A-810の写真
ONKYO A-810
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥145,000

1979年に,オンキョーが発売したプリメインアンプ。1978年に,オンキョーは,プリメインアンプのDCアンプ化の
流れの中で,サーボ技術を全面的に導入し発展させた,プリメインアンプの新しいシリーズA-808(¥85,000)
A-805(¥65,000)を発売しました。このシリーズの最上級機として各部を大幅に強化して登場したのがA-810
でした。

A-810の大きな特徴は,「スーパーサーボ」と称された各種サーボ技術を採用し,アンプの動作の安定化と高性能
化を図っていたことでした。1970年代には,アンプにおいて,NFループ内にコンデンサを配置しないDC化が大き
くクローズアップされ,各社が競うようにDC化を図っていきました。しかし,DCアンプにおいては,DC(ゼロヘルツ)
までカットされずに増幅される伝送系を持つため,スピーカーからの逆起電力,アンプ内で発生した低周波等により
発生する低域における混変調,あるいはDC洩れ等によるスピーカーへの悪影響等の問題も起きてきます。コンデ
ンサーやトランスを用いて低い周波数をカットすれば解決すれば音質の劣化を招き,場合によってはNFが不安定
になるなどの別の問題があり,DCアンプとはいえなくなります。その対策として登場したのがDCドリフト等を抑える
サーボという手法でした。オンキョーの「スーパーサーボ方式」では,NFループとは別に,低域アンプと位相反転回
路を組み合わせたサーボループで構成されており,カットオフ周波数(1Hz)以下をサーボオペレーション回路によ
って完全にシャットオフしてしまうというものでした。

パワーアンプには,この「スーパーサーボ」をさらに発展させた「W・スーパーサーボ」が採用されていました。これは
Wの名の通り,出力側の+,−両極からそれぞれ独立したサーボ帰還をかけることで,アンプ内部に発生する歪み
の要因を取り除くという方式でした。+側のサーボ回路は,DCアンプ内で発生する1〜2Hz以下のごく低い有害成
分を約40dB以上キャンセルし,DC洩れに対しても−100dB以上と高い抑圧効果をもたらしていました。−側のサ
ーボ回路は,入出力とアース間に生じたインピーダンスに発生する起電力を40dB以上抑圧する効果をもっていま
した。このようにアンプの出力側の両端をサーボコントロールするW・スーパーサーボのもつ歪み成分抑圧効果は
50倍以上の大きな電源の持つ安定性に匹敵するとうたわれていました。

当時,国産アンプの世界では,可変バイアスによる疑似A級増幅方式が流行していましたが,A-810はバイアス固
定の独自の「リニアスイッチング方式」を搭載していました。これは,基本回路としてはトランジスタ2個1組によるAB
級動作ですが,クロスオーバー歪みを,バイアスを可変するのではなく,特殊な補正回路で2つのパワートランジスタ
ーの動作特性のつながる部分を,バイアスを補正してつなぎ目のないリニアな1本の動作特性となるようにする方式
でした。さらに,スイッチング歪みに対しては,スイッチング速度の速いHIGH fTパワートランジスターの3段ダーリン
トン構成,ダブルプッシュプル使用により,可聴帯域内から排除するようになっていました。
パワーアンプには,さらに,バイアス電流値を安定に保つための「オートトラッキング・バイアス方式」が採用されてい
ました。これは,プリドライバー,ドライバー,出力段の3ポイントセンシングバイアス回路を搭載し,連続的な大振幅
動作からピアニシモの再生に移った場合の,ドライバーとパワートランジスタの温度差に起因するバイアス変動を防
止し,安定した低歪率駆動を確保しようとするものでした。

A-810は,プリメインアンプという形を生かすために,「デュアルダイレクト構成」と呼ぶシンプルな伝送系を採用して
いました。「デュアルダイレクト」と称するように,「MC-MMコンパチブル・バリアブルゲイン・イコライザ」と「ハイゲイン
パワーアンプ」だけの2アンプ構成で,シンプルな回路構成が実現されていました。
イコライザアンプは,MCカートリッジ使用時にも,ヘッドアンプや昇圧トランス等を必要としない,電流変換スーパーサ
ーボ方式による,ノンクリック・コンデンサレス・NF定数変換方式が採用され,すぐれた裸特性の3段差動アンプ等に
よりハイゲイン化が図られていました。また,イコライザ−・パワー部ともに裸特性のリニアリティ向上が図られており,
従来の1/10以下という低帰還が実現されていました。

トーンコントロールには,「ダイレクト・トーン方式」が採用されていました。これは,W・スーパーサーボ方式によりパワ
ーアンプのハイゲイン化が可能となったことを利用してトーンアンプを省略したものでした。通常プリメインアンプのトー
ンコントロールは,イコライザアンプとパワーアンプの間に挿入され,トーンアンプは,トーンコントロールを一杯にブー
ストする場合に備えて40dBほどのゲインを持つようになっていました。しかし,このブースト時だけに使われるゲイン
やトーン回路の後にインピーダンス変換器的なはたらきバッファアンプが必要になるため回路の複雑化や音質への
影響などの問題点がありました。「ダイレクト・トーン方式」は,トーンコントロール特性は,ボリュームコントロールと関
連したラウドネス回路で行われるようになっており,トランジスタ等のアクティブ素子は全く必要とせず,パッシブな素子
だけで構成されたもので,信号の経路内にはコンデンサも存在せず,トーンコントロールの音質への悪影響が抑えら
れた方式でした。この「ダイレクト・トーン方式」では,ある一定以上ボリュームを上げた際には,ブーストははたらかず
カットのみの動作になるようになっており,人間の聴感特性に応じたものともいえました。また,TREBLEコントロール
は,いちばん絞りきった状態にすると,自動的に7kHz・6dB/octのハイカットフィルターに切り替わるようになっていま
した。
トーンコントロールとは別に,3通りの異なったキャラクターを設定できるソフトネス回路が装備されていました。これは,
クオリティの低いソースを聴くときに適度に分解能をコントロールするもので,このアンプの分解能の高さを物語る機能
でもありました。

A-810の電源部

電源部はプリメインアンプとして非常に強力なもので大型トランスを2基搭載した「ツイン・ワインド方式大型2トランス方
式」と称しいました。また,整流用ケミコンは,マルチタブ方式のローインピーダンス・ワイドレンジケミコンを,プリント基
板と直結させた低インダクタンス回路として使用していました。各セクションの給電,アースライン等には,厚い銅板製
のブス(母線)ラインを使用して,低インピーダンス化を図っていました。

以上のように,A-810は,当時のオンキョーのプリメインアンプの最上級機として,しっかりと物量が投入され,サーボ
技術を積極的に投入して,力強くクリアな音を実現した1台でした。この後の同社のプリメインアンプの基本となる部分
を形作っていた1台であったともいえるでしょう。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



最高のテクニックが
理想のサウンドを目指す。
音に徹した熟成のアンプ。


◎驚異の高分解能と,電源効果を50倍に高める
 W・スーパーサーボ
◎B級のパワフルさに,A級の繊細さを加える>
 リニア・スイッチング。>
◎音の透明度を損なわないシンプル構成,
 デュアル・ダイレクト・アンプ。
◎トーンキャラクターを自由にセレクトできる
 ソフトネス回路。
◎理想に一歩近づいた
 超大型2トランス強力電源部の採用。

●トーンアンプによる音質劣化を除いたダイレクト・トーン方式。
●各パートによる温度差を検出し,常に安定した低歪率駆動
 を可能にしたオート・トラッキング・バイアス方式。
●高次高調波の発生を抑える非磁性体材料を随所に使用
 した音質最優先設計。




●A-810 定格●

定格出力(20〜20,000Hz) 110W+110W(AUX→SP OUT 8Ω両ch駆動)
全高調波歪率(20〜20,000Hz) 0.008%(AUX→SP OUT 定格出力時) 
0.006%(AUX→SP OUT 1/2定格出力時) 
0.003%(PHONO MM→REC OUT 3V) 
0.01%(PHONO MC→REC OUT 3V)
混変調歪率 0.005%(AUX→SP OUT)
パワーバンドウィズス 5Hz〜100kHz(IHF-3dB  THD0.2%)
ダンピングファクター 100(1kHz 8Ω)
周波数特性 20Hz〜20kHz/±0.2dB(PHONO→REC OUT/RIAA偏差) 
2Hz〜100kHz+0dB,−1.5dB(AUX→SP OUT)
入力感度/インピーダンス PHONO MM=2.5mV/47kΩ,100kΩ 
PHONO HIGH MC=2.5mV/100Ω 
PHONO MC=130μV/100Ω,330Ω 
TUNER,AUX,TAPE PLAY1,2=150mV/47kΩ
PHONO最大許容入力(0.05%) PHONO MM=300mV(1kHz)/1400mV(10kHz) 
PHONO HIGH MC=300mV(1kHz)/1400mV(10kHz) 
PHONO MC=17mV(1kHz)/82mV(10kHz)
定格出力電圧/インピーダンス 150mV/2.2kΩ(TAPE REC1,2) 
1.5V/600Ω(PRE OUT)
SN比(IHF-A ショート) PHONO MM 86dB 
PHONO MC 69dB 
TUNER・AUX・TAPE PLAY1,2 100dB
トーンコントロール BASS   ±8dB 70Hz(Vol−16dB) 
TREBLE  ±8dB 20kHz(Vol−16dB)
ラウドネス +4dB,+6dB 100Hz
SUBSONIC FILTER 15Hz,20Hz 6dB/oct
ミューティング −20dB
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力(電気用品取締法規格) 200W
ACアウトレット UNSWITCHED 1個 200W 
SWITCHED    2個 合計200W
寸法/重量 435W×170H×424Dmm/20.3kg


※本ページに掲載したA-810の写真,仕様表等は,1980年1月の
ONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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