SANSUI AU-α777DG
INTAGRATED DIGITAL AMPLIFIER ¥96,500

1988年に,サンスイが発売したプリメインアンプ。DAC(D/Aコンバーター)内蔵型のプリメインで,サンスイとし
ては初のDAC内蔵型モデルでした。1982年のCDプレーヤーの発売により,デジタル オーディオの時代が到来
し,その後,多くの技術者がD/Aコンバーター をアンプと直結した構成を理想と考え,D/Aコンバーター内蔵型ア
ンプを開発していました。そして,1986年にALPINE/LUXMAN が世界初のD/Aコンバーター内蔵型プリメイ
ンアンプLV-109を発売し話題になり ました。その2年後にサンスイが発売したのがAU-α777DGでした。

サンスイは,アンプへのDACの搭載について当初慎重な姿勢で,「究極のDACが誕生するまでは内蔵アンプは
作らない。」と宣言していました。そして,純国産の1ビットDAC・MASHの登場で,満を持してAU-α777DGを
発売しました。
MASHは,NTTと松下電器が共同開発したもので,ビットストリーム方式とともに,1ビットD/Aコンバ ーターの
代表的な方式の1つです。MASHは(Multi Stage Noise
 Shaping)の略で,独自の多段ノイズシェーピン
グ回路を指すことばです。MASH方式の1ビットD/Aコ
ンバーターでは,デジタルフィルターが16ビットデジタル
データをオーバーサンプリングし,折り返し成分を
可聴域外の高域周波数帯に追いやり,MASHにより多段の
ノイズシェーピング(超高域に量子化ノイズ
を集中させる)が行われ,可聴帯域内の優れたSN比と精度を実現し
たものでした。MASHは多段のノイ
ズシェーピングを安定してかけることを可能にした技術でした。MASH内で
は,その後1ビットD/Aコンバ
ーターによりPWM(Pulse Width Modulation)変換が行われ,多段のフィード
バックやフィードフォワー
ドが行われた後ローパスフィルターを通すだけでアナログ信号に変換できるというもの
で,微少信号に対
して強さを持つというものでした。従来のマルチビットに対して,時間軸の正確さにより精度を
出すという,当時全く新しい発想のD/Aコンバーターといわれていました。
AU-α777DGは,このMASHを当時の07シリーズの末弟AU-α607EXTRAに搭載したような形を基本とし
たアンプになっていました。そして,このMASH方式D/Aコンバーターをもとに,より性能を高めたリチウム・タン
タレート(リチウム酸単結晶)素子を使用した独自の「リニア&ダイレクトD/Aコンバージョンシステム(L.D.C.S)」
としていました。リチウムタンタレート素子は,従来のデジタル伝送に利用されているPLLを上回る精度で,水晶
発振器にきわめて近い精度をそなえ,しかもロックレンジが広いという特徴があり,オートサンプリング機能とあ
いまって,様々なデジタルオーディオ機器に柔軟に対応できるというDAC搭載アンプにふさわしい性能を実現し
ていました。



増幅回路の大きな特徴は「α-Xバランスサーキット」でした。サンスイは1984年にAU-D507X,AU-D607X
AU-D707X,AU-D907Xを発売し,バランス構成のアンプを全面的に展開するようになりました。こうしたバラ
ンスアンプ構成を継承・洗練させたのが「α-Xバランスサーキット」でした。通常のアンプは,アンバランス構成で,
アンプの電源回路のアース回路と増幅回路のアース回路(出力のマイナス側)がつながっているため,この逆電流
が増幅回路へ流入し,音質に悪影響を与えます。「α-Xバランスサーキット」は,アースを基準としないバランス回
路構成で,伝送と増幅が同時に行われるため,回路自体がデジタルノイズを含む外来ノイズや同相歪をキャンセル
することができるようになっていました。さらに,-側と+側がそれぞれの専用のアンプをもった4アンプ構成となっ
ており,-側も+側と同じ条件で両方向からスピーカーをドライブするプッシュプル方式となっているため,低歪率
でパワフルなスピーカードライブを実現していました。また,アースから独立しているため,電源系からのノイズは混
入せず,スピーカーからの逆起電力によるIHM(Interface Hum Modulation)の発生も抑えられ,スピーカーの
インピーダンス変化や位相変化にも強くなっていました。

電源部には,バランス電源が搭載されていました。アースラインから独立させクローズドループとした独自のバラ
ンス電源は,+側と-側で常に電流が等しく,電源のアンバランスから生じる悪影響が排除されていました。また
ACラインからのノイズや電源変動にも強く,クリーンな電源供給が可能となっていました。
さらに,デジタル部とアナログ部を電気的に分離するために,デジタル/アナログそれぞれの回路に専用の電源ト
ランスを採用し,トランス部からの徹底したデジタルとアナログの分離を実現していました。これにより,デジタル回
路特有のノイズがアナログ回路に回り込むことによる悪影響を抑えていました。



内部のコンストラクションは,大型電源トランスを主体とする電源部を中央に,ヒートシンカーにマウントされたパ
ワーアンプ部を左右対称に分離して配置したツイン・モノラルコンストラクションが採用され,信号経路,放熱,強
度に配慮されていました。このことにより,デジタル回路部を左チャンネルユニットの外側にシールドして配置す
ることが可能となり,右チャンネル側のアナログ入出力と明確に分離していました。

入力は,デジタルが光×1,同軸×3の4系統,アナログがCD,PHONO,TUNER,LINE,TAPE/DAT×3
PROCESSORの8系統が搭載されていました。PHONOはハイゲインイコライザーが搭載され,MCにも対応
していました。こうしたデジタルを含む多彩なソースに対応したプリメインアンプとして,「07シリーズ」とは異なり
リモートコントロールが装備されていました。通常リモコンを装備するためには,アナログスイッチやリレースイッ
チを使用しなければなりませんが,AU-α777DGには,新開発のダイレクトアクセスロータリースイッチが採用
されていました。動作はメカ式でありながら,マイコンのコントロールにより,ボリュームのアップダウンをはじめ,
様々なソースのスイッチングを可能としたリモコン化を実現し,安定したロータリースイッチの動作を獲得して,
操作性の向上と同時に,音質の劣化も的確に抑えていました。



その他機能的には,BASS・TREBLE独立のトーンコントロール,ラウドネス,サブソニック・フィルター,ミュー
ティング,レックセレクターなど,プリメインアンプとして十分な機能が搭載されていました。
また,すべての入力を,ミューティング,サブソニック・フィルター,バランスコントロールのアクセサリー回路をパ
スしてα-Xバランスサーキットに直結する,ソースダイレクト機能に加え,DACからの入力を直接パワーアンプ
に直結するデジタルダイレクト機能も装備されていました。

以上のように,AU-α777DGは,サンスイ初のDAC搭載アンプとして,新しい方式のDACを持ち前のすぐれ
た性能のプリメインアンプに搭載した正攻法の設計で,プリメインアンプとして濁りのない澄んだ音を実現して
いました。


SANSUI AU-α999DG
INTEGRATED DIGITAL AMPLIFIER ¥135,000

翌年の1989年には,上級機のAU-α999DGが発売されました。回路構成等基本的な部分は同一で,電
源部,出力段等が大型化され,出力もアップしていました。外観上は,サイドウッドパネルが付いていました。
(そのためか,AU-α777DGにもサイドウッドパネル(¥10,000)がオプションで発売されました。)



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



AU-α777DG

進取のスピリッツが,音に活きる。

◎周辺技術にさらに磨きをかけた,
 MASH方式NEW L.D.C.S。
◎2つの専用トランスを搭載。
 デジタル部とアナログ部を合理的に分離。
◎サンスイの音楽性能をそのまま受け継いだ,
 α-Xバランス&ツイン・モノラル・コンストラクション。
◎デジタル入力4系統,アナログ入力8系統。
 マルチデジタル対応のコントロールセンター。
◎デジタルアンプの楽しさを広げる。
 リモートコントローラーを装備。

●デジタル入力4系統(光×1,同軸×3)
●アナログ8系統(CD,PHONO(MC・MM),TUNER,
 LINE,TAPE/DAT-1・2・3,PROCESSOR)
●ソースダイレクトオペレーション
●レックセレクター
●ダイレクトアクセスロータリースイッチ
●金メッキ入力端子
●極性表示付極太電源コード/ACアウトレット
●リアルサイドウッド(オプション)



AU-α999DG

饒舌なサウンドが,心をくすぐる。

◎アナログにいちばん近い再生を実現。
 ゼロクロス歪,ノンリニア歪を解消するMASH方式。
◎リチュウム・タンタレート素子を採用。音質を磨いた
 NEWリニア&ダイレクトD/Aコンバージョンシステム。
◎デジタル/アナログ,2つの専用トランスを搭載。
 アナログ系を強力化して,音質を大幅に向上。
◎純粋音楽回路,α-Xバランス・サーキット。
◎オーディオアンプの本質を追究。
 ツイン・モノラル・コンストラクション。
◎デジタルアンプの楽しさを広げる。
 リモートコントローラーを装備。

●デジタル入力4系統(光×1,同軸×3)
●アナログ8系統(CD,PHONO(MC・MM),TUNER,
 LINE,TAPE/DAT-1・2・3,PROCESSOR)
●ソースダイレクトオペレーション
●レックセレクター
●ダイレクトアクセスロータリースイッチ
●リアルサイドウッド
●金メッキ入力端子
●極性表示付極太電源コード/ACアウトレット




●主な仕様●



●デジタル部●


AU-α777DG AU-α999DG
周波数特性 4Hz~20kHz(±0.5dB) 4Hz~20kHz(±0.5dB) 
SN比 108dB以上(EIAJ) 108dB以上(EIAJ) 
高調波歪率 0.003%以下 0.003%以下 
デジタル入力レベル(インピーダンス) 0.5Vp-p(75Ω) 0.5Vp-p(75Ω) 
光入力 660nm(発光波長)  660nm(発光波長)  


●パワーアンプ部●


実効出力
(10Hz~20kHz,両ch駆動)
105W+105W(6Ω)
90W+90W(8Ω)
110W+110W(6Ω)
95W+95W(8Ω) 
全高調波歪率(実効出力時) 0.003%以下(8Ω) 0.003%以下(8Ω) 
混変調歪率(実効出力時) 0.003%以下(8Ω) 0.003%以下(8Ω) 
ダンピングファクター 150(8Ω) 150(8Ω) 
周波数特性(1W) DC~200kHz(+0dB,-3dB) DC~200kHz(+0dB,-3dB) 
ダイナミックパワー  155W(6Ω),220W(4Ω),230W(2Ω)  155W(6Ω),220W(4Ω),280W(2Ω) 
TIM歪(Sawtooth) 測定限界値以下 測定限界値以下 
スルーレイト ±180V/μsec ±180V/μsec 
ライズタイム 0.6μsec 0.6μsec 

 

●プリアンプ部●


入力感度/入力インピーダンス(1kHz) PHONO(MM):2.5mV/47kΩ 
PHONO(MC):300μV/100Ω
CD,TUNER,LINE,TAPE/DAT-1・2・3
         :150mV/20kΩ
PHONO(MM):2.5mV/47kΩ 
PHONO(MC):300μV/100Ω
CD,TUNER,LINE,TAPE/DAT-1・2・3
         :150mV/20kΩ 
PHONO最大許容入力(1kHz) MM:210mV(THD0.01%) 
MC:21mV(THD0.1%) 
MM:210mV(THD0.01%) 
MC:21mV(THD0.1%) 
周波数特性 PHONO(MM):20Hz~20kHz(±0.2dB)
CD,TUNER,LINE,TAPE/DAT-1・2・3
         :DC~200kHz(+0dB,-3dB)
PHONO(MM):20Hz~20kHz(±0.2dB)
CD,TUNER,LINE,TAPE/DAT-1・2・3
         :DC~200kHz(+0dB,-3dB) 
SN比
(Aネットワーク)
PHONO(MM):88dB以上 
PHONO(MC):70dB以上
CD,TUNER,LINE,TAPE-1・2・3:110dB以上
PHONO(MM):88dB以上 
PHONO(MC):70dB以上
CD,TUNER,LINE,TAPE-1・2・3:110dB以上 
トーンコントロール BASS最大変化量    ±5dB(50Hz) 
TREBLE最大変化量  ±5dB(15kHz) 
BASS最大変化量    ±5dB(50Hz) 
TREBLE最大変化量  ±5dB(15kHz) 
サブソニック・フィルター 16Hz(-3dB,6dB/oct) 16Hz(-3dB,6dB/oct) 
ラウドネス  +6dB(50Hz),+4dB(10kHz)  +6dB(50Hz),+4dB(10kHz) 
定格消費電力 250W 250W 
寸法 430(W)×163(H)×450(D)mm 468(W)×163(H)×450(D)mm 
重量 18.2kg 19.6kg

※本ページに掲載したAU-α777DG,AU-α999DGの写真,仕様表等は1989年
8月のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますの
でご注意ください。                           


★メニューにもどる
  
  
★プリメインアンプPART8のページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp

inserted by FC2 system