SANSUI AU-7700
STEREO AMPLIFIER ¥99,800
1974年に,サンスイが発売したプリメインアンプ。サンスイは,伝統的にプリメインアンプにすぐれた製品を
送り出してきたブランドでした。そんなサンスイのプリメインアンプは,管球式プリメインアンプの名機AU-111
(1965年),サンスイ初のオールシリコントランジスターのプリメインアンプAU-777(1967年),国産初の
ピュアコンプリメンタリー方式のプリメインアンプAU-666など,3桁ナンバーで名機を発売していきました。
そんな3桁シリーズの後を受けて登場したのが4桁ナンバーの新シリーズのプリメインアンプでした。精悍な
ブラックパネルを継承しつつ,各部に新設計を投入した新しい4桁シリーズの発売当時の最上級機であった
のがAU-7700でした。
パワーアンプ部は,初段に差動増幅回路を持った3段ダーリントン接続のドライブ段,パラレルプッシュプル方
式によるパワー段で構成されていました。特性の揃ったパワートランジスターをチャンネルあたり4個組み合わ
せたパラレルプッシュプル方式により,リニアリティがよい電流特性,低歪率,大出力を実現していました。さら
に全段直結ピュアコンプリメンタリー回路の採用により,すぐれた位相特性を確保し,広帯域にわたって大きな
負帰還をかけることで,超低域から超高域までフラットな周波数特性を実現していました。そして,このパワー
段は,大型のヒートシンカーとの一体化構造が採用されていました。
イコライザー部は,初段入力に差動増幅回路を持つ4石構成で,厳選された素子,ユニークなシャーシレス構
造と合わせて高SN比を実現するとともに,許容入力300mVの広ダイナミックレンジを達成し,RIAA偏差は,
30Hz~15kHzにおいて±0.5dB以下に抑えられていました。
トーンコントロール回路は,BASS,TREBLEに加え,中音域をコントロールできるMIDRANGEをプラスした
独自のトリプルトーンコントロール(T.T.C.)を装備していました。トーンアンプの構成は,初段に差動増幅回路
もつ6石構成で,ローノイズトランジスター,高精度のCR素子を厳選して使用していました。可変抵抗器には
アッテネーターと同等の性能で,誤差の少ないディテント型ボリュームを採用していました。これにより,BASS
TREBLEは±13dB,MIDRAGEは±5dBの可変ができ,正確なコントロール特性が確保されていました。
さらに,セレクターによりBASSは150Hz,300Hz,600Hzの3ポイント,TREBLEは,2kHz,4kHz,8kHz
の3ポイントに切替えられるようになっており,1kHz固定のMIDRANGEと合わせ,より細かなコントロールが
可能となっていました。
コンストラクションの上でも,新しい独自の構造が採用されていました。特徴的な形状の裏面パネルの構造は,
PHONO回路をはじめ,入力端子類を上向きに取り付け,イコライザーアンプの基板と最短距離で直結して
いました。これにより,高域特性の劣化原因となるシールド線を使用する必要がなくなり,音質の改善が図ら
れていました。そして,コントロールアンプのプリント基板とロータリースイッチ類,レバースイッチ類,各種ボリュ
ームが直接取り付けられた一体構造がとられ,接続不良などの故障を防ぎ,信頼性を高めていました。パワー
段も上述のようにヒートシンカーとの一体構造がとられ,裏面パネル下部にガッチリと一体化されていました。
さらに,一体構造によるシャーシレス構造にともない,ワンポイントアースが採用されていました。従来,アンプ
では,一般にプリント基板を保持しているシャーシを各回路の共通アースとして使用しているために生じる電流
相互干渉による,音質への微妙な悪影響を抑えていました。
電源部は,大型・重量級の電源トランスと10,000μF×2の大容量電源コンデンサーが採用され,負荷変
動に強く,レギュレーションのよい±2電源が供給されるようになっていました。イコライザー回路とトーン回路
には,パワー段と別系統の巻線による±2電源安定化回路により電源の供給が行われ,パワー段の影響を
受けない構成となっていました。
AU-7700は,上述のトリプルトーンコントロールをはじめ,プリメインアンプとしてかなり多機能に設計されて
いました。フィルターは,ハイフィルターとローフィルターが搭載され,ハイフィルターは,7kHz・6dB/octと
12kHz・12dB/octの2段切替,ローフィルターは,20Hz・12dB/octと60Hz・12dB/octの2段切替となっ
ており,効果的にノイズ成分,サブソニック成分等をカットできるようになっていました。トーンコントロールと
フィルターには,ディフィートスイッチが装備され,トーン回路,フィルター回路を信号が通過しない完全なディ
フィートとなり,音質への影響がカットできるようになっていました。ディフィートは,トーン回路とフィルター回路
を使用,フィルター回路のみ使用を選べるようになっていました。
その他,-15dBと-30dBの2段切替のオーディオミューティング,低高域ブースト(+8dB・10kHz/+10dB
50Hz)と低域のみブースト(+10dB・50Hz)の2段切替のラウドネススイッチ,プリ・メイン切り離しスイッチ
ステレオノーマル/リバース/モノーラルのモード切替スイッチなどが装備されていました。
入力は,PHONO2系統,TUNER,AUX2系統,TAPE2系統が装備されていました。PHONO1は,負荷イン
ピーダンスが30kΩ,50kΩ,100kΩの3段切替が装備され,PHONO2は50kΩ固定となっていました。
TAPE2系統は,DIN端子も装備され,2台のデッキの相互ダビングも可能となっていました。
以上のように,AU-7700は,サンスイ持ち前のすぐれたアンプ技術やノウハウが投入されたプリメインアンプ
で,3桁シリーズから一新された構造にも表れているように,音の面でも,クリアさが増し,新しさが感じられる
ものとなっていました。
SANSUI AU-6600
STEREO AMPLIFIER ¥79,800
AU-7700には基本性能をほぼ継承した直系の弟機AU-6600も発売されていました。トーンセレクター,フィル
ター回路,ラウドネススイッチ,オーディオミューティング,モード切替などの各機能が,段階を少なくするなど,シン
プル化されていること,PHONOが1系統になっていること,パワー段がシングルプッシュプルになるなど規模を縮
小していることなどの違いがありましたが,基本的な回路構成等はほぼ継承され,コストパフォーマンスの高い1台
となっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
高域特性が向上した入力端子直結構造。
トーン回路をバイパス,完全ディフィート方式。
パラレルプッシュプル方式のパワー段。
各ブロック初段に差動増幅回路を採用。
◎高域特性が向上した,裏面パネルの構造
◎信頼性を高めた一体化構造
◎ワンポイントアースにより,音質が向上
◎パラレルプッシュプル方式による全段直結
ピュアコンプリメンタリーOCL回路
◎許容入力300mV(1kHz,実効値)の広ダイ
ナミックレンジのイコライザー回路
◎マニアックな機能を備えたトーンコントロール回路
◎BASS,TREBLEは3ポイント選択できる
トーンセレクタースイッチ
◎2通りの特性を持つ,ハイフィルター
◎2段切替のローフィルター
◎クリックノイズの発生を防止
◎トーン回路,フィルター回路をバイパスする
完全ディフィート方式
◎レギュレーションの良い大型電源部
◎万全を期した4重保護回路
◎2段切替ラウドネススイッチ
◎2段切替オーディオミューティング
◎ステレオノーマル/リバース/モノーラル
モード切替スイッチ
◎テーププレイスイッチ
◎プリ・メイン切離しスイッチ
◎PHONO入力インピーダンス切替
◎スピーカーセレクタースイッチ
◎大型アース端子
◎予備ACコンセント
●デッキの接続を簡単にするDINコンセント
●デザインを引き立たせるダイカスト製サイド
パネルを使用
●感触の良いアルミ無垢の高級メタルツマミ
●使いやすい大型ボリュームツマミとセンター
クリック式のバランスツマミ
●TU-7700とペアーデザイン
●規格●
AU-7700 | AU-6600 | |
定格出力(定格歪率時) | 実効出力 (両ch動作,20Hz~20kHz):50W+50W(8Ω) (両ch動作,1kHz) :55W+55W(8Ω) (片ch動作,1kHz) :58W/58W(8Ω) ミュージックパワー(1kHz) :250W(4Ω) |
実効出力 (両ch動作,20Hz~20kHz):40W+40W(8Ω) (両ch動作,1kHz) :45W+45W(8Ω) (片ch動作,1kHz) :48W/48W(8Ω) ミュージックパワー(1kHz) :190W(4Ω) |
全高調波歪率 | (PRE AMP) :0.1%以下 (MAIN AMP):0.1%以下 (OVER ALL):0.15%以下 |
(PRE AMP) :0.1%以下 (MAIN AMP):0.1%以下 (OVER ALL):0.15%以下 |
混変調歪率 (70Hz:4kHz=4:1SMPTE) |
(PRE AMP) :0.1%以下 (MAIN AMP):0.1%以下 (OVER ALL):0.15%以下 |
(PRE AMP) :0.1%以下 (MAIN AMP):0.1%以下 (OVER ALL):0.15%以下 |
パワーバンドウィズ(IHF) | 5Hz~40kHz | 5Hz~35kHz |
周波数特性(1W出力時) | 10Hz~50kHz +0.5dB,-1dB | 10Hz~40kHz +0.5dB,-1dB |
RIAA偏差(30Hz~15kHz) | ±0.5dB | ±0.5dB |
ダンピングファクター | 30(8Ω) | 30(8Ω) |
入力感度及び入力インピーダンス | PHONO1=2.5mV(30/50/100kΩ) PHONO2=2.5mV(50kΩ) PHONO最大許容入力:300mV TUNER:100mV(50kΩ) AUX:100mV(50kΩ) TAPE MONITOR(PIN/DIN):100mV/(50kΩ) MAIN AMP:800mV(50kΩ) |
PHONO:2.5mV(50kΩ) PHONO最大許容入力:300mV TUNER:100mV(50kΩ) AUX:100mV(50kΩ) TAPE MONITOR(PIN/DIN):100mV/(50kΩ) MAIN AMP:800mV(50kΩ) |
出力電圧(1kHz) | TAPE REC(PIN/DIN):100mV/30mV PRE AMP:800mV |
TAPE REC(PIN/DIN):100mV/30mV PRE AMP:800mV |
チャンネルセパレーション(1kHz) | PHONO:50dB以上 TUNER/AUX:55dB以上 TAPE MONITOR:55dB以上 MAIN AMP:60dB以上 |
PHONO:50dB以上 TUNER/AUX:55dB以上 TAPE MONITOR:55dB以上 MAIN AMP:60dB以上 |
ハム及びノイズ(IHF) | PHONO:75dB以上 TUNER:85dB以上 AUX:85dB以上 MAIN AMP:100dB以上 |
PHONO:75dB以上 TUNER:85dB以上 AUX:85dB以上 MAIN AMP:100dB以上 |
トーンコントロール | BASS:±13dB(50Hz) MIDRANGE:±5dB(1kHz) TREBLE:±13dB(15kHz) |
BASS:±13dB(50Hz) MIDRANGE:±5dB(1kHz) TREBLE:±13dB(15kHz) |
トーンセレクター | BASS:150/300/600Hz TREBLE:2/4/8kHz |
BASS:300/600Hz TREBLE:2/4kHz |
ラウドネス(ボリューム-30dB時) | HIGH&LOW=+8dB(10kHz),+10dB(50Hz) LOW=+10dB(50Hz) |
+8dB(10kHz),+10dB(50Hz) |
ローフィルター | 20Hz=-3dB(12dB/oct) 60Hz=-3dB(12dB/oct) |
70Hz=-3dB(6dB/oct) |
ハイフィルター | 7kHz=-3dB(6dB/oct) 12kHz=-3dB(12dB/oct) |
7kHz=-3dB(6dB/oct) |
ミューティング | -15dB/-30dB | -20dB |
定格消費電力 | 120W | 90W |
寸法 | 434W×130H×315Dmm | 434W×130H×315Dmm |
重量 | 12.3kg | 11.3kg |
※本ページに掲載したAU-7700,AU-6600の写真,仕様表等は1974年
6月のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法
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