SONY CDP-557ESD
COMPACT DISC PLAYER ¥180,000
1987年に,ソニーが発売したCDプレーヤー。CDP-555ESDの後継機で,当時のESシリーズのCDプレーヤーの
最上級機でした。CDP-555ESDに比較して,サイドウッドが付き,より重厚になった筐体をもち,ESシリーズのCD
プレーヤーとしては最重量級の1台でした。
CDP-557ESDでは,まず,デジタルフィルター,D/Aコンバーターなど,デジタル部が大幅に強化され,当時,各メー
カーが競っていたハイビット化が大きく進められていました。デジタルフィルターは,新開発のIC(CXD1144)による
8倍オーバーサンプリング・18ビットデジタルフィルターが搭載されていました。この新開発のデジタルフィルターは,
293次という極めて高次の演算能力をもつもので,帯域内リップル±0.00001dB以内,阻止帯域での減衰量120dB
以上を達成し,この結果,リップルとリップルに起因していた帯域内のエコー成分の発生も無視できるまでに抑えられ
ていました。さらに,8倍オーバーサンプリングとして,サンプリング周波数を352.8kHzまで高めることで,オーディオ
帯域内の量子化ノイズを大幅に低減し,D/A変換後のローパスフィルターの遮断特性を緩やかにできることから,アナ
ログフィルターには,きわめて低次で音楽信号が抵抗を通過するだけの3次GIC型ローパスフィルターが採用され,群
遅延特性もさらに改善されていました。
D/Aコンバーターは,16ビットの4倍の分解能をもつ新開発の18ビット・リニア・デュアルD/Aコンバーターが搭載され
18ビットデジタルフィルターからの18ビット出力の情報密度をすべて生かすことができ,量子化ノイズの低減効果をフ
ルに生かせるようになっていました。変換精度も大幅に強化されることで,微小レベル信号に対するリニアリティが向上
していました。さらに,L・R独立のデュアル構成で,チャンネル間の位相ズレも根本から排除していました。
光学系メカニズムの土台となるベースユニットには,共振モードが低く,かつ極めて高い強度と加工精度が得られる
新開発アルミダイキャスト・ベースユニットが搭載され,不要振動を抑え,トレースの安定性を高めていました。また,
ベースユニット全体を,振動の吸収性に富む高粘弾性ゲル入りダブルサスペンションによるフローティング構造として
外部振動の影響も排除していました。ギアなどの伝達機構をもたず,極めて静粛で高速な動作が可能なリニアモー
ター・トラッキングメカニズムともあいまってメカブロックでの無振動・無共振設計が徹底されていました。さらに,スピー
カーから放射される音圧の影響も抑えるため,ディスクトレイが収納されるフロントパネルの開口部に特殊ゴム材によ
るダンパーを設け,トレイ収納時の気密性を高めてわずかな空気振動も遮断するアコースティックシールド構造が採
用されていました。
こうした無振動・無共振が徹底されたメカブロック自体は,さらにソニー自慢のGベースに取り付けたうえで強固にシャ
ーシに固定する方式がとられていました。このGベースは,同社のアンプのGシャーシと同様の素材のもので,大理石
と同じ組成の炭酸カルシウムを特殊樹脂に加えグラスファイバーで強化して使用し,高い剛性と振動減衰特性が得ら
れるという特長を持ち,形状面からも音響的に十分チューニングがなされていました。
シャーシ構造自体も,振動発生の可能性があるメカブロック及び電源部と振動の影響を避けたい回路系で内部をほ
ぼ2等分した構成となっており,この間を磁気歪みを低減する銅メッキ処理の2重構造シャーシで完全分離していまし
た。メカ系及び電源部と回路系にまたがる配線材の通る開口部も特殊樹脂で密封し,わずかな空気振動の伝達も断っ
ていました。そして,シャーシ全体を支える脚部には,安定性にすぐれた大型のセラミックインシュレーターが採用され
ていました。
リニアモーターによるトラッキングメカニズムの制御には,前モデルの「Sサーボ」を改良・強化した「SサーボU」が搭
載されていました。これは,RF-ICが,ディスク上の汚れやホコリの位置・大きさを検出,ディスクの回転周期から次
に現れるタイミングを瞬時に予測,トラッキング,フォーカスサーボ回路のサーボ量をマイコンで制御するもので,一種
の予測制御方式でした。その予測時間精度は1/8000秒から1/10000秒の精度に高められていました。しかも
CDのCLV(線速度一定)に対応しており,回転数の異なる内・外周どの位置でもこの精度を維持することができるよ
うになっていました。こにより,ドロップアウトが生じてからサーボ量を制御するそれまでの方式に比べ,トレース能力
が各段に向上し,サーボ電流の急激な変動により,電源部を介して発生するアナログ部への影響も少なくなっていま
した。
L・R独立のデュアルD/Aコンバーターからの出力を受けるアナログ系オーディオ回路も信号の流れに沿ったツインモノ
構成として,チャンネル間の位相ズレや相互干渉を抑え,ガラスエポキシ製のES基板に高音質オペアンプ,オーディオ
信号系にはOFC線材など厳選したパーツを使用していました。そして,デジタルフィルター等の高度化により,回路のシ
ンプル化も図られていました。また,アナログ系へのデジタル・データ伝送にモスゲート・トランスファー方式が採用され,
データ電流がアナログ系グランドへ混入することを防いでいました。 
電源部は,大容量の電源トランスを2個搭載し,デジタル系とアナログ系でそれぞれに専用化し,デジタル信号に起因
するアナログ系への干渉を抑えていました。
出力は,可変/固定の2系統のラインアウト端子に加え,デジタルアウト端子も同軸とオプチカル(光伝送)の2系統が装
備されていました。また,デジタル/アナログ出力切替えスイッチも装備し,デジタル出力時はアナログ出力を,アナログ
出力時はデジタル出力をカットして相互干渉を排除する方式となっていました。
機能面,操作性においては,当時の最高水準にあった前モデルCDP-555ESDを継承し,より発展させたもので,CD
のオリジネーターらしく,高水準にありました。リニアモーターメカニズムの高速性を生かし,20キーによるダイレクト選曲
とミュージックカレンダーと称する20曲目までのプログラム表示,6モード(1曲/全曲/部分/プログラム/シャッフル/カス
タム・インデックス)のリピート機能,最大20曲までのランダムメモリー機能,カセットテープ録音時にA面,B面の曲順を
分けてプログラムできるプログラムエディット機能が搭載されていました。99曲までのシャッフル再生機能は,シャッフル
モード時にダイレクト選曲キーを押すと,そのNo.の曲だけ省いたシャッフル再生ができるデリートシャッフルに機能アッ
プされていました。
機能面での強化で,最も大きなものが「カスタム・ファイル」機能の搭載でした。これはディスク1枚ごとにリスナーがイン
プットしたメッセージや演奏情報を最大226タイトル分まで記憶させることができる機能でした。ディスクごとに英数記号
10文字までのメッセージがインプットできる「ディスク・メモ」,ディスク1枚につき最大6ポイントのインデックス(呼び出し
ポイント)が設定できる「カスタム・インデックス」,ディスクごとに最大20曲のランダムプログラムを記憶する「プログラム
バンク」の3種類のファイル・メニューが装備されていました。
以上のように,CDP-557ESDは,当時のソニーの「ESシリーズ」のCDプレーヤーの最上級機として,前モデルから正
常進化したともいえる高性能・高機能なCDプレーヤーでした。歴代「ESシリーズ」CDプレーヤーの中でも最も重量級の
筐体となっているなど,しっかりと物量と技術が投入された力作で,堂々たる力強い音を聴かせてくれる1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター
&18ビット・リニアD/Aコンバーターを搭載した,
新世代のリファレンス機。
ここには,次の時代のクオリティがある。
これからのCDプレーヤーの姿がある。

リップルレス&エコーレス思想を核に,限界に迫る
情報密度を引きだす先進のデジタルテクノロジー。

◎8倍オーバーサンプリング18ビットデジタルフィルター
◎18ビット・リニア・デュアルD/Aコンバーターシステム

不要な共鳴の排除までも目的として,
あらゆる角度から徹底した無振動・無共振設計。

◎アルミダイキャスト・ベースユニット
◎G(ジブラルタル)ベース
◎アコースティックシールド構造
◎メカ系/回路系の分離構造と高剛性シャーシ
◎偏心吸収チャッキング・メカニズム

音質向上に大きく貢献。
予測時間精度をさらに高めた「SサーボU」。

◎予測制御方式「SサーボU」
より忠実度の高い音楽再生をめざし,
シンプル&ストレート電送を貫いた回路構成。

◎L・Rツインモノ構成のオーディオ回路
◎デジタル/アナログ分離の強力な電源部
◎デジタル処理によるソフトミューティング回路

究極の分離・独立思想,デジタル・セパレートに
対応する2タイプのデジタルアウト端子。

◎オプチカル・デジタルアウト端子
 同軸デジタルアウト端子
◎CDプレーヤーの操作性が大きく進化。
 新機能「カスタム・ファイル」




●主な仕様●

形式 コンパクト・ディスク・デジタル・オーディオシステム
読取り方式 非接触光学読取り(半導体レーザー使用)
レーザー GaAlAsダブルへテロダイオード
回転数 200〜500rpm(CLV)
演奏速度 1.2m/s〜1.4m/s(一定)
エラー訂正方式 ソニースーパーストラテジー 
(クロスインターリーブ・リードソロモンコード)
チャンネル数 2チャンネル
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.3dB
高調波ひずみ率 0.0015%以下(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001%W・Peak)以下
出力レベル 2Vrms(MSB,FIXED),MAX 2V〜0V(MSB,VARIABLE)
ヘッドホン出力レベル 28mW(32Ω)
デジタル出力レベル コアキシャル:0.5Vp-p(75Ω),オプチカル:660nm(発光波長)
大きさ 430(幅)×125(高さ)×375(奥行)mm
サイドウッド取付け時470(幅)mm
重さ 18.5kg(サイドウッド含む)
消費電力 18W
※本ページに掲載したCDP-557ESDの写真・仕様表等は1987年9月
 のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権
 あります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をす
ることは
 法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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