TEAC A-400
STEREO CASSETTE DECK ¥65,800
1975年に,ティアックが発売したカセットデッキ。ティアックは,オープンリールデッキの時代より,テープ
デッキにすぐれた技術をもつブランドでした。そんなティアックは,カセットデッキにおいても,すぐれた製品
を発売し,1972年には,水平型ながら,前面に操作部を配置した,後のコンポスタイル (前面操作型)の
走りといえるデザインの
A-450を発売し,高い評価を得ていました。そして,ティアックが初めて重ね置き
も可能なコンポスタイルのカセットデッキとして発売したのがA-400でした。

カセットテープのハーフは,もともと横置きにした水平な状態で使うことを前提にしていたため,カセットテー
プを用いた録音機器は,当初すべて水平型でした。1968年頃から登場し始めたオーディオ用カセットデッ
キもすべて水平型でした。しかし,コンポーネントタイプのステレオシステムが主流になってくる時代になり,
前面パネル部に操作系,表示系,テープ駆動部を集中させたいわゆるコンポ型のカセットデッキが求めら
れるようになり,各社がカセットハーフを斜めにセットするスラント型横向きに立ててセットするタイプなど
いろいろな形で実現していきました。A-400は,横向きに立ててセットするタイプのメカニズムを採用してい
ました。

走行系は,ティアックらしく高精度なものが搭載されていました。心臓部のモーターには,寿命が長く信頼
性の高いFGサーボDCモーターが採用されていました。直径2.5mmの高精度キャプスタンと組み合わさ
れたフライホイールを精密研磨平ベルトで駆動するという走行系は,ワウ・フラッター0.08%(WRMS)
以下という安定したテープ走行を実現していました。



テープ走行の操作系は,ロータリーレバーが採用されていました。ローターリーレバーは,オープンリール
デッキでは時々見られますが,カセットデッキでは珍しい形でした。A-400では,定速走行用と早巻き用
それぞれを集約したロータリー・ツインレバーとしていました。右側の定速走行用のレバーでは,ワンアク
ションのレバー操作で録音スタンバイ(REC PAUSE)状態になり,ここで録音レベル調整ができ,通常
のデッキのように,PAUSEのボタンを押してからRECとPLAYの2つのボタンを押すようなわずらわしい
操作を必要としないシンプルな操作が実現されていました。また,定速走行用と早巻き用の2つのレバー
は,片方がモード操作に入っているときには,他方はSTOPポジションでロックされるようになっており,2
つのレバーが同時に操作モードに入ることはなく,誤操作を防止し,テープに対する安全性を高めていま
した。
テープカウンターの下には,赤LEDによるテープストップインジケーターが設けられていました。PLAY,
REC,早巻き時にテープが巻き終わるとオートエンドストップ機構が働いてメカニズムが解除され,点滅
するようになっており,操作レバーは解除されないため,どのモードで停止したか一目でわかるようになっ
ていました。また,定速走行レバーがPAUSE状態のときにもインジケーターが点滅し,録音スタンバイ状
態にあることを知らせるようになっていました。

録再ヘッドは,HD(ハイ・デンシティ)フェライトヘッドを搭載していました。このヘッドは,厳選したフェライト
を素材
に超精密ダイヤモンドカッターで高精度加工されたもので,ギャップの直線性が良く,クロストーク
が少なく,高域
に至るまで位相特性のすぐれたヘッドでした。また,テープと接触するコアー部は前面フェ
ライトで覆われたハイパ
ーボリック(双曲線)形状で,コンターエフェクトが少なく,鏡面仕上げにより安定し
たヘッドタッチを実現していました。



A-400は,カセットテープを横向きに立ててセットし,横開き方式のメカニズムで,前面操作の重ね置き
可能なコンポーネントスタイルを実現していました。イジェクトレバーを軽く横に引くだけでカセットホルダー
は45°に開き,カセットテープが簡単に出し入れできるようになっていました。カセットホルダーの窓も大
きくとられ,カセットテープのラベルも見やすく,テープの残量も下地板のランプにより,一目で確認できる
ようになっていました。
また,カセットホルダーは最大90°まで開き,操作レバーをPLAYの状態にするとヘッド周りが前方にくり
出され,クリーニングや消磁などのメインテナンス作業もしやすくなっていました。

テープセレクターは,バイアス,イコライザー独立で,1,2の2段切換で,クロームテープの録再にも対応し
ていました。ノイズリダクションとして,ドルビーが搭載されていました。

レベルメーターは,ワイドなスケールをもつVUメーターが前面に搭載されていました。さらに,+6dB以上
で点灯
するピークレベルインジケーターが搭載され,急激なレベルオーバーも表示できるようになってい
ました。

入力は,ライン入力に加え,前面パネルにマイク入力が装備されていました。マイク入力は,マイクアンプ
を他の回路と切り離し,専用アンプとして独立させており,オープンリール並みのダイナミックレンジを確保
していました。ライン入力とマイク入力は,入力切換機構で切り換えて使うようになっており,ミキシングは
できない仕様となっていました。

以上のように,A-400は,ティアックの持ち前のオープンリールデッキで培った技術やノウハウが生かさ
れたコンポーネントスタイルのカセットデッキでした。前面操作を実現したスタイル,合理的な操作系など,
使いやすい設計は,ティアックのすぐれたデッキ技術を感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



使いやすさを重視した前面操作型カセットデッキ

◎軽いタッチのロータリー・ツインレバー
●クイックレコーディング
●誤操作防止設計

◎45°-90°横開きのカセットホルダー
●カセットの出し入れが簡単
●メインテナンスが容易

◎テープの巻き終わりを知らせる
 テープストップインジケーター
◎LED(発光ダイオード)を使用した
 ピークレベルインジケーター
◎ワウ・フラッター0.08%を実現した
 高精度メカニズム(FGサーボDCモーター採用)
◎ダイナミックレンジの広いマイク専用アンプ
◎バイアス,イコライザー独立切換機構
◎耐摩耗性にすぐれたHDフェライトヘッド
◎テープヒス(テープ雑音)を減少させる
 ドルビーシステム
◎ドルビー効果をさらに発揮させる
 マイク/ライン入力切換機構




●仕様●

トラック形式 4トラック・2チャンネル
使用テープ C-60,C-90カセットテープ
テープ速度 4.8センチ
モーター FGサーボ・DCモーター
ワウ・フラッター(WRMS) 0.08%
早巻時間 C-60テープで100秒以内
周波数特性(総合) 30~16,000Hz(クロームテープ)
30~13,000Hz(ハイファイテープ)
SN比(3%THDレベル,WTD) 50dB
(ドルビーシステムにより録音・再生において
1kHzで5dB,5kHz以上で10dBの雑音低減が可能)
入力 マイク:0.25mV/-72dB(適合マイクロホン600Ω以上)
ライン:60mV(入力インピーダンス50kΩ)
出力 ライン:0.775V(負荷インピーダンス50kΩ以上)
ヘッドホン:8Ω
外形寸法 155H×440W×285Dmm
重量 6.0kg
※本ページに掲載したA-400の写真,仕様表等は1975年6月
 のTEACのカタログより抜粋したもので,ティアック株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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