CD-95の写真
marantz CD-95
COMPACT DISC PLAYER ¥180,000

1988年にマランツが発売したCDプレーヤー。マランツのCDプレーヤーはCDの開発メーカーの1つ・フィリッ
プスとの深い関係の元にありましたが,このCD-95もそんな1台で,他の国産CDプレーヤーとは違った味わ
いを持つ音とデザインが支持されていました。

CD-95は,1986年に発売されたCD-94(¥150,000)からの発展型と考えられるモデルで,CD-94に
はさらに防振対策を施したCD-94LIMITED(¥160,000)という機種もありました。この両モデルはあの戦略
モデルCD-34の流れを受け継ぐ4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター,左右独立DACという基本を受
け継いだ設計でした。CD-95はそこからさらに発展充実した内容を持ち,一つの完成形となった1台だったよ
うに思います。また,CD-94,CD-94LIMITEDには,それぞれ組み合わせてグレードアップができるD/Aコ
ンバーターCDA-94(¥150,000),CDA-94LIMITED(¥150,000)が発売されていました。そして,この
両モデルをベースに開発されたと考えられる,あのフィリップスブランドのセパレート型CDプレーヤーLHH-1000
(¥600,000)ともCD-95は多くの共通性を持っており,当時のマランツの中でも最もグレードの高いCDプレー
ヤーでした。

CD-94とCD-94LIMITEDの写真
marantz CD-94LIMITED     marantz CD-94
COMPACT DISC PLAYER ¥160,000         COMPACT DISC PLAYER ¥150,000

CDA-94とCDA-94LIMITEDの写真
marantz CDA-94LIMITED    marantz  CDA-94
D/A CONVERTER UNIT  ¥160,000          D/A CONVERTER UNIT ¥150,000

LHH-1000の写真
PHILIPS LHH-1000
COMPACT DISC PLAYER SYSTEM ¥600,000

CD-95のD/Aコンバーターは,フィリップス製LSI(TDA1541A-S1)が搭載されていました。TDA1541A-S1
は,当時のフィリップスのマルチビット系の最新ディバイス”Aバージョン”の中からさらに厳選されたセレクテッドタイ
プで,型番とともにクラウンマークが刻印されていました。D/Aコンバーターとして,全温度幅で,微少信号時には
0.5LSB,通常のレベルで1LSBという高いリニアリティが確保されていました。

CD-95のDAC

CD-95では,さらにチャンネル当たり2個のD/Aコンバーターを搭載し,プッシュプルD/A変換方式を採用して
いました。2個のD/Aコンバーターは正相と逆相の組み合わせになっており,波形が合成されることで同相成分
はキャンセルされ,同時に偶数次歪も相殺されて大幅に低減されるという効果があるというものでした。

CDドライブメカニズムには,CDM-1を搭載していました。これは基本構造が1983年に完成されたフィリップス
自慢のメカニズムで,LHH-2000,LHH-1000等にも搭載されてきたものでした。1ビーム方式のスイングアー
ムピックアップを持ち,レンズには収差が少なく温度特性にすぐれたローデンシュトック社製のガラスレンズを採
用し,高いピックアップ能力を実現していました。
スイングアームを制御するサーボには,8cmCDシングルに対応した新しいタイプが搭載されていました。センサー
によってディスクを検出し,回路定数によって,12cmCD,8cmCDそれぞれに対応した最適の回路係数に切り
換えるというもので,12cm,8cmどちらのCDに対しても最適な動作状態が得られるようになっていました。

CDM-1メカニズム

電源回路は,単体のパワーアンプに匹敵するほどの大型の電源トランスと大容量(68,000μF×2)の高品質
カスタム電解コンデンサーが投入された強力なものでした。電解コンデンサーには新素材を用いた音質重視型を
採用していました。電源トランスは,2次巻線をデジタル回路用,オーディオ回路用,ディスプレイ回路用に分割し
独立化が図られていました。レギュレーター回路にもディスクリート構成が採用され,電源部からの干渉やノイズ
を抑えていました。

振動による音質の劣化を抑えるため,各部に振動への対策がとられていました。CDM-1メカニズム自体,スイン
グアームの剛性向上,ダイキャストベースの採用などが行われ,振動に強い構造となっていました。さらに,これ
を支えるベースにも防振対策がとられ,銅メッキを施したアルミダイキャストシャーシが採用されていました。筐体
もダイキャスト製サイドパネル,3mm厚の底板による強固なサンドイッチ構造,マランツ独自のARC(Alminium
Raft Ceiling)構造のトップカバーなどにより強固なものとなっていました。ARC構造は,ラフト(いかだ)カットが
施された3ピース構造によって強度を増すとともに,振動モードを拡散するというものでした。
内部レイアウトにも検討がなされ,通常シャーシ内にマウントされるレーザーシグナル用のプリアンプは回転系か
ら隔離されて振動の影響を受けないようにされていました。また,デジタル回路,オーディオ回路,サーボ回路,
マイコン及びディスプレイ回路それぞれを独立した基板構成にして相互干渉を抑えていました。

機能的には,通常のプログラムメモリーー機能に加えて,独自のFTSという機能を搭載していました。FTSは,
(Favourite Track Selection)の略で,ディスク毎に好みの曲をプログラムして,半永久的にメモリーできる
機能で,最高226枚までのCDがメモリーでき,1枚5曲なら150枚,20曲なら約70枚までという具合にメモリー
ができるというものでした。
サーチ機能としては,10キーによるダイレクト選曲,プログラム選曲,インデックスサーチ,タイムサーチ,シャッ
フルプレイなどが搭載されていました。プログラムメモリーは20曲,リピート機能は全曲リピートとA-B間リピート
が装備されていました。
ディスプレイは,24曲カレンダータイプで,時間表示は,演奏曲のラップと1曲,全曲の残り時間を表示できるよ
うになっていました。フロントパネルはゴールド梨地仕上げで,通常使う7つのボタン以外は10キー等がシーリン
グパネル内に収められたすっきしたデザインが特徴でした。
出力端子は,アナログは固定出力とマスターボリュームに連動する可変出力,デジタルは光と同軸の2系統の
出力を備えていました。

シーリングパネル内部

以上のように,CD-95は,フィリップスとの深い関係のもとに生まれた完成度の高い一体型CDプレーヤーでし
た。バランスのとれた設計はその音の印象にもつながるところがあり,中庸を得た音を持った,音楽を聴くため
の道具として完成度の高い1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



成熟期を迎えたCD時代の本格派。
◎D/Aコンバーターの決定版
 ”Aバージョン”S-1タイプ
◎画期的なプッシュプルD/A変換方式
◎CDを理想的にドライブ
 自動サーボ切換
◎究極のCDドライブメカニズム
 CDM-1
◎大出力パワーアンプなみの
 強力電源
◎高集積度の防振対策
 アルミダイキャストシャーシ
◎豊富な出力回路,
 先進の機能
●CD-95 SPECIFICATIONS●
チャンネル 2チャンネル
周波数特性 2〜20,000Hz±0.1dB
ダイナミックレンジ 96dB以上
SN比 104dB
チャンネルセパレーション 100dB以上(1000Hz)
ワウフラッター 水晶精度
誤り訂正方式 クロスインターリーブリード・ソロモンコード(CIRC)
音声出力 2V RMS ステレオ
レーザー AlGaAs
波長 780nm
サンプリング周波数 44.1kHz
量子化 16ビットリニア/チャンネル
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 約30W
最大外形寸法 454W×106H×357Dmm
外形寸法 454W×86H×330Dmm
重さ 13.8kg
許容動作温度 +5℃〜+35℃
許容動作湿度 5〜90%(結露のないこと)

 

●CD-94,CD-94LIMITED SPECIFICATIONS●


D/Aコンバーター 16ビット4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター
L/R独立2DAC
フィルター 3次ベッセルフィルター
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.1dB
ダイナミックレンジ 96dB以上
SN比 104dB以上
チャンネルセパレーション 100dB以上
全高調波歪率 0.0015%
ワウフラッター 水晶精度
最大外形寸法 462W×104H×355Dmm(CD-94)
462W×107H×355Dmm(CD-94LIMITED)
重量 10.3kg(CD-94)
12kg(CD-94LIMITED)

 
 
 

●LHH-1000 SPECIFICATIONS●
 

●CD DRIVE UNIT LHH-1001●

デジタル出力 コアキシャル×2,オプティカル×1
最大外形寸法 455W×103H×345Dmm
重量 14kg

 

●D/A CONVERTER UNIT LHH-1002●

D/Aコンバーター 16ビット4倍オーバーサンプリング
”Aバージョン”デジタルフィルター
L/R独立2DAC
フィルター 3次ベッセルフィルター
デジタル入力 コアキシャル×2,オプティカル×2
DAT入出力 コアキシャル×1,オプティカル×1
アナログ出力 バランス×1,アンバランス×1
サンプリング周波数 44.1kHz,48kHz(自動切換)
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.1dB(アンバランス)
SN比 106dB以上
ダイナミックレンジ 97dB以上
最大外形寸法 455W×103H×345Dmm
重量 14kg
※本ページに掲載したCD-95,CD-94,CD-94LIMITED
 LHH-1000の写真・仕様表等は1988年10月のmarantz
 のカタログより抜粋したもので,日本マランツ株式会社に著作
 権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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