SANSUI BA-2000
POWER-AMPLIFIER ¥120,000
1976年に,サンスイが発売したパワーアンプ。サンスイは,プリメインアンプの分野で数多くの名機を
生み出し,プリメインアンプのイメージが強いブランドですが,セパレートアンプにおいても,持ち前のア
ンプ技術を投入したすぐれたアンプを作っていました。1975年には,コントロールアンプCA-3000
パワーアンプBA-3000BA-5000を発売し,弟機として発売されたパワーアンプがBA-2000でし
た。

回路構成は,サンスイがプリメインアンプAU-666以来,採用してきた全段直結純コンプリメンタリー
OCL回路をさらに磨き上げて採用していました。プリドライブ段は,アクティブロード付A級増幅2段,ド
ライブ段は,3段ダーリントン接続によるパラレルプッシュプル方式となっていました。これらの回路の
要となる差動増幅部は,動作点や温度特性の揃ったデュアルトランジスタを使用し,中点電位の安定
度を高めるとともに,定電流回路とカレントミラー回路との組み合わせで,直流的なバランスを一層安
定にし,また,正確な差動増幅の動作度合いを示すCMRR(同相除去比)も十分な値を実現していま
した。
終段は,チャンネルあたり4石,2石ずつ特性の揃った大出力トランジスタによるパラレルプッシュプル
方式を採用し,実効出力110W+110W(両cH動作,8Ω,歪率0.03%以下)の再出力を20Hz~
20kHzの帯域で実現していました。

パーツの面でも,最新の超低雑音トランジスタ,損失もれや電流の少ないローリーク型コンデンサー
ヒューズ抵抗,不燃性抵抗,バリスターなど,高級部品を積極的に採用し,物理特性だけでなく厳密な
試聴テストにより厳選されていました。従来の抵抗負荷より利得がとれ,安定したNFにより,混変調
高調波歪率とも0.03%以下,SN比115dB以上というすぐれた特性を広帯域で実現していました。

電源部は,L・R独立2巻線のトロイダルトランスを搭載し,大容量シリコン整流器と大容量電解コンデ
ンサーの使用とあいまって,大型で強力な電源部となっていました。また,プリドライブ段,ドライブ段に
は独立して±2電源を供給し,さらに定電流回路を採用したプリドライブ段には,安定化電源回路を設
けていました。



内部レイアウトは,ドライバー段,出力段,電源部をそれぞれ完全に分離したブロック別構成の合理的
なレイアウトが採用され,各ブロック段での相互干渉や影響を防止し,各ブロックを最短距離で機能的
に結び,高域特性の劣化を招くシールド線を極力排除していました。
大出力を連続的に安定して駆動させるために,煙突効果を利用したチムニータイプの大型ヒートシン
クを採用していました。このヒートシンカーは,包絡体積1,200ccの対流放熱器を4個採用したもの
で,常に下部から冷たい空気を吸収するという一種の強制空冷作用を持ち,効率の良い放熱が行わ
れ,出力トランジスタの発熱をより効果的に拡散して,熱的信頼性の向上を図っていました。

前面パネルには,大型のパワーメーターが搭載されていました。対数圧縮回路による実効値表示型
で,パルス的信号や小出力時の信号に対しても追従して,直読できるようになっていました。次子範
囲は,×1,×1/10,×1/100の3段に切り替えられ,0.001Wから110Wまで,デシベルレンジ
は,-34dBから+3dBまで広範囲にわたって読み取れるようになっていました。前面パネルには,さ
らに,L・R独立でレベルコントロールツマミが装備されていました。

保護回路として,出力トランジスタの保護として,安全動作領域(ASO)の検知によるカレントリミッター
回路やポジスターによる温度検出回路を,また,スピーカー保護としては,リレーと組み合わせた直流
検出回路を搭載し,万一に備えていました。これらの保護機能が動作中は,前面パネルのインジケー
ターが赤く点灯するようになっていました。また,大出力アンプで問題となる電源ON時のインラッシュ
電流については,専用のリレー及び防止回路を設けていました。

以上のように,BA-2000は,サンスイの当時のパワーアンプとしてはエントリーモデルでしたが,しっ
かりとした作りのコストパフォーマンスにすぐれた1台でした。上級機ゆずりのサンスイらしい精悍なデ
ザインで,力強さを感じる外観でしたが,上級機が力強い音を特徴としていたのに対し,BA-2000は
少し真空管アンプに通じるような,細やかで暖かい音をもっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



セパレートアンプの新鋭機

小出力から大出力まで低歪率で
より透明な音質

◎パラレルプッシュプル方式で余裕ある
 110W+110Wのハイパワー
◎0.03%以下の低歪率,SN比115dB以上
 の高品位,高音質設計
◎トロイダルトランス採用の大型強力電源部
◎大出力パワーアンプにふさわしい確実な
 保護回路
◎精悍に出力信号のチェックができる大型
 パワーメーター
◎音質を考慮した内部レイアウト
◎包絡体積1,200cc×4の効率の良い
 大型ヒートシンカー




●BA-2000の規格●

実効出力(両CH動作,20Hz~20kHz)  110W+110W(4Ω,THD0.05%)
110W+110W(8Ω,THD0.03%) 
実効出力(両CH動作,1kHz)  110W+110W(4Ω,THD0.03%)
110W+110W(8Ω,THD0.01%)
出力帯域幅(IHF)  5Hz~50kHz(8Ω,THD0.05%)  
全高調波歪率  1W出力時
 0.03%以下(4Ω)
 0.02%以下(8Ω)
定格出力時
 0.05%以下(4Ω)
 0.03%以下(8Ω) 
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1 SMPTE)  0.03%以下 
周波数特性(1W出力時)  5Hz~100kHz(+0dB,-1dB) 
チャンネルセパレーション(1kHz)  75dB以上 
SN比(IHF,Aネットワーク,ショートサーキット)  115dB以上 
入力感度/入力インピーダンス(1kHz)  1000mV/50kΩ 
定格消費電力(最大)  245W(910W) 
重量  18.3kg 
外形寸法  460W×176H×415Dmm 
※本ページに掲載したBA-2000の写真,仕様表等は1976年12月
 のSANSUIの
カタログより抜粋したもので,サンスイ電気株式会社
 に著作権があります。した
がって,これらの写真等を無断で転載・
 引用等することは法律で禁じられていま
すのでご注意ください。     
  
  
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