marantz CD-880J
COMPACT DISC PLAYER ¥90,000
1988年に,マランツが発売したCDプレーヤー。当時,CDプレーヤーのオリジネーターで
あったフィリップス社とともにCDプレーヤーの設計・製造にあたっていた日本マランツは,
1985年に,フィリップスのベルギー工場で作られた戦略的モデルCD-34を発売し,高い
評価を受けていました。その後もフィリップス社と関係の深いモデルを発売してきたマラン
ツは,この年,高級機CD-95,CD-99DRを発売し,こうした中,中級機として発売したの
がCD-880Jでした。
マランツは,これまで,CD-34の他にも,第1号機CD-63をはじめいくつもの,フィリップス
のベルギー工場製のモデルを発売していました。それらは,比較的軽量なモデルが多かっ
たのですが,そうした中,本格的重量級のモデルともいえたのがCD-880Jでした。デザイ
ン等を見ると,フィリップスブランドのCD-880とよく似ているため,その日本版ともいえるの
かもしれません。
D/Aコンバーター部は16ビット4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター(SAA7220P
/B)が搭載され,サンプリング周波数を4倍の176.4kHzにオーバーサンプリングし,D/A
変換後のローパスフィルターには急峻な特性を要しないことから位相特性にすぐれた3次ベッ
セルフィルターが搭載されていました。
D/Aコンバーターには,176.4kHzの4倍オーバーサンプリングにも対応し,L・Rチャン
ネルに独立した専用のDACをもつ2DAC方式となっていました。搭載されたD/Aコンバー
ターLSI(TDA1541A)は,1チップ内に2個の16ビット動作DACを搭載し,1個でステレオ
動作も可能な先進的なD/Aコンバーターチップ・TDA1541の改良・発展型でした。そして,
CD-880Jに搭載されたものは,選別品であるTDA1541A/S1(シングルクラウン)でし
た。
こうした,当時最新のデジタルフィルター,D/Aコンバーターの組み合わせを,フィリップスで
は,”Aバージョン”と称し,すぐれた性能を実現していました。
CDドライブメカニズムには,フィリップスの高級機LHH-1000にも搭載され,ダイキャスト
フレームによる大重量・高剛性を実現したCDM-1をベースに,ピックアップの軽量化とサ
イレント化が行われたCDM-MK2が搭載されていました。ピックアップは,伝統の1ビーム
スイングアーム方式を採用し,ダイキャストで固められたメカ全体の重量に対して,可能な
限り軽量化し,精密なサーボ技術とあいまってプレイアビリティが高められ,スムーズで静か
なローディングが可能となっていました。
コンストラクションの面でも,音質に影響を与える共振や相互干渉を考慮した設計がなされ
ていました。
ラフト(いかだ)状のカットを施した独自のRC(Alminium Raft Ceiling)構造の2ピース
構造のアルミトップカバーにより,強度を高め,振動モードを拡散し,共振を防いでていま
した。また,シャーシにはアルミダイキャストを採用し,大型インシュレーター,サイドウッド
パネルを組み合わせて,共振,振動を抑えていました。
デジタル回路,オーディオ回路,サーボ回路,ディスプレイ回路などを,それぞれ独立させ
ることにより,ノイズの回り込みを追放した基板レイアウトとして,相互干渉を抑えていまし
た。
電源部は,ヨーロッパ製の大型の電源トランスを搭載し,6,800μF×2のオーディオ用
大容量電解コンデンサーを組み合わせ,安定した電源部を構成していました。さらに,デ
ジタル回路とアナログ回路を完全独立巻線として,デジタル回路から発生するノイズの回
り込みを防いでいました。
出力は,デジタル出力が,コアキシャル(75Ω同軸)とオプティカル2系統が装備されてい
ました。アナログ出力は,固定出力に加え,マスターボリュームに連動する可変出力も装
備されていました。
機能的には,通常のプログラムメモリー機能に加えて,独自のFTSという機能を搭載して
いました。FTSは,(Favourite Track Selection)の略で,ディスク毎に好みの曲をプ
ログラムして,メモリー素子「E2ROM」に半永久的にメモリーできる機能で,最高226枚
までのCDがメモリーでき,1枚5曲なら150枚,20曲なら約70枚までという具合にメモ
リーができるというものでした。
サーチ機能としては,10キーによるダイレクト選曲,プログラム選曲,インデックスサーチ
タームサーチ,シャッフルプレイなどが搭載されていました。リピート機能は全曲リピートと
A-B間リピートが装備されていました。
ディスプレイは,20曲カレンダータイプで,時間表示は,演奏曲のラップと1曲,全曲の残
り時間を表示できるようになっていました。
以上のように,CD-880Jは,技術的にも,機能的にも,当時のマランツ・フィリップスグ
ループならではの充実した内容をもつCDプレーヤーでした。フィリップスのCD-880の
マランツ版ともいえる1台で,厚みのあるヨーロピアントーンと称された音は,他の国産
CDプレーヤーにない独自の魅力をもっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
音楽を音楽として忠実に。
◎CDが求めるCDプレーヤーの理想像
◎音楽再現力を極める
”Aバージョン”の威力
◎新CDドライブメカ
【CDM-1MK2】を搭載
◎【AバージョンLSI】・
【CDM-1MK2メカニズム】を活かす音質対策
●徹底した大重量・高剛性化を追求したコンストラクション
●相互干渉を排除した基板レイアウト
●高忠実再生を実現する強力独立電源部
●豊富な出力系統
◎第3の機能:
CDファイリング・バンク【FTS】
●SPECIFICATIONS●
D/Aコンバーター | 16ビット4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター L/R独立2DAC |
フィルター | 3次ベッセルフィルター |
チャンネル |
2チャンネル |
周波数特性 | 2Hz~20kHz±0.1dB |
ダイナミックレンジ | 96dB以上 |
SN比 | 103dB |
チャンネルセパレーション | 100dB |
全高調波歪率 | 0.0015%(1kHz) |
ワウ・フラッター |
水晶精度 |
誤り訂正方式 |
CIRC |
アナログ出力 |
最大2Vrms |
デジタル出力 |
0.5Vp-p(75Ω負荷) |
オプティカル出力 | 光ファイバー |
消費電力 |
30W |
最大外形寸法・重量 |
462W×104H×363Dmm・11.5kg |
※本ページに掲載したCD-880Jの写真・仕様表等は,1988年
3月のmarantzのカタログより抜粋したもので,日本マランツ
株式会社(現D&Mホールディングス)に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすること
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