AD-FF8の写真
AIWA AD-FF8
STEREO CSSETTE DECK ¥84,800

1981年に,アイワが発売したカセットデッキ。もともとマイクロフォンのメーカー愛興電機としてスタートし,
日本で最初にカセットテープレコーダーを発売したアイワは,コストパフォーマンスと性能のバランスがと
れたすぐれたカセットデッキを多く開発・製品化していました。そうした中,アイワは1980年代に入り,デ
ザインイメージを大きく変え,技術的にもマイコン等を積極的に導入した,よりコストパフォーマンスにすぐ
れた新シリーズを発売しました。「AD-FF」の型番がついた新シリーズ「FFシリーズ」の中の最上級機が
AD-FF8でした。

AD-FF8の走行系は,前モデルにあたるAD-F600を継承し,音質を重視したデュアルキャプスタン構
成が採用されていました。このデュアルキャプスタンメカニズムは,「スーパースタビライズドテンション・
デュアルキャプスタン」と称され,テイクアップ側のキャプスタンに「マイクログレインプロセッシング」とい
う高精度な加工が施され,キャプスタン表面に滑り止めとなる微細なディンプルを設け,テープにかかる
テンションを安定化して走行性を高める工夫がされていました。また,テープ装着時にテープのたるみを
とるテープたるみ除去機構も装備されていました。
モーターは,キャプスタン用にDCサーボモーター,リール用にDCモーターを搭載した2モーター構成で
高精度な走行系により,0.025%以下(WRMS)というすぐれたワウ・フラッター特性を実現していまし
た。

ヘッド部には,コンビネーション型3ヘッドを搭載していました。この録再コンビネーションヘッドは,「コン
ビネーションDXヘッド」と称されたもので,耐摩耗性の向上と広い周波数特性を実現するために,コア部
に硬質パーマロイの6枚多層ラミネート構造を採用して渦電流損失を少なくし,ガード部にセンダスト,コ
アスペーサーに硬質の複合素材を用いたものでした。

DXコンビネーションヘッド

このヘッドには,帯磁するのを未然に防ぐ「ADMS(Automatic Demagnetizing System=自動消磁
システム)」が搭載されていました。これは,電源スイッチONの際に,デッキ内の消去発振器の高周波
電流を各ヘッドに流し,一定時間後(約1.5秒後)に減衰させることにより,ヘッドの消磁操作をシンプル
かつ安全に行うもので,自己消磁作用の働かない3ヘッドデッキにとっては有効な装備でした。また,こ
のADMSはスイッチで任意の時に動作させることもできるようになっていました。

AD-FF8には,アイワのカセットデッキとして初のコンピュータによるオートチューニング機構が搭載されて
いました。「コンピュ・ブレイン」と称するこの機構は,バイアス,録音感度,イコライザーの調整を自動化し
たもので,録音開始前に動作させると,バイアス,録音感度,イコライザーをそれぞれ32ステップの値か
ら選択し,合計約3万通りの組み合わせの中から最適の調整値に自動的にセットするというもので,調整
時間は約16秒でした。
テープセレクターは,LH,FeCr,CrO2,METALの4ポジションが備えられ,全てのタイプのテープに対応
していました。

フロントパネルは,右半分の多くの部分が表示パネルというデザインになっており,当時のカセットデッキで
は比較的珍しいデザインとなっていましたが,表示部が大きく見やすく,また,外観を大きく特徴づけていま
した。このデザインは,後継モデルFF-2桁シリーズ(AD-FF90等)にも受け継がれていきました。
レベルメーターは,それまでの針式に代わり3色16セグメントのLEDピークレベルメーターが搭載されてい
ました。ピークホールド機能もついていました。テープカウンターは,4桁電子カウンターで,通常の4桁表示
以外に,時間表示にも切り替えられるようになっていました。カウンター0000に巻き戻しができるメモリー
リワインド機能も装備されていました。

機能的には,オーソドックスですが,過不足なく備えられていました。ノイズリダクションとしてドルビーBタイ
プに加えCタイプも装備されていました。その他,オート/マニュアル両機能を持つRECミュート,タイマース
タンバイ機構,リモコン端子なども備えられ,当時のカセットデッキらしく,リアパネルにはライン入力に加え,
マイク入力端子も装備されていました。

「FFシリーズ」は,全機種に当時最新のノイズリダクション・ドルビーCタイプを搭載し,3ヘッドデッキのFF8
FF-6(¥69,800),FF-5(¥59,800),クィックリバース・デッキFF-7R(¥69,800),シングルウェイ
の2ヘッドデッキのベーシックモデルFF-3(¥42,800)と多彩な機種を揃えた,アイワの主力機種で,非
常にコストパフォーマンスにすぐれたラインナップになっていました。その中でも最上級機であったFF-8は,
価格を超えた充実した内容を持った1台となっていました。当時,このデッキを購入した先輩の家で,価格を
超えた内容と機能を見て,カセットデッキの新機種購入を考えたことを思い出します。(それから何ヶ月かの
間,いろいろなカセットデッキを検討し,ナカミチZX-7の購入に至りました。)


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



コンピュ・ブレイン,DX3ヘッド,
ドルビーC・・・・・
ベスト録音のためのテクノロジーを
結集した最新鋭モデル。


◎テープの可能性を最大限に引き出す頭脳
 オートテープチューニングシステム
 Compu-Brain
◎3ヘッド・テクノロジーはここまできた。
 アイワ独自のコンビネーションDXヘッド。
◎劇的なノイズリダクション効果,ドルビー
 をさらに進化させたドルビーCタイプ。
◎テープ走行系の充実が3ヘッドデッキには
 欠かせない。 スーパースタビライズドテンション
 デュアルキャプスタン方式採用。
◎アイワ独創の自動消磁システム・ADMSを
 搭載。
◎メモリープレイも思いのまま。テープタイム
 表示付4桁電子カウンター。

●曲間の無録音部分を作れるオート/マニュアル両機能を
  持つRECミュート。
●3色16点のピークプログラムメーター採用。ピークホールド
  機構付ですから確実なレベルチェックを行えます。
●LH,FeCr,CrO2,METALの4段テープセレクター。
● キュー&レビュー機構装備のフルロジックコントロール採用。
●MPXフィルター装備(ON/OFF)。FM放送のパイロット信号
  によるドルビーの誤動作を防ぎます。
●自動テープたるみ除去機構つき。
●タイマースタンバイ機構装備。
●リモコン端子付。(リモコンユニット・別売)
●マイク端子は裏面に装備。




●AD-FF8の仕様●

型式 ドルビーCタイプ搭載3ヘッドメタルデッキ
モーター キャプスタン用 DCサーボモーター
リール用    DCモーター
ヘッド 録音・再生 コンビネーションDXヘッド
消去     Hi-Bsダブルギャップセンダストヘッド
ワウ・フラッター 0.025%(WRMS)
周波数特性          (−20VU録音)      (0VU録音)
LHテープ    20Hz〜17kHz
CrO2テープ  20Hz〜19kHz   25Hz〜8kHz   +2,−3dB
FeCrテープ   20Hz〜20kHz   25Hz〜12.5kHz+2,−3dB
METALテープ 20Hz〜20kHz   25Hz〜12.5kHz+2,−3dB
SN比
(WTD,1kHz,
 3%3次高調波歪率,メタルテープ)
60dB(Dolby NR OFF)
68dB(Dolby Btype ON メタルテープピークレベル)
75dB(Dolby Ctype ON メタルテープピークレベル)
歪率 0.9%(METAL),0.8%(FeCr)
入力
MIC  0.3mV(200Ω〜10kΩ)
LINE 50mV(50kΩ以上)
出力
LINE 0.55V(50kΩ以上)
HEADPHONE 0.8mW(8Ω)
早送り・巻き戻し時間
70秒(C-60)
オートストップ方式
純電子式フルオートストップ
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 26W
寸法 420W×110H×265Dmm
重量 5.1kg

※本ページに掲載したAD-FF8の写真,仕様表等は1981年12月
 のAIWAのカタログより抜粋したもので,アイワ株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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