ALPINE/LUXMAN T-105
DIGITAL SYNTHESAIZED AM/AM STEREO TUNER
¥44,800
アルプス電気とラックスが立ち上げたニューブランドALPINE/LUXMANが,1986年に発売した
チューナー。ALPINE/LUXMANブランドは,1984年に発足し,真空管とMOS FETのハイブリッ
ド構成のプリメインアンプ,D/Aコンバーター内蔵のプリメインアンプをはじめ意欲的な製品を送り出
し,CDプレーヤー,DATデッキ,カセットデッキ,さらにスピーカーに至る多くのジャンルの製品群を
発売しました。そして,チューナーにも複数の製品を発売し,その中の最初のモデルで,エントリー
モデルがT-105でした。
フロントエンドは,高感度のデュアルゲートMOS FETを採用し,チューニング用には4連バラクター
を搭載し,高感度と高選択度の両立を図っていました。
シンセサイザーチューナーの心臓部,PLL(Phase Locked Loop)回路にマイクロコンピュータ
制御による「ハイ・エナジーPLL回路」を搭載していました。これは,クォーツ発振による基準信号と,
ローカルオシレーターの発振信号の位相を比較して誤差を修正するPLL回路のループゲインを大
きくとると同時に,回路インピーダンスを低くすることで,よりハイパワー化,ハイスピード化したもの
で,完全同調への応答速度を速め,誤差修正の遅れやずれによるSN比や歪みの悪化を防いで
いました。
RF部では,FM局が増える状況をふまえ,RF相互変調歪などへの対応がとられていました。上述
のようにデュアルゲートMOS FETの採用に加え,スペクトラムAGC(オートマティック・ゲイン・コン
トロール)回路を搭載していました。電波状況に応じた最適ゲインでFETを動作させ,フロントエンド
での歪みを抑えていました。
IF部には,不要な高域成分をカットして,隣接局からの妨害波によるビート障害を排除するCSフィ
ルターが搭載されていました。これにより,妨害電波が200kHz以上離れた周波数領域内にある
場合にも,IF信号の高い選択度でも除去しきれない妨害波に対して対応が可能となり,歪率やチャ
ンネル・セパレーションを悪化させずにビート妨害をシャープに除去することが可能となっていまし
た。
検波段には,超広帯域にわたってリニアな特性を誇る「スーパー・ワイド・FM・ディテクタ」を搭載し
ていました。10.7MHzのIF信号をダイレクトに検波し,5MHzを超える超広帯域までリニアに検
波できるFMディテクタで,FM100%変調時に相当する帯域幅150KHzに対して,30倍以上の
広帯域化を実現していました。
T-105には,ラックスがアンプに搭載してきた「S.T.A.Rサーキット」が採用されていました。これは
「Signal Transit for Accurate Response」の略で,各段へ送り込む給電ラインやアースラ
インをあえて共有化せず,各ステージへダイレクトに供給するようにしたもので,各回路の共有イ
ンピーダンスが徹底的に排除され,格段の性能を一段と高め,音の透明さが増すというものでし
た。
AM部には,低い周波数帯と高い周波数帯で感度が大きく違うという問題を解消するために,ロー
カルオシレーターにオートレベルコントロールを内蔵していました。
以上のように,T-105は,ALPINE/LUXMANブランド初のチューナーとして,LUXMANブランド
の高級機T-530の技術を継承しつつ,コストパフォーマンスを高めた意欲作でした。チューナー
の分野でのブランドの弱さ故か,地味な存在となってしまいましたが,使いやすく性能にもすぐれ
た1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
音楽に高感度。感性に高感度。
ハイエナジーなFM/AM受信。
◎性能のすべてをここが握る。
「ハイエナジーPLL回路」
◎チューナー・サウンドを革新した。
「S.T.A.R.サーキット」
◎受信波を音楽に変える。
「スーパーワイドFMディテクタ」
◎多局化の波に乗り切る。
「スペクトラムAGCシステム」
◎妨害ビートをシャープにカット。
「CSフィルター」
◎どの局でもいい感度。
「オートレベルコントロール」
●FM●
IHF実用感度 | 0.9μV(75Ω)・1.8μV(300Ω)・10.3dBf |
クワイティング感度 | 1.75μV(75Ω)・3.5μV(300Ω)・16.0dBf |
SN比 | 77dB(mono),75dB(stereo) |
周波数特性 | 20Hz~15kHz(±0.5dB以内) |
歪率 | 0.09%(mono,1kHz),0.15%(stereo,1kHz) |
選択度 | 70dB(75kHz dev./±400kHz) |
IF妨害比 | 100dB以上 |
イメージ妨害比 | 80dB以上 |
ステレオセパレーション | 50dB(1kHz),45dB(100Hz),30dB(10kHz) |
ミューティングレベル | 5μV |
出力電圧 | 630mV(100%mod.) |
●AM●
IHF実用感度 | 53dB/m |
SN比 | 50dB |
歪率 | 0.3% |
IF妨害比 | 50dB |
出力電圧 | 250mV |
●総合●
外形寸法 | 438W×85H×244Dmm |
重量 | 3.0kg |
※本ページに掲載したT-105の写真,仕様表等は1986年4月の
ALPINE/LUXMANのカタログより抜粋したもので,ラックス株式
会社,アルプス電気株式会社に著作権があります。したがって,こ
れらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
ますのでご注意ください。
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や
印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。