CA-1000の写真
YAMAHA  CA-1000
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥98,000

1973年に,ヤマハが発売したプリメインアンプ。ヤマハは,当時の社名・「日本楽器製造」の名の通り,
1887年に楽器製造会社としてスタートし,1967年には,オーディオ部門を創設しました。そうしたヤマ
ハブランドがオーディオアンプの分野で広く認知されることになった1台が,CA-1000でした。

メインアンプ部は,ピュアコンプリメンタリーOCL回路が採用され,8Ωで70W+70W(20Hz〜20kHz
両ch駆動・歪率0.1%)の実効出力,200Wのダイナミックパワーと実効出力時0.1%以下,1W出力
・20Hz〜20kHzでは,0.04%以下という低歪率が実現されていました。
さらに,CA-1000のメインアンプは,大きな特徴として,B級動作・A級動作切換のオペレーションスイッ
チが装備され,等音量のまま動作が切換えられるようになっていました。A級動作では,B級動作時の
70W+70Wに対して,15W+15Wと,実効出力が約1/5に低下しますが,歪率や過渡特性は,大
きく向上し,通常使用領域ではクオリティの高い音質が楽しめるようになっていました。CA-1000はトラ
ンジスタ・プリメインアンプとして最も早くA級動作方式にチャレンジした製品でした。(当然A級動作時に
は相当熱くなりますが・・。)
また,メインアンプには,トランジスターバイアス安定化回路が搭載され,中点電位は電源投入直後から
安定状態が維持されるようになっていました。差動アンプ初段は,FETの定電圧特性を利用した理想的
なバイアス回路が構成され,すぐれたCMRR(同相信号除去率)が実現されていました。

電源部には,レギュレーションのよい大型パワートランスが搭載され,メインアンプの+−2電源は,サ
ージ電流250Aの整流用ダイオードと18,000μF×2の大容量フィルターコンデンサーで構成された
電源回路から供給されるようになっていました。ドライブ段以前は,別設定の±50V定電圧電源回路に
より供給され,他の全段もこの定電圧回路により駆動されていました。

イコライザー回路は,FETによるSRPP(シャント・レギュレーテッド・プッシュプル)方式の入力段とTrに
よるSEPP(シングル・エンディド・プッシュプル)方式による出力段から構成されていました。
通常のトランジスターに比べ,パルス性雑音がほとんど無く,信号源インピーダンスが大きくなるほど雑
音指数の低下する特性を持つFETに1mAのドレイン電流を流し,大入力に対するバイアスの安定性と
裸特性の向上が図られていました。許容入力は,定格入力の3mVに対して,1kHzで310mVrms,
15kHzでは2300mVというダイナミックマージンが確保されていました。
イコライザー素子は,±1%精度の蒸着金属被膜抵抗,±1%,±2%のスチロールコンデンサーを組
み合わせた構成がとられ,RIAA偏差が30〜15,000Hzで±0.2dB以内という高精度が実現されて
いました。また,洩れ電流が少なく経年変化の少ないタンタルコンデンサーが各所に採用されていました。

PHONO入力は2系統備えられ,PHONO2は,入力感度3mV,インピーダンス50kΩのみでしたが,
PHONO1は,感度3mVに対して,50kΩ・100kΩの入力インピーダンス切換が付属し,さらに,入
力インピーダンス100Ω,入力感度200μVのMCカートリッジ用ヘッドアンプも内蔵されていました。
入力系として,MIC入力も装備され,独立したマイクアンプが搭載されていました。このマイクアンプは
20Hz〜20kHz+0.5dB,−2dBというすぐれた周波数特性が確保されていました。
入力を切り換えるFUNCTIONスイッチは,誘導ハム対策としてイコライザー基板に実装され,PHONO
端子と最短距離で接続することで高SN比を実現し,アース配線やシールドケースなどの配慮により外
来ノイズにも強い特性が確保されていました。

トーンコントロール回路は,3段直結アンプによるNF型・CR型混合のヤマハ独自の方式で,スイッチを
TONE DEFEATポジションにするとうねりの少ない特性のフラットアンプとして動作するようになってい
ました。コントロールはTREBLE,BASSとも同軸の2重ツマミが搭載され,L・Rチャンネルの独立調整
が可能になっていました。また,ターンオーバー周波数を,BASS 250Hz・500Hz,TREBLE 2.5
kHz・5kHzに切換えられるターンオーバー切換が装備されていました。BASSのトーンボリュームは,
約3dBステップ11ポイントのクリックストップ方式で,全変化量は±15dB(ターンオーバー500Hz時,
50Hzで),TREBLEは,約2dBステップ11ポイントで全変化量±10dB(ターンオーバー2.5kHz時,
10kHzで)となっていました。

CA-1000は,当時としては(現在のアンプとしてみても)かなり多機能なアンプで,その他にもしっかりと
機能が装備されていました。フィルター回路は,ローフィルターが70Hz・OFF・20Hzの切換で,遮断特
性は12dB/oct,ハイフィルターは,6kHz・OFF・12kHzの切換で,遮断特性は6dB/octと,多様なフィ
ルターが装備されていました。ラウドネスは,通常のON/OFFのスイッチ式ではなく,FLATポジションか
ら,0dB〜−20dBの範囲で連続的に補正カーブを変えられるボリューム式のコンティニュアスラウドネ
ス回路が搭載されていました。テープ端子は2系統装備され,同時録音,相互のダビングもスイッチ一つ
で切換えられるようになっていました。スピーカー端子は3組装備され,A,B,C単独再生の他,A+B
A+Cという再生も可能となっていました。その他,−20dBのオーディオミューティング,カプラースイッチ
を分離して,プリアンプ,メインアンプを単独で使用できる,プリアウト,メインイン端子も装備されていま
した。
多機能ながら,フロントパネルは操作性と美しさを両立させた洗練されたデザインで,ヤマハらしい美し
いウッドキャビネットとマッチしたその姿は,後のヤマハアンプにつながっていくものとなりました。

以上のように,CA-1000は,オーディオに本格参入してまだ日の浅かったヤマハが,プリメインアンプ
に多くの技術と機能をしっかり詰め込んだともいえそうな意欲作でした。GKデザインが関わったともいわ
れる洗練されたデザインも,当時異彩を放っていました。外観同様に洗練されたクリアな音質も高い評
価を得ることとなりました。ヤマハのオーディオアンプにおける地位を確立したともいえる名機ではなかっ
たかと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



先行するヤマハの技術を集積。
B級−A級動作切換えつき
メインアンプ部,
台許容入力/超低歪率の
イコライザー部




●CA-1000の規格●



■パワーアンプ部■

回路方式
B級・A級切換式全段直結ピュアコン
プリメンタリーOCL回路
ダイナミックパワー
(IHF 8Ω)
B級 200W
A級  30W
実効出力
20Hz〜20kHz(両チャンネル駆動)
 B級8Ω 70W+70W
 B級4Ω 85W+85W
 A級8Ω 15W+15W
1kHz(両チャンネル駆動)
 B級8Ω 75W+75W
 B級4Ω 100W+100W
 A級8Ω 15W+15W
1kHz(片チャンネル駆動)
 B級8Ω 80/80W
 B級4Ω 100/100W
 A級8Ω 15/15W
全高調波歪率
B級実効出力時 0.1%
B級1W出力時 0.04%
A級実効出力時 0.1%
A級1W出力時 0.02%
混変調歪率
(70Hz:7kHz=4:1)
B級実効出力時 0.1%
B級1W出力時 0.05%以下
A級実効出力時 0.1%
A級1W出力時 0.05%以下
パワーバンド幅
(IHF,両チャンネル駆動)
B級 5Hz〜50kHz
A級 5Hz〜100kHz
周波数特性
B級 10Hz〜100kHz +0,−1dB
A級 10Hz〜100kHz +0,−1dB
入力感度
B級 775mV
A級 330mV
入力インピーダンス
40kΩ
出力端子
スピーカー端子 A,B,C,A+B,A+C
ヘッドホーン端子 4Ω〜16Ω
ダンピングファクター
(1kHz,8Ω)
70
S/N(IHF Aネットワーク)
100dB
残留雑音
(8Ω,プリ+パワーアンプ)
0.8mV




■プリアンプ部■

回路方式
イコライザーアンプ FET SRPP入力
             Tr SEPP出力
マイクアンプ 2石直結アンプ
トーンコントロールアンプ 中間エミッターフォロワー型
                3石直結アンプ
入力端子(感度/インピーダンス)
PHONO 1 MC 200μV/100Ω
        3mV/50kΩ,100kΩ
PHONO 2 3mV/50kΩ
PHONO最大許容入力(1kHz) 310mV(870mVp-p)
MIC     2.5mV/50kΩ
TUNER   120mV/40kΩ
AUX1,2  120mV/40kΩ
TAPE PB A,B 120mV/40kΩ
出力端子(レベル/インピーダンス)
TAPE REC OUT A,B 120mV/2kΩ
PRE OUT          775mV/2kΩ
周波数特性
PHONO(RIAA偏差) 30Hz〜15kHz ±0.2dB
MIC            20Hz〜20kHz +0.5,−2dB
TUNER,AUX,TAPE PB 10Hz〜50kHz +0.5,−1dB
トーンコントロール
BASS  50Hz ±15dB
  ターンオーバー周波数 250Hz,500Hz
TREBLE 10kHz ±10dB
  ターンオーバー周波数 2.5kHz,5kHz
オーディオミューティング
−20dB
フィルター
LOW 20Hz,70Hz(12dB/oct)
HIGH 6kHz,12kHz(6dB/oct)
ラウドネスコントロール
等ラウドネスカーブに準ずるコンティニュアスラウドネス
S/N(IHF Aネットワーク)
PHONO 1         MC 70dB
        50kΩ,100kΩ 80dB
PHONO 2            80dB
MIC                70dB
TUNER,AUX,TAPE     90dB




■電源部・その他■

付属回路
トランジスター保護回路(ASOリミッタ検出方式)
スピーカー保護回路(電圧検出リレー駆動方式)
オペレーションスイッチ(A級・B級切換スイッチ)
テープダビングスイッチ
コンティニュアスラウドネス
電源電圧
AC100V 50-60Hz
定格消費電力
250W
最大消費電力
420W
電源コンセント
電源スイッチ連動2  max200W
電源スイッチ非連動2 max200W
外形寸法
436W×144H×323Dmm
重量
15.5kg


CA-1000Uの写真
YAMAHA  CA-1000U
NATURAL SOUND STERE0 AMPLIFIER  ¥125,000

1974年に,CA-1000はCA-1000Uへとモデルチェンジされました。外観はほとんど変わらず,一
見しただけでは見分けがつかないほどですが,1年ほどの間に回路面や機能面でいくつかの改良が行わ
れていました。特に,回路面では大きくブラッシュアップされ,強化されていました。

メインアンプ部では,Tr式バイアス安定化回路を生かして,ブートストラップ回路が削除され,低域の安定
度が向上していました。さらに,ドライバー段のいっそうの低インピーダンス化により,パワーアップも実現
されていました。(1kHz・両ch駆動:B級8Ω75W+75W→80W+80W B級4Ω100W+100W→
105W+105W)また,歪特性も改善されていました。

イコライザーアンプでは,ヤマハがオーディオ用に開発したI DSSの揃ったFETを1つのケースに組み込んだ
デュアルFETを使った本格的SRPP入力段と,TrのA級SEPP方式の出力段が搭載され,より安定性と裸
特性が高められていました。

機能的には,ミューティングスイッチが3段切換になり,トーンアンプ,フラットアンプをバイパスするTONE
JUMPのポジションが新たに装備されていました。トーン回路そのものも,位相反転6石アンプによるNF型
へと変更されていました。

CA-1000Uの内部

以上のように,CA-1000Uは,CA-1000をベースに強化・改良が施 され,より充実したアンプとなっ
ていました。外観や内部レイアウトはほぼ同一ながら,機能の強化とパワーアップが図られM音質的に
も,クリアながらやや神経質な音とも評されたCA-1000に比べて,華やかさや力強さがアップしていま
した。そして,この2年後には,CA-1000シリーズの最終モデルCA-1000Vが発売さ れることとなり
ました。


以下に,当時のカタログの一部をご 紹介します。



ヤ マハのもつアンプ技術のノウハウを
すべて結集。
メインアンプ部B級-A級動作切換を実現
コンティニュアスラウドネス,トーンジャンプ
を装備。



●CA-1000Uの規格●


■メインアンプ部■

回路方式
B級・A級切換式全段直結ピュアコン
プリメンタリーOCL回路
ダイナミックパワー
(IHF 8Ω)
B級 200W
A級  30W
実効出力
20Hz〜20kHz(両ch駆動)
 B級8Ω 70W+70W
 B級4Ω 85W+85W
 A級8Ω 15W+15W
1kHz(両ch駆動)
 B級8Ω 80W+80W
 B級4Ω 105W+105W
 A級8Ω 15W+15W
1kHz(片ch駆動)
 B級8Ω 90/90W
 B級4Ω 120/120W
 A級8Ω 15/15W
全高調波歪率
B級実効出力時 0.1%
B級1W出力時 0.04%
A級実効出力時 0.1%
A級1W出力時 0.02%
混変調歪率
(70Hz:7kHz=4:1)
B級実効出力時 0.1%
B級1W出力時 0.05%以下
A級実効出力時 0.1%
A級1W出力時 0.05%以下
パワーバンド幅
(IHF,両ch駆動)
B級 5Hz〜50kHz
A級 5Hz〜100kHz
周波数特性
B級 10Hz〜100kHz +0,−1dB
A級 10Hz〜100kHz +0,−1dB
入力感度
B級 775mV
A級 330mV
入力インピーダンス
100kΩ
出力端子
スピーカー端子 A,B,C,A+B,A+C
ヘッドホーン端子 4Ω〜16Ω
ダンピングファクター
(1kHz,8Ω)
70
S/N(IHF Aネットワーク)
100dB
残留雑音
(8Ω,プリ+パワーアンプ)
0.8mV



■プリアンプ部■

回路方式
イコライザーアンプ FET SRPP入力
             Tr SEPP出力
マイクアンプ 2石直結アンプ
トーンコントロールアンプ 位相反転6石アンプ
入力端子(感度/インピーダンス)
PHONO 1 MC 200μV/100Ω
        3mV/50kΩ,100kΩ
PHONO 2 3mV/50kΩ
PHONO最大許容入力(1kHz) 310mV(870mVp-p)
MIC     2.5mV/50kΩ
TUNER   120mV/50kΩ
AUX1,2  120mV/50kΩ
TAPE PB A,B 120mV/50kΩ
出力端子(レベル/インピーダンス)
TAPE REC OUT A,B 120mV/2kΩ
PRE OUT          775mV/2kΩ
周波数特性
PHONO(RIAA偏差) 30Hz〜15kHz ±0.2dB
MIC            20Hz〜20kHz +0.5,−2dB
TUNER,AUX,TAPE PB 10Hz〜50kHz +0.5,−1dB
トーンコントロール
BASS  50Hz ±15dB
  ターンオーバー周波数 250Hz,500Hz
TREBLE 10kHz ±10dB
  ターンオーバー周波数 2.5kHz,5kHz
オーディオミューティング
−20dB
フィルター
LOW 20Hz,70Hz(12dB/oct)
HIGH 6kHz,12kHz(6dB/oct)
ラウドネスコントロール
等ラウドネスカーブに準ずるコンティニュアスラウドネス
S/N(IHF Aネットワーク)
PHONO 1         MC 70dB
        50kΩ,100kΩ 80dB
PHONO 2            80dB
MIC                70dB
TUNER,AUX,TAPE     90dB




■電源部・その他■

付属回路
トランジスター保護回路(ASOリミッタ検出方式)
スピーカー保護回路(電圧検出リレー駆動方式)
オペレーションスイッチ(A級・B級切換スイッチ)
テープダビングスイッチ
コンティニュアスラウドネス
トーンジャンプ
電源電圧
AC100V 50-60Hz
定格消費電力
195W
電源コンセント
電源スイッチ連動2  max200W
電源スイッチ非連動2 max200W
使用半導体
FET(ヤマハ製)4,トランジスター69
ツェナーダイオード7,ダイオード32
外形寸法
436W×144H×323Dmm
重量
15.5kg

※本ページに掲載したCA- 1000,CA-1000Uの写真,仕様表等は1973年,
 1974年7月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等すること
 は法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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