CD-α917XRの写真
SANSUI CD-α917XR
α-X BALANCED COMPACT DISC PLAYER ¥160,000

1993年に,サンスイが発売したCDプレーヤー。サンスイは,早くからCDプレーヤーを発売していましたが,
アンプに比べてあまり注目されるブランドとはいえませんでした。そんな中,1988年に1ビットMASH方式の
D/Aコンバーターを世界ではじめて搭載したCDプレーヤーCD-α717Extraを発売し,CDプレーヤーの分
野でも評価を得るようになりました。その翌年,改良型のCD-α717D Extraを発売し,さらにその翌年には
ゴールドの筐体になり,デザインイメージを大きく変えたCD-α717DRを発売しました。いずれも中級機という
存在でした。そんな中,1986年のCD-α907以来の,最上級機として「9」の付く型番を持つ1台として発売
されたのがCD-α917XRでした。

CD-α917XRは,同社自慢のプリメインアンプ・「07シリーズ」のAU-α907XRに続いて発売され,シリーズ
機として同社の最上級機と位置づけられた1台でした。それだけに,しっかりと物量を投入した正攻法の作り
が大きな特徴でした。

まず,振動とデジタルノイズの発生源でもあるCD駆動部に対してしっかりとした配慮がなされていました。CD
駆動部はCD-α717Extra以来のセンターレイアウトとされ,構造体としての安定化が図られていました。さら
に,中央に駆動部と電源部を銅メッキのセンター部に置き,他の回路からシールドして分離させる純銅製セン
タードームを装着し,筐体全体の最適な重量バランスを確保し,安定性と剛性を強化することで,モーターや電
源部からの振動・共振を抑えていました。また,このセンタードームを挟んでアナログ部とコントロール部が離し
て配置され,一体型のCDプレーヤーながらセパレート型に近い効果を実現していました。

CD-α917XRの内部

そして,プレーヤー内部の共振を抑えるために,ボンネットの塗装には銅粉を混ぜた特殊塗料を採用し,外部
からの振動に対しては,楕円インシュレーターによる対応が行われていました。また,底板とインシュレーターの
間など,主要部分にテフロンシートとテフロンテープを多数使用し,背面パネルなど多くの部分に銅メッキが施さ
れ,筐体や各部の防振対策が徹底されていました。
各パーツも厳選され,シルミックスーパーコンデンサー,金メッキリードのGSGフィルムコンデンサー,RMG抵抗
Saフィルムコンデンサー等,高水準のものが使用されていました。

電源部

電源部は,デジタル系とアナログ系にそれぞれ独立した専用トランスを搭載した2トランス構成がとられ,電源回
路も双方が独立した構成となっていました。さらに,マイコン部,DAC,駆動系,ディスプレイ,アナログ系など各
系統に対して独立15電源方式が採用され,給電を個別に行うクローズドサーキットとすることで,それぞれの機
能を最大限に発揮させ,相互干渉によって発生する音質劣化を排除していました。また,低倍率のアルミ箔を使
用した電解コンデンサーを採用するなど,完成度を高めていました。
さらに,サーボ電流の変化やサーボ回路からの悪影響を防ぐために,サーボ系もバランス構成となった「バラン
ス・サーボシステム」が搭載されていました。

DAC部は,新開発の18bit分解能ダブルMASH D/Aコンバーターを搭載していました。サンスイは,いち早く
MASHを採用していたブランドで,さらに改良された,当時最新のMASHが搭載されていました。ダブルMASH
D/Aコンバーターは,2つのMASH D/Aコンバーターをディファレンシャルモードで動作させ,デジタル信号の
読み取り精度を高め,同相雑音を除去することで,S/N比を大幅に向上させ,高域の歪みの上昇を抑えていまし
た。さらに,MASHの特徴を生かし,ゼロクロス歪みやノンリニア歪みの発生を原理的に解消し,微小レベルの
高い再生能力が実現されていました。また,このダブルMASH方式では,読み取ったディスクの信号をデジタル
処理するバランス動作を行っていました。これにより反転アンプを必要とせず,位相ズレのない,ノイズの影響を
受けにくいバランス出力が可能となっていました。また,ローパスフィルターにもアース回路を持たないバランス・
ローパスフィルターが搭載され ていました。
出力は,アナログがバランス/アンバランス,デジタルが光/同軸を備え,デジタル出力はON/OFF付きでした。

前モデルCD-α717DRに比べ,大きく印象を変えていました。また,フロントパネル面のボタンも少なくなって,
メカメカしさが抑えられた感じになっていました。しかし,機能的には同様かやや多機能になっていました。
選曲機能としてはリモコンに10キーが装備され,PLAY MODEとしてCONT(通常の連続再生),PROG(プロ
グラム再生,RAND(ランダム再生),EDIT(エディット=再生テープのA面,B面の時間により,1分単位で設定
した時間に対して,時間内の曲数を自動設定)が備えられていました。プログラム再生時には,後追いメモリーも
可能でした。曲間の間隔を揃えるオートスペースや1曲終わると自動的に一時停止するオートポーズ,ディスク内
のピークレベルを探し出し,レベル表示して5秒間再生するピークサーチ,曲頭を少しずつ再生していくオートスキ
ャンなどの機能も装備されていました。リピート機能は5種類が備えられていました。
ディスプレイは,20曲ミュージックカレンダーが継承され,リモコンで点灯,消灯,明度切換,表示(経過時間,残
量時間等)切換ができるようになっていました。
新しい機能として,デジタル可変方式によるデジタル・アッテネーターが装備されていました。パワーアンプ等とダ
イレクト接続した際にも0dB〜−26dBのレベルコントロールが可能となっていました。また,設定ボリュームレベ
ルから無音(−∞)までフェードイン/フェードアウトができるオートフェーダーコントロールも装備されていました。

以上のように,CD-α917XRは,サンスイのCDプレーヤーの最上級機として,しっかりと物量が投入された力
作でした。前作CD-α717シリーズから大きく価格アップしましたが,それだけに各部の作り込み等もコストのか
かったものとなっていました。音の方も,従来のクリアさに,さらに厚みが増した感じで,バランスの良いものとなっ
ていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



”いい音”の,その先へ。
高剛性筐体,強力電源,トップクオリティパーツ,
そして,あらゆる技術を融合させて。
CDリファレンス機の転換点,ここに誕生。

◎駆動部を遮蔽してデジタルノイズから音質を守る
  新開発の純銅製センター・ドームによる内部セパ
  レート構造。
◎純銅材・銅メッキ・テフロンによる振動対策を施して
  安定性と剛性を強化したオリジナル筐体。
◎デジタル・アナログ専用トランスにより完全分離した
  独立15電源クローズ方式の強力電源部。
◎デジタル信号の分解能を高めた新回路ダブルMASH
  DAC構成。
◎リファレンスモデルにふさわしいピュア再生を実現する
  高音質パーツ。
◎音質重視のレベル調整ができるデジタル・アッテネー
  ターとオートフェーダ。


●CD-α917XR主要定格●
D/Aコンバーター
18bit分解能MASH DAC2基
周波数特性
DC〜20kHz(±0.3dB)
高調波歪率(1kHz)
0.0022%
ダイナミックレンジ
98dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター
測定限界以下
SN比
110dB以上(EIAJ)
出力電圧
2V(NORMAL&BALANCED)
定格消費電力
18W
外形寸法
466W×126H×391Dmm
重量
14.1kg

※本ページに掲載したCD-α917XR写真・仕様表等は
 1993年11月のSANSUIのカタログより抜粋したもので,
 山水電気株式会社に著作権があります。したがって,これ
 らの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁
 じられていますので,ご注意ください。

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