CD-94の写真
marantz  CD-94
COMPACT DISC PLAYER ¥150,000

1986年にマランツが発売したCDプレーヤー。当時,ソニーと並ぶCDのオリジネーター
であるフィリップス・グループの一員であった同社は,前年に,戦略的モデルCD-34を発
売して他メーカーをアッといわせていました。このCD-94は,フィリップスの超高級プロ用
CDプレーヤーLHH-2000(¥1,600,000)の技術が生かされた高級機でした。

D/Aコンバーター部は,マランツの第1作CDプレーヤーCD-63以来搭載されている,当
時最も先進的な16ビット4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターが搭載され,サン
プリング周波数を4倍の176.4kHzにオーバーサンプリングし,D/A変換後のローパス
フィルターには急峻な特性を要しないことから,位相特性に優れた3次ベッセルフィルター
を採用していました。

CD-94のDAC・LSI

D/Aコンバーターには,176.4kHzの4倍オーバーサンプリングにも対応し,L・Rチャン
ネルに独立した専用のDACをもつ2DAC方式となっていました。CD-94に搭載された
D/AコンバーターLSI(TDA1541)は,1チップ内に2個の16ビット動作DACを搭載した
先進的なもので,世界に先駆けて開発されたデュアル16ビットD/Aコンバーターでした。
16ビット4倍オーバーサンプリングの優れた位相特性と過渡応答特性に加え,量子化ノ
イズの超高域シフトによって18ビット相当分の分解能が確保され,ダイナミックレンジは
104dBに達していました。

CDドライブメカには,LHH-2000等のフィリップスグループのプロ用機にも搭載されてい
るCDM-1をチューンナップしたものが搭載されていました。1ビーム方式のスイングアー
ムピックアップを持ち,レンズには収差が少なく温度特性にすぐれたローデンシュトック社
製のガラスレンズを採用し,高いピックアップ能力を実現していました。 従来のCDM-1で
は,メカニズム内にマウントされていたレーザーシグナル用プリアンプを分離独立させ,回
転系の振動からプリアンプを開放するとともに,プリアンプそのものの回路もより大規模な
ものに強化されていました。アルミダイキャスト製のメカニズムユニットには,補強リブが追
加され,さらに剛性が高められ,振動対策が強化されていました。

CD-94に搭載のCDM-1CD-94の内部
CD-94のパーツCD-94のダイキャストシャーシ

内部コンストラクションは,デジタル回路,オーディオ回路,サーボ回路,マイコン及びディ
スプレイ回路がそれぞれ独立した回路基板で構成され,相互干渉に留意しノイズの回り込
みを抑えたレイアウトがなされていました。
電源部は,単体アンプ並の大型トランスと68,000μF×2の電解コンデンサーで構成され
た強力なもので,電源トランスの2次巻線は,デジタル回路用,オーディオ回路用,サーボ回
路用,ディスプレイ回路用4分割して独立化されて電源部からのノイズの回り込みを抑えて
いました。さらに,レギュレーター回路もディスクリート化されて,電源部自体のノイズも低減
されていました。
メカニズムや回路基板等を支える内部シャーシは,重量級のダイキャストシャーシが用いら
れ,リブ一体成型のアルミ引き抜きトップカバーと合わせて剛性・重量とも高められ,振動・
共振による音質劣化が抑えられていました。

フロントパネルは操作ボタンも少なくシンプルですが,シーリングパネル内に10キー等が
納められ,最上級機らしく多機能を誇りました。
通常のプログラムメモリーー機能に加えて,独自のFTSという機能を搭載していました。
FTSは,(Favourite Track Selection)の略で,ディスク毎に好みの曲をプログラムして,
半永久的にメモリーできる機能で,最高226枚までのCDがメモリーでき,1枚5曲なら150
枚,20曲なら約70枚までという具合にメモリーができるというものでした。
サーチ機能としては,10キーによるダイレクト選曲,プログラム選曲,インデックスサーチ,タ
イムサーチ,シャッフルプレイなどが搭載されていました。ランダム。アクセス・プログラムメモ
リーは最大20曲で,インデックス,曲内の指定時間での区間メモリーも組み合わせてプログ
ラム可能なマルチプログラムとなっていました。リピート機能は全曲,1曲,A-B間,FTS,シ
ャッフル,プログラムの全てで可能な6モードリピートが装備されていました。

CD-94とCDA-94の写真 

当時はまだ数少なかったデジタル出力も装備され,75Ω同軸出力とフォトカプラーと光ファイ
バーを組み合わせた光出力の2系統を装備していました。当時,ソニー,アキュフェーズ等が
D/Aコンバーターを組み合わせたセパレート型CDプレーヤーを実現していましたが,CD-94
にも専用の単体D/Aコンバーターが発売されており,ソニーCDP-552ESD+DAS-702ES
CDP-553ESD+DAS-703ESのように,単体でもCDプレーヤーとして使え,さらにセパレー
ト型CDプレーヤーにグレードアップできるようになっていました。

CDA-94の写真
marantz CDA-94
D/A CONVERTER UNIT ¥150,000

CDA-94は,上記のように,単体D/AコンバーターユニットとしてCD-94と同時に発売され
ました。CD-94のD/Aコンバーター部,アナログ部,電源部等を強化した内容を持ち,デザ
イン的にもCD-94とのマッチングが図られていました。

CDA-94の回路構成は,デジタル・インターフェース部,D/A変換部,アナログオーディオ部
から成り,各回路の干渉を排除するために,電源部も完全にセパレート化されていました。
デジタルインターフェース部,D/A変換部にはそれぞれEI型,アナログオーディオ部にはトロ
イダル型の専用トランスが搭載され,さらに,オーディオ用のカスタム型大容量コンデンサー
も投入された独立3電源方式となっていました。

心臓部D/A変換部には,CD-94同様に16ビット4倍オーバーサンプリングL・R独立2DAC
のTDA1541が搭載され,CDフォーマットの44.1kHz以外にDAT,BSの48kHz,32kHz
にも対応していました。
75Ω同軸デジタル入力2系統,CD-94への対応を考慮した光入力1系統が備えられ,同軸
入力は44.1kHz,48kHz,32kHz全てに対応し,入力サンプリング周波数に応じて自動的
にロックするPLLロック回路が装備されていました。光入力は,ディスクリート化された独自の
発光・受光の各サーキットとスクリュータイプの光ファイバーコネクタによるCD-94との組み合
わせ専用ともいえる丸形ものでいわゆるTOSリンクではありませんでした。また,DATをデジタ
ルtoデジタルで接続できるデジタル・モニター端子も装備されていました。
アナログ出力は,マスターボリュームに連動する可変出力1系統,固定出力1系統に加え,アウ
トプット・トランスによるバランス出力1系統が装備されていました。アナログ出力は,位相反転
回路によってコントロールできるアブソリュート・フェイズ・コントロールは装備されていました。
CD-94同様,電源スイッチとマスターボリューム以外のスイッチ,ツマミ類はシーリングパネル
内に納められた仕様となっていました。

以上のように,CD-94は,フィリップスグループらしく外観,内容とも,国産ながらヨーロッパの
香りを持ったもので,音質も上品なバランスの取れた厚みを感じさせるものでした。
CDA-94を組み合わせると,方向性は同一ながら,さらに低域の支えがしっかりとしたスケール
の大きな音にグレードアップが可能でした。CD-94は,さらに振動対策,内部をよりブラッシュ
アップしたCD-95へと引き継がれていきました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



CD-94

CDサウンドが奏でる
至純の響きがここにある。


CD開発者のテクノロジーを集大成した
ハイクオリティーCDプレーヤー

●16ビット4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター
   を搭載。
●L・R独立デュアルD/Aコンバーターを搭載
●スペシャル・チューンのCDM-1ドライブメカ
 オプティカルと75Ω同軸の
 デジタル出力を装備
●オプティカル出力
●75Ω同軸デジタル出力
 オーディオコンポーネントとしての
 完成度を極限まで追求
●相互干渉を追放したサーキット・レイアウト
●高音質を支える強力独立電源部
●ダイキャストシャーシとアルミ引き抜き成形の
 トップカバーを組み合わせた高剛性構造
 CDファイリング・バンクFTSなど
 充実した機能
●CDファイリング・バンクFTSを搭載
●トップモデルにふさわしい機能群




CDA-94

デジタル・オーディオの可能性が
ここにある。


世界初の16ビット・マルチ4倍オーバー
サンプリングD/Aコンバーター

●32kHz・44.1kHz・48kHzのすべてに対応する
 マルチ4倍オーバーサンプリング
●高純度な信号伝送を実現するオプティカル伝送に
 対応
 マランツのオーディオ・ノウハウを結集した
 高音質設計
●伝統の電源重視思想を継承する独立3電源
●ダイキャストシャーシとアルミ引き抜き成形のトップ
 カバーを組み合わせた高剛性構造
 デジタルコンポの指針となる充実した機能
●入力サンプリング周波数にオートロック
●75Ω同軸×2,オプティカル×1のデジタル入力
●DATをデジタルtoデジタルで接続できるデジタル・
 モニター端子を装備
●アナログ出力は可変・固定・バランスの3系統を装備
●アブソルート・フェイズ・コントロールを装備
●独立ボリューム付きヘッドホン端子を装備


CD-94GOLDの写真
marantz  CD-94LIMITED
COMPACT DISC PLAYER ¥160,000

CDA-94GOLDの写真
marantz  CDA-94LIMITED
D/A CONVERTER UNIT ¥160,000

翌年の1987年,パネル面をゴールドにしたCD-94LIMITED,CDA-94LIMITEDが追加され
ました。
基本的な仕様は同一ですが,光出力,光入力系は他社と同一の角形のいわゆるTOSリンクの
ものに変更されていました。
また,ダイキャストシャーシを支える底板に新たに3mm厚の鉄板が採用され,インシュレーター内
部の空間にはポルトランドセメントが充填されるなど,剛性と重量が高められ,振動・共振対策が
より徹底されていました。



●SPECIFICATIONS●



■CD-94/CD-94LIMITED■

D/Aコンバーター 16ビット4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター
L/R独立2DAC
フィルター 3次ベッセルフィルター
チャンネル
2チャンネル
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.1dB
ダイナミックレンジ 96dB以上
SN比 104dB(1kHz)
チャンネルセパレーション 100dB以上(1kHz)
全高調波歪率 0.0015%(1kHz,T.H.D)
ワウ・フラッター
水晶精度
誤り訂正方式
CIRC
アナログ出力
2Vrms
デジタル出力
0.5Vp-p(75Ω)
オプティカル出力
光ファイバーコネクター
レーザー
AIGaAs半導体
波長
800nm
サンプリング周波数
44.1kHz
量子化
16ビットリニア/チャンネル
電源
100V 50/60Hz
消費電力
30W
最大外形寸法・重量
462W×104H×355Dmm・10.3kg
462W×107H×355Dmm・12kg(LIMITED)





■CDA-94/CDA-94LIMITED■

D/Aコンバーター 16ビット4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター
L/R独立2DAC
フィルター 3次ベッセルフィルター
チャンネル
2チャンネル
周波数特性
2Hz〜20kHz±0.1dB(44.1kHz入力時)
               (FIXED VARIABLE)
20Hz〜20kHz±0.3dB(BALANCE)
ダイナミックレンジ
96dB
SN比
104dB(1kHz)
チャンネルセパレーション
100dB以上(1kHz)
全高調波歪率
0.0015%(1kHz,T.H.D)
入力サンプリング周波数
32kHz,44.1kHz,48kHz(自動切り替え)
デジタル入力1,2
0.5Vp-p(75Ω)
オプティカル入力
光ファイバーコネクター
デジタル録音出力
0.5Vp-p(75Ω)
アナログ出力
固定・バランス:2.5Vmax/600Ωに適合(XLRタイプ×2)
固定・アンバランス:2.5Vmax/120Ω(RCAピンジャック×2)
可変・アンバランス:0〜2.5Vmax/120Ω(RCAピンジャック×2)
ヘッドホン出力
0〜50mW/8Ω
電源
100V 50/60Hz
消費電力
28W
最大外形寸法・重量
462W×104H×368Dmm・9kg
462W×107H×358Dmm・11kg(LIMITED)
※ 本ページに掲載したCD-94,CDA-94,CD-94LIMITED
 CDA-94LIMITEDの写真・仕様表等は1987年2月,1987
 年5月のmarantzのカタログより抜粋したもので,日本マラン
 ツ株式会社に著作権があります。したがっ てこれらの写真等
 を無断で転載,引用等をすることは法律で 禁じられています
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