SANSUI C-2302VINTAGE GOLD/BLACK
STEREO CONTROL AMPLIFIER ¥1,280,000
1992年に,サンスイが発売したコントロールアンプ。サンスイは,1984年に,同社としてはコントロール
アンプの歴代最高級機
C-2301VINTAGEを発売し,ペアとなるパワーアンプ
B-2301とともに,物量を
しっかりと投入した贅沢ともいえる作りとともに,高い評価を得ました。パワーアンプの方は,B-2301L
B-2302VINTAGEと,モデルチェンジをしていきましたが,コントロールアンプのC-2301はモデルチェ
ンジもなくロングセラーを続けていました。そうした中,8年目にして登場したのが,C-2302VINTAGEで
した。
全体の回路構成は,アンプ回路は,ラインアンプ,イコライザーアンプのみというシンプルな構成となって
おり,電源を要する回路を最少単位にとどめることで,アースラインからのノイズの回り込みなど信号系
における音質の劣化要因を排除していました。それに対して,MCカートリッジには,電源を要しない専用
MCトランスを搭載し,バランス入力,バランス出力に対しても,新開発のバランス変換トランスで対応して
いました。
ラインアンプは,3段カスケードプッシュプルのAクラス動作のDCアンプ構成で,イコライザーアンプも同様
にシンプルなAクラス動作のDCアンプ構成となっていました。入力・出力段には,入力インピーダンスを高
く設定でき,高域特性にもすぐれたハイスピード素子であるMOS FETが搭載されていました。また,信号
ラインラインに挿入しているセレクターの接点ロスを防止するため,全てのスイッチ類をパラレル仕様とし,
接触面を拡大強化することで,信号ラインでの接点インピーダンスを低減し,オーディオ信号の微小エンド
の損失を抑えていました。
MC昇圧トランスは,Low専用/High専用それぞれL/R独立2トランス構成として,合計4トランスを使用し
た豪華な構成となっていました。コア材には,音質を重視した輸入コア材が使用されていました。
バランス入力,出力に対応するためのバランス変換トランスには,放送局で採用されているものと同じタイ
プの変換トランス(送り出しインピーダンス600Ω,昇圧比1:1)を開発し,搭載していました。これにより,
ホットとコールドの特性の完全な均一化を図り,安定度やS/N比の飛躍的な向上を実現し,理想的なバラ
ンス出力を可能としていました。
C-2302の最大の特徴は,パーツ,内部構造,筐体など,C-2301から大幅にグレードアップされた贅沢
な作りにありました。左右チャンネルを同一条件とし,チャンネル間の電気的・磁気的干渉や振動による影
響を解消する独立構造体が採用されていました。各ユニットを包み込んでいるユニットシールドハウジング
は底板,背面入力板は純銅製で,その他の構造物はビスに至るまで全て銅メッキとされ,構造体の非磁性
体化,非共振化が徹底されていました。フロントパネルは8mm厚のアルミ無垢板を押し出し加工したものが
使用され,入力セレクターをはじめ各ツマミすべてにアルミ無垢材を使用していました。美しい仕上げのサイ
ドウッド,トップウッドも採用され,高級機として重厚な外観や感触が実現されていました。
重量級の筐体全体を支えるインシュレーターは,金メッキ処理した純銅材の内部に,テフロンシートをはさみこ
んだ特殊ゴムを入れる構造がとられ,テフロン製サポーターに通した金メッキ真鍮ビスで本体に固定されてい
ました。さらに,サイドウッドおよび天板にはテフロンシートと純銅板を組み合わせ,内部反射・振動防止対策
施されていました。
C-2302VINTAGEでは,国内で初めて,すべての回路に金メッキ処理のテフロン基板を採用していました。
海外では,マークレビンソン製のアンプ回路などに見られるテフロン基板は,誘電率および誘電正接がきわ
めて小さく,内部損失により振動を吸収できるというテフロンの特性を活かしたもので,超高周波帯域までお
よぶ信号への周囲からの様々な干渉を効果的に抑えることができ,ダイナミックレンジの拡大,通過信号の
純度の大幅な向上が実現されていました。
Aクラス動作のアンプ回路を支える電源部は,リーケージフラックスが極めて少ないレギュレーションにもすぐ
れた電源用トランスを左右独立で使用し,新開発の電源用電解コンデンサー,超高速ファストリカバリーダイ
オード,6N銅ケーブルを採用した強力で安定した定電圧電源が搭載されていました。
また,電源トランス,電源基板,ラインアンプ,イコライザーアンプなどのすべての取付け部には,テフロン材
を削り出した新開発のサポーターを採用し,振動の遮断と各ユニットや各ライン間での音質を整えていました。
ボリュームには,耐久性と精度を高めた高精度のディテント型を金メッキ基板より直出しする構造がとられ,パ
ラレル構成で信号通過インピーダンスを低減し,純銅板のケースに固定して周囲からの影響を防いでいました。
ツマミは内部に純銅材,外側にアルミ削り出し材を使用したダブル構造で,外部からの振動伝達の遮断を図っ
ていました。
回路と入出力端子をつなぐ信号ケーブルには,テフロンテープが手作業で巻き付けられた伝送ロスを抑えた
6N銅のオリジナルシールドケーブルが採用され,低インピーダンスで耐蝕性の高いドイツWBT社製の金メッ
キ端子をコネクター部に装備していました。
その他,音楽信号が通過するすべてのパーツに金メッキ処理,非磁性体化,低インピーダンス化,ハイスピー
ド化,防振対策などが徹底され,まさに,パーツから筐体全体に至るまで贅を尽くした作りになっていました。
以上のように,C-2302VINTAGEは,サンスイ歴代プリアンプの最高級機といえる1台で,その贅沢ともいえ
る作り,重厚さには驚きのものがありました。バランス接続の厚みのある音,アンバランス接続のすっきり伸び
た音と使い分けが可能でしたが,基本的に偏りや癖のない音は,他のアンプと組み合わせても使いやすいもの
がありました。2000年には,C-2302Pの型番で50台限定で発売され,サンスイブランド最後のプレステージ
モデルとなったことは皮肉なことでもありました。