BL-10Xの写真
MICRO BL-10X
BELT-DRIVE PLAYER SYSTEM ¥99,800

1982年に,マイクロが発売したプレーヤーシステム。マイクロはアナログプレーヤーのブランドとして
オーディオファンに支持を受けているメーカーで,正攻法に物量を投入した製品を多くリリースし,大型
で重量級のプレーヤーが特徴として知られていました。そうした中,比較的コンパクトなオーソドックス
な外観のプレーヤーながら,しっかりと技術と物量が投入された1台が,BL-10Xでした。

ターンテーブルは,音響特性にすぐれたヒドロ系特殊アルミニウムを,通常の高圧鋳造に比べて内部
歪みの少ない低圧鋳造したもので,直径306mm,重量2.5kg,慣性モーメント400kg・cmと いう重
量級でした。平面部の厚さもクラス最大の7mmというしっかりしたものが搭載されていました。
この重量級ターンテーブルは,マイクロが得意とする超精密オイルバス方式ターンテーブルシャフトが
支え,滑らかな回転が確保されていました。ターンテーブルの駆動方式は,モーターの振動を遮断でき
るマイクロ得意のベルトドライブ方式で,FGサーボDCモーターが搭載され,±3%以内の速度調整機
構が装備されていました。駆動ベルトには,経年変化の少ないカーボン配合のウレタン材を精密加工
したものが使用されていました。

BL-10Xのターンテーブル

BL-10Xの大きな特徴として,比較的小型にまとめられていながら,プレーヤーシステム全体としての
高剛性化が図られていることでした。上部から見ると,通常の木製キャビネットに見えますが,高剛性
メインフレームが下部から支える構造となっていました。このメインフレームは,内部損失が大きく,比
重は2.5と金属なみで高い剛性を持つ,マイクロ独自の防振コンパウンドが使用されていました。さら
に,このメインフレームの下部には,大きくX型のリブを成型し,Xの交点の位置にターンテーブルシャ
フトを置き,四方に伸びた先端部に4つのサスペンションとトーンアームを配するという構造になってい
ました。これは,回転メカニズムとトーンアームを強固に一体化して,振動循環系の同位相化を図り,
ターンテーブルとトーンアームの振動モードの位相ズレや音溝からの振動エネルギーを電気信号に変
換する際のロスを追放しようとしたもので,同社がダイレクトカップリングと称して採用してきた構造を
さらに推し進めた構造でした。

BL-10Xの構造
フレーム下部インシュレーター内部構造インシュレーター配置

プレーヤーシステム全体を支える脚部には新開発の「高支点エアースプリングサスペンション」が搭載さ
れていました。空気とオイルの粘性抵抗,さらに特殊形状のゴム,円錐状の金属スプリングと,それぞれ
レゾナンス(共鳴・共振)の異なる4つの素材を組み合わせた構造で,きわめてワイドレンジな振動減衰特
性が実現され,上下,左右,前後,様々な方向の外部振動を遮断し,高いハウリングマージンが確保され
ていました。さらに,取付支点を大幅に高めた高支点設計により,支点に対するプレーヤー全体の重心が
下がり,安定性が非常に高くなっていました。また,サスペンション上部に高さ調整機構を設けることで,プ
レーヤーの設置状態のまま,上から水平調整が行えるようになっていました。

BL-10Xのアーム

トーンアームは,マイクロが新たに開発したスタティックバランス型のものが搭載されていました。垂直軸受け
に,このクラスの付属アームでは数少ないナイフエッジ式が採用され,高強度の特殊ステンレスの超精密加工
により,水平・垂直とも25mgという高感度が実現されていました。さらに,パイプホルダー部分はナイフエッジ
との最適バランス重量にチューニングされ,すぐれたトレース性能が確保されていました。また,S字型ユニバ
ーサルパイプととインテグラル型ストレートパイプ(別売)のアームパイプ交換式になっており,カートリッジ等に
よる使い分けができるようになっていました。パイプ本体との接合部には,コンピュータ用の超低抵抗型コネク
ターが用いられ,シグナルケーブルには,直径0.05mm30芯の純銅線(99.99%)の極太タイプが使用され
ていました。
BL-10Xのトーンアームには,専用のモータードライブ方式によるアームリフターが装備され,プッシュボタンで
ワンタッチでアームのアップ/ダウンができるようになっていました。また,レコード演奏終了時には非接触式の
エンドセンサーによるオートアップ機構も装備されていました。

以上のように,BL-10Xは,一見大袈裟でもなく,オーソドックスなプレーヤーシステムですが,内部の構造を
はじめ各部にしっかりと物量と技術が投入された,音質重視の本格的な作りで,マイクロらしさもしっかり持った
コストパフォーマンスの高い1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



                                             きわめつけ 
プレーヤーは,堅牢さの極致へ到達した。

◎新素材X型高剛性メインフレーム
◎高支点エアースプリングサスペンション(PAT.Pending)
◎新開発ナイフエッジ式スタティックバランストーンアーム
◎圧肉設計の特殊アルミ低圧鋳造ターンテーブル
◎レイアウトフリーのコンパクト設計

●電子コントロールアームリフター
●オートアップ機構
●アームリフターの動作状態がひと目で分かる便利な
 イ ンジケーターランプ付
●サスペンション上部にアジャスター機構を設けたので
  設置状態のまま上から手軽に水平調整が行えます。




●BL-10Xの規格●

■駆動部■

駆動方式 ベルトドライブ
モーター FGサーボDCモーター
回転数 331/3,45,78rpm
回転数微調整範囲 ±3%
ターンテーブル アルミ製,直径306mm,重量2.5kg
慣性質量
400kg・cm
回転ムラ 0.025%以下(WRMS)
SN比 60dB以上(JIS)
回転数微調整範囲
±3%以内



■トーンアーム部■

形式
パイプ交換式スタティックバランス型
垂直軸受
ナイフエッジ式
全長
307mm(ストレートパイプ装着時)
有効長 222mm
オーバーハング 15mm
オフセット角 22°30’
トラッキングエラー角 1°30’以下
水平動作感度
25mg
垂直動作感度
25mg
針圧可変範囲
0〜3g直読式
適合カートリッジ自重 S字パイプ:12.5〜20g
S字パイプ+サブウェイトA:20〜27g
S字パイプ+サブウェイトA:27〜32g(シェル重量を含む)
ストレートパイプ:4〜9g
ストレートパイプ+サブウェイトB:10〜14.5g
インサイドフォースキャンセラー
針圧対応式



■総合■

電源
AC100V,50/60Hz両用
消費電力
5W
寸法
450W×352D×160Hmm
重量 12.5kg

※本ページに掲載したBL-10Xの写真・仕様表等は1982年のMICRO
 のカタログより抜粋したもので,マイクロ精機株式会社に著作権があり
 ます。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは
 法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
★メニューにもどる
  
   

★アナログプレーヤーPART5のページにもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。

メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system