AIWA AD-F80
STEREO CASSETE DECK ¥135,0001978年にアイワが発売したカセットデッキ。当時の同社の最上級機として開発され,1ウェイ3 ヘッドの
メカニズムを搭載した,オーソドックスながら音質重視の高性能なカセットデッキでした。走行系は,シングルキャプスタン方式で,キャプスタンとリールにそれぞれ専用のモーターを搭載した,
当時としては数少ない2モーター方式を採用していました。キャプスタン駆動モーターには,ドリフト特性
温度特性,経時変化にすぐれた38パルスFGサーボモーターを使用し,リール巻取り駆動モーターは2
速度DCサーボモーターを使用していました。また,安定したテープ走行を得るために慣性質量を利用し
て細かな周期の回転変動を抑えるフラッターキャンセルホイール,センター駆動スピンドルなども搭載さ
れ,ワウ・フラッター0.04%以下という安定したテープ走行を実現していました。ヘッドは,新開発のCVC(コンビネーションV-Cut)3ヘッドシステムを採用した3ヘッド方式でした。これ
は,録音用ヘッド,再生用ヘッドをそれぞれの役割にあったギャップ長(録音ギャップ4μ,再生ギャップ
1μ)に設定し,高域の周波数特性特性やSN比,ダイナミックレンジの改善を図るとともに,従来のコン
ビネーションヘッドの抱える問題点,コンター効果(低域のうねり)を防ぐためVカットを加えたヘッド構造
を採用したものでした。ヘッド素材には,耐摩耗性,高域特性に優れた超硬質フェライトを採用し,ダイカ
ストベースでアジマスずれが起きないようにしっかり支える構造を取り,長期間にわたる性能の安定性
も確保していました。AD-F80には,テープごとの特性に合わせてバイアスの微調整を行い,フラットな録音可能にするため
にFRTS(Flat Response,Tuning System)が搭載されていました。内蔵している400Hzと8kHz
の周波数発振器からのテスト信号を録音しながら同時に400HzをLに,8kHzをRのVUメーターで表示
し,バイアス微調整ツマミを回して2つのメーターを同レベルに合わせることによりフラットな特性を得よう
とする仕組みでした。微調整は,LH,CrO2ポジションで±20%,FeCrポジションで±10%の範囲で
可能でした。AD-F80のメーターはアナログ式でしたが(今見ると非常にかっこいいですね)VUとPEAKを同時に表示で
きる「ダブルニードルメーター」を搭載していました。これは,他のメーカーのデッキではあまり見られないもの
で,VUとPEAKのそれぞれ専用に指針がついていて,同時に見られるというものでした。PEAKメータの方
は,ピークホールド機能もあり,ピークホールドをONにすると,入力信号のピークレベルを30分間固定表示
することができ,その間の最大レベルが分かるようになっていました。操作系は,2モーター方式を生かし,ロジカルコントロールを使用したフェザータッチを採用し,発熱防止型プ
ランジャーソレノイドを使用して,操作ボタンのストロークが1mm以下の軽快な操作感を実現していました。
また,ロジカルコントロールならではのFFまたはREWからダイレクトに再生に切り換えたり,録音状態にダ
イレクトに入れるなどの操作も可能でした。さらに,ロジカルコントロール方式では初めて,音を聴きながらの
クィックレビュー・キューもできるようになっていました。その他機能的には,オーソドックスなものが搭載され,テープごとの録音感度を調整するRECキャリブレーシ
ョン,ドルビーNR,レックミュート機構などの他,マイク・ライン独立の録音レベルツマミが搭載されており,ミ
キシング録音もできるようになっていました。また,前面にマイクだけでなくライン入力端子も設けられていて
いました。以上のように,AD-F80は,日本で初めてカセットレコーダーを開発・発売したアイワが,オーソドックスに各
部を煮詰め,優れた性能を実現したカセットデッキでした。翌1979年には,メタルテープ対応のAD-F80M
さらに,赤外線ワイヤレスリモコンを装備し,オーディオハンドルを標準装備したAD-F90Mも発売され,アイ
ワのカセットデッキのラインナップの最上級シリーズとして高い評価を得ました。薄型の筐体とダブルニードル
のアナログ式メーターは今見てもかっこいいと思いませんか?
AIWA AD-F80M
3HEAD METAL CASSETTE DECK ¥138,000
AIWA AD-F90M
3HEAD METAL CASSETTE DECK ¥148,000
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎テープときめ細かく対応する画期的なFRTS 機構。
◎正確なレベル設定を可能にする
ダブルニードルメーター装備
◎ピークメーターの最大値を保持するピークホールド機構
◎デュアルモータードライブ方式により
低ワウ・フラッター0.04%を実現。
◎新開発のCVC(コンビネーションV-Cut)による
3ヘッドシステム。
◎信頼性の高いロジカルコントロール回路。
しかもクィックレビュー・キューを採用。◎その他のフィーチャー
●テープごとの感度を補正するRECキャリブレーション
●ダブルドルビーシステムにMPXフィルタースイッチ採用
●低雑音,低歪率に徹したイコライザーアンプ/録音アンプ
●ダイナミックレンジの高いマイクアンプ
●大出力のヘッドホンアンプ
●再生中でもテープを止めずに録音に移れる後追いREC可能
録音済みのテープにナレーションを入れたいときなど便利です。
●カセット蓋解放時は操作ボタンを押してもメカニズムが動作
しないセーフティロック機構
●離れてテープ操作ができるリモートコントロール接続可能
(RC-10・¥9,000別売)
●くり返し留守録音のできるタイマー・スタンバイメカ
●ミューティングタイム・インジケータ付のレックミュート機構
●マイク,ライン入力にそれぞれ独立のレベルコントロールを装備
ミキシング録音ができます。
●前面に装備したラインイン・ジャック。テープをダビングするとき
などに便利。
●テープのくり返し再生に有利なメモリー・リプレイ機構
●ヘッドホンの音量調整も兼用できる再生ボリューム付
●シンクロオペレーション機構
●テープやメカをいためない純電子式フルオートストップ
●ヘッドやメカニズムを保護するオイルダンプ式カセットホルダー
●テープ残量の確認が容易になるテープ照明ランプ
●ACアウトレット300W非連動コンセント
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トラック型式 | 4トラック2チャンネル |
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使用半導体 | 13IC,150Tr,85Di,6LED,12FET | 17IC,66Tr,74Di,6LED,6FET | 26IC,67Tr,77Di,6LED,10FET |
周波数特性 | LHテープ:20〜16,000Hz
FeCrテープ:20〜20,000Hz CrO2テープ:20Hz〜19,000Hz |
LHテープ:20〜16,000Hz
FeCrテープ:20〜20,000Hz CrO2テープ:20Hz〜19,000Hz メタルテープ:20Hz〜20,000Hz |
LHテープ:20〜16,000Hz
FeCrテープ:20〜20,000Hz CrO2テープ:20Hz〜19,000Hz メタルテープ:20Hz〜20,000Hz |
SN比 | 68dB
(FeCr,DOLBY NR ON) 54dB (LH DOLBY NR OFF) |
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ワウ・フラッター | 0.04%(WRMS) |
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テープ速度 | 4.8cm/sec |
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早送り・巻戻し時間 | 65秒(C-60) |
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録音方式 | ACバイアス(105kHz) |
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歪率 | 0.9%以下(0VU,FeCrテープ) |
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消去方式 | AC消去 |
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入力感度及び
インピーダンス |
LINE:50mV(50kΩ以上)
MIC:0.25mV(200Ω〜10kΩ適合) |
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出力レベル及び
インピーダンス |
LINE:0.41V(50kΩ以上適合)
ヘッドホン:2mW/8Ω(0VU) |
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電源 | AC100V 50/60Hz |
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消費電力 | 26W |
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寸法 | 450W×120H×327Dmm |
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480W×120H×365Dmm
(ハンドル付) |
重量 | 9.5kg |
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9.8kg |
※本ページに掲載したAD-F80,AD-F80M,AD-F90Mの写真,
仕様表等は1978年12月,1980年2月のAIWAのカタログより
抜粋したもので,アイワ株式会社に著作権があります。したがって
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられて
いますのでご注意ください。
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