PIONEER A-04
STEREO AMPLIFIER ¥89,000
1993年に,パイオニアが発売したプリメインアンプ。1992年に発売された超弩級プリメインアンプ
A-09の弟機として発売され,プリメインアンプとしては超高級機であったA-09に対し,より手頃な,
より現実的な価格で発売された,当時,末弟となる機種でした。しかし,上級機同様に,量よりも質
の設計思想で作られた1台でした。
増幅回路の大きな特徴として「ワイドレンジリニアサーキット」の採用がありました。これは,電流帰
還型回路による1段増幅で必要なゲインを得るもので,電流リニアリティにすぐれ,出力インピーダ
ンスが低域から高域にわたってフラットであるという特性を実現していました。通常のアンプでは,
高周波に対する安定性を確保するためにスピーカー出力端子のチョークコイル,各入力端子のコ
ンデンサー,位相補償のためのコンデンサーがつけられてきました。しかし,これらのパーツは回
路のシンプル化,ピュアな増幅を妨げ,音質への悪影響がありました。それに対し,「ワイドレンジ
リニアサーキット」では,1段増幅のシンプルな回路が実現されていました。
パワー部は,上級機のA-09のような純A級動作ではなくAB級でしたが,大容量の電源トランスを
搭載した強力な電源部にも支えられ,45W+45W(8Ω),90W+90W(4Ω)というパワーリニ
アリティ,ダンピングファクター160(20Hz~20kHz,8Ω)という強力なドライブ力を確保していま
した。また,電源トランスが発生するリーケージフラックス(漏れ磁束)を極力抑え,音質への悪影
響を低減していました。
プリメインアンプの構成要素である電源部,パワーアンプ部,電圧増幅部,これらの相互干渉が音
のにごりの原因となるため,A-04では,電源部とパワーアンプ部をシールドし,さらに隣り合うパワ
ーアンプ部と電圧増幅部を新開発のエアロヒートシンクでシールド分離した3BOXチェンバー構造を
採用していました。電源部や大電流部で発生する有害なノイズ電流と音楽信号との距離をとり,それ
ぞれの間にシールドを入れ,信号の伝達に影響を与えにくいレイアウトとすることで,音楽信号の純
度を高めていました。
A-04のヒートシンクは,新開発のエアロヒートシンクで,構造自体に対抗する平行面がないため,定
在波が発生しにくくなっていました。また,音質のにごりになる共鳴も抑えられ,フィンをパワートラン
ジスターの取付部の裏面から2枚ずつ伸ばした構造とすることで,高い伝熱効果を確保し,発熱量の
大きなアンプ内部の熱を効果的に放射するようになっていました。
ボリュームは,ギャングエラーや音質の劣化を抑えるために,40m/m角の大型ボリュームユニット
が採用されていました。さらに,パネルへの取り付けは,銅製ボリューム・スタビライザーを介すこと
によって,音を濁す振動がボリュームに伝わらないようにし,微小音時での再生音を改善していま
した。
その他にも,音への悪影響を抑える無振動化・無共振化が行われていました。外部音圧や電源ト
ランスに起因する振動を徹底して排除するために,ビス止めひとつひとつにもコンピュータによるシ
ミュレーションを行い,振動の影響を最も受けにくい位置を選んでビス止めを行い,ビスは,振動の
吸収に効果的な銅メッキのものを採用していました。そして,筐体を支えるインシュレーターは,接
地部と筐体側にクッションを装着し,振動の伝達を2段階にわたって抑えていました。インシュレー
ターも高剛性のハニカム構造を採用し,振動の吸収率を高めていました。また,重量の大きなトラ
ンスの真下にもインシュレーターを取り付け,自重のバランスをとっていました。
機能的には,オーソドックスかつシンプルにまとめられていました。トーンコントロールは,BASS
TREBLE独立型で,その他,サブソニックフィルタ,ラウドネススイッチ,RECセレクターなどが装
備されていました。
入力は,PHONO1系統,TUNER,AUX,CD,LINE,TAPE3系統が装備され,ハイレベル入
力は,パワーアンプにダイレクトに接続されるDIRECTスイッチも装備されていました。TAPE3は
グラフィックイコライザー等のアダプター入力も兼ねており,別にスイッチが設けられていました。
PHONO入力は,1チップデュアルFET入力構成のPHONOイコライザーが搭載され,ハイゲイ
ンタイプで,MCカートリッジにも対応していました。スピーカー出力は2系統装備されていました。
以上のように,A-04は,中級機ながら,上級機の技術を継承し,シンプルで,大出力ではないも
のの,実使用時の音質を高めようとした設計により,価格を超えた高いスピーカードライブ能力
洗練された明るい音をもち,音楽をしっかり聴ける1台となっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
音の広がりを描ききると,
音楽の微妙なニュアンスまでが
見えてきた。
スピーカーを広帯域に渡り安定して
ドライブする,
ワイドレンジリニアサーキットを搭載。
45W+45W(8Ω)
90W+90W(4Ω)の
優れたパワーリニアリティを実現。
◎スピーカーを広い帯域に渡り,安定して
ドライブするワイドレンジリニアサーキット。
◎45W+45W(8Ω),90W+90W(4Ω)の
優れたパワーリニアリティを実現。
◎音の明瞭さを獲得するための,
内部コンストラクション。
新開発3BOXチェンバー構造。
◎定在波の発生や,音のにごりとなる共
鳴を抑えた新開発のエアロヒートシンク。
◎音質最優先の40m/m角大型ボリウム搭載。
◎効果的な無振動・無共振化対策が,
本体のすみずみにまで施されています。
●アナログディスク再生の魅力を引き出す
1チップデュアルFET入力構成の
PHONOイコライザー。
●極性表示付の無酸素銅極太電源コード。
●金メッキ入出力ピンジャック。
●万力タイプの大型スピーカーターミナル。
●吟味した抵抗やコンデンサーなど,高音質
パーツを要所に使用しています。
定格出力(両チャンネル駆動) | 45W+45W(20Hz~20kHz,0.02%,8Ω) 90W+90W(20Hz~20kHz,0.2%,4Ω) |
ダンピングファクター | 160(20Hz~20kHz,8Ω) |
入力端子 (感度/インピーダンス) |
PHONO MM:2.8mV/50kΩ PHONO MC:0.25mV/100Ω CD,TUNER,LINE,DAT/TAPE1,TAPE2:200mV/30kΩ |
PHONO最大許容入力 | PHONO MM:200mV(1kHz,0.1%) PHONO MC:16mV(1kHz,0.1%) |
出力端子 (レベル/出力インピーダンス) |
DAT/TAPE1,TAPE2,LINE,REC,ADAPTER OUT:200mV/1kΩ |
周波数特性 | PHONO MM:20Hz~20kHz±0.2dB PHONO MC:20Hz~20kHz±0.3dB CD,TUNER,LINE,DAT/TAPE1,TAPE2:1Hz~150kHz+0,-3dB |
トーンコントロール | BASS:±8dB(100Hz),TREBLE:±8dB(10kHz)at VR-30dB |
ラウドネスコンター | 5dB(100Hz),3dB(10kHz)at VR-30dB |
SN比 (IHF-Aネットワーク,ショートサーキット) |
PHONO MM:87dB(at 2.8mV) PHONO MC:67dB(at 0.25mV) CD,TUNER,LINE,DAT/TAPE1,TAPE2:108dB |
スピーカー負荷インピーダンス | A,B:4~16Ω,A+B:8~32Ω |
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 (電気用品取締法) |
145W |
外形寸法 | 440W×161H×435Dmm |
重量 | 15.2kg |
※本ページに掲載したA-04の写真,仕様表等は,1993年
10月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニ
ア株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等
を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
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