ONKYO A-808
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥85,000
1978年に,オンキョーが発売したプリメインアンプ。この年に,オンキョーは,プリメインアンプのDCアンプ
化の流れの中で,サーボ技術を全面的に導入し発展させた,プリメインアンプの新しいシリーズのトップバッ
ターとしてA-808を発売しました。

A-808の大きな特徴は,「スーパーサーボ方式」の搭載にありました。当時,信号系のカップリングコンデン
サーを取り除き直結化するDCアンプが主流となっていましたが,DCドリフトによるDC洩れ,低域の過渡特
性の問題などがありました。オンキョーの独自開発のサーボオペレーショナルアンプを搭載することで,こう
した問題の解決を図り,音質の向上を目指したのが「スーパーサーボ方式」でした。「スーパーサーボ方式」
では,NFループとは別に,低域アンプと位相反転回路を組み合わせたサーボループで構成されており,カッ
トオフ周波数(1Hz)以下をサーボオペレーション回路によって完全にシャットオフしてしまうというものでした。
これにより,アンプの内部で発生する有害な超低域成分はもとより,スピーカーからアンプへ流れ込む低い
周波数の逆起電力も抑えこむことができ,アンプの特にバイアス面での動作が安定し,低域混変調による
音の劣化を低減していました。また,従来のDCアンプの宿命でもあったドリフトによりスピーカー出力部に
直流電圧が発生するDC漏れも,パワーアンプがハイゲインになったにもかかわらず低く抑えられていまし
た。

プリアンプ部は,上述の「スーパーサーボ方式」を用いて充分に余裕をみて2Hz以下の超低域をスムーズ
にカットしたプリアンプとなっていました。モノリシックアンプによるサーボオペレーションを行うことにより,プ
リアンプの入口から出力までの全段を通じて信号系(カップリング及びNFループ)には,一つのコンデンサー
も存在しないDCアンプを実現していました。
PHONO入力は2系統装備され,負荷インピーダンス・47kΩと100kΩの2段切換が装備されていました。
PHONO以外の入力は,TUNER,AUX,TAPE2系統が装備されていました。さらに,この5系統の入力
切り換えに加え,別に録音ソースを選択でき,TAPE1・2の相互ダビングもできるREC SELECTORも装
備されていました。

パワーアンプ部は,ハイGmモノリシックデュアルJ-FET+カスコードブートストラップ回路+カレントミラー
プッシュプル+エミッタフォロアバッファ+定電流負荷A級プリドライバ+3段ダーリントンシングルプッシュプ
ル出力という回路構成がとられ,歪率を抑えながらパワーゲインを20dBアップしていました。さらに,サー
ボオペレーショナルアンプを用いた「スーパーサーボ方式」により,ゲインアップにもかかわらずDCドリフト
も従来のアンプよりも小さく抑えていました。
そして,パワーアンプには,バイアス固定の独自の「リニアスイッチング方式」を搭載していました。当時,国
産アンプの世界では,可変バイアスによる疑似A級増幅方式が流行していましたが,「リニアスイッチング方
式」は,基本回路としてはトランジスタ2個1組によるAB級動作ですが,クロスオーバー歪みを,バイアスを
可変するのではなく,特殊な補正回路で2つのパワートランジスターの動作特性のつながる部分を,バイア
スを補正してつなぎ目のないリニアな1本の動作特性となるようにする方式でした。さらに,スイッチング歪み
に対しては,スイッチング速度の速いHIGH fTパワートランジスターを使用して低減していました。
さらに,ローレベル信号の再生に大きな影響を与えるバイアス電流値を安定に保つための「オートトラッキン
グ・バイアス方式」が採用されていました。これは,プリドライバー,ドライバー,出力段の3ポイントセンシン
グバイアス回路を搭載し,連続的な大振幅動作からピアニシモの再生に移った場合の,ドライバーとパワー
トランジスタの温度差に起因するバイアス変動を防止し,安定した低歪率駆動を確保していました。

電源部は,大型の電源トランスが搭載され,100kHzの超高域までローインピーダンスを保持する低ESR
(等価直列抵抗)の電源コンデンサーと組み合わされ,全回路にわたってアースライン内の電位差を抑える
ブスアース(母線)方式が採用されていました。さらに,プリ部専用の定電圧電源から,マルチプレイブスライ
ンによって,イコライザと各ブランチを直結する直結給電方式が採用されていました。こうした構成により,同
一チャンネル内及び左右チャンネル間の相互干渉を防ぐとともに,スーパーサーボ方式とあいまって,すぐ
れた低域の立ち上がりと,余裕あるピークパワーを確保していました。



トーンコントロールには,新開発の「ダイレクト・トーン方式」が採用されていました。これは,スーパーサーボ
方式によりパワーアンプのハイゲイン化が可能となったことを利用してトーンアンプを省略したものでした。通
常プリメインアンプのトーンコントロールは,イコライザアンプとパワーアンプの間に挿入され,トーンアンプは
トーンコントロールを一杯にブーストする場合に備えて40dBほどのゲインを持つようになっていました。しかし
このブースト時だけに使われるゲインやトーン回路の後にインピーダンス変換器的なはたらきバッファアンプ
が必要になるため回路の複雑化や音質への影響などの問題点がありました。「ダイレクト・トーン方式」は,
トーンコントロール特性は,ボリュームコントロールと関連したラウドネス回路で行われるようになっており,ト
ランジスタ等のアクティブ素子は全く必要とせず,パッシブな素子だけで構成されたもので,信号の経路内に
はコンデンサも存在せず,トーンコントロールの音質への悪影響が抑えられた方式でした。トーンコントロー
ルはBASS,TREBLE独立で,TREBLEは,絞りきった状態にすると自動的に7kHz・6dB/octのハイカッ
トフィルターに切り替わるようになっていました。
ボリュームは,ガッチリしたダイキャストボディに封入された,マルチ摺動子をもつ低歪率アッテネーターで,
連続可変方式でトリミングレスというもので,電流集中作用による歪みもなく,その連動誤差は70dBまで
0.5dB以内という高精度が確保されていました。

入力セレクターやスピーカー切り換えといった,音質に関わるスイッチ類は,直接プリント基板に埋め込んだ
り,端子部のすぐ近くで切り換えるようにして,シールド線の引き回しに干渉によるS/Nやクロストーク,スピー
カー回路の抵抗分増加等による音質の劣化を抑えていました。また,PHONO入力のピンジャックはすべて
金メッキ処理が行われていました。

以上のように,A-808は,中級機ながら,当時の新しい技術をしっかり投入し,正攻法でつくられたプリメイ
ンアンプでした。帯域バランスのとれたやわらかさを感じさせる音は,音楽を安心して聴ける良さをもってい
ました。これ以降,こうした基本設計を発展させた上級機A-810が発売されるなど,インテグラシリーズは
プリメインアンプで,すぐれたアンプをシリーズ化し,展開していくことになりました。
また,A-808には,ほぼ同一構成の弟機A-805が発売されました。出力が小さい,AUX入力,ハイフィル
ター,PHONO負荷インピーダンス切り換えが省かれているなどの他は,回路構成などもほぼ同一のもの
で,コストパフォーマンスにすぐれたエントリーモデルとなっていました。


ONKYO A-805
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥65,000


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



クオリティに徹して,
完全コンデンサレスへの挑戦。
今,インテグラは,DCを越えて,
スーパーサーボ方式へ。

◎全段スーパーサーボ方式+ダイレクトトーンの
 プリ~メインダイレクト構成ニューインテグレーテッドアンプ。
◎全段オペレーショナル方式による
 スーパーサーボイコライザアンプ
◎ハイゲイン,スーパーサーボパワーアンプを搭載
◎AB級を越えて,A級に迫るリニア・スイッチング方式
◎新開発オートトラッキングバイアス方式
◎精密アッテネータ
◎直結タイプのスイッチ類・金メッキ処理のPHONO端子
◎完備した各種保護装置
◎レコーディングセレクタ,カートリッジ負荷インピーダンス切換え,
 サブソニック2段切換えなど豊富なアクセサリー回路




●主要定格●

  A-808 A-805
定格出力 70W+70W
(20~20,000Hz 0.015% 両ch駆動8Ω)
50W+50W
(20~20,000Hz 0.015% 両ch駆動8Ω)
全高調波歪率 0.005%(PHONO MC→REC OUT 2V)
0.008%
 (TUNER→SP.out 定格1/2出力時 20Hz~20kHz)
0.005%(PHONO MC→REC OUT 2V)
0.008%
 (TUNER→SP.out 定格1/2出力時 20Hz~20kHz) 
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1) 0.01%(TUNER→SP OUT) 0.01%(TUNER→SP OUT) 
パワーバンドウィズス 10Hz~100kHz(IHF-3dB  THD0.2%) 10Hz~100kHz(IHF-3dB  THD0.2%) 
ダンピングファクター 90(1kHz 8Ω) 90(1kHz 8Ω) 
周波数特性 20Hz~20kHz/±0.2dB(PHONO→REC OUT/RIAA偏差) 
2Hz~100kHz+0dB,-1.5dB(TUNER→SP OUT)
20Hz~20kHz/±0.2dB(PHONO→REC OUT/RIAA偏差) 
2Hz~100kHz+0dB,-1.5dB(TUNER→SP OUT) 
入力感度/インピーダンス PHONO1,2:2.5mV/47kΩ,100kΩ 
TUNER:150mV/47kΩ
AUX:150mV/47kΩ
TAPE PLAY:150mV/47kΩ
PHONO1,2:2.9mV/47kΩ
TUNER:150mV/47kΩ

TAPE PLAY:150mV/47kΩ 
PHONO最大許容入力
(1kHz RMS0.05%)
280mV 230mV 
出力電圧/インピーダンス 150mV/2.2kΩ(TAPE REC1,2) 
1.5V/600Ω(PRE OUT)
150mV/2.2kΩ(TAPE REC1,2)
SN比(IHF-A ネットワーク) PHONO1,2:85dB以上 
TUNER・AUX・TAPE:100dB以上
PHONO1,2:84dB以上 
TUNER・AUX・TAPE:100dB以上 
トーンコントロール BASS 400Hz   ±8dB at70Hz 
TREBLE 7kHz   ±8dB at20kHz
BASS 400Hz   ±8dB at70Hz 
TREBLE 7kHz   ±8dB at20kHz 
ラウドネス +4dB/+6dB at100Hz +6dB at100Hz 
フィルタ SUBSONIC 15Hz/20Hz 6dB/oct 15Hz 6dB/oct 
ミューティング -20dB -20dB 
使用半導体 6IC,57Tr(6FET),33Di  2IC,45Tr(4FET),23Di  
電源 AC100V 50/60Hz  AC100V 50/60Hz
消費電力(電気用品取締法規格) 120W 90W 
ACアウトレット UNSWITCHED 1個 200W 
SWITCHED    2個 計200W
UNSWITCHED 1個 200W 
SWITCHED    2個 計200W 
寸法 435W×125H×385Dmm 435W×125H×385Dmm 
重量 
※本ページに掲載したA-808,A-805の写真,仕様表等は,1978年
11月のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等
することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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