SONY APM-33W
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥55,000
1982年に,ソニーが発売したスピーカーシステム。ソニーは,エスプリ(ESPRIT)ブランドでAPMスピーカー
第1号機のAPM-8(1979年),第2号機APM-6(1981年)を発売し,平面振動板APM方式を展開してい
きました。そして,APM-77/77W(1981年)を発売して,ソニーブランドでもAPMスピーカーを展開していき
ました。そんなソニーブランドのAPMスピーカー第2号機がAPM-33Wでした。
APMスピーカーのAPMはAccurate Pistonic Motionの略で,その名の通り,正確な振動板の動作をめざ
して開発されたソニー独自のスピーカーユニットあるいは方式のことで,見た目は四角い平面振動板が最大の
特徴でした。そして,デジタルオーディオ時代のスピーカーとして,「分割振動」と「キャビティ効果」という2つの
問題点の解決を図ろうとしたのがAPMスピーカーでした。

「分割振動」は,周波数によって振動板の各部がバラバラに動いてしまう現象で,音の濁りにつながってしまい
ます。これを防ぐ方法としては,(1)振動板の剛性を高め軽量化することにより,ピストニックモーション帯域を
拡大し,分割振動を使用帯域外に追い込む。(2)振動板に内部ロスの大きな材料を使って分割振動が起きて
も影響を小さくする・・・という2つの方法があり,従来そのどちらか,あるいは両方の組み合わせが試みられて
きました。
「キャビティ効果」は,紙をメガホンのように丸めたコーン紙形状から起こる空気の共振現象で,音のこもりにつ
ながる可能性がありました。
APMスピーカーは,航空機や新幹線のボディにも使われる,軽くて丈夫なハニカムサンドイッチ構造が特徴で
した。六角形の蜂の巣状のハニカムコアを表裏のスキン材で挟み込む構造で,スキン材にはアルミ箔が使用さ
れていました。こうした構造により,従来のコーン紙による振動板の500倍〜1000倍の曲げ剛性が実現されて
いました。剛性を高めるための手段であるコーン型のメガホンのような形状をとらずとも,平面で使っても十分な
剛性があるため,キャビティ効果を解消し,周波数特性のフラット化が図られていました。
さらに,APMスピーカーは,四角い振動板形状をとることにより,円形に比べて分割振動のパターンがきわめて
単純なものになり,その節目(動かない点)も常に定位置に決まるという特徴がありました。この節目を駆動する
ことで分割振動を消すことが可能となります。そこで,APM-33Wのウーファーでは,分割振動の低次モードの
節目が集中する4点を4つのアーマチュアによってドライブするようになっていました。こうして使用帯域内の分割
振動をなくし,ピストニックモーション帯域を大幅に拡大し,かつ前面スキンをダイレクトに駆動することで,フラット
な周波数特性とすぐれたパワーリニアリティを実現していました。
この20cm口径相当の324cm2の平面型・APM振動板ウーファーを駆動する磁気回路は,クラス最大級のもの
が搭載されていました。
トゥイーターは,4.5cm口径相当の16cm2の平面型で,ウーファー同様にアルミハニカムをアルミスキンでサンド
イッチした構造になっていました。大型のボイスコイルにより,分割振動をキャンセルするポイントを駆動し,可聴帯
域内の分割振動をほぼ皆無にする駆動方式も同様でした。
APM-33Wは,サイズ的には,同価格帯の中でもやや小型に仕上げられた2ウェイバスレフ型で,APM-6での2
ウェイ型のノウハウを生かして仕上げられていました。
ネットワークには,内部配線材として,伝送特性にすぐれた無酸素銅線を使用し,音質的に吟味された数種類のコ
ンデンサーを並列使用していました。コイルには,空芯コアの高品質なものを,適所に配置し,ロスの少ない高品質
なネットワークとなっていました。また,トゥイーターは,+0〜−50dBの連続可変型のレベルコントロールが装備さ
れていました。
エンクロージャーは,堅牢な構造のバスレフ型(位相反転型)で,裏板の内面外周部に細溝を施して板振動も十分
に考慮し,響きの良さ,豊かな低音をめざした作りになっていました。そして,吸音材は3種類を使い分け,吸音材
固有の音を制御し,自然な吸音効果が得られるように工夫されていました。
以上のように,APM-33Wは,エスプリブランドで実験的かつ革新的なスピーカーとして開発されたAPMスピー
カーシステムの技術を,より一般的な形で完成させた1台で,当時の各社の主力価格帯に投入されたAPMスピ
ーカーのエントリーモデル的存在でした。小型ながら高品質・高性能で,当時のソニーのシステム例にもよく登場
していた1台でした。デジタル時代のスピーカーと称され,個性的な外観ながら,バランスのとれた穏やかな音で
アナログソースにも良く合うスピーカーとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



パーソナルサイズのAPMスピーカー。
小型・高性能で,デジタルソースの
リファレンススピーカーを宣言します。
《APM-33W》

◎デジタルオーディオ時代は,スピー
 カーの真価が試される時代です。
◎APM(Accurate Pistonic Motion)
 スピーカーは,何故,デジタルソース
 のリファレンススピーカーといえるのか?

●振動板の剛性を高めるハニカムサンドイッチ構造
●周波数特性のピークやディップをなくす平面振動板
●分割振動のパターンを単純化する四角い振動板

◎APMスピーカーの純血の系譜,
 APM-33Wならではの魅力について。

●ウーファー:20cm口径相当の324cm2
 平面型ウーファー
●トゥイーター:4.5cm口径相当の16cm2
 平面型トゥイーター
●ネットワーク:APMユニットの能力を最
 大限に生かすよう設計された高忠実度
 ネットワーク
●エンクロージャー:堅牢な構造の中に
 も,裏板の内面外周部に細溝を施すなど
 板振動を十二分に考慮。





●APM-33Wの主な仕様●

型式 2ウェイ位相反転型
使用スピーカー 低音用:324cm2平面型(口径20cm相当)
高音用:16cm2平面型(口径4.5cm相当)
公称インピーダンス 6Ω
定格最大入力 80W
瞬間最大入力 160W
出力音圧レベル 91dB/W/m
実効周波数帯域 39〜20,000Hz
クロスオーバー周波数 2.2kHz
レベルコントロール +0〜−50dB連続可変
大きさ 315W×540H×320Dmm
重さ 14.4kg
※ 本ページに掲載したAPM-33Wの写真・仕様表等は,1982年9月
 のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすること
 は法律で禁じられていますので ご注意ください。

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