EXCLUSIVE C3
STEREO PRE-AMPLIFIER ¥315,000
1973年に,パイオニアがエクスクルーシブブランドで発売したプリアンプ。パイオニアは,この年,高級機
専門のブランドとしてエクスクルーシブ(EXCLUSIVE=限定された,唯一のという意味)を立ち上げ,その
第1号の製品としてセパレートアンプのプリアンプC3とパワーアンプM3を発売しました。

エクスクルーシブC3は,高級アンプにふさわしい風格を求めるという基本思想で,測定と視聴を繰り返して
練り上げた回路構成と機構部品からトランジスターの一つ一つまで,ほとんど特別仕様のものを開発・採用
し,製品の一台一台,最初から最後まで丁寧なハンドメイドによって作り上げられていたことが特徴でした。
パイオニアがエクスクルーシブを立ち上げたこの頃は,ちょうどケンソニック(アキュフェーズ),テクニクスな
ど,国産オーディオの世界に高級機,専用ブランドといったものが確立していった時期でした。

全体の回路構成は,イコライザーアンプが±2電源方式の差動1段3段直結A級SEPP回路,フラットアンプ
が±2電源方式の差動1段3段直結回路という構成になっていました。イコライザー回路は,140Vという高
電圧設計により,PHONO最大許容入力は700mV(1kHz)が確保されていました。また,RIAA偏差±0.2
dB以内(30Hz~15kHz)の精度を得るために,高精度な回路素子を採用し,さらに,長期にわたる信頼性
を得るために,キャンシールドトランジスター,ガラスエポキシ基板が採用されていました。



ボリュームコントロールには,22接点のアッテネーター式のものが搭載されていました。このボリュームは
通常の可変抵抗器ではなく,固定抵抗の集合体である本格的なステップ式のアッテネーターで,フラットアン
プのトップとアンプ最終段の2ヶ所でコントロールする高精度4連アッテネーターとなっており,使用時の残留
雑音も大きく低減されていました。そして,0,-15,-30dBの3ポジションアッテネーターと組み合わせて,
表示通りの減衰量で,左右の連動誤差のない高精度な音量調整が可能となっていました。



トーンコントロールは,1kHzを中心に低・高域を増減させるBASS・TREBLEの2つのMAINコントロールの
他,超低域・超高域だけをコントロールするSUBコントロールを設けたツイントーンコントロール方式となって
いました。トーンコントロールも,通常の可変抵抗器ではなく,高精度部品による1.5dBステップの切換式で
正確な調整が可能となっていました。そして,4つのコントロールの組み合わせで,高音域だけなど,微妙な
調整も可能となっていました。また,トーン・スイッチによって瞬時に完全なフラットポジションが得られるように
もなっていました。



C3はプリアンプと称されていましたが,上述のツイントーンコントロールをはじめかなり多機能で,コントロー
ルアンプといってもいい操作系になっており,下部にはシーリングパネルも装備されていました。
フィルターは,ローフィルターとハイフィルターが装備され,ローフィルターは15Hz,30Hz,ハイフィルターは
8kHz,12kHzの2段切換で,15HzはCR,12kHzはLCを使った12dB/oct減衰の過渡特性のすぐれた
パッシブ型を採用し,30Hz,8kHzは,電子回路によるアクティブ型で,減衰特性は18dB/octのシャープ
な特性が確保され,目的に応じて使い分けられるようになっていました。
シーリングパネル内には,ヘッドホン端子が装備され,レベルコントロールがあり,信号のモニターができ,出
力スイッチをOFFにするとヘッドホンのみで聴くことができるようになっていました。
入力端子は,PHONO 3系統,TUNER 1系統,AUX 3系統,TAPE 3系統が装備されていました。AUX3
はフロントのシーリングパネル内にも端子が設けられており,レベルコントロールも装備され,テスト的に他の
機器を接続するのに場合にも利用しやすくなっていました。また,PHONO2は,シーリングパネル内にレベ
ルコントロールとインピーダンス切換が装備されていました。



その外観は,重厚な美しいウッドキャビネットに収められた落ち着いたもので,エクスクルーシブならではの
ものでした。ツマミ,スイッチ類はすべてアルミムク材削り出しによるもので,スイッチ類の切換トルクも一定
に揃えられているなど,感触面においても高級感のあるものでした。
手作りの高級アンプにふさわしく,1台ごとに測定した実測
値がそのまま添付され,品質管理を徹底した信頼性,高性能が確保されていました。パイオニア本社には専門
のテクニカルセンターが設けられ,1台ごとに高度なチェック,保証が行われる体制がとられていました。

以上のように,C3は,パイオニアが本格的に高級機として作り上げたエクスクルーシブブランドのプリアンプ
第一作で,優雅な外観の表すとおりに,暖かく滑らかな音はC3ならではの魅力を持っていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



すぐれた物理特性と
オーディオの心の融合こそ
真の音楽性を
伝えることが可能と考えます。

《オーディオの心》を伝える手造りの芸術品

◎すぐれた音質を限りなく求めた,妥協のない回路
◎幅広い応用が可能な豊富な入力端子群
◎レベルコントロールも可能なPHONO,AUX端子
◎アッテネーター式高精度ボリウムコントロール
◎さまざまなカーブが得られるツイントーンコントロール
◎ハイフィルター,ローフィルターはそれぞれ
 目的に合った特性が得られる2段階切換式です
◎モニターのできるヘッドホンアンプを内蔵
◎雑音の発生を防止する出力ミーティング回路
◎重厚で気品のある風格と快適な使用感
◎詳細な実測生データーを一台ごとに添付し,
 性能を完全保証
◎アフターケアーの体制も万全を期しています




●EXCLUSIVE C3 主要規格●

使用半導体 トランジスター64,ダイオード36
回路方式 イコライザーアンプ:正負2電源方式
            差動1段 3段直結A級SEPP回路
フラットアンプ:正負2電源方式
         差動1段 3段直結回路
入力端子  PHONO 1,3:2.5mV/50kΩ
PHONO 2  : 2.5mV~10mV/25kΩ,50kΩ,100kΩ
TUNER AUX 1,2:150mV/100kΩ
AUX 3        :150mV~∞/100kΩ
TAPE PB 1,2,3:150mV/100kΩ
PHONO最大許容入力 PHONO 1,3  700mV(1kHz)
PHONO 2    700mV~1.4V(1kHz)
出力(定格/最大) 2V/15V(RL=50kΩ)
高調波歪率 0.03%以下(定格出力時)
周波数特性 PHONO RIAA偏差:±0.2dB
TUNER,AUX,TAPE PB:10Hz~90kHz+0,-1dB
トーンコントロール
(1.5dBステップ式)
BASS   SUB:±6dB(50Hz)
       MAIN:±7.5dB(100Hz)
TREBLE SUB:±6dB(20kHz)
       MAIN:±7.5dB(10kHz)
フィルター LOW  15Hz(12dB/oct),30Hz(18dB/oct)
HIGH  12kHz(12dB/oct),8kHz(18dB/oct)
アッテネーター 0,-15dB,-30dB
外形寸法 468W×206H×342Dmm 
重量  12.5kg 
※本ページに掲載したC3の写真,仕様表等は1976年1月の
 EXCLUSIVEのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式
 会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
 転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意
 ください。

 
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