A-7の写真
YAMAHA A-7
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥89,000

1980年に,ヤマハが発売したプリメインアンプ。パワーアンプB-6,プリメインアンプA-6に次ぐ,X電源搭載
アンプの第3弾で,プリメインアンプとしては,A-6の上級機として発売された,X電源搭載プリメインアンプの
第2弾でした。

A-7最大の特徴は,電源部に,ヤマハ自慢の「X電源」が搭載されていたことでした。この「X電源」は,交流の
通電位相角を制御(Phase Angle Control)することによって交流電力をコントロールするTRIAC素子をトラ
ンスの一次側に挿入し,電圧比較増幅器が二次側の出力直流電圧と比較した情報をフォトカプラでTRIACの
ゲートに高速にフィードバックし,二次側の出力電圧を一定に保つという,一種のスイッチング電源でした。電
源周波数に同期して,TRIAC素子が電源トランスに入力する電流をスイッチング制御し,常に大電流をトラン
スに流しっぱなしにするのではなく,必要に応じて通電する仕組みになっていました。その結果,通常より小型
(従来の1/2以下)のトランスでも,大電力伝送が可能になり,高いレギュレーションが得られるというものでし
た。また,X電源は,それまでのスイッチング電源より回路が非常にシンプルで,信頼性が高められており,20
kHz〜80kHzといった高周波を使わないため,雑音特性も改善されていました。このX電源の搭載により,従
来のプリメインアンプでは見られなかった,メインアンプ出力段までの定電圧化を実現していました。

A-7の内部

基本的な回路構成は,「ピュアカレントサーボアンプ方式」を採用したイコライザアンプ→ハイゲインDCパワーア
ンプというシンプルでハイゲインな構成で,ここに必要に応じて0dBゲインのトーンコントロールや多様なコントロ
ール機能が挿入されるようになっていました。

イコライザーアンプは,ローノイズデュアルFET差動カスコードブートストラップカレントミラー負荷の初段→カス
コード増幅,定電流負荷のプリドライブ段→SEPP出力の出力段という構成で,これに,新開発の「ピュアカレン
トサーボアンプ方式」が採用されていました。これは,電源が音質に影響を与えないために,信号電流が電源
部やアースラインに全く流れないようにしたもので,電源ラインには,信号に関係なく常に一定の電流を流して
おくという方式で,電源部や配線,電流変化による非直線性など給電系の影響を受けにくくなるというものでし
た。また,イコライザーアンプは,ハイゲインタイプで,ゲインの切換によりMCカートリッジに対応し,MC入力
時にもSN比71dB(250μV)歪率0.006%(MC→REC OUT・20Hz〜20kHz)というすぐれた特性を実
現していました。
PHONO入力は2系統あり,PHONO1は,負荷インピーダンス100Ω,33kΩ,47kΩ,100kΩの4段切
換が搭載されており,PHONO2は47kΩ専用となっていました。

メインアンプは,ローノイズデュアルFET差動入力+カスコードブートストラップ+能動負荷の初段→差動+カ
スコード増幅+カレントミラー負荷のプリドライブ段→3段ダーリントン接続の出力段というDC構成で,入力感
度が150mVに設定され,通常のパワーアンプに比べて約16dB以上もゲインが高いハイゲインメインアンプ
となっていました。このため,温度的特性においてもよく揃ったFETを1つのパッケージに収めたローノイズデュ
アルFETの採用など,中心電圧のドリフトへの注意もより払われた設計となっていました。また,X電源の搭載
により,一般的な電源では難しかった出力段での定電圧化も実現され,120W+120Wのハイパワーを安定
して取り出せるようになっていました。さらに,B級動作時のスイッチング歪なども,fTが高くリニアリティにすぐれ
た素子の採用により,皆無に近いほどに抑えられていました。

A-1以来のA一桁シリーズに共通するイメージのパネルデザインは,ヤマハらしさを感じさせるもので,「POW-
ER」,「MAIN DIRECT」,「DISC]の3つのスイッチは自照式スイッチで,先行発売されたA-6と共通点の多
いものでした。機能的にはA-6同様に多機能で,各種コントロール類をジャンプしてメインアンプにダイレクトに
信号を送る「MAIN DIRECT」スイッチ,インプットセレクタの位置に関係なくアナログディスクを再生できる「DI-
SC」スイッチ,あらかじめセットすることでアンプのピークパワーレベルを確認できる「LISTENING LEVEL M-
ONITOR」など,ヤマハのA-1桁シリーズに特徴的な機能も搭載されていました。また,専用のボリュームを設
けて低域・高域の補正量を調整できるコンティニュアス・ラウドネスや,演奏中のプログラムに関係なく録音出力
信号を選べるレックアウトスイッチなど,使いやすい機能が過不足無く搭載されていました。
トーンコントロールは,高精度のオペアンプを使用した新設計のヤマハ方式トーンコントロールで,それまでのも
のに比べてコントロールカーブが非常に精密で素直な特性となっていました。トーンコントロール回路は0dBゲイ
ンに設計されており,信号経路から切り離してもゲインの変化は起きないようになっていました。さらに,トーンコ
ントロールやフィルター類を操作したときの音質劣化を抑えるために,高精度オペアンプによるフラットアンプを
メインアンプとの緩衝用に搭載していました。BASS,TREBLEとも可変幅±9dB,ターンオーバー周波数2段
切換となっていました。

以上のように,A-7は,X電源搭載プリメインアンプ第2弾として,よりハイパワー化,高性能化が図られ,ヤマ
ハらしいスマートで洗練されたイメージの筐体に大出力を備えた高性能な1台となっていました。力強さとさわや
かな中高域を持った音もヤマハの個性を感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新発想のX電源により実現した,凄い低音をともなった
120W+120Wのハイパワーと,音楽がどこまでも純
粋なピュアカレントサーボイコライザのハイクオリティに
オーディオセンターとしての機能を満載したプリメイン



●A-7の主な規格●

実効出力 8Ω・20Hz〜20kHz・0.007%  120W+120W
パワーバンド幅 8Ω・60W・0.002%  10Hz〜50kHz               
ダンピングファクター 55(1kHz,8Ω)
入力感度/インピーダンス PHONO  MC:160μV/100Ω
PHONO  MM:2.5mV/100Ω,33kΩ,47kΩ,100kΩ
TUNER,AUX,TAPE:150mV/47kΩ 
最大許容入力 PHONO MC     15mV
PHONO MM    250mV
出力/出力インピーダンス REC OUT  150mV/600Ω
ヘッドホン出力/インピーダンス
0.89V/8Ω・0.01%
周波数特性 AUX・TAPE・TUNER  20Hz〜20kHz  +0,−2dB
RIAA偏差 PHONO MC 20Hz〜20kHz ±0.3dB
PHONO MM 20Hz〜20kHz ±0.2dB
全高調波歪率 0.006%(PHONO MC→REC OUT 7V) 
0.003%(PHONO MM→REC OUT 10V) 
0.005%(TUNER,AUX,TAPE→SP  OUT・60W)
混変調歪率 AUX・TAPE・TUNER 120W・8Ω 0.002%
MAIN DIRECT ON   1W・8Ω 0.01%
SN比(IHF-A net work) 71dB(PHONO MC 入力ショート 250μV基準) 
87dB(PHONO MM  入力ショート 2.5mV基準) 
103dB(TUNER,AUX,TAPE 入力ショート)
入力換算雑音(IHF-A) PHONO MC 0.03μV
PHONO MM  0.1μV
残留ノイズ(IHF-A net work) PHONO(MM):−139dBV
PHONO(MC):−143dBV
チャンネルセパレーション 1kHz・Vol−30dB・5.1kHz
PHONO(MM):70dB
PHONO(MC):70dB
AUX・TAPE:70dB
トーンコントロール特性 ターンオーバー周波数
 BASS   125Hz,500Hz
 TREBLE 2.5kHz,8kHz
最大可変幅
 BASS   ±10dB (20Hz/500Hz)
 TREBLE ±10dBz(20kHz/2.5kHz)
フィルター特性 サブソニックフィルタ 15Hz 12dB/oct
ハイフィルタ      10kHz  12dB/oct
コンティニュアスラウドネスコントロール
最大補正量
20dB(聴感補正カーブによる 1kHz)
スルーレイト 200V/μsec
定格電源電圧・周波数 AC 100V・ 50/60Hz
定格消費電力 215W
ACアウトレット SWITCHED×2    100W max
UNSWITCHED×1  100W max
寸法 435W×133H×365Dmm
重量 10.3kg


A-7aの写真
YAMAHA A-7a
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥96,000

1982年に,A-7はA-7aにモデルチェンジされました。基本的な回路構成,機能等はほぼ受け継がれデザ
イン的にも見分けが付かないほどほぼ同一といえるものでしたが,新開発の歪み低減回路が搭載されるなど
内容的にぐんと強化されていました。

A-7aの最大の改良点であり特徴は,ZDRという歪み低減回路の搭載でした。ZDRはZero Distortion Rule
の略で(訳すと歪みゼロの法則!)ヤマハが開発した歪み低減方式でした。当時,出力の一部を逆相にして入
力側に戻すことで歪みを低減するNFB方式の害悪が盛んに言われ,各社NFB以外の歪み低減方式を盛ん
に発表していきました。これらの方式の基本的な考え方はアンプの入力信号と出力信号を比較して歪み成分
を検出し(入力信号と出力信号を同じレベルで逆相加算することで検出)これを別のアンプで増幅して出力側で
逆相にして加えることで歪み成分をキャンセルするというものでした。ヤマハのZDRの場合は,歪み検出回路
がブリッジ接続され,リアルタイムで検出した歪み成分を入力電圧に同じレベルで同相で加えることによりあら
ゆる歪みをゼロにするとうたっていました。
A-7aでは,出力段の終段にこのZDRを搭載し,オーバーオールにはNFBが安定してかけられ,すぐれた特
性を実現し,音の方もより歪み感の少ないスムーズなものとなっていました。

以上のように,A-7aは,A-7をベースにより強化され,中級プリメインアンプとして充実した1台となっていまし
た。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ほとばしる量感と澄んだ質感が
飛躍的な音楽表現力を生んだ


◎シンプルでマニアライクな基本構成
◎ピュアカレントサーボ・イコライザアンプ
◎ZDR搭載・ハイゲインメインアンプ
◎大電力伝送・高効率X電源

●ターンオーバー周波数切換式トーンコントロール
●コンティニュアスラウドネス
●ディスクダイレクトスイッチ



●主な規格●

実効出力 20Hz〜20kHz・8Ω 120W+120W
全高調波歪率 PHONO MM→REC OUT 5V 20Hz〜20kHz 0.003%
PHONO MC→REC OUT 5V 20Hz〜20kHz 0.006%
パワーバンド幅 10Hz〜100kHz(8Ω・60W・0.02%)
周波数特性 MAIN DIRECT ON:10Hz〜100kHz+0,−2dB
SN比 PHONO MM  87dB
PHONO MC  71dB
TUNER     106dB
最大許容入力 PHONO MM  250mV
PHONO MC   15mV
RIAA偏差 MM→REC OUT:20Hz〜20kHz +0.2dB
MC→REC OUT:20Hz〜20kHz +0.3dB
入力感度/入力インピーダンス PHONO MM   2.5mV/47kΩ標準(200pF)
PHONO MC   60μV/10Ω
TUNER・AUX・TAPE 200mV/47kΩ  
トーンコントロール BASS   ±10dBat20Hz
TREBLE  ±9.5dBat20kHz
フィルター特性
12dB/oct・10kHz
ACアウトレッツ SWITCHED 2個 Total 100Wmax
UNSWITCHED 1個 100Wmax
定格電圧・周波数 AC100V・50/60Hz
定格消費電力 215W
外形寸法 435W×132H×365Dmm
重量 10.6kg

※本ページに掲載したA-7の写真,仕様表等は,1980年9月
 1982年10月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,
 ヤマハ株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真
 等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
 でご注意ください。

 

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