SONY CDP-333ESD
COMPACT DISC PLAYER ¥89,800
1986年にソニーが発売したCDプレーヤー。ソニーは,1984年の第3世代機CDP-552ESD
でデジタル出力を備えたCDプレーヤーとD/AコンバーターDAS-702ESを他社に先がけて発売
し,1985年には内容を強化したCDP-553ESD,D/AコンバーターDAS-703ESで高い評価
を受けていました。そして,この年,後継機としてCDP-555ESDを発売しました。その弟機として
発売されたのがCDP-333ESDでした。

デジタルフィルターには,前世代のモデルCDP-303ESが2倍オーバーサンプリングタイプであっ
たのに対し,自社製の4倍オーバーサンプリングデジタルフィルター・CXD1088が搭載されてい
ました。CXD1088は,FIR型のデジタルフィルターで,83次+21次という構成で,リップル特性
±0.001dB以内,阻止帯域の減衰量80dBというすぐれた性能をもち,サンプリング周波数を
176.4kHzとすることで,不要成分の下限周波数を24.1kHzから一気に156.4kHzまで引き
上げていました。これにより,D/A変換後のローパスフィルターの減衰特性がなだらかなものにで
きるため,段数も素子数も少ない3次GIC型ローパスフィルターの搭載で,信号経路のシンプル
化が実現していました。

D/Aコンバーターは,L・R独立型16ビットのフィリップス製・TDA1541が搭載されていました。
当時の最新DAC・ICで,デジタルフィルターの信号処理速度に対応する高速タイプで,微小信号
レベル時のゼロクロス歪みやジッター成分を極限まで排除していました。L・R独立構成により,チ
ャンネル間の位相差がなく,L・Rのスイッチング回路はもちろん,従来設けられていたサンプル
&ホールド回路も不要となり,オーディオ回路はきわめてシンプルな構成となっていました。さらに
オーディオ回路は,全段L・Rツインモノ構成で,チャンネル間の干渉が排除されていました。



D/Aコンバーター,デジタルフィルター,EFMディモジュレーターなどのデジタル信号処理系は,す
べてひとつのマスタークロックに完全同期させて処理が行われる「ユニリニア・コンバーターシステ
ム」が採用されていました。このシステムを構成するLSI群は,CD専用に開発された第3世代LSI
で,集積度を高めて周辺部の部品点数を半減させ,デジタル系の安定性・信頼性の向上と消費電
力の低減を実現していました。

光学メカニズムは,CDP-555ESDと同じく,光学ブロックと一体化したリニアモーターメカニズム
が搭載されていました。ベルト,ギヤ等を使用していたメカニズムから大きく進歩して,リニアモーター
を登載した当時最新のメカニズムで,信頼性・耐久性を大きく向上させ,その静粛性,選曲のスピー
ド(最大1秒以内)は,当時,他機を圧倒していました。



光学系メカニズムの土台となるベースユニットは,「ブラック・セラデッドベースユニット」と称されるも
ので,内部損失が極めて大きいセラミックパウダー入りの特殊樹脂とメタルの複合成型で,異種素
材の組み合わせで制振効果を高め,共振鋭度を大幅に下げるとともに,剛性も高めたもので,振動
の発生を抑えていました。また,ベースユニット全体もフローティング構造として,外部からの振動の
伝達を遮断していました。さらに,チャッキングアームも樹脂と金属の二重構造とされていたほか,
ディスク回転時の面ブレを防ぐ空力学的な対策も施され,不要振動を抑えていました。



シャーシは,外装シャーシと内部シャーシの二重構造として高い強度と剛性を確保し,さらにメカブロッ
ク部,デジタル,アナログ部,コントロール系を分離配置し,各部の干渉や共振を抑えていました。また
脚部には,無反発ゴムと樹脂による大型インシュレーターを採用し,外部からの振動伝達を遮断してい
ました。

リニアモーターによるトラッキングメカニズムの制御には,新開発の「Sサーボ」が搭載されていました。
これは,新開発のRFICが,ディスク上のキズや汚れなどで生じる信号のドロップアウトを検出すると,
ディスクの回転周期から次にドロップアウトが生じるタイミングを瞬時に予測,ドロップアウト発生の直前
にトラッキング,フォーカス両サーボ回路のサーボ量をマイコンで制御するもので,一種の予測制御方
式でした。その予測時間精度は1/8000秒の高精度で,しかもCDのCLV(線速度一定)に対応してお
り,回転数の異なる内・外周どの位置でもこの精度を維持することができるようになっていました。これ
までの方式に比べ,トレース能力が各段に向上し,サーボ電流の急激な変動により,電源部を介して発
生するアナログ部への影響も少なくなっていました。

電源回路は,9系統独立の安定化電源が採用されていました。デジタル系,アナログ系の分離だけでな
く,デジタルフィルターとD/Aコンバーターの電源をそれぞれ専用化したほか,ディスプレイその他も3系
統に分離し,これにより,電源部を介して発生するサーボ電源の乱れによる電圧低下やデジタル信号の
高調波成分などのアナログ回路への干渉も防いでいました。さらに,20VAの電源トランス,大容量の整
流コンデンサーなど,必要量を大幅に上回る大型のものを使用した,強力な電源回路としていました。

デジタル出力系は,出力直前に時間軸補正用のラッチを設け,より厳密にジッター成分を除去するラッ
チド・デジタル出力が装備され,D/AコンバーターユニットDAS-703ES等と組み合わせてより高音質
な再生も可能となっていました。また,アイソレーションパルストランスの搭載に加え,デジタル出力時は
アナログ出力を,アナログ出力時にはデジタル出力をカットして,相互干渉を防止するようになっていま
した。アナログ出力は,固定出力のみで,ヘッドホン出力は,ボリュームが搭載されていました。

第3世代機以来の機能面や操作性は,依然当時の最高水準にありました。リニアモーターメカニズム
の高速性を生かし,20キーによるダイレクト選曲とミュージックカレンダーと称する20曲目までのプロ
グラム表示,5モードのリピート機能,20曲ランダムメモリー機能,99曲のシャッフルプレイ機能など,
洗練されたプログラムにより,高機能と操作性を両立していました。この洗練された機能性は,これ以
降の他社のCDプレーヤーにも大きな影響を与えたものだったと思います。

以上のように,CDP-333ESDは,CDP-555ESDの弟機として,技術的に多くの部分を継承しつつ,
コストパフォーマンスにすぐれた1台となっていました。4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターを
はじめとするデジタル処理系においても,ミュージックカレンダーやリニアモーターメカニズムなど操作系
においても,CDのオリジネーターらしい洗練された内容をもっていました。クリアで力強い音をもち,デ
ジタル出力による「デジタルセパレートシステム」を提唱した発展性も備えたソニーらしさあふれる中級
機でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



CDP-555ESDの
設計ポリシーを継承して,
音質,機能,操作性に
高次元でのトータルバランスを求めた
デジタル・セパレート対応の
CDプレーヤーです。

◎さらに高純度な再生音を実現する新開発の
 4倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター
◎CD専用に開発した第三世代LSIによる
 高信頼性ユニリニア・コンバーターシステム
◎デジタル処理によるソフトミューティング
◎左右独立デュアルD/Aコンバーターを搭載し,
 シンプル&ストレート伝送に徹したアナログ部
◎音質優先の姿勢を貫いた厳選パーツ
◎デジタル/アナログ分離をはじめ9系統独立の
 安定化電源による強力な電源回路。
◎無振動・無共振設計を徹底して追求した
 ブラック・セラデッドベースユニット。
◎高剛性シャーシと大型インシュレーター
◎トレース能力を大きく高めると同時に音質劣化
 を防ぐ新開発の予測制御方式「Sサーボ」。
◎高速アクセスを可能にしたハイスピード,
 リニアモータートラッキングメカニズム。
◎ジッター成分を厳密に除去,セパレート時の
 音質を向上させたラッチド・デジタル出力。
◎新機能ネクスト表示をはじめ,演奏時間や
 トラックNo.曲数を集中ディスプレイ。
◎ソニーオリジナルのミュージックカレンダー
◎ピュアなCDサウンドをさらに簡単かつ
 快適な操作性で楽しめる多彩な機能を装備。

●20キーによるワンタッチ・ダイレクト選曲
●最大20曲のプログラムができるRMS機能
●曲数指定もできる5モードのリピート機能
●20キー装備ワイヤレスリモコンRM-D550付属
●コンピュータが再生のたびにディスク収録曲
 の順番をランダムに入れ替えて再生する,BGM
 に便利な99曲対応シャッフルプレイ機能
●ディスクに記録されたインデックスナンバーを
 利用して,曲の途中の楽節や歌詞部を指定し
 て呼び出せるインデックスサーチ機能。
●聴きたい曲の頭出しが素早くできるAMS機能。
●音を聴きながら早送り,巻き戻しができるミュー
 ジックサーチ機能(マニュアルサーチ)
●1曲終了ごとに自動的にポーズ状態に移り,
 使い勝手を広げる便利なオートポーズ機能。
●曲間を自動的に3秒に設定するオートスペー
 ス機能
●別売タイマーの使用により,シャッフルプレイ
 での目覚まし再生も行える3ポジションのタイ
 マー・スイッチを装備。
●ボリュームつきヘッドホン端子




●主な仕様●


形式 コンパクト・ディスク・デジタル・オーディオシステム
読取り方式 非接触光学読取り(半導体レーザー使用)
レーザー GaAlAsダブルへテロダイオード
回転数 500~200rpm(CLV)
演奏速度 1.2m~1.4m/s(一定)
エラー訂正方式 ソニースーパーストラテジー 
(クロスインターリーブ・リードソロモンコード)
チャンネル数 2チャンネル
複合化 16ビット直線
周波数特性 20~20,000Hz±0.3dB
高調波ひずみ率 0.0025%以下(EIAJ)
ダイナミックレンジ 106dB以上
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・Peak)以下
出力レベル 2Vrms(MSB)
ヘッドホン出力レベル 28mW(32Ω)
デジタル出力レベル 0.5Vp-p(75Ω)
大きさ 430(幅)×110(高さ)×340(奥行)mm
重さ 8.2kg
消費電力 15W

 

※本ページに掲載したCDP-333ESDの写真・仕様表等
 は1986年11月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー
 株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断
 で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注
 意ください。

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