SONY APM-55W
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥108,000
1983年に,ソニーが発売したスピーカーシステム。ソニーは,エスプリ(ESPRIT)ブランドでAPMスピーカー
第1号機のAPM-8(1979年),第2号機APM-6(1981年)を発売し,平面振動板APM方式を展開してい
きました。次いでAPM-77/77W(1981年),APM-33W(1982年)と,ソニーブランドでもAPM方式のス
ピーカーシステムを展開していきました。そして,ソニーブランドでのAPMスピーカー3号機がAPM-55Wで
した。
APM-55Wの最大の特徴は,その名の通り,APMユニットの搭載にありました。APM(Accurate Pistonic
Motion)ユニットはその名の通りソニーが正確な振動をする振動板を目指して開発した平面形ユニットで,四
角い個性的な外観から想像されるとおり独創的な構造で高性能を誇るユニットでした。
このAPMユニットは,特定の周波数で振動板の各部が一様な振動をしなくなる現象・「分割振動」の追放を徹
底的に追及したものでした。分割振動をなくすためにAPMユニットでは,軽量で高剛性ハニカム構造の平面
振動板を採用していました。こうした構造により,従来のコーン型振動板の500〜1000倍の曲げ剛性があり
実際の使用状態でも変形の程度は1/20〜1/30におさまっていました。さらに,振動板の形を正方形にする
ことで,分割振動の節目が一定の位置に発生するようにし,その分割振動の節目をボイスコイルで多点駆動し
て分割振動の発生を抑え,ダイレクトな駆動を実現していました。ソニーらしく非常に理詰めのアプローチがな
された独自方式のユニットでした。
ウーファーは,通常の円形ユニットならば27cm口径に匹敵する面積242cmのアルミスキンによるハニカム
サンドイッチ構造の平面振動板が搭載されており,ボイスコイルボビンに直結された4本の軽金属製のアーマ
チュアーが分割振動の低次モードの節目が集中する4点をドライブするようになっており,分割振動が排除され
ていました。より正確なピストニックモーションのために,振動板を駆動するアーマチュアがハニカムサンドイッチ
構造を貫通して,振動板の前後両面のスキンを直接駆動するようになっており,ダイレクト・デュアル・サーフェ
イス・ドライブ方式と称されていました。
ミッドレンジは,通常の円形ユニットならば8cm口径に匹敵する面積48cmの平面振動板で,スキンには,カー
ボン繊維とグラスファイバーシートを複合したものが採用され,直径5cmのエッジワイズボイスコイルと強力な磁
気回路により直接駆動されるようになっていました。
トゥイーターは,通常の円形ユニットならば4cm口径に匹敵する面積12cmの平面振動板で,スキン材には
チタン箔を使用したハニカム構造で,直径25mmのエッジワイズボイスコイルにより駆動され,30,000Hzま
での広帯域再生が実現されていました。
エンクロージャーは,バスレフ型で,北米産針葉樹による高密度パーティクルボード使用の,ウォルナット突板
仕上げで,内部の吸音材には,ミクロン・グラスウールや高分子化合物繊維など,3種類が使い分けられてい
ました。
ネットワークは,大電流が流れる低音用回路と高音用回路を独立させ,分散配置していました。コンデンサー
類は独自開発による音質対策型が使用され,内部配線材やコイルはすべて無酸素銅線が使用されていまし
た。
以上のように,APM-55Wは,APM方式スピーカーシステムのシリーズ中のAPM-77WとAPM-33Wの
間に位置する,中核機種として,それまでの技術を継承し,バランスのとれた設計となっていました。低域か
ら中高域まで癖のないクリアな音は,APMスピーカーらしいものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



APMスピーカーの最新鋭機。
音楽のファンダメンタルを支える
引きしまった低域と,余裕の中域に,
ひと味ちがう魅力があります。




●主な仕様●

形式 3ウェイ位相反転型
使用スピーカー 低音用424cmAPM型
中音用48cmAPM型
高音用12cmAPM型
インピーダンス 6Ω
定格最大入力 100W
瞬間最大入力 200W
出力音圧レベル 91dB
実効周波数帯域 31Hz〜30,000Hz
クロスオーバー周波数 450Hz,4.5kHz
大きさ 幅385×高さ685×奥行330mm
重さ 27.5kg
※ 本ページに掲載したAPM-55Wの写真・仕様表等は,1983年11月
 のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権が
 あります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすること
 は法律で禁じられていますので ご注意ください。

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