A-07の写真
PIONEER  A-07
STEREO AMPLIFIER ¥230,000

1994年に,パイオニアが発売したプリメインアンプ。1992年に発売された超弩級プリメインアンプ
A-09を継承した弟機で,価格 はほぼ半分で,全体にダウンサイジングされてはいましたが,大出力
よりも質を求めた設計は受け継がれ,しっかりと物量が投入された力作でした。

A-07の最大の特徴は,A-09から受け継がれた「左右対称ツインモノラル構造」でした。電源トラン
スを左右対称に配置したツイントランス構成をはじめ,内部回路の左右対称レイアウトはもちろん,フ
ロントパネル,リアパネル,ボリュームまでも含めた左右対称構造とすることで,電流,磁界,温度分
布,機械的な応力分布などの環境を左右で完全に均一化し,パーツに起因するL・Rの特性誤差を極
限まで抑えていました。

A-07の内部

A-07のリアパネル

さらに,各ブロックをフレームによって分離したチェンバー構造が採用され,増幅部,電源部,コントロール
部を各々シールドしてブロック間の相互干渉を排除していました。リアパネルは,アンプの動作基準点であ
るグランドを中心として放射状にピンジャックが配置され,電気的な安定性を高めていました。
信号経路をできるだけシンプル化するために,入力端子直後において信号切替リレーによって選択された
信号が,ボリュームと増幅回路が最短距離で結ばれる一枚基板に入力される「アドバンスト・ダイレクト・コン
ストラクション」が採用され,信号経路の最短化と電気的安定性の向上が実現されていました。
そして,放熱特性と振動減衰特性に優れたエアロウィングヒートシンクが採用され,高い放熱効果によりパ
ワートランジスターの温度を均一化すると同時に,構造自体に平行面をなくして音を濁らせる定在波や共鳴
も抑えていました。
また,左右チャンネルの電気回路,コントロール系回路および電源部を電気的に独立させた「アイソレーテッ
ド・サーキット」が採用されていました。これは,フォトカプラを用いて回路間の電流ループによる相互干渉を
なくしてすぐれた音場再生を実現しようとするものでした。

増幅回路として「ワイドレンジリニアサーキット」が採用されていました。これは,電流帰還型回路による1段
増幅で必要なゲインを得るもので,ダンピングファクターを広帯域にわたってフラットにし,高いスピーカード
ライブ能力が実現されていました。通常のアンプでは,高周波に対する安定性を確保するためにスピーカー
出力端子のチョークコイル,各入力端子のコンデンサー,位相補償のためのコンデンサーがつけられてきま
した。しかし,これらのパーツは回路のシンプル化,ピュアな増幅を妨げ,音質への悪影響がありました。そ
れに対し,「ワイドレンジリニアサーキット」では,1段増幅のシンプルな回路が実現され,,これらの点はクリア
されていました。そして,パワーリニアリティと温度安定性に優れた新開発出力段・「クロスアレーパワーステー
ジ」が採用され,回路そのものの安定性が高められていました。これにより,優れた高周波安定性が確保さ
れ,位相特性も大きく向上し,また高周波ノイズに対しても強い特性が実現されていました。
パワー部は,A-09のような純A級動作ではなくAB級でしたが,強力な電源部にも支えられ,50W+50W
(8Ω),100W+100W(4Ω),ダンピングファクター300(20Hz〜20kHz,8Ω)という強力なドライブ力
を実現していました。

A-09同様に,トーンコントロール,ラウドネスなどの付属回路もあえて省略され,スピーカー出力も1系統とさ
れ,プリメインという形を生かした徹底した信号経路の短縮化,シンプル化,ストレート化が図られていました。
そのため,機能的にはきわめてシンプルな構成となっていました。CD等のデジタル時代のプリメインアンプと
して,PHONO入力も1系統のみで,MM対応のみの1チップデュアルFET入力構成のイコライザーが搭載
されていました。特徴的な機能として「GAIN SELECTOR」が搭載されていました。これは,通常40dBであ
るアンプ全体のゲインを26dBに切り換えられるもので小音量で聴くときや,能率の高いスピーカーを使用す
るときなどに,S/Nが向上し,音量調整もしやすくなるというものでした。

A-07のパーツ

パーツの面でも,高周波特性等の吟味が行われた厳選されたものが使用されていました。カスタム仕様ポリ
プロピレンフィルムコンデンサー,安定度が確保された巻線抵抗,モールド抵抗,密閉型リレーなど,高い精
度と信頼性が実現されていました。また,ボリュームには,高精度アッテネーター型ボリュームが採用され,左
右の連動誤差を低減して正確で安定したボリュームコントロールが確保されていました。電源コードは,電源
トランス直下から大容量極太タイプOFCコードを引き出した構造とされ,スピーカーターミナルも確実な接続が
できる万力タイプの大型ターミナルが使用されていました。

以上のように,A-07は,最上級機A-09の技術的特徴を受け継ぎ,量より質を求めた設計により,すぐれた
性能を実現していました。上級機よりもクリアさや鮮度の高さを感じさせる音は,また別の魅力を持つものと
なっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



左右対称ツインモノラル構造,
ワイドレンジリニアサーキット搭載。
高周波領域まで高い安定度を獲得した,
プリメインアンプの新発想。


◎ステレオフォニックの原点を追求した
 左右対称ツインモノラル構造。
◎新開発クロスアレーパワーステージ採用
 ワイドレンジリニアサーキット。
◎精密抵抗,コンデンサー,アッテネーター
 ボリウムなど,厳選された高信頼性パーツ。
◎各ブロックの相互干渉を排した
 チェンバー構造。
◎信号経路は,可能な限りシンプルに。
 アドバンスト・ダイレクト・コンストラクション。
◎小音量で再生する時,便利な
 GAIN SELECTOR。
◎優れた音場感を再現する
 アイソレーテッド・サーキット採用。




●主な仕様●

定格出力(両チャンネル駆動) 50W+50W(20Hz〜20kHz,0.01%,8Ω)
100W+100W(20Hz〜20kHz,0.03%,4Ω)
ダンピングファクター 300(20Hz〜20kHz,8Ω)
350(1kHz,8Ω)
入力端子
(感度/入力インピーダンス)
PHONO MM 2.8mV/50kΩ
CD,TUNER,LINE,TAPE 200mV/50kΩ
PHONO最大許容入力 PHONO MM(1kHz,0.02%)150mV
出力端子
(レベル/出力インピーダンス)
TAPE REC 200mV/1kΩ
周波数特性 PHONO MM 20Hz〜20kHz±0.3dB
CD,TUNER,LINE.TAPE 1.5Hz〜400kHz+0,−3dB
S/N
(IHF-Aネットワーク,ショートサーキット)
PHONO MM 84dB
CD,TUNER,LINE,TAPE 105dB
電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力
(電気用品取締法)
200W
外形寸法 440W×164H×479Dmm
重量 23.3kg


※本ページに掲載したA-07の写真,仕様表等は,1995年1月の
 PIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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