NIKKO A-800
PRE-MAIN AMPLIFIER ¥69,800
1975年に,ニッコー(現日幸電機製作所)が発売したプリメインアンプ。ニッコーは,1935年に
創業した配線用遮断器(サーキットブレーカー)のメーカー・日幸電機製作所のオーディオブランド
で,1962年に,日本初のオールトランジスタステレオアンプをオーディオフェアで発売するなど,
当時すぐれたオーディオ機器を発売していました。一時日幸電子として分社化して力を入れてい
た時代がありました。そんなニッコーが,激戦区ともいえる価格帯に投入したプリメインアンプの
主力モデルがA-800でした。
イコライザー部は,初段に新開発のPNPトランジスタ1石,2段目にFET,終段には高耐圧でコレ
クター損失の大きなNPNトランジスタ1石を配した3段直結NF型イコライザー回路を採用していま
した。高精度なパーツの使用とあいまって,最大許容入力300mV(RMS)と広いダイナミックレ
ンジを確保しつつ,RIAA偏差0.5dB以内(20Hz~20kHz)という精度を実現していました。
メインアンプ部は,2段差動増幅付き全段直結OCLピュアコンプリメンタリ回路が採用されていま
した。特に,初段の2段差動増幅回路には,ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)を使用し,温
度補償を完全なものとして,安定した動作を確保していました。
実効出力は,20Hz~20kHzにおいて,60W+60W(両Ch駆動時)を実現し,ミュージックパ
ワーでは,180W(IHF,8Ω)を,0.3%以下という全高調波歪率で実現していました。
電源部は,大型の電源トランスを核に,10,000μFの大容量平滑コンデンサー2本搭載した
強力なもので,電源電圧の変動にも安定した電源部が,大出力を支えていました。
トーンコントロールは,2段直結による低インピーダンスの変型BAX回路を採用したNF型トーン
回路で,TREBLE,BASS独立型となっていました。BASSは250Hz,500Hz,TREBLEは
5kHz,2.5kHzのターンオーバー切換えが可能となっており,トーン回路をパスするDEFEAT
ポジションも装備されていました。
機能的には,オーソドックスながら比較的多機能となっていました。フィルターとして,周波数切換
付き(SUBSONIC=8Hz,50Hz)-3dB・12dB/octのローフィルター,ハイフィルター(7kHz
12kHz)-3dB・12dB/octが装備されていました。その他,ラウドネス,-20dBのミューティング
が装備されていました。
入力は,PHONO2系統,TUNER,AUX2系統,TAPE2系統が装備され,TAPEは,RCAピンと
DINの端子が装備されていました。TAPE2は,フロントパネルにも入・出力が装備されていました。
PHONO2は,負荷インピーダンスが25kΩ,50kΩ,100kΩに切換可能で,2系統のTAPE入
出力は相互ダビングが可能となっていました。
さらに,プリアンプ部とメインアンプ部は,切り離しスイッチが設けられており,マルチアンプとしての
使用やセパレートアンプとの組み合わせなど,独立しての使用が可能でした。
スピーカー出力は,A,B,Cの3系統装備され,A+B,B+C,A+Cでの出力も可能でした。
以上のように,A-800は,当時,オーディオにおいてはどちらかといえばマイナーな新興ブランドで
あったニッコーが,奇をてらわずオーソドックスにきちんとまとめ上げたアンプでした。それだけに,
使い勝手や音の面でもバランスがとれており,価格以上の内容を持つコストパフォーマンスにすぐ
れた1台となっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
NIKKOからNIKKOへ快心の作。
性能対価格比の常識を
完全にくつがえしました。
◎イコライザー部
初段に,新開発PNPトランジスタ1石,2段目にFET,終
段には高耐圧でコレクター損失の大きなNPNトランジスタ
1石を配した3段直結NF型。
◎メインアンプ部
全帯域にわたってクリアでデリカシーに富んだ再生音を
実現するピュアコンプリメンタリーOCL回路を採用。
◎保護回路
純電子式に加えて,万全をきしたリレーとヒューズの
併用。
◎フィルター部
ローフィルタ,ハイフィルタとも周波数切換え付き。
◎トーンコントロール部
2段直結による低インピーダンスの変型BAX回路を採
用。
◎電源部
大出力を完璧に保証するぜい沢すぎる程の電源部。
◎ファンクション
●TAPE2系統は,それぞれRCA端子とDIN端子を用
意。
●TAPE-1-2の相互ダビング操作が可能です。
●PHONO端子は2系統の端子を用意。
●スピーカー切換えは,A,B,Cの3系統。
●主な定格●
形式 | ソリッドステート・ステレオ・プリメインアンプ |
回路形式 | (メイン部)2段差動増幅付全段直結OCLピュアコンプリメンタリ方式 (プリ部)3段直結NF型イコライザ及び2段直結NF型トーン回路 |
使用石 | トランジスタ46,FET2,ダイオード11,ゼナーダイオード5 |
メインアンプ部 | |
ミュージックパワー(IHF) | 180W(8Ω) |
定格実効出力 | (片ch動作時)70W/70W(8Ω,1kHz) (両ch動作時)65W+65W(8Ω,1kHz) (両ch動作時)60W+60W(8Ω,20Hz~20kHz) |
出力特性 | 20Hz~20kHz(-1dB,1%THD) |
周波数特性 | 10Hz~40kHz(±1dB) |
高調波歪率 | (定格出力時)0.3%以下 (1W出力時)0.1%以下 |
混変調歪率 | (定格出力時)0.3%以下 (1W出力時)0.1%以下 |
プリアンプ部 | |
入力感度/インピーダンス | PHONO1:2.5mV/50kΩ PHONO2:2.5mV/25kΩ,50kΩ,100kΩ TUNER:180mV/100kΩ AUX1,2:180mV/100kΩ TAPE1,2:180mV/100kΩ |
S/N比 | PHONO1,2:65dB 他 :80dB |
最大許容入力 | PHONO(1kHz):300mV(RMS) |
RIAA偏差 | ±0.5dB(20Hz~20kHz) |
トーンコントロール | BASS:250Hz,DEFEAT,500Hz TREBLE:5kHz,DEFEAT,2.5kHz |
ラウドネス | 70Hz +10dB 10kHz +5dB |
フィルタ | LOW(OFF,SUBSONIC(8Hz),50Hz) HIGH(7kHz,OFF,12kHz) |
ミューティング | -20dB |
総合 | |
電源電圧 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 145W(定格出力時) |
外形寸法 | 455W×151H×345Dmm |
重量 | 12.5kg |
※本ページに掲載したA-800の写真,仕様表等は1975年の
NIKKOのカタログより抜粋したもので,日幸電機製作所に著作
権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等
することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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