Hz〜100kHz+0−1dB
SN比 (IHF,Aネットワークショートサーキット)
 PHONO MM:90dB
 PHONO MC:73dB
 TUNER,AUX,TAPE PLAY:105dB
サブソニックフィルター 15Hz(6dB/oct,12dB/oct)


(電源部・その他) 

電源電圧 AC100V,50/60Hz
消費電力 210W(電気用品取締法)
最大消費電力 580W
ACアウトレット 2(電源スイッチ連動),2(非連動)
外形寸法 420W×155H×408Dmm
重量 17.2kg

※ 本ページに掲載したA-008の写真,仕様表等は1979年3月のPIONEER
のカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があ ります。した
がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じら れていま
すのでご注意ください。


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