NEC A-11
INTEGRATED AMPLIFIER ¥149,000
1984年に,NECが発売したプリメインアンプ。それまで,プロ用の機器は作っていたもの
の,コンシューマー用では無名に近かったNECが1983年,突如プリメインアンプA-10を
発売し,その価格からは想像もできないような強力な電源部を搭載し,オーディオファンの
心に強烈な印象を残しました。そして,翌年の1984年,その2世代目のモデルA-10Ⅱを
発売しました。その上級機として発売されたのがA-11でした。
このアンプの特徴は,その電源部にありました。リザーブⅡ電源と称する電源部で,2系統
の電源部を持ち,大出力時の電源供給能力をアップすることにより強力な音を実現してい
ました。コンデンサインプット型整流回路の充電電流の流れない時間を補うもうひとつの電
源・リザーブⅡ電源を搭載し,出力の位相を90度遅らせてリップルの谷を埋めてダイナミッ
クレンジの拡大に応えていました。このリザーブⅡ電源により,さらに充電電流のピーク値
は小さくなり,電源のインピーダンスも低下して,電源リップルも約10dB改善され,大出力
時にも歪みの少ない力強い低域再生が可能となっていました。
各増幅段には,プッシュプル型増幅回路が採用され,最終増幅段には,パラレルプッシュ
プル構成が採用されていました。さらに,全段独立シャントレギュレーター型電流回路が採
用されていました。ステージ独立の4電源部と上述のリザーブⅡ電源ともあいまって,8Ω時
に70W+70W,4Ω時には140W+140Wと目減りのない圧倒的パワーを確保し,強力
な電流供給能力を実現していました。プリメインアンプでは不足しがちな低インピーダンスで
の出力感も充分に確保され,低歪率とすぐれた低域再現能力を実現していました。
A-11は,基本的には,A-10シリーズに共通する機能や構成をとっており,プリメインアン
プとしては機能的にシンプルで,パワーアンプに近いものとなっていました。
フロントパネルのデザインはA-10シリーズとほぼ同じシンプルな左右対称型で,全てアルミ
無垢の丸形のつまみが並んでいるという当時,アマチュアライクと称された精悍でユニークな
ものでした。センターにあるボリュームの周りに描かれた放射状の目盛りも特徴的でした。
操作系もプリメインアンプとしては個性的で,強力なパワー段をパワーアンプとして使う場合
が考慮されたものでした。オペレーションスイッチをSEPARATEにすることで,パワーアンプ
部とプリアンプ部を切り離して使うことができるようになっていました。バランスコントロールは
なく,パワーアンプの出力ボリュームとして使用できる左右独立のパワーアウトプットレベル
コントロールがついていて,これで左右チャンネルのバランスコントロールをするようになって
いました。そして,トーンコントロールも搭載されていませんでした。
入力は,PHONO2系統,TUNER,CD,AUX2系統が装備され,TAPEは2系統で,TAPE
出力にはTAPE COPYスイッチがあり,OFF,SOURCE,TUNERの切り換えができ,相互
ダビングも可能となっていました。スピーカー出力は2系統,さらにヘッドホン端子が装備され
ていました。
PHONOイコライザー部は,初代A-10からMCヘッドアンプを外したような構成になっており
MMカートリッジのみに対応したものとなっていました。その他,機能的には,サブソニックフィ
ルターが装備されていました。
以上のように,A-11は,初代A-10ゆずりの正攻法の作りがなされた重量級アンプでした。
いくつかの部分は合理化されていた部分もありましたが,左右対称の独特のデザインの質実
剛健ともいえる1台でした。音の方は,A-10のストレートで力強い音に少ししなやかさも加わ
り,より余裕を感じさせるものとなっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
アンプの進化を見つめていくと,
そこにリザーブ思想がある。
NEC”リザーブⅡ電源”が
驚異のメカニズムを達成します。
◎NEC独創の”リザーブⅡ電源”登場によって,
アンプは再び電源部の時代へ突入します。
デジタル時代のダイナミックレンジ
拡大化に忠実に対応します。
迫力ある低域再生を可能にする
”リザーブⅡ電源”の成熟。
◎最強電源部と最強増幅部で,音楽信号に対応。
限りない性能と,華かな表現を獲得します。
◎シンプル&ハイクオリティの基本性能。
ベーシック・デザインの前面パネル。
◎デジタル時代を迎え撃つアンプは,
強力電源部による対応が必要となります。
●主な仕様●
(パワーアンプ部)
回路方式 | 全段ダイレクトDCサーボ回路 |
実効出力
(両ch駆動正弦波出力,20Hz~20kHz) |
70W+70W(8Ω) 140W+140W(4Ω) |
全高調波歪率 | 0.003%以下(実効出力時) |
混変調歪率 | 0.003%以下(実効出力時) |
周波数特性 | 5Hz~300kHz |
(プリアンプ部)
回路方式 | 全段ダイレクトDCサーボ回路 |
入力端子(レベル/インピーダンス) | PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
TUNER 150mV/10kΩ TAPE(1,2) 150mV/10kΩ CD 150mV/10kΩ AUX 150mV/10kΩ |
出力端子(レベル/インピーダンス) | REC出力 150mV /100Ω
プリアンプ出力 1.23V/600Ω |
SN比 | PHONO(MM) 90dB(-142dBV)
TUNER 110dB(-126dBV) TAPE(1,2) 110dB(-126dBV) CD 110dB(-126dBV) AUX 110dB(-126dBV) |
RIAA偏差 | ±0.2dB以内(10Hz~100kHz) |
PHONO最大許容入力 | 300mV(MM) |
アッテネーター | 0,-10,-20,-30dB |
サアブソニックフィルター | 15Hz(-3dB,6dB/Oct) |
入出力位相 | 同相 |
(電源部その他)
回路方式 | ステージ独立シャントレギュレータ方式+リザーブ電源 |
消費電力 | 250W |
外形寸法 | 430W×150H×430Dmm |
重量 | 24kg |
※本ページに掲載したA-10の写真,仕様表等は1984年1月の
NECのカタログより抜粋したもので,新日本電気株式会社に著作
権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等す
ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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