AU-777の写真
SANSUI  AU-777
SOLIDSTATE STEREOPHONIC AMPLIFIER  ¥57,700

1967年に,サンスイが発売したプリメインアンプ。この時期は,日本のオーディオアンプも真空管からトラン
ジスターへと移行していった時期でした。サンスイも真空管時代からすでにアンプにおいても評価を確立して
いたブランドで,そんなサンスイ初のオールシリコントランジスターのプリメインアンプがAU-777でした。

AU-777は,初のオールシリコントランジスター式プリメインアンプであるため,回路的には,従来の真空管
アンプの回路をトランジスター化したような構成になっていました。
メインアンプ部は,SEPP(シングルエンド・プッシュプル)のITL(インプット・トランスレス)方式で,ミュージック
パワー70W,実効出力30W/30W,ステレオ実効出力25+25Wを0.5%以下という低歪率で実現してい
ました。

トランジスターアンプの黎明期のこの時期,NPNパワートランジスターに対して対称性を持つPNPパワートラ
ンジスターは,まだ得にくい状況にあり,ピュア(純)コンプリメンタリー方式ではなく,準コンプリメンタリー方式
が採用されていました。AU-777のメインアンプ部には,この準コンプリメンタリー・ダーリントン回路が採用さ
れていました。上述のように,コンプリメンタリー・ダーリントン回路に最適の素子がまだ得られなかったため
C・E(コレクター・エミッター)分割型位相反転回路を使用することで,オールシリコントランジスター化が実現
されていました。シリコントランジスターならではのすぐれた高域特性が得られ,パワーバンド幅は歪率0.5%
で,20〜50,000cpsと大きく広がっていました。
全増幅回路がNFアンプで構成されており,すぐれた周波数特性,歪率,S/Nが実現されていました。メインア
ンプ部の周波数特性は20〜100,000cps±1dB,ハム及び雑音はIHF,入力ショートで100dB,プリアン
プ出力は,定格出力電圧1Vで歪率0.1%以下という特性が確保されていました。

AU-777は,当時のプリメインアンプとして,また,現在のプリメインアンプと比較してもかなり多機能な設計と
なっていました。まず,プリアンプ部とメインアンプ部は,独立して使用できるようになっており,セパレートアン
プとの組み合わせ,チャンネルディバイダーの使用など,多様な使い方が可能となっていました。出力回路は
プリアンプ出力以外に,テープ録音出力1系統,センターチャンネル出力2系統と,合計4系統備えられていま
した。センターチャンネル出力は,モノラルアンプとウーファーを組み合わせて3ディメンションステレオ再生をす
るための出力で,フラット出力と200cpsハイカット出力の2系統となっていました。
入力回路は,PHONO2系統,AUX2系統,TAPE MONITOR1系統,TAPE HEAD2系統の7系統が搭載
されていました。TAPE HEAD入力は,その名の通りテープデッキの再生ヘッドからの出力をダイレクトに入力
する端子で,オープンリールデッキのテープスピードに応じて19cm/secと9.5cm/secそれぞれに合わせた
イコライザー特性を持つ端子が装備されていました。(当時は,テープデッキ(当然オープンリールデッキ)には,
その名の通りプリアンプ(イコライザー)を搭載していないテープデッキ(テープトランスポート)も一般的に売られ
ており,アンプやレシーバーにはそういったテープデッキを接続できる端子が装備されているものが多くありまし
た。)PHONO入力2系統は,PHONO-1が47kΩ,PHONO-2が100kΩにインピーダンスが設定されてお
り,カートリッジに応じて使い分けられるようになっていました。

トーンコントロールは,BASS・TREBLE独立,さらにL・R独立のものが搭載されていました。3dBステップの精
密アッテネーターにより,20cpsおよび20,000cpsでそれぞれ±15dBの範囲での精密な調整ができるよう
になっていました。特性的に歪の少ない2段NF型回路が採用されており,低歪で,良好な周波数特性が確保さ
れていました。
その他,小音量時に聴感を補正するラウドネスコントロール,−20dBのミューティングスイッチ,CRフィードバッ
ク方式のハイフィルター,ローフィルター,低音部をブーストするプレゼンススイッチなどが装備されていました。

以上のように,AU-777は,サンスイ初のオールシリコントランジスターのプリメインアンプとして苦心しながらも
高度に完成された跡がうかがえる意欲作でした。サンスイらしい精悍なブラックパネルとそのイメージに通じる力
強い音をもっており,好評を得ることとなりました。そして,この1台からサンスイのトランジスターアンプでの躍進
が始まることとなりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



プロフェッショナル回路で構成した
高級プリ・メインアンプ


◎SEPP・ ITL方式で超低歪メインアンプ部
◎全シリコントランジスタのメインアンプ
◎初段から最終出力段までの全増幅段を
 NFアンプで構成
◎2段NF型ステップ式トーンコントロール
◎パワートランジスタ保護回路
◎プリアンプ,メインアンプ共にそれぞれ
 単独使用が可能
◎4系統の出力回路,7系統の入力回路
◎2回路のPHONO入力端子
◎有効なヒートシンカーで耐久力抜群
◎センターチャンネル出力端子
◎最高級アンプに必要なすべての回路
◎重厚なエクストルージョンパネル




●規格●


■メインアンプセクション■

定格出力
ミュージックパワー(IHF):70W±1dB
実効出力(左/右)    :30W/30W±1dB
ステレオ実効出力(両チャンネル同時動作):25W×2±1dB
全高調波歪率
0.5%以下
混変調歪率
(60cps:7,000cps=4:1)
0.8%
パワーバンドワイズ(IHF)
20〜50,000cps(歪率0.5%にて)
周波数特性
20〜100,000cps±1dB(常用出力にて)
チャンネル・セパレーション
50dB
ハム及び雑音(IHF)クローズドサーキット
100dB以上
入力感度
(実効出力に要する1,000cpsの入力)
1V
入力インピーダンス
300kΩ
負荷インピーダンス
8〜16Ω
ダンピング・ファクター
24(8Ω負荷にて)
センターチャンネル出力
フラット出力:9.5V
ハイカット出力:1V(fo=200cps)



■プリアンプセクション・その他■

出力電圧
最大出力電圧:5V
定格出力電圧:1V
全高調波歪率
0.1%(定格出力電圧)
周波数特性
20〜70,000Hz+0.5dB−1.5dB
ハム及び雑音(IHF)
PHONO-1,2クローズドサーキット:80dB
TAPE HEAD19cm/secクローズドサーキット :85dB
AUX-1,2オープンサーキット:85dB
入力感度
(定格出力電圧に要する1,000cpsの入力)
PHONO−1           :2mV(47kΩ)
PHONO−2           :2mV(100kΩ)
TAPE HEAD 19cm/sec  :1.5mV(200kΩ)
TAPE HEAD 9.5cm/sec :1.3mV(200kΩ)
AUX-1,2            :140mV(100kΩ)
TAPE MONITOR      :140mV(100kΩ)
録音出力(TAPE REC)
PHONO-1,2:入力に対して37dB(70倍)
TAPE HEAD 19cm/sec  :39dB(90倍)
TAPE HEAD 9.5cm/sec :41dB(110倍)
コントロールおよびスイッチ
トーンコントロール
 BASS    :20cps±15dB(3dB step)
 TREBLE  :20,000cps±15dB(3dB step)
ラウドネスコントロール:
 50cps+8dB(音量調整−30dBにて)
 10,000cps+5dB
ハイフィルター:20,000cps−22dB
ローフィルター:20cps−21dB
ミューティング:20〜20,000cps−20dB
モードスイッチ:STEREO,(NORM or REV),MONO(L or R)
ファンクションスイッチ:1.TAPE HEAD19cm/sec
              2.TAPE HEAD 9.5cm/sec
              3.PHONO-1
              5.AUX-1, 6.AUX-2
テープモニター:1.OFF 2.ON
使用トランジスターおよびダイオード
トランジスタ26石,ダイオード8石,サーミスター×4石
S.C.R×1石
電源
AC100V,117V,220V,240V
消費電力
240V,50〜60cps 165VA(MAX)
寸法
435W×155H×334Dmm
重量
12.3kg



AU-777Dの写真
SANSUI AU-777D
SOLIDSTATE STEREOPHONIC AMPLIFIER  ¥59,500

1969年に,AU-777はAU-777Dにモデルチェンジされました。基本的な回路構成は,そのまま継承され
素子など細かな部分の練り上げと,いくつかの機能面での改良が行われていました。

トーンコントロールは,BASS,TREBLE以外に MIDRANGEを加えたTTC(TRIPLE TONE CONTROL)
が新たに搭載されていました。 低,高音は3dB/stepで±15dB,中音は1dB/stepで±5dBの調整L・R独/
立でできるようになっており,組み合わせで1,331通り以上の変化特性が得られ,より細かな補正ができる
ようになっていました。

入力回路は,7系統と数は変わらないものの,TAPE HEAD入力がなくなり,新たにDIN端子のTAPE入力
とMIC入力が設けられていました。PHONO入力は,PHONO-1が50kΩ固定で,PHONO-2は30kΩ,
50kΩ,100kΩの3段切替になっていました。録音出力も新たにDIN端子が加わっていました。
その他,左右のバランスの正確な調整を行うための,バランスチェック回路が装備されていました。これは,モ
ノラルのシグナルを聴きながら,スイッチをTESTに下げると正常にバランスがとれている場合は音がしなくな
りチェックできるというものでした。

以上のように,AU-777Dは,AU-777をより新しいソース機器に合わせる形で改良されたモデルで,パネル
面も,外観上のイメージはほとんど変わらないように見えますが,ツマミやスイッチの数,位置など細部に変更
がなされ,力強い音の方も基本的に継承され,より練り上げが行われていました。そして,ここでの技術は,
初のピュアコンアンプAU-666へと継承されていきました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



◎準コンプリメンタリ・ダーリントン回路で
 超低歪メインアンプ部
◎初段から最終出力段までの全増幅回路
 をNFアンプで構成
◎プリ・メインアンプ共に単独使用が可能
◎全段をシリコンTRで構成
◎新しい構想による”TTC”を採用
◎ステレオバランスチェック回路
◎パワートランジスタ保護回路
◎2回路のPHONO入力端子
◎4系統の出力回路,7系統の入力回路
◎センターチャンネル出力端子
◎有効なヒートシンカーで耐久力抜群
◎最高級アンプに必要なすべての回路
◎重厚なエクストルージョンパネル




●規格●



■メインアンプ部■

定格出力
ミュージックパワー(IHF):70W±1dB
実効出力(左/右)    :30W/30W±1dB(8Ω)
全高調波歪率
0.5%以下
混変調歪率
(60cps:7,000cps=4:1)
0.8%以下
パワーバンドワイズ(IHF)
20〜50,000Hz(歪率0.5%に於て)
周波数特性
20〜100,000Hz±1dB(常用出力に於て)
チャンネル・セパレーション
50dB以上(1,000Hzにて)
ハム及び雑音(IHF)
100dB以上(クローズドサーキット)
入力感度
(定格出力に対し)
1V(1,000Hzに於て)
入力インピーダンス
300kΩ
負荷インピーダンス
4〜16Ω
ダンピング・ファクター
15(8Ω)
センターチャンネル出力電圧
フラット出力:10V(1,000Hzに於て)
ハイカット出力(fo=159Hz):10V(50Hzに於て)
スイッチ
バランスチェック:NORMAL TEST
スピーカー:OFF,SYSTEM A,SYSTEM B
       SYSTEM A+B




■プリアンプ部■

出力電圧
最大出力電圧:4V
定格出力電圧:1V
全高調波歪率
0.1%(定格出力電圧に於て)
周波数特性
20〜70,000Hz+0.5dB〜−1.5dB
ハム及び雑音(IHF)
PHONO 1及び2:80dB以上(クローズドサーキット)
MIC :        85dB以上(クローズドサーキット)
TUNER:      85dB以上(クローズドサーキット)
AUX:        85dB(オープンサーキット)
入力感度及びインピーダンス
(定格出力電圧に対し1,000Hzに於て)
PHONO 1           :2mV(50kΩ)±3dB
PHONO 2           :2mV(30kΩ,50kΩ及び100kΩの切替)±3dB
MIC                :3.5mV(50kΩ)±3dB
TUNER             :140mV(100kΩ)±3dB
AUX               :140mV(100kΩ)±3dB
TAPE MON(ピンジャック):140mV(100kΩ)±3dB
TAPE RECORDER(DINコネクター):140mV(100kΩ)±3dB
録音出力
(MIC,PHONO1及び2,TUNER
        AUXの定格入力に於て)
TAPE REC(ピンジャック):150mV±3dB
TAPE RECORDER(DINコネクター):30mV±3dB
コントロール
トーンコントロール
 BASS    :20Hz±15dB(3dBステップ)
 MIDRANGE:1,500Hz±5dB(1dBステップ)
 TREBLE  :20,000Hz±15dB(3dBステップ)
ラウドネスコントロール:
 50Hz+8dB 10,000Hz+2.5dB
  (音量調整−30dBに於て) 
スイッチ
ハイフィルター:20,000Hzに於て−18dB (12dB/oct)
ローフィルター:20Hzに於て−26dB(12dB/oct)
ミューティング:−20dB
モード:STEREO REVERSE,STEREO NORMAL
     MONO-L,MONO-R,MONO L+R
セレクター:MIC,PHONO 1,PHONO 2,TUNER,AUX
テープモニター:SOURCE,PLAY BACK
電源
100V 50/60Hz
寸法
435W×155H×334Dmm
重量
12.5kg
※本ページに掲載したAU-777, AU-777Dの写真,仕様表等は1967年,1969年の
 SANSUIのカタログよ り抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を 無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますので
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