YAMAHA B-4
NATURAL SOUND STEREO POWER AMPLIFIER ¥138,000 

1978年に,ヤマハが発売したステレオパワーアンプ。ヤマハは,1974年にB-1,1976年にB-2,1977年
B-3と,V-FET(SIT=STATIC INDUCTION TRANSISTOR=静電誘導トランジスター)を搭載したパ
ワーアンプを発売し,セパレートアンプの世界で高い評価を得ていきました。そうしたヤマハがエントリーモデル
として発売したステレオパワーアンプがB-4でした。

B-4の基本的な回路構成は,初段はローノイズデュアルFETカスコードブートストラップ差動増幅回路,プリド
ライブ段はカスコード接続カレントミラープッシュプル差動増幅,出力段はHigh-fTトランジスター採用の3段ダー
リントン接続ピュアコンプリメンタリーパラレルプッシュプルOCLという構成になっていました。

電圧増幅段は,初段に,ローノイズでHigh-gmのデュアルFETによるソースフォロアと,カスコード接続された
デュアルトランジスターによる平衡送り出し差動増幅回路にブートストラップ回路をアセンブリーし,2段目は,カ
スコード接続カレントミラー回路によるプッシュプル差動増幅回路となっていました。
初段のデュアルFETは,ローノイズでgmの高い2つのFETを電気的,熱的特性を揃えて,同一のパッケージ
に収めたもので,すぐれたペア特性が実現されたものでした。そして,カスコードブートストラップ回路の採用に
より,信号源インピーダンスの変化による歪率の増加が少なく抑えられていました。また,プリドライブ段のカレ
ントミラー回路は,電圧増幅段として充分なゲインを得るとともに,2つのトランジスターが一種のプッシュプル回
路の働きをし,偶数次の高調波歪を打ち消す効果が得られるものでした。DCアンプとしてのDC電圧の安定性
も,これらの回路により非常に少なく抑えられ,安定でハイスルーレイト,低歪率な電圧増幅段が実現されてい
ました。さらに,リアパネルのスイッチでDC入力のカットも可能で,その際には,入力部に吟味されたマイラーコ
ンデンサーが1個シリーズに接続されるようになっていました。

電力増幅回路は,High Speed High-ftのトランジスターで構成された3段ダーリントン接続のピュアコンプリメ
ンタリーパラレルプッシュプルOCLという構成になっていました。ペア特性の良く揃ったHigh-fTトランジスターを
3段構成とすることで,充分なゲインを広帯域にわたって得るとともに,各段とも蓄積負荷の速やかな放電と無
負荷時の安定度が確保されていました。さらに,ドライブ段のE-E(エミッタ-エミッタ)間にダイオードと抵抗をシ
リーズに接続し,抵抗値を33Ωと十分低い値に設定することで,ベース領域の電荷放電インピーダンスが下が
り,立ち上がり,立ち下がりの速い,ハイスピードな増幅動作につながっていました。

電力増回路は,フロントパネルのスイッチを切り換えることで,等音量のままB級動作(120W+120W)とA級
動作(30W+30W)の切り換えが可能となっていました。これは,ヤマハ独自のバイアス回路により,電力増
幅段の電源電圧が切り換わると,その変化を自動的に検出して,バイアス電流を切り換えるものでした。その
動作は,B級バイアスにおいて各トランジスターのVBE温度特性を充分に補正しておき,A級動作時には,温度
特性のない定電圧バイアスを自動的にB級時に加算するようになっていました。この方式により,アイドリング電
流の温度安定度が確保されるとともに,広帯域にわたってより低歪率が実現されていました。

B-4には,新しい機能としてアンプの出力抵抗を+1Ω〜0〜−1Ωにわたって連続可変できるRoコントロール
(出力インピーダンスコントロール)回路が新開発され,搭載されていました。アンプの出力電流を高精度なメタ
ルクラッド抵抗で検出し,反転バッファアンプで位相反転,パワーアンプのNFB(ネガティブフィードバック)回路
へ,電流信号とNFB〜PFB(ポジティブフィードバック)を任意に加算することにより,Roをコントロールするとい
う仕組みになっていました。Roコントロールにより,スピーカーのQ特性や,スピーカーコードの直流抵抗をアン
プ側から積極的にコントロールすることで,音質の調整ができるというもので,アンプの実特性をスピーカーにま
で拡大しようとしたものでした。

電源部は,L・R完全独立2電源方式が採用されていました。L・R独立の2つの大容量電源トランスとオーディオ
用の低倍率エッチング大容量15,000μF(75V)ケミコンが搭載され,この電解コンデンサーの限界を補うため
に,パラにマイラーコンデンサーを接続し,高域での電源インピーダンスの上昇が抑えられていました。さらに,磁
性材で厳密にシールドしケミコンどうしのフラックスの干渉を防止し,熱的に保護していました。また,電流ループ
の発生を少なくし,ループ内でのインダクタンスを減少させて,高域まで電源インピーダンスが非常に低く抑えら
れ,過渡特性にすぐれた電源回路が構成されていました。また,プリドライブ段も,L・R独立したローカル定電圧電
源で,他段からの影響の少ない安定性が確保されていました。

コンストラクションは,左右対称の2モノラルコンストラクションが採用され,チャンネル間のクロストークによる悪影
響が抑えられていました。また,アンプ全体で生じる電流ループの減少が図られ,内部フラックスがシャーシの磁
気特性の影響を受けて起きる歪みが抑えられていました。また,大電流が流れるパワー段のアースには,1.5mm
厚の銅板が用いられ,インピーダンスの低減が図られていました。
パーツの面では,大容量低倍率エッチングケミコン,マイラフィルムコンデンサー,スチロールコンデンサー,高精
度メタルクラッド抵抗,無誘導巻エミッタ抵抗,直径2.3mmの導線を使った直流抵抗の少ないスピーカーコイルな
ど,しっかりしたものが投入されていました。
デザイン的には,3つの四角いイルミネーション(自照式)スイッチとRoコントロールのスライドボリュームが搭載さ
れたフロントパネルに,天板と上半分の側面がパンチングメタル仕上げという斬新なもので,ヤマハらしさを感じさ
せるセンスの良さもあったと思います。

以上のように,B-4は,ヤマハのパワーアンプ中,エントリーモデル的存在ながら,しっかりした中身を持ち,その
デザインは当時として非常に個性的なものでしたが,音質的には非常にナチュラルともいえるもので,音楽に幅広
く対応できるものでした。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




画期的な《Roコントロール》を開発装備し,豪華な30W+30Wの
A級動作を内蔵するなど《音》への思想をさらに深化させた,低歪
率で高SN比・広帯域の120W+120W・DC構成ハイパワーアンプ




●B-4の主な規格●

定格出力    Class B 8Ω 10Hz〜30kHz歪0.007%  120W+120W
Class A 8Ω 10Hz〜30kHz歪0.007%    30W+30W
パワーバンド幅     Class B 8Ω歪0.02%60W  10Hz〜100kHz
Class A 8Ω歪0.008%15W 10Hz〜100kHz
入力感度/入力インピーダンス 
  8Ω・100W
1V/25kΩ
周波数特性 8Ω 100W   MODE DC 10Hz/0dB,1kHz/0dB,100kHz/−1±1dB
MODE AC 10Hz/−2±1dB,1kHz/0dB,100kHz/−1±1dB
全高調波歪率 Class B 10Hz〜50kHz(8Ω60W) 0.007%以下
            100kHz(8Ω60W)  0.02%以下
Class A 10Hz〜50kHz(8Ω15W) 0.004%以下
            100kHz(8Ω15W) 0.008%以下
混変調(IM)歪率 Class B(8Ω60W)  0.002%以下
Class A(8Ω15W)  0.002%以下
出力インピーダンスコントロール 可変インピーダンス範囲(1kHz) +1Ω〜0Ω〜−1Ω
可変周波数帯域  10Hz〜20kHz
セパレーション L→R.R→L 20kHz/70dB以上
 1kHz/80dB以上
残留ノイズ(IHF-A) −87dBV
使用ヒューズ T5A250V
定格電源電圧・周波数 AC100V・50/60Hz
定格消費電力 330W
ACアウトレット(非連動) 100W
外形寸法 435(W)×145.5(H)×381(D)mm
重量 21kg
※ 本ページに掲載したB-4写真,仕様表等は1980年5月のYAMAHAの
 カタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作権があります。したが
 って,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。

  
 
 
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