MICRO CD-M100
COMPACT DISC PLAYER ¥400,000
1988年に,マイクロが発売したCDプレーヤー。アナログプレーヤーの雄マイクロは,1987年にCDプレー
ヤー第1号機のCD-M2を発売し
,重厚な外観と独自の振動対策などで,評価を得ていました。そのCD-M2
をリファインし,上級機,あるいは後継機として発売されたのがCD-M100でした。

アナログプレーヤーですぐれた金属加工技術を武器に制振特性を高めてきただけに,CD-M100でも、マイ
クロらしい徹底した制振設計が施されていました。
トップとボトムの両プレートには,CD-M2に採用されていた
強靱で制振性において鋳鉄やアルミニウム合金
を遙かにしのぐ合金COSMAL-ZM11を使用し,メカニズム
部やサーボ部をしっかり支える構造としていました。

CDの受け皿のトレー部は,不要振動の発生や共振を抑えるために,駆動メカニズムを厳密に調整されたオ
イルダンプ方式にするとともに,鉛板による積層構造を採用していました。これにより,再生時のディスクのブ
レが抑えられ,サーボ機構への依存を抑えた正確なトラッキングを確保していました。
また,D/Aコンバーター等の音楽信号に関わる重要な集積回路における微少な振動についても影響を抑える
ために,これらの集積回路に新合金グレースゴールドをカップリングして有害な振動を排除していました。



全体を支える脚部には,入念な研究開発による新しいインシュレーターが採用されていました。スプリングよ
る振動の遮断に加え,制振材料の中でも格段の制振性能をもつフェライトコンパウンドを内部に封入した構
造とし,高い防振,制振性能を実現していました。さらに,設置面には真鍮によるベースとフェルトが配されて
いました。

CD-M100は,CDのオリジネーターであったフィリップスのメカニズム,D/Aコンバーター等を搭載したCD
プレーヤーで,デザインからも分かるように,当時のマランツの最高級機CD-95との共通性が高い作りとなっ
ていました。実際,当時,CDプレーヤーを完全に自社生産することは,マイクロのような規模のオーディオメー
カーでは生産量やコスト面などからも難しいため,信頼できる大手メーカーから主要部分の供給を受け,これ
に自社の技術を盛り込んで自社製品に仕上げるという手法が採られており,海外製品では,フィリップス以外
はすべてこうした製品でした。CD-M100もマランツの最新のCD-95をベースに開発され,実際の生産もマラ
ンツで行われていたようです。

CDドライブメカニズムには,CDM-1を搭載していました。これは基本構造が1983年に完成されたフィリップ
ス自慢のメカニズムで,LHH-2000,LHH-1000等の高級機にも搭載されてきたものでした。1ビーム方式
のスイングアームピックアップを持ち,精密で堅牢なダイキャスト製で,レンズには収差が少なく温度特性にす
ぐれたローデンシュトック社製のガラスレンズを採用し,高いピックアップ能力を実現していました。



D/Aコンバーターは,フィリップス製LSI(TDA1541A-S1)が搭載されていました。TDA1541A-S1は,当
時のフィリップスのマルチビット系の最新ディバイス”Aバージョン”の中からさらに厳選されたセレクテッドタイ
プで,型番とともにクラウンマークが刻印されていました。D/Aコンバーターとして,全温度幅で,微少信号時
には,0.5LSB,通常のレベルで1LSBという高いリニアリティが確保されていました。
デジタルフィルターにはSAA7220P/Aが採用されていました。当時最新の16ビット4倍オーバー・サンプリン
グ方式のデジタルフィルターで,サンプリング周波数を44.1kHzの4倍,可聴周波数帯域をはるかに超える
176.4kHzとすることで,高次の量子化ノイズを可聴帯域外に追放し,これによりD/A変換後のアナログ・ロ
ーパス・フィルターに減衰特性の緩やかな3次ベッセル・フィルターの使用が可能となり,高域位相特性や中・
高域における定位感の向上が実現されていました。



パーツやコンストラクション等の面でもしっかりと配慮がなされていました。D/Aコンバーターのカップリングコ
ンデンサー及び電源部のデカップリングコンデンサーに,英国のオーディオ誌で世界のNo.1と絶賛された
”Siderial Caps”を採用し,合計16個も投入し,音質の向上と電源部の強化とクオリティアップを実現してい
ました。また,各回路や内部配線に用いられている抵抗やコンデンサー等もしっかりと吟味されていました。
シールド構造においても,大型電源トランスには,ショートリング/ハムプルーフ・ベルト/銅メッキ鉄製シールド
ケースによる三重構造のシールドを施し,フラックスの漏洩を抑えていました。電源部は,もちろんデジタル部
アナログ部,サーボ部,FL表示部それぞれの独立電源方式が採用されていました。アナログ回路とデジタル
回路の相互干渉に対しては,それぞれの基板を別個にして完全にシールドしアースポイントにも細心の注意
を払って電磁/パルス干渉による音質への悪影響を抑えていました。また,輻射ノイズの原因となる可能性の
あるFL表示部にはON/OFFスイッチが搭載されていました。

CD-M100の出力は,デジタル出力として同軸と光出力があり,アナログ出力として通常のピン端子による
出力とバラ ンス型出力が備えられていました。特に,アナログ・バランス出力は,バイファイラー巻き,5重サ
ンドイッチ巻き,ならびに4重スタティックシールドを継承しつつ,さらに大容量化された出力トランスを搭載した
ノイズキャンセルの出力回路でした。その周波数特性は10Hz~50kHzまできわめてフラットで,忠実な伝送
を実現していました。
バランス出力のキャノンジャック及び付属ケーブルのキャノンプラグには,スイス・ノイトリック社製の金メッキ
タイプが採用され,通常のRCAジャックには,24金メッキを施した挽物(削り出し)タイプが採用されていまし
た。



以上のように,CD-M100は,フィリップス・マランツ系のCDプレーヤーをベースに,マイクロらしい正攻法
で物量を投入した力作でした。そこには,外観のイメージ同様に,マイクロらしいアナログ感覚のしっかりし
た音が実現されていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



マイクロの,CD。
さらに音楽の真実に迫る。

◎デジタルの不動の大地を築く。
 さらに進化した独自の制振設計。
◎デジタルの真実の姿を追求。
 磨きあげた回路と厳重なシールド。
◎デジタルの全能力を抽出。
 16ビット4倍オーバー・サンプリング。
◎デジタルの応用力を搭載。
 4系統の豊富なアウトプット。
◎デジタルの自由性を堪能。
 フル機能のリモコン。




●SPECIFICATIONS●

形式 コンパクトディスク・デジタル・オーディオシステム
方式 16ビット4倍オーバサンプリング,ツインDAC,
3次ベッセル・フィルター
チャンネル数 2チャンネル
周波数特性 2Hz~20kHz±0.1dB
全高調波歪率 0.0015%以下(1kHz)
SN比 104dB以上(1kHz)
クロストーク -100dB以下(1kHz)
ダイナミックレンジ 96dB以上
出力レベル 2V RMS(アナログアウト)
1mW/600Ω(バランス・アウト)
0.5p-p/75Ω(デジタル・アウト)
出力形式 アナログ・アウト,アナログ・バランス・アウト
デジタル・アウト,オプチカル・アウト
電源 100V 50/60Hz
消費電力 25W
外形寸法 455W×120H×335Dmm
重量 23kg
※本ページに掲載したCD-M100の写真・仕様表等は1988年の
 MICROのカタログより抜粋したもので,マイクロ精機株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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