CORAL BL-20D
BACKLOADED HORN SPEAKER SYSTEM ¥43,600
                                  ¥49,800(1976年頃)
1971年に,コーラルが発売したスピーカーシステム。コーラルは,1946年に創業したブランドで,
コーン紙,スピーカーユニット製造から始まっていました。そして,多くのコストパフォーマンスにす
ぐれたユニットを発売していました。そのため,自作派のユーザーなどからは,ユニットメーカーと
して高い支持を得ていました。そんなコーラルだけに,自作派には人気があったものの,一般の
オーディオメーカーが,あまり取り組んでいなかったバックロードホーン方式のエンクロージャーや
スピーカーシステムをいくつも発売していました。そうした中,自社製の人気ユニットBETA-8を
使って作り上げたバックロードホーンスピーカーシステムがBL-20Dでした。

バックロードホーンは,その名の通り,スピーカーユニットの後方にホーンを設けたエンクロージャ
ーの型式で,スピーカー後方から発生する低音をホーンによって増幅する方式でした。大出力の
アンプが少なかった時代,小出力のアンプでも十分な音圧が得られる高能率のスピーカーユニッ
トを用いた高能率スピーカーシステムは,中高音域に比べて低音域がダラ下がりになり,十分な
低音が得られなくなるため,これを補うものとしてバックロードホーンが使われていました。低音を
補うバックロードホーン自体は,1mを超える長大なものとなるため,エンクロージャー内部で折り
曲げた形状にするフォールデッドホーンにすることが一般的で(そうしないと部屋自体がホーンと
なる建築物になることも?)1950年代には,イギリスのタンノイなどが製品化していました。



こうした折りたたみ形状により,実質的に長大なホーンを実現するとともに,中高音を減衰させ,
ユニット前面に放出される中高音域への影響を抑える効果も得られるようになっていました。
BL-20Dのホーンは,CWホーン(Constant Widthホーン=横幅が一定でタテ方向にだけ幅
が広がっていく形状のホーン)で,展開すると全長1800mmにも及ぶもので,音響能率が高く,
過渡特性がよく,音道内部は最少限の吸音材により,有害な高調波を抑えるように設計されて
いました。
栓材の合板による頑丈で美しいエンクロージャーは,高さ88cmに及ぶ大きさで,ユニットを含
めた重量も30kgを超える堂々たるものとなっていました。


CORAL BETA-8
20cm FULL RANGE SPEAKER UNIT ¥14,000
                              ¥17,500(1981年頃)


BL-D20に搭載されたスピーカーユニットBETA-8は,1968年に,コーラルが作り上げたフル
レンジスピーカーユニットで,当時,コーラルが「世界に向けて」と称していたほどの力作でもあり
10年以上のロングセラーを続け,名器と呼ばれるスピーカーユニットとなりました。

口径は20cm,中央部には高域用のサブコーンが組み合わされた構造になっていました。振動
板には主原料のパルプに化学繊維を混入したパルプコーンで,あえて着色もせずに白色のまま
として,従来のスピーカーに見られる厚さや密度の不均一を抑えていました。実際に,かなり薄い
ながらも,強度の高いコーン紙でした。高域用のサブコーンには,強靱で高密度のパルプに特殊
処理を施したものを使用していました。さらに,中央には,指向性を改善する星形ディフューザー
が設けられ,振動板を支えるエッジには,コーラル独自のクロスエッジの一種であるスカイバーエ
ッジが採用されていました。赤く塗装されたフレームは,アルミダイキャスト製のしっかりしたもの
となっていました。
駆動系は,磁束密度15,500gaussのマグネットと銅線とアルミ線の長所を併せもつ銅皮膜アル
ミニウム線を使用したボイスコイルを搭載した強力なもので,ユニットトータルでは,鮮やかな,力
強い中高域を持った鮮烈な音を実現していました。

以上のように,BL-20Dは,名器BETA-8をバックロードホーン・エンクロージャーと組み合わせ
ることで,華やかな中高域としっかりとした低音をあわせもつ,鳴りっぷりのよい音を実現していま
した。これ以降,1975年頃からバックロードホーンシステムが他社からもいくつか発売され,一時
盛り上がりを見せましたが,ブームとしてはあまり長続きせず,その魅力は自作スピーカーなどで
継承されていくことになりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音楽を彩る未来派
BL-20D

抜群の高能率を誇る世界の名器BETA-8がバック
ロードホーンタイプによって,さらに豊かな中低音域
が甦えりました。BETAは外国製の一流モニター用
スピーカーをも凌駕する性能を誇って居ります。

◎CW方式を採用し,低音がホーンか
 ら反転して出た中・低音がパネル面
 からの音にプラスされて実に豊かな
 中低音を得ています。
◎抜群の放射能力の為お部屋を選び
 ません。
◎選びぬかれた音響仕上げと入念な
 塗装のキャビネット使用
◎手造りの良さを充分とり入れた高級
 品です。




●主要規格●


■BL-20D■

出力音圧レベル  100dB(新JIS) 
プログラムソース入力  30W
重量  30.5kg 
外形寸法 400W×880H×400Dmm 



■BETA-8■

公称インピーダンス 8Ω 
プログラムソース入力  35W 
最低共振周波数  37Hz 
再生周波数帯域  fo~20,000Hz 
出力音圧レベル  95dB/W-m 
磁束密度  15,500gauss 
重量  3.3kg 
有効振動半径  a=8.3cm 
振動系等価質量  mo=8.5g Qo=0.5 
※本ページに掲載したBL-20D,BETA-8の写真・仕様表等
,1981年8月のCORALのカタロより抜粋したもので,コーラ
ル株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等

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