A-7400RXの写真
TEAC A-7400RX
2TRACK MASTER RECORDER ¥398,000

1975年にティアックが発売したオープンリールデッキ。当時,ティアックはテープデッキを
初めとする磁気記録製品に高い技術を持つメーカーとして,数多くのオープンリールデッキ
の製品ラインナップを持ち,その中で,最も高性能を誇るいわゆる「2トラ38」の「2トラック
マスターレコーダーシリーズ」を展開していました。その中でも頂点にあったのがA-7400RX
でした。

走行系は,キャプスタンモーター1,リールモーター2の3モーター構成で,モーターのシャフ
トがそのままキャプスタンとなるダイレクトドライブ方式が採用されていました。キャプスタン
モーターは,DCサーボ電子整流子モーターが搭載されていました。DCサーボ電子整流子
モーターは,24Vで駆動され,サーボ検出回路によって回転が無接触で電子的に制御され
低ノイズ,低振動で安定した回転を実現していました。リール駆動用には,振動の少ないエ
ディカレントインダクションモーターが搭載されていました。

テープ走行部は,業務用機器等の技術が生かされた安定性の優れたもので,高い信頼性
を誇りました。滑らかなテープ走行のために,ダイナミックバランスのすぐれたインピーダン
スローラーが搭載され,慣性エネルギーによってテープの走行ムラやワウ・フラッターが吸
収されるようになっていました。また,オイルダンプ式のテンションアームが搭載され,安定
したテープテンションとスムーズなテープテンションの立ち上がりを実現し,安定したヘッドタ
ッチとテープの切らないように保護する機能を確保していました。テープの巻き付け角を一
定に保つ構造のこのテンションアームとはカウンターローラーが組み合わされ,テープの走
行ムラを抑えるようになっていました。
また,テープ速度は,±5%の範囲で変えられるピッチコントロールも装備されていました。

A-7400RXのヘッド部

ヘッドは,2トラック録音ヘッド,2トラック再生ヘッド,4トラック再生ヘッド,フルトラック消去ヘ
ッドの4ヘッド構成で,録音ヘッド,再生ヘッドは高硬度パーマロイヘッドが採用されていまし
た。
テープ走行系で重要な働きをするインピーダンスローラー,テンションアーム,ヘッドなどは,取
付精度を高めるために高精度加工された経年変化の少ないダイキャストベースに取り付けられ
メカニズムの高い安定度を確保していました。

テープ走行メカニズムの動作は,リレーなどの機械的接点によらず,ICロジック回路によりコン
トロールされ,信頼性の高い操作が可能となっていました。そして,キーボードスイッチによるス
ムーズでソフトな操作感とFFやREWから直接PLAYへ,FFからREWへと自由に操作できるダ
イレクトファンクション方式が実現されていました。

A-7400RXの最大の特徴として,民生用のオープンリールデッキとして初めてdbxシステム・タ
イプ1を搭載していたことがありました。アメリカ・マサチューセッツ州にあるdbx社が開発したdbx
システムは,対数圧縮・伸張を1:2で行うことにより,100dB以上のダイナミックレンジを実現す
るデシリニア・ノイズリダクションシステムの通称で,非常に強力な効果を誇るものでした。それだ
けにテープデッキの電気的・機械的性能が求められ,ベースモデルとなったA-7400をもとに,ト
ランスポート部とアンプ部が分離したセパレート構成がとられ,設計上,より高い性能と余裕度が
確保されていました。内部構造は,ぎっしりとつまった回路基板に圧倒されるものでした。

A-7400RXの内部

入力は,MICが4系統で,L・Rとも2系統ずつのマイクが使用でき4本のマイクによる2チャンネル
ミキシング録音ができるようなっていました。また,LINEもL・Rチャンネルそれぞれ2系統で,ライ
ン入力2系統のミキシング録音もできるようになっていました。また,MIC/LINEのミキシングも可
能となっていました。
マイクアンプは,供給電圧が45Vと高くとられ,NPN-PNPトランジスターのプッシュプル,さらにダ
イレクトカップリングと組み合わせて,ダイナミックマージンが改善された単体ミキサーと同等の性
能が実現されていました。マイク入力には,−20dBのL・R独立したアッテネーターが装備され,大
入力にも対応していました。

オープンリールデッキらしく,早送りの状態でキューレバーを押し下げると音がモニターできるキュー
イング機構,ONにしてPLAY操作をするとテイクアップリールが止まったままテープが送り出される
エディット機構,開閉式のヘッドハウジングなど編集に便利な機能が装備されていました。
レベルメーターは,−40dB〜+5dBのスケール範囲,応答時間10msecのピークレベルメーター
が装備されていました。テープカウンターも,テープの走行量を分・秒の単位で読みとれるリニアカ
ウンター(精度±1.5%以内)が装備されていました。

以上のように,A-7400RXは,当時のティアックのオープンリールデッキのトップモデルとして,安
定性を重視した手堅い作りと,dbxに代表される先進的な部分がうまくバランスされ,使う楽しさと
安心感あふれる1台でした。その余裕ある安定した音はまさに高性能な2トラ38機らしいものでし
た。

A-7400の写真
TEAC A-7400
2TRACK MASTER RECORDER ¥298,000

A-7400RXは,前年の1974年に発売されたA-7400をベースにしたモデルでした。A-7400
は,ほぼよく似た仕様を持った一体型モデルで,dbxは内蔵されていませんでした。しかし,基本
性能は同一ともいえるもので,優れた性能を持つ2トラ38デッキでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



100dB以上のダイナミックレンジを
実現したマスターレコーダー

◎100dB以上のダイナミックレンジを
 可能にした dbxシステム
◎dbxシステムの効果

  1.テープデッキのダイナミックレンジを100dB以上に拡大する。
  2.録音時に発生する高調波ひずみを抑え,音質を改善する。
  3.転写,クロストーク,ハムなどを除く。

◎テープ走行系
  ●ダイキャストベースのテープトランスポート
  ●インピーダンスローラーと
   オイルダンプ式のテンションアーム
  ●ヘッドスパン
  ●カウンターローラー

◎DCサーボ・ダイレクトドライブ・
  キャプスタンモーター
◎ダイレクトファンクションの
  ICロジックコントロール
◎ピークを表示するピークレベルメーター
◎マイク/ライン入力4系統
◎マイクアンプ
◎マイクアッテネーター
◎レコードマスターボリューム
◎クリックストップ付きのメモリーマーカー
  (入力ボリューム)
◎キューイング機構
◎エディット機構
◎開閉式のヘッドハウジング
◎ピッチコントロール
◎時間を表示するリニアカウンター

●高硬度パーマロイヘッド
●dbxエンコード出力端子
●dbxデコードコピー機構
●マルチプレックスフィルター
●バイアス,イコライザー独立3段切換のテープセレクター
●リアルタイムポーズ
●4トラック再生ヘッド装備
●正確な規準レベルでクリックストップするアウトプット
  ボ リューム
●巻き戻し時にカウンターのプリセット位置で停止する
  メモリーオートストップ
●タイマー録音・再生機構(別売)
●フルリモートコントロール機構(別売)





●仕様●

 
A-7400RX
A-7400  
トラック形式
2トラック・2チャンネル&
4トラック2チャンネル再生
2トラック・2チャンネル&
4トラック2チャンネル再生
ヘッド

リール
26,17形
26,17形
テープ速度
38,19センチ
38,19センチ
モーター


ワウ・フラッター(wrms)
0.04%(38センチ)
0.05%(19センチ)
0.04%(38センチ)
0.05%(19センチ)
周波数特性(総合)
25〜30,000Hz(38センチ)
25〜28,000Hz(19センチ)
25〜30,000Hz(38センチ)
25〜28,000Hz(19センチ)
SN比
(3%THDレベル,WTD)
60dB,100dB(dbx IN)
60dB
ひずみ率(規準レベル)
0.8%,0.4%(dbx IN)
0.8%
ステレオ・チャンネル
セパレーション
50dB,70dB(dbx IN)
50dB
入力
マイク:0.25mV/−72dB
(適合マイクロホン600Ω以上)
ライン:0.1V
(入力インピーダンス50kΩ)
マイク:0.25mV/−72dB
(適合マイクロホン600Ω以上)
ライン:0.1V
(入力インピーダンス50kΩ)
出力
ライン:0.3V
(負荷インピーダンス10kΩ以上)
ヘッドホン:8Ω
ライン:0.775V
(負荷インピーダンス10kΩ以上)
ヘッドホン:8Ω
外形寸法
470W×455H×300Dmm
470W×205H×310Dmm
470W×548H×246Dmm
重量
27.5kg(トランスポート)
12.5kg(アンプ)
28kg

※本ページに掲載したA-7400RX,A-7400の写真,仕様表等
 は1976年6月のTEACのカタログより抜粋したもので,ティ アック
 株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
 で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意くだ
 さい。 

   
 
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