SANSUI AU-10000
HIGH POWER STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER
¥148,0001976年にサンスイが発売したプリメインアンプ。後のAU-X1や07シリーズに通じるような物量をしっかり
投入した重量級アンプで,伝統のブラックフェイスの精悍なデザインはサンスイらしいものでした。パワーアンプ部は,入力段にカレントミラー付差動増幅回路を配し,パラレルプッシュプルによる3段ダーリ
ントン接続,全段直結純コンプリメンタリーOCL方式となっていました。チャンネルあたり4個のパワートラン
ジスタと大型のチムニータイプのヒートシンカーを組み合わせて,110W+110Wの実効出力と0.03%
の低歪率を実現していました。イコライザー部は,入力回路にデュアルトランジスタを使用した差動増幅回路をもつ7石構成で,出力段に
A級純コンプリメンタリープッシュプル回路を採用していました。また,NF素子には,温度特性の優れたスチ
ロールコンデンサー,高精度の金属皮膜抵抗を採用し,RIAA偏差は,20Hz〜20kHz±0.2dB以内の
正確な補正を実現し,PHONO最大許容入力は,レギュレーションのよい高電位の±2電源供給により,入
力感度8mV時,1,000mV(1kHz,RMS)の十分なマージンを確保していました。AU-10000のシャーシ構造は,イコライザー部を含めたコントロール部(前部)とパワーアンプ部(後部)に分
けたブロック構造を採用し,各ブロック段は他からの電気的な干渉や影響を受けず,SN比などを向上させて
いました。また,コントロール部に付属する入力端子群が,背面ではなく,イコライザー基板に近い右サイドパ
ネル面に設けられていたのは大きな特徴で,端子とコントロール部を最短距離にしてシールド線の削減と高
域特性の向上を図っていました。また,スピーカーの出力端子は左サイドパネル面に設けられていました。
電源部は,電源トランスとして大型のトロイダルトランスを搭載し,左右チャンネル出力段への電源供給は
それぞれ独立した専用の巻線を使用していました。コンデンサーも大容量のコンデンサー(12,000μF
×4)を搭載していました。また,パワーアンプのプリドライブ段,ドライバー段とプリアンプ部への電源供給
は専用の定電圧回路を使用し,ピーク時にも安定した動作を確保していました。
ボリュームには,指示誤差や左右連動誤差の少ない高精度4連ディテント型を採用していました。入力側と
出力側の両方で絞り込むことにより実用上のSN比を改善していました。
トーンコントロールは,サンスイ独自のトリプルトーンコントロールで,通常の高音・低音に加え中音域のコン
トロールがついていました。回路構成は,全段のフラットアンプを含め,定電流負荷回路をもつデュアルトラ
ンジスターによる差動3段のNF型で,低・高音域回路と中音域回路を独立させた専用回路としていました。
また,トーンセレクターが備えられ,低域600Hz,300Hz,150Hz,高域8kHz,4kHz,2kHzに切換が
でき,広い範囲のトーンコントロールができるようになっていました。
フィルターは,2石のトランジスターを使用したアクティブフィルターで,60Hz(12dB/oct)及び20Hz(12dB
/oct)のローフィルターと,7kHz(12dB/oct)及び12kHz(12dB/oct)のハイフィルターを備えていました。
また,トーンコントロール回路及びフィルター回路はトーンディフィートスイッチでバイパスできるようになってお
り,トーン回路だけバイパスできるようにも切換えられるようになっていました。以上のように,AU-10000は,サンスイらしい精悍なデザインの筐体の中に,電源部をはじめしっかりと物
量を投入して作られたプリメインアンプでした。内容的には,セパレートアンプCA-2000とBA-2000を一
体化したともいえるもので,重厚な作り同様にどっしりした音は,07シリーズ以前のサンスイのアンプのイメ
ージを残した1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎パラレルプッシュプル出力による
110W+110Wのハイパワー
◎ブロック構造のユニークなシャーシ構造
◎サイドパネル入出力端子構造
◎PHONO入力感度,
入力インピーダンスは切替可能
◎サンスイ独自のトリプルトーンコントロール機構
◎高精度4連型マスターボリューム
◎トロイダル型電源トランス使用の強力電源部
◎熱拡散効率の良い大型ヒートシンカー
◎万全を期した確実な保護回路
◎トーン回路,フィルター回路をバイパスする
トーンディフィートスイッチ
◎充実したテープモニター機能とコピー機能
◎ローフィルター/ハイフィルター
■プリアンプ部■
入力感度/入力インピーダンス | PHONO-1:2,4,8mV(30,50,100kΩ)
PHONO-2:2mV(50kΩ) AUX-1,2:150mV(50kΩ) TAPE PLAY(PIN):150mV(50kΩ) TAPE PLAY(DIN):150mV(50kΩ) |
PHONO最大許容入力 | 1000mV(入力感度8mV) |
出力電圧(1kHz) | TAPE REC-1,2(PIN):150mV(47kΩ時)
TAPE REC-1,2(DIN):30mV(無負荷時) PRE OUT:1V(47kΩ時) MAX PRE OUT:12V(THD0.1%) |
全高調波歪率
(20Hz〜20kHz,1V出力) |
PHONO-1:0.01%以下(入力感度4mV)
PHONO-2:0.02%以下 AUX-1,2:0.01%以下 |
周波数特性 | PHONO-1,2(RIAA偏差):20Hz〜20kHz±0.2dB
AUX-1,2:10Hz〜80kHz+0.5dB,−1dB |
SN比(IHF-Aネットワーク
,ショートサーキット) |
PHONO-1:75dB以上(入力感度4mV)
PHONO-2:70dB以上 AUX-1,2:90dB以上 TUNER,TAPE PLAY:90dB以上 |
チャンネルセパレーション
(1kHz) |
PHONO-1,2:60dB以上
AUX,TUNER,TAPE PLAY:60dB以上 |
トーンコントロール | BASS:±10dB(30Hz)
トーンセレクター:150Hz,300Hz,600Hz MIDRANGE:±5dB(1kHz) TREBLE:±10dB(20kHz) トーンセレクター:2kHz,4kHz,8kHz |
ローフィルター | 20Hz(−3dB),12dB/oct
60Hz(−3dB),12dB/oct |
ハイフィルター | 7kHz(−3dB),6dB/oct
12Hz(−3dB),12dB/oct |
■メインアンプ部■
実効出力
(両CH動作,20Hz〜20kHz) |
110W+110W(4Ω,THD0.05%)
110W+110W(8Ω,THD0.03%) |
実効出力
(両CH動作,1kHz) |
110W+110W(4Ω,THD0.03%)
110W+110W(8Ω,THD0.01%) |
全高調波歪率
(20Hz〜20kHz) |
実効出力時:0.05%以下(4Ω)
0.03%以下(8Ω) 1W出力時:0.03%以下(4Ω) 0.02%以下(8Ω) |
混変調歪率
(70Hz:7kHz=4:1) |
0.03%以下(8Ω) |
出力帯域幅
(IHF,THD0.05%,両CH動作) |
5Hz〜50kHz |
ダンピングファクター
(1kHz,両CH動作) |
70(8Ω) |
周波数特性(1W) | 5Hz〜100kHz(−0dB,−1.5dB) |
入力感度/入力インピーダンス | 1V/50kΩ |
残留雑音 | MAIN AMP:200μV(8Ω)
PRE-MAINAMP:300μV(8Ω) |
チャンネルセパレーション
(IHF,1kHz) |
75dB以上 |
■その他■
定格消費電力
(電気用品取締法) |
250W |
寸法 | 460W×176H×407Dmm |
重量 | 19.2kg |
※本ページに掲載したAU-10000の写真,仕様表等は1976年12月の
SANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権が
あります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは
法律で禁じられていますのでご注意ください。
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