PIONEER A-05
STEREO MAPLIFIER ¥120,000
1995年に,パイオニアが発売したプリメインアンプ。1992年に発売された超弩級プリメインアンプ
A-09の
設計思想や技術を受け継ぐモデルで,1994年発売の
A-07の弟機で,デザインも非常によく似ており,価格
はほぼ半分,内容的にはダウンサイジングされていましたが,量よりも質の設計思想が生きたアンプとなって
いました。
A-05の大きな特徴は,パイオニアがエクスクルーシブブランドの高級セパレートアンプをはじめ,プリメインア
ンプ
A-09,
A-07などで展開していた「左右対称ツインモノラル構造」を採用していたことでした。内部回路の
シンプル化を徹底し,信号経路のストレート化を図るとともに,ツイントランスの電源部からはじまり,内部回路
の左右対称レイアウトはもちろん,フロントパネル,リアパネル,ボリュームまでも含めた左右対称構造とする
ことで,電流,磁界,温度分布,機械的な応力分布などの環境を揃え,L・Rチャンネルの特性誤差を可能な限
り抑えて,ステレオフォニックの再現性を高めようとしたものでした。
各ブロックをフレームによって分離したチェンバー構造が採用され,増幅部,電源部,コントロール部を各々シー
ルドしてブロック間の相互干渉を排除していました。リアパネルは,アンプの動作基準点であるグランドを中心とし
て放射状にピンジャックが配置され,電気的な安定性を高めていました。
そして,放熱特性と振動減衰特性に優れたエアロウィングヒートシンクが採用され,高い放熱効果によりパワート
ランジスターの温度を均一化すると同時に,構造自体に平行面をなくして音を濁らせる定在波や共鳴も抑えてい
ました。
増幅回路系には,電流帰還型回路による1段増幅で必要なゲインを得る「ワイドレンジリニアサーキット」が採用
されていました。これにより,電流リニアリティにすぐれ,出力インピーダンスが低域から高域までフラットであると
いう特性が確保されていました。A-05では,さらに伝送系の時間軸特性の改善を図り,より3次元的な音響表現
を可能にした「ワイドレンジリニアサーキットVer.5」となっていました。
トーンコントロール,ラウドネスなどの付属回路もあえて省略され,スピーカー出力も1系統とされ,プリメインという
形を生かした徹底した信号経路の短縮化,シンプル化,ストレート化が図られていました。そのため,機能的には
きわめてシンプルな構成となっていました。PHONO入力も1系統のみで,MM対応のみの1チップデュアルFET
入力構成のイコライザーが搭載されていました。特徴的な機能として「GAIN SELECTOR」が搭載されていまし
た。これは,通常40dBであるアンプ全体のゲインを26dBに切り換えられるもので小音量で聴くときや,能率の高
いスピーカーを使用するときなどに,余分なゲインをカットすることで,実使用時のS/Nを向上させ,音の純度を高
めようとするものでした。
電源部はオリエントコアを使用したトロイダルトランスを採用していました。コア断面に角がない形状により,うなりの
発生が抑えられ,さらに,電源トランスの直下から大容量極太タイプOFC電源コードを引き出すことで外部雑音の
影響も抑えられ,S/N感の向上が図られていました。大容量の電解コンデンサーと合わせ,強力な電源部が構成
され,8Ω負荷時45W+45W,4Ω負荷時90W+90Wというすぐれたパワーリニアリティが実現されていました。
ボリュームには,特殊インクを使用した抵抗体や金メッキ処理を施した接点ブラシ,黄銅製のシールド板及び回転
軸など材質の徹底した見直しが図られたA-05専用にチューニングされた高音質なものが搭載されていました。そ
の他,オリジナルの新開発有機半導体コンデンサー,金メッキ入出力端子,伝送ロスが少なく安定した電源供給が
可能な万力タイプの大型スピーカー端子など,厳選されたパーツが使用されていました。
以上のように,A-05は,プリメインアンプという形を積極的に生かした設計がなされ,パーツ,コンストラクション両
面から量より質を求めた,実力派の中級機でした。上級機より明るく若々しい音は,A-05ならではの魅力をもった
ものでした。