AIWA AD-FF70
STEREO CASSETTE DECK ¥84,800
1983年に,アイワが発売したカセットデッキ。もともとマイクロフォンのメーカー愛興電機としてスタートし,
日本で最初にカセットテープレコーダーを発売したアイワは,コストパフォーマンスと性能のバランスがと
れたすぐれたカセットデッキを多く開発・製品化していました。そうした中,アイワは1980年代に入り,デ
ザインイメージを大きく変え,技術的にもマイコン等を積極的に導入した,よりコストパフォーマンスにすぐ
れた新シリーズを発売し,人気を博していました。新シリーズ(AD-FF8,AD-FF7R,AD-FF6,AD-FF5
AD-FF3)は「AD-FF」で始まる型番を持ち,そのトップモデルAD-FF8はコンピューターチューニングシ
ステムまで搭載した高いコストパフォーマンスを誇っていました。その後継機にあたる機種がAD-FF70で
した。

AD-FF70は,1ウェイの3ヘッドデッキで,走行系には,先代の「FFシリーズ(FF-8,6)」から受け継いだ
デュアルキャプスタンメカニズムを搭載していました。このデュアルキャプスタンメカニズムは,「スーパー・
スタビライズドテンション・デュアルキャプスタン」と称され,テイクアップ側のキャプスタンに「スーパーグレイ
ンプロセッシング」という高精度な加工が施され,キャプスタン表面に滑り止めとなる微細なディンプルを設
け,テープにかかるテンション安定化して走行性を高める工夫がされていました。

ヘッドには,コンビネーション型3ヘッドを搭載していました。この録再コンビネーションヘッドは,「コンビネー
ションDXヘッド」と称されたもので,耐摩耗性の向上と広い周波数特性を実現するために,コア部に硬質
パーマロイの6枚多層ラミネート構造を採用して渦電流損失を少なくし,ガード部にセンダスト,コアスペー
サーに硬質の複合素材を用いたものでした。また,消去ヘッドには,ダブルギャップセンダストヘッドが搭
載されていました。また,アイワ独自のADMS(Automatic Demagnetizing System=自動消磁シス
テム)を搭載し,電源スイッチを入れたとき,またはADMSスイッチを押したときに自動的に消去電流が流
れヘッドの消磁が行われるようになっていました。

DXコンビネーションヘッド

ノイズリダクションとして従来のドルビーBタイプ/Cタイプを搭載していました。さらにアイワはデンマークの
B&O社の開発した「DOLBY HX PROシステム」をいち早く導入し,より高精度に実用化して「アクティ
ブ・サーボ・バイアス」システムとして,この新しい「FFシリーズ」に搭載していました。この「アクティブ・サー
ボ・バイアス」システムは,録音時に録音ヘッドに流される固定されたバイアス電流が,録音信号の高域
成分の量により深さが変わってしまうという現実に注目し,録音信号を含むトータルなバイアス量を一定に
保つように,入力信号の周波数成分とそのレベルに応じてバイアス量を自動的にコントロールするもので,
高域のダイナミックレンジ,周波数特性が大幅に改善されるというものでした。実際,0dB録音時のノーマ
ルテープの高域特性がメタルテープ使用時に近いところまで改善されたということでした。

基本的には,AD-FF8の機能が受けつがれていました。まず,テープの種類に応じて約16秒でバイアス値
録音感度,イコライザー値をそれぞれ32ステップの中から選び,3万通り以上の組み合わせの中から最適
値を設定するオートチューニング機構「コンピュ・ブレイン・システム」は先代のFF-8から受け継がれていま
した。そして,テープセレクター,録音再生時のソース/モニターの切換は自動化されていました。テープ装
着時に何分テープかを選んでおけば残量時間の表示もできる多機能電子カウンターなどの機構も装備され
ていました。さらに,曲の頭を約8秒ずつ再生していく「イントロ・プレイ」,曲の頭出しができる「ミュージック
センサー」,任意の2点間の繰り返し再生ができる「メモリーリピート機能」などの便利な機能も搭載されてい
ました。

以上のように,AD-FF70は,新しい技術を積極的に投入した上級機AD-FF90の特に音質に関わる部分
のエッセンスをしっかり受けつぎ,賑やかなイメージの外観の中にすぐれた性能を詰め込んだデッキとなっ
ていました。高域まですっきりと伸びたシャープな音は,当時のアイワらしい個性を感じさせるものでした。
また,AD-FF70にはブラックタイプのAD-FF70Bも発売され,外観も落ち着いたイメージで,こちらも魅
力的でした。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



コンピュ・ブレインと
ACTIVE SERVO BIASが
カセットテープの潜在能力を
フルにピックアップ。
デジタルオーディオ時代の
スーパークオリティデッキ。

◎デジタルオーディオ時代に応える
 「アクティブ・サーボ・バイアス」
◎テープに最適のバイアス,録音感度,イコライザーを
 オートセレクトする「コンピュ・ブレイン」
◎コンピュ・ブレインで調整されたデーターが,
 ノーマル,クローム,メタル別にメモリーされる
 3ポジション・データー・メモリー
◎DXコンビネーション3ヘッド
◎高精度メカ「スーパースタビライズドテンション・
 デュアルキャプスタン」
◎ダブルドルビーB/C
◎自動消磁システム,ADMS
◎FF,REW時にもテープの残量時間が読み取れる
 多機能電子カウンター
◎自動的に曲の頭を8秒間ずつ再生する
 イントロプレイ
◎曲の頭をスピーディに探すミュージックセンサー
◎ピークホールドつきFLメーター
◎再生ボリューム
◎リピート機構
◎キュー&レビュー
◎オート/マニュアルレックミュート
◎オートテープセレクター
◎MPXフィルターON,OFFスイッチ
◎リモートコントローラー用接続端子
◎タイマースタンバイ・メカ




●AD-FF70の仕様●


 
型式 アクティブサーボバイアス,コンピュブレイン搭載3ヘッドデッキ
トラック方式 4トラック2チャンネル
モーター キャプスタン用 システムサーボモーター
リール用    DCモーター
ヘッド 録音・再生 コンビネーションDXヘッド
消去     ダブルギャップセンダスト
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS),±0.045%(W・Peak)
周波数特性 メタルテープ:(-20dB録音)20Hz~20kHz±3dB
         (0dB録音)   20Hz~17kHz±3dB
CrOテープ:(-20dB録音)20Hz~19kHz±3dB
        (0dB録音)   20Hz~14kHz±3dB 
ノーマルテープ :(-20dB録音)20Hz~18kHz±3dB
           (0dB録音)   20Hz~11kHz±3dB
SN比
(WTD,1kHz,
 3%3次高調波歪率,メタルテープ)
60dB(Dolby NR OFF)
68dB(Dolby Btype ON)
75dB(Dolby Ctype ON)
歪率 0.9%(メタルテープ)
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 33W
寸法 420W×110H×286Dmm
重量 5.5kg
※本ページに掲載したAD-FF70の写真,仕様表等は1983年3月のAIWAのカタログ
 より抜粋したもので,アイワ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
 を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。     
    

 
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