AIWA AD-F600
STEREO CASSETTE DECK ¥69,8001980年にアイワが発売した3ヘッドデッキ。日本で最初のカセットテープレコーダーを発売して以来
いいテープデッキを作ってきたアイワらしく,性能重視の先進的な内容を持った高性能デッキで,同社
初のデュアルキャプスタン方式採用のデッキでした。ヘッド部には,コンビネーション型3ヘッドを搭載していました。AD-F600に搭載された録再コンビネ
ーションヘッドは,「コンビネーションDXヘッド」と称されたもので,耐摩耗性の向上と広い周波数特性
を実現するために,コア部に硬質パーマロイの6枚多層ラミネート構造を採用して渦電流損失を少なく
し,ガード部にセンダスト,コアスペーサーに硬質の複合素材を用いたものでした。ヘッドには,帯磁するのを未然に防ぐ「ADMS(Automatic Demagnetizing System=自動消磁シ
ステム)」が搭載されていました。これは,電源スイッチONの際に,デッキ内の消去発振器の高周波
電流を各ヘッドに流し,一定時間後(約1.5秒後)に減衰させることにより,ヘッドの消磁操作をシンプ
ルかつ安全に行うもので,自己消磁作用の働かない3ヘッドデッキにとっては有効な装備でした。
走行系は,アイワのカセットデッキで初のデュアルキャプスタン方式が採用されていました。アイワのデ
ュアルキャプスタンメカニズムは,「スタビライズドテンション・デュアルキャプスタン」と称され,テイクアッ
プ側のキャプスタンに「スーパーグレインプロセッシング」という高精度な加工が施され,キャプスタン表
面に滑り止めとなる微細なディンプルを設け,テープにかかるテンション安定化して走行性を高める工夫
がされていました。これは世界初の搭載でした。
キャプスタン用FGサーボモーター,リール用DCモーターによる2モータードライブシステムが採用され,
ワウ・フラッター0.029%の高精度なテープ走行を実現していました。実際,AD-F600の走行系は
数値以上に安定した高精度なテープ走行を誇るものでした。
ノイズリダクションとしてはドルビー(いわゆるB TYPE)を搭載していました。AD-F600では,さらに
3ヘッドシステムによるすぐれた高域特性を生かそうとドルビーHXシステムを搭載していました。ドル
ビーHX(High Extensuon)システムは,同じバイアス電流をかけても,周波数帯やエネルギー分
布によって磁気テープのバイアス特性が変化することに対応して,録音バイアスを自動的に変化さ
せ,さらに周波数特性をフラットに保つために,録音イコライザーも自動的に変化させるというもので,
1979年6月に発表されたものでした。アイワはこの技術をいち早く導入してAD-F600に搭載して
いました。
消去ヘッドには専用の発振器を搭載し,ドルビーHXの可変バイアスとは無関係に一定の消去電流
が流れるように設計され,メタルテープにも対応していました。機能としてはオーソドックスで,LHテープに対してのバイアス微調整機構,自動テープたるみ除去
機構,バック照明付き針式VUメーターと5点ピークレベルインジケーター,オートリピート機構,タイ
マースタンバイ機構などが備えられていました。以上のように,AD-F600は,アイワらしく正攻法で作られた高性能デッキで,それほど高級機とい
うわけでもなく,オーソドックスな外観を持つデッキでしたが,中身の充実した実力派のカセットデッ
キでした。そのすぐれたテープの走行性が特に印象に残っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎音質の3ヘッドは,コンビネーションDXヘッド。
◎3ヘッドを支える精緻なメカニズム。
スタビライズドテンション・デュアルキャプスタン。
◎ヘッドを帯磁から護る自動消磁システム。
ADMS(Automatic Demagnetizing System)
◎高域ダイナミックレンジを拡大する高度な録音
システム,ドルビーHX。
◎消去ヘッドには専用に発振器。
消去能力も万全。
◎LHテープのバイアス微調整機構。
型式 | 3ヘッドデュアルキャプスタンメタルカセットデッキ |
トラック方式 | 4トラック2チャンネル |
モーター | キャプスタン用 FGサーボモーター
リール用 DCモーター |
ヘッド | 録音・再生 コンビネーションDXヘッド
消去 Hi-Bsダブルギャップセンダストヘッド |
ワウ・フラッター | 0.029%(WRMS) |
周波数特性 | メタルテープ:(−20VU録音)20〜20kHz+2dB,−3dB
(0VU録音) 30〜12.5kHz+2dB,−3dB CrO2テープ:(−20VU録音)20〜19kHz−+2dB,−3dB (0VU録音) 320〜8kHz+2dB,−3dB ノーマルテープ :(−20VU録音)20〜17kHz+2dB,−3dB |
SN比 | 68dB(Dolby NR ON METALテープピークレベル)
53dB(Dolby NR OFF LHテープピークレベル) |
歪率 | 0.8%(メタルテープ) |
入力 | MIC:0.3mV(200Ω〜10kΩ)
LINE:50mV(50kΩ以上) |
出力 | LINE:0.55V(50kΩ以上)
HEADPHONE:0.8mW(8Ω) |
早送り巻き戻し時間 | 70秒(C-60) |
オートストップ方式 | 純電子式フルオートストップ |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 18W |
寸法 | 420W×109H×285Dmm |
重量 | 5.3kg |
※本ページに掲載したAD-F600の写真,仕様表等は1980年12月
のAIWAのカタログより抜粋したもので,アイワ株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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