SANSUI CD-α717EXTRA
COMPACT DISC PLAYER ¥85,0001988年にサンスイが発売したCDプレーヤー。NTTが開発した1ビットDAC・MASHを世界で初めて搭
載したCDプレーヤーとして記憶に残る1台でした。CD-α717EXTRAの最大の特徴は,上記のMASH方式の1ビットDACを搭載していたことでした。こ
のMASHは,NTTと松下電器が共同開発したもので,ビットストリーム方式とともに,1ビットD/Aコンバ
ーターの代表的な方式の1つで,現在でも広く使われている方式です。MASHは(Multi Stage Noise
Shaping)の略で,独自の多段ノイズシェーピング回路を指すことばです。MASH方式の1ビットD/Aコ
ンバーターでは,デジタルフィルターが16ビットデジタルデータをオーバーサンプリングし,折り返し成分を
可聴域外の高域周波数帯に追いやり,MASHにより多段のノイズシェーピング(超高域に量子化ノイズ
を集中させる)が行われ,可聴帯域内の優れたSN比と精度を実現したものでした。MASHは多段のノイ
ズシェーピングを安定してかけることを可能にした技術でした。MASH内では,その後1ビットD/Aコンバ
ーターによりPWM(Pulse Width Modulation)変換が行われ,多段のフィードバックやフィードフォワー
ドが行われた後ローパスフィルターを通すだけでアナログ信号に変換できるというもので,微少信号に対
して強さを持つというものでした。従来のマルチビットに対して,時間軸の正確さにより精度を出すという,
当時全く新しい発想のD/Aコンバーターといわれていました。
CD-α717EXTRAでは,さらに,4DACツインバランスシステムが採用され,同相雑音の除去と出力信
号の増大により,優れたSN比と,2次高調波歪みの低減が図られていました。そのため,DAC出力のバ
ランス化が図られ,ローパスフィルターにもアース回路を持たないバランス・ローパスフィルターが搭載され
ていました。アナログ出力にもキャノンタイプのバランス出力を搭載し,バランスアンプのサンスイの面目躍
如といった感じでした。
CDドライブには自社開発のリニアモーターメカニズムが搭載されていました。スムーズな動作を実現する
トレイローディングとメカシャーシアップに独立した2モーター,高速アクセスと静粛性を実現したピックアッ
プ駆動のリニアモーター,そしてスピンドルモーターからなる4モーターメカニズムとなっていました。
ピックアップは耐振性に優れた2軸摺動タイプを採用し,レール保持部には高精度で強度の高いダイキャ
ストベースを使用していました。さらに,メカシャーシ,サブシャーシからプレイシャーシをコイルスプリングと
オイルダンプで,4カ所をフローティングしたトリプルシャーシ構造をとっていました。
また,メカニズム部と回路・伝送系の間をセパレーターで分離した構造とし,さらに1.6mm厚の底板をベ
ースとしたアウターシャーシにメカニズム部のインナーシャーシを配したダブルシャーシ構造として,無共
振・無振動を徹底した構造がとられていました。
電源部はデジタル・アナログの相互干渉を抑えるため,2トランス9電源方式が採用され,トランスからデジ
タル/アナログの分離が図られていました。パーツも電解コンデンサーをはじめ,高品質なものが使用され
ていました。
また,サーボ電流の変化やサーボ回路からの悪影響を防ぐために,サーボ系もバランス構成となった「ダイ
ナミック・バランス・サーボシステム」が搭載されていました。
また,ディスプレイは,ツインタイム表示,20曲ミュージックカレンダーなどが表示された大型のものが搭載
され,FL管のノイズをカットするため,ディスプレイOFFスイッチも付いていました。
変わった機能としては,テープのA面,B面の時間により,1分単位で設定した時間に対して,時間内の曲
数を自動設定するCOMPUEDIT機能を搭載していました。以上のように,CD-α717ETXRAは,サンスイが優れたD/Aコンバーターとして,初めてMASH・1ビット
DACを搭載した画期的な1台で,サンスイらしい滑らかでどっしりした音を持った名機だと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
DIGITAL PLAY
微妙なニュアンスを求めて,MASH方式採用。
きわだつ表現力をものにした
CDプレーヤーの新しい形です。
◎理想的なアナログ信号を生み出す。
先進の1ビットD/A変換システムMASH方式。
◎精度と強度を徹底した
4モーター&トリプルシャーシの新開発メカニズム。
◎無共振・無振動の思想を徹底追及。
高剛性ダブルシャーシ構造。
◎ノイズにこだわる徹底したバランス思想。
バランスサーボ&バランスローパスフィルター。
◎光/同軸2系統のデジタル出力に加え,
バランス出力を装備。
◎文字表示,ツインタイムディスプレイが可能。
ON/OFF機能付FLディスプレイ。
◎効率的なテープダビングを実現。
COMPUEDIT搭載。
読み取り方式 | 非接触光学式 |
ピックアップ型式 | ハイプレシジョン・3ビーム半導体レーザー方式 |
回転数 | 200〜500rpm |
チャンネル数 | 2チャンネル |
サンプリング周波数 | 44.1kHz |
量子化ビット数 | 16ビット・リニア |
周波数特性 | DC〜20kHz |
高調波歪率 | 0.003%以下(1kHz) |
ダイナミックレンジ | 98dB以上(EIAJ) |
ワウ・フラッター | 測定検知限以下 |
SN比 | 103dB以上(EIAJ) |
出力電圧 | 2V(NORMAL),2V(BALANCE) |
定格消費電力 | 27W |
寸法 | 430W×127.5H×397.5Dmm |
重量 | 10.0kg |
※本ページに掲載したCD-α717EXTRAの写真・仕様表等は
1988年11月のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山水
電気株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等
を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますの
で,ご注意ください。
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