SANSUI CD-α717DR
COMPACT DISC PLAYER ¥108,000
1991年に,サンスイが発売したCDプレーヤー。サンスイは,早くからCDプレーヤーを発売していましたが,
アンプに比べてあまり注目されるブランドとはいえませんでした。そんな中,1988年に1ビットMASH方式の
D/Aコンバーターを世界ではじめて搭載したCDプレーヤーCD-α717Extraを発売し,CDプレーヤーの分
野でも評価を得るようになりました。その翌年,改良型のCD-α717D Extraを発売し,さらにその翌々年に
発売された後継機がCD-α717DRでした。

D/Aコンバーター部は,第3世代のMASH・MN6474を2基登載し,コンプリメンタリーモードで動作させる独
自の方式がとられていました。MASHは(Multi Stage Noise Shaping)の略で,独自の多段ノイズシェー
ピング回路を指すことばです。MASH方式の1ビットD/Aコ
ンバーターでは,デジタルフィルターが16ビットデジ
タルデータをオーバーサンプリングし,折り返し成分を
可聴域外の高域周波数帯に追いやり,MASHにより多
段のノイズシェーピング(超高域に量子化ノイズ
を集中させる)が行われ,可聴帯域内の優れたSN比と精度を
実現したものでした。MASHは多段のノイ
ズシェーピングを安定してかけることを可能にした技術でした。MASH
内では,その後1ビットD/Aコンバ
ーターによりPWM(Pulse Width Modulation)変換が行われ,多段の
フィードバックやフィードフォワー
ドが行われた後ローパスフィルターを通すだけでアナログ信号に変換できると
いうもので,微少信号に対
して強さを持つというものでした。
CD-α717DRでは,第3世代のMASH・3次768倍で,1チップで4chのアナログ出力をもつMN6474を2基
コンプリメンタリーモードで動作させる方式により,PWM出力を1ビット8DAC方式ツインバランスシステムとして
デジタル信号の分解能を2倍に高め,同相雑音の除去によるS/N比の飛躍的な向上と,高域での歪の徹底改
善を実現していました。また,デジタル信号を瞬時に1ビット信号にバランス変換して,ダイレクトにアナログ信号
を出力することで,マルチビット方式で発生するゼロクロス歪やノンリニア歪の発生も原理的に解消し,微小レ
ベル信号でのすぐれた再生能力を確保していました。
上述のように,DAC内でバランス動作を行うMASHは,反転出力をデジタルで取り出すため位相ズレが起こら
ず,ノイズに強いバランス出力が得られるため,ピュア伝送が可能なバランス出力端子が装備されていました。
これにより,バランス入力を備えたアンプとの接続で,当時サンスイが推していた,一貫したバランス伝送による
バランス再生システムが構成できるようになっていました。また,デジタル出力は同軸と光が各1系統が装備さ
れていました。

CDドライブにはリニアモーターメカニズムが搭載されていました。スムーズな動作を実現するトレイローディン
グとメカシャーシアップに独立した2モーター,高速アクセスと静粛性を実現したピックアッ
プ駆動のリニアモー
ター,そしてスピンドルモーターからなる4モーターメカニズムとなっていました。ピックアップは耐振性に優れ
た2軸摺動タイプを採用し,レール保持部には高精度で強度の高いダイキャストベースを使用していました。

さらに,メカシャーシ,サブシャーシからプレイシャーシをコイルスプリングとオイルダンプで,4カ所をフローティ
ングしたトリプルシャーシ構造をとっていました。

サーボ系には,サンスイ独自のバランス・サーボシステムとバランス・ローパスフィルターを搭載していました。
回路自体の能力を高め,漏洩電流がアースを介してオーディオ回路へと流入することを防ぐとともに,D/Aコ
ンバーターの出力をバランス化して音質に悪影響を与える高調波成分がアースへと流れ込む経路を遮断して
いました。さらに,サーボドライブアンプのクロスオーバー歪を打ち消すNEWダイナミックサーボシステムを搭
載し,CDの読み取り精度を向上させていました。

前世代のCD-α717DEXTRA等とは異なり,この世代からサンスイも,モーターを中心とするメカを筐体の
中央に配置するセンターメカレイアウトを採用していました。メカの重量バランスをとり駆動時の振動・共振を
効果的に制御して音質を向上させていました。また,ディスク・トレイに振動吸収性にすぐれた液晶ポリマー
を使用し,アウターシャーシとインナーシャーシから成るダブルシャーシ構造など,安定性と剛性を高めてい
ました。



電源部は,マイコン部,DAC,駆動系,ディスプレイ,アナログ系などの相互干渉による音質の劣化を防ぐ
ため,15電源という独立マルチ電源方式が採用され,ヘッドホン回路にまで独立電源をもつなど,各系統
への給電を個別に行うようになっていました。電源トランスは,デジタル系とアナログ系にフローティングして
振動を制御したトランスをそれぞれにひとつずつ搭載して双方を完全に分離し,低倍率のアルミ箔を使用し
た電解コンデンサーとによる強力な電源部を構成していました。
パーツの面でも,サンスイらしく,シルミックコンデンサー,Saフィルムコンデンサー,スチロールコンデンサー
RMG金メッキ抵抗など,新規開発した高特性・高音質パーツを,厳選して使用していました。



本体とリモコンに10キーが装備され,PLAY MODEとして,CONT(通常の連続再生),PROG(プログラム
再生,RAND(ランダム再生),EDIT(エディット=再生テープのA面,B面の時間により,1分単位で設定した
時間に対して,時間内の曲数を自動設定)が備えられていました。プログラム再生時には,後追いメモリーも
可能でした。曲間の間隔を揃えるオートスペースや1曲終わると自動的に一時停止するオートポーズ,ディス
ク内のピークレベルを探し出し,レベル表示してその部分を5秒間再生するピークサーチ,曲頭を少しずつ再
生していくミュージックスキャンなどの機能も装備されていました。リピート機能は3種類が備えられていました。
ディスプレイは,20曲ミュージックカレンダーが継承され,リモコンで点灯,消灯ができるようになっていました。
新しい機能として,デジタル可変方式によるデジタル・アッテネーターが装備されていました。パワーアンプ等
とダイレクト接続した際にも音質劣化を抑えつつ0dB~-26dBのレベルコントロールが可能となっていました。
また,設定ボリュームレベルから無音(-∞)まで,2秒~10秒の1秒間隔で任意に設定した時間でフェードイ
ン/フェードアウトができるオートフェーダーコントロールも装備されていました。
また,CD-α717DRは,サンスイのCDプレーヤーとしては,初めてゴールドのフロントパネルを採用し,セン
ターメカレイアウトとともに,大きくデザインイメージが変わっていました。もちろん,伝統のブラックパネル仕様
もありました。



以上のように,CD-α717DRは,テクニクスとともにMASHを全面的に推進していたサンスイが,パーツ,
作りなど,オーソドックスにしっかりと作り上げたCDプレーヤーでした。派手さはないものの,ニュートラル系
のゆったりした音を聴かせてくれるCD-α717DRは,音楽を聴く道具として実力ある1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



1bit・MASH,2基登載。
デジタルアッテネーター採用。
高純度バランス伝送システムを実現する
リファレンス・モデル。

◎PWM出力の分解能を2倍にする
 ダブル構成・第3世代MASH・DAC。
◎NEW電解コンデンサー&トランスを搭載した
 独立マルチ電源方式の強力電源部。
◎理想のボディバランスを確保した
 センターメカレイアウト。
◎強度と動作性を向上させた
 4モーター&トリプルシャーシ・メカニズム。
◎ノイズや歪から音楽信号を守る
 バランス・サーボシステムと
 バランス・ローパスフィルター。
◎理想的な音場再生を可能とする
 バランス出力。
◎デジタル部・アナログ部の性能を高める
 新開発トップクオリティパーツ。
◎音質劣化を抑えたレベルコントロールができる
 リモコン対応デジタル・アッテネーター。
◎マイコン制御で音楽をフェードアウト・
 フェードインさせるオートフェーダー。
◎ディスクのピークポイントを検知してレベル表示し
 5秒間再生するピークサーチ。

●ON/OFFスイッチ付き光・同軸デジタル出力
●ON/OFF機能付きディスプレイ
●PLAY MODE(CONT./PROG./RAND./EDIT)
●SIDE A/B
●SYNC.
●オートスペース/オートポーズ
●後追いメモリー
●ミュージックスキャン
●3ウェイ・リピート
●8cmシングル・ダイレクト対応
●20曲ミュージックカレンダー




●CD-α717DR主要規格●
D/Aコンバーター
18bit分解能MASH DAC2基
周波数特性
DC~20kHz(±0.3dB)
高調波歪率(1kHz)
0.0022%
ダイナミックレンジ
98dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター
測定限界値以下
SN比
110dB以上(EIAJ)
出力電圧
2V(NORMAL&BALANCE)
定格消費電力
20W
外形寸法
460W×124H×391Dmm
重量
11.0kg

※本ページに掲載したCD-α717DR写真・仕様表等は
 1991年のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山
 水電気株式会社に著作権があります。したがって,これ
 らの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁
 じられていますので,ご注意ください。

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