YAMAHA CA-R1
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥69,800
1976年に,ヤマハが発売したプリメインアンプ。ヤマハは,1887年に楽器製造会社としてスタートし,1967年に
は,オーディオ部門を創設し,当初より独自のすぐれたアンプも作っていました。CAに続く型番でプリメインアンプも
数多く発売し,特に,CA-1000シリーズで高い評価を得てプリメインアンプでのブランドイメージを確立しました。
その後CA-1000シリーズやセパレートアンプの技術を生かして,CA-S1,CA-R1,CA-G1,CA-Z1,CA-A1等
の「CA-※1」の型番を持つプリメインアンプを展開していきました。その中の中核ともいえる機種がCA-R1でした。

イコライザー回路は,ヤマハが開発したスーパーローノイズペアFETを使用したカレントミラー差動入力→ダーリン
トン接続エミッタ接地増幅→ピュアコンプリメンタリーSEPP出力段という構成になっていました。
初段の差動アンプ用のデュアルFETは,ヤマハがオーディオのローノイズアンプ専用FETとして開発したもので,
種々の電子回路に使用されるマルチユース用のFETに比べて,gmが大きくペア特性が良く,ローノイズであるとい
うすぐれた特性をもったものでした。このFETによる差動入力段を採用したことにより,入力側のコンデンサーをな
くしたダイレクトカップリング(=ICL:インプット・コンデンサレス)構成になっていました。また,カレントミラー回路に
より十分なゲインを確保し,一種のプッシュプル回路としても働き,高調波歪みも低く抑えられていました。



2段目は,ローノイズPNPトランジスターのダーリントン接続によるエミッタ接地増幅回路で,入力インピーダンスが
高く,初段の負荷を軽くするとともに十分なゲインを確保していました。
出力段は,PNP-NPNトランジスターによるピュアコンSEPP回路で600Ωの低い出力インピーダンスで,イコライ
ザーアンプの負荷となっているものを余裕をもってドライブできるようになっていました。
こうしたスーパーローノイズFETをはじめ各段の低雑音設計により,定格入力2.5mVに対して83dB(IHF-Aネット
ワーク),入力換算雑音-136dB/Vというすぐれたローノイズ特性を実現していました。また,カレントミラー回路,
ダーリントン接続によるエミッタ接地増幅回路などにより裸ゲイン,すぐれた周波数特性が確保され,安定なNFが
かけられることにより,0.005%以下(PHONO→REC OUT,10V出力時,20Hz~20kHz)という低歪率が実
現されていました。RIAA素子には,高品質の金属皮膜抵抗(±1%),コンデンサーなどを使用し,RIAA偏差も,
20Hz~20kHz±0.3dB以内(PHONO→REC OUT)という高精度を実現していました。イコライザーシートは,
リアパネルに直結されており,シールド線を使用せず,プリント基板のパターンも歪率やノイズが低くなる設計とし,
ファンクションシートは厳重に電磁シールドされていました。

メインアンプの回路構成は,初段は定電流バイアスカレントミラーつき差動増幅→カスコード接続プリドライブ段→
ダーリントン接続ピュアコンプリメンタリーSEPP OCLドライブ・出力段とPCリミッタ方式トランジスタ保護回路とい
う構成になっていました。
初段には,ペア特性の良く揃ったローノイズPNPトランジスターを差動アンプとして構成し,定電流バイアス,カレン
トミラー回路を組み合わせていました。定電流バイアスとすることで,共通エミッタ側から見たインピーダンスが無限
大に近くなり,電源電圧の変動の影響を受けにくくなっていました。また,カレントミラー回路は,一種のプッシュプル
として働き,高調波歪みを抑える働きをしていました。
プリドライブ段は,初段のカレントミラー回路の出力インピーダンスが高いので,2段目のトランジスターの入力容量
によるミラー効果で高域でのループゲインが低下するのを防ぐためにカスコード接続にして,安定したNFBが全域
にわたってかけられていました。ドライブ・出力段のピュアコン・SEPP OCL回路は,スイッチング特性のすぐれた
トランジスターのペア選別を厳密にして使用し,低歪率を実現していました。

入・出力は,PHONO3系統,TUNER,AUX,TAPE2系統が搭載されていました。さらに,ジャンパーピンでつな
がれたPRE OUT,MAIN INも装備され,プリ部とメインアンプ部をセパレートして使うこともできるようになってい
ました。TAPE2系統は,相互ダビングも可能となっていました。
PHONO入力には,INPUT SELECTORと別にPHONO SELECTORが設けられ,PHONO1は,このSELE-
CTORで,負荷インピーダンスを47kΩ,68kΩ,100kΩから選択できるようになっていました。PHONO2は,
2.5mV/47kΩ固定で,PHONO3は,MCカートリッジ専用のポジションになっていました。PHONO3(MC)に
対応してMCヘッドアンプが搭載されていました。MCヘッドアンプは,ヤマハオリジナルのスーパーローノイズICを
使用し,定格入力60μVに対してSN比73dB(IHF-A),入力換算雑音-157.4dB/Vというすぐれたローノイズ
特性を実現していました。また,すぐれた周波数特性(30Hz~15kHz±0.3dB,REC OUT)と低歪率(20Hz~
20kHzで0.05%以下,REC OUT3V出力時)も実現し,同クラスの昇圧トランスをしのぐほどの特性をもってい
ました。



トーンコントロールは,BASS,TREBLE独立型で,ヤマハ方式のNF型で素直なコントロ-ル特性を確保していま
した。BASS,TREBLEはそれぞれ20Hz,20kHzで±10dBの可変幅をもち,ターンオーバー周波数は,BASS
:500Hz,125Hz,TREBLE:2.5kHz,8kHzの2段切換になっていました。トーンアンプはローノイズ設計になっ
ており,ボリュームを絞りきったときの残留ノイズも200μV(SP OUT)以下となっていました。
フィルターは,15Hz,12dB/octのサブソニックフィルターと10kHz,12dB/octのHIGHフィルターが搭載されてい
ました。
その他の機能として,演奏しているソースとは別に録音ソースが選択できるREC OUT SELECTOR,-20dBの
オーディオミューティング,ラウドネススイッチなどが装備されていました。また,特徴的な機能として,CA-1000Ⅲ
CA-2000などにも搭載されていたレベルメーターが搭載されていました。このレベルメーターは対数圧縮回路と
ピークホールドを備えたピークメーターで,-50dB~+5dB(0dB=50W,8Ω),0.5mW~158W/8Ωの広い
レンジの信号のピークレベルを立ち上がり時間100μsで正確に応答して表示できるメーターで,デザイン的にも
1つのポイントとなっていました。

以上のように,CA-R1は,ヤマハらしい繊細で上品なデザインの中に,上級機譲りの高精度な回路が投入され,
デザインに通じる繊細ですっきりとしたヤマハサウンドを聴かせてくれるアンプでした。機能と音質のバランスのと
れた魅力ある1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



Sophisticatedなヤマハの結論品。
そこには,プリメイン賛歌がある

「B-2」そして「C-2」の
回路的・特性的レベルから
直接的に発想されたクオリティ

世界のMCカートリッジの真髄を
初めてダイレクトに聴くことができる感動

1.イコライザ回路
◎SN比83dB(2.5mV定格入力時),入力換算
 -135dBVのローノイズイコライザ回路

2.メインアンプ回路
◎実効出力65W+65W(20Hz~20kHz 0.05%歪)
 のピュアコンSEPP OCLメインアンプ

3.MCヘッドアンプ
◎SN比73dB(60μV感度),入力換算では,
 -157.4dBのローノイズMCアンプ
4.トーンコントロール回路
◎トーンコントロール特性の素直なヤマハ方式
 NF型トーンコントロール回路

5.メータ回路
◎0.5mW~158W/8Ω(0dB=50W)の広い
 出力範囲を指示する高性能ピークメータ

6.付属機構
◎PHONO SELECTOR
◎REC OUT SELECTOR
◎AUDIO MUTING
◎LOUDNESS





●CA-R1の規格●

実効出力  8Ω:65W+65W(20Hz~20kHz 0.05% THD)
   70W+70W(1kHz 0.02% THD) 
全高調波歪率  PHONO1,2→REC OUT 10V:0.005%(20Hz~20kHz)
PHONO3 MC→REC OUT 3V:0.05%(20Hz~20kHz) 
MAIN IN→SP OUT 32.5W/8Ω:0.01%(20Hz~20kHz)
TUNER→SP OUT 32.5W/8Ω:0.02%以下(20Hz~20kHz)
パワーバンド幅 32.5W/8Ω:10Hz~50kHz(0.05% THD) 
ダンピングファクタ  8Ω:30(1kHz) 
周波数特性 PHONO1,2,3(RIAA偏差):30Hz~15kHz±0.3dB
MAIN IN→SP OUT:10Hz~100kHz+0,-1.5dB 
チャンネルセパレーション  PHONO→SP OUT 他CHショート:70dB(1kHz) 
入力感度/入力インピーダンス  PHONO1:2.5mV/47kΩ,68kΩ,100kΩ
PHONO2:2.5mV/47kΩ
PHONO3(MC):60μV/10Ω
TUNER,AUX:150mV/50kΩ
MAIN IN:1V/50kΩ 
最大許容入力 PHONO1,2:230mVrms(1kHz)
PHONO3(MC):6mVrms(1kHz)
トーンコントロール特性  BASS:±10dB at 20Hz(fto 125,500Hz)
TREBLE:±10dB at 20kHz(fto 2.5,8kHz)
サブソニックフィルタ  15Hz 12dB/oct 
ハイフィルタ  10kHz 12dB/oct  
SN比(IHF Aネットワーク)  PHONO1,2:83dB
PHONO3(MC):73dB(入力50Ωショート)
MAIN IN:115dB 
残留ノイズ(IHF Aネットワーク)  200μV(Vol.MIN)
NDCR
(Noise & Distortion Clearerance Range) 
0.1W~65W/8Ω(1kHz,0.1%THD)
PHONO→SP OUT VOL.-20dB
(20kHz・-3dB,-12dB/octのLOW PASS FILTER使用) 
ピークメータ指示範囲  0.5mW~158W/8Ω(0dB=50W) 
定格電圧・周波数/定格消費電力  AC100V・50/60Hz/160W 
寸法/重量  435W×160H×337Dmm/12kg 
※本ページに掲載したCA-R1の写真,仕様表等は1976年12月のYAMAHA
 のカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作権があります。したがっ
 て,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられています
 のでご注意ください。

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