CDP-777ESJの写真
SONY CDP-777ESJ
COMPACT DISC PLAYER ¥200,000

1992年に,ソニーが発売したCDプレーヤー。ソニーはCDのオリジネーターのブランドとして,初代のCDP-101
以来,多くのCDプレーヤーを作ってきました。そうした中,超高級機の「Rシリーズ」は別とすると,オーディオファン
向けの主力モデルとして「ESシリーズ」を展開していました。その中でソニーの伝統で,7あるいは77,777の型番
を持つ機種が最上級機として存在していました。このCDP-777ESJは。オーソドックスなリニアモーター駆動のピッ
クアップ部を持つモデルとしては最後の世代に当たるもので,これ以降ソニーはピックアップ部が動かない光学系固
定方式に移行していきました。その意味で,「ESシリーズ」のCDプレーヤーの1つの完成形であったといえるでしょう。

D/A変換部には,前モデルの「ハイデンシティ・リニアコンバーター・システム」をさらに改良した「アドバンストH.D.L.C.
(ハイデンシティ・リニアコンバーター・システム)」が搭載されていました。この「アドバンストH.D.L.C.」は,「アドバンスト
パルスD/Aコンバーター」の前段に,新開発の「スコア・デジタルフィルター」を組み合わせたもので,より高精度なD/A
変換が実現されていました。
「アドバンスト・パルスD/Aコンバーター」は,1個の電子スイッチを高速でON/OFFさせることで発生するパルス波形
の密度の変化で音楽を表現し,PLM(Pulse Length Modulation)方式によってD/A 変換を行うというもので,新
開発の「CXD-2562」の搭載により,さらに微少レベル再現性に優れた1ビット方式となっていました。このコンバーター
ICワンチップで,互いに補数関係にあるPLM波2出力,その正・逆対称関係にあるPLM波2出力の,4D/A出力を片
チャンネル分として,両チャンネル合計で8D/A出力となっていました。片チャンネル分4D/A出力は差動アンプで合成
され,オーディオ信号として出力されるようになっており,補数関係にあるPLM波2出力を差動合成することから,コンプ
リメンタリーPLMと称され,高調波歪みの効果的な低減が実現されていました。以上のような構成により,出力密度は
「パルスD/Aコンバーター」の50メガパルス/毎秒(毎秒5,000万パルス)に対して,90メガパルス/毎秒(毎秒9,000
万パルス)を実現し,より一層の高精度・高分解能を実現し,理論ダイナミックレンジ131dBが達成されていました。
また,マスタークロックをD/Aコンバーターに直付けといえるほどまでに近接配置し,併せて,アドバンスト・パルスD/Aコ
ンバーター上に,データを整え直す「ダイレクト・デジタル・シンク回路」を搭載していました。この「ダイレクト・デジタルシン
ク回路」は,デジタル信号の揺らぎ・ジッターの除去をアドバンスト・パルスD/Aコンバーターの最終段である電子スイッチ
の直前で行うもので,デジタル回路とアナログ回路の境界エリアにこの回路を置くことで,ジッターによる音質劣化を低減
していました。
「スコア・デジタルフィルター(SCOREはSubliminal Correlation=無相関化の略称)」は,ソニーでは初めてデジタル
フィルターにディザの手法を取り入れたものでした。この「スコア・デジタルフィルター(CXD-2567)」では,45ビットに及
ぶオーバーサンプリング技術に加え,D/A変換前の信号に疑似ランダム信号を加えることにより,D/Fの出力部におい
て発生する量子化ノイズをオーディオ信号と無相関化し,音質の改善を図っていました。
「アドバンストH.D.L.C.」の最終段に位置するアナログ・ローパスフィルターには,コンデンサーなどのパッシブ素子が直列
に入らない高音質のGIC(General Impedance Converter)型 ローパスフィルターが採用され,信号を歪めることなくライン
アンプへ出力するようになっていました。ラインアンプには,信号経路のカップリングコンデンサーを排除したDCサーボア
ンプが搭載されていました。出力段では,動作の立ち上がりが滑らかな,小信号増幅に適したFETをAクラス動作させて
おり,さらにFET入力の高性能アンプの採用して,FETならではのハイインピーダンス入力特性により,前段ローパスフィ
ルターのノイズ成分との分離が徹底され,より高音質が実現されていました。
出力は,アナログ出力は,通常のRCAアンバランスに加え,XLRタイプのバランス出力が備えられていました。XLRバラ
ンス出力は,アドバンスト・パルスD/Aコンバーターの正・逆両相の出力を生かしてシンプルな回路で実現されていました。
デジタル出力は,光,同軸各1系統が搭載されていました。

スコア・デジタルフィルター&アドバンスト・パルスD/AコンバーターICサファイヤ軸受&BSLモーターステイブルロック機構

メカデッキは,前モデルのCDP-777ESAよりシャーシ中央に配置されたセンターマウントメカが採用されていました。ディ
スクを回転させるスピンドルモーターに,コギングが少なく高精度・高静粛の回転が得られるBSLモーターが搭載され,スピ
ンドルの軸受けには,高硬度で摩擦係数の小さいサファイヤを使用し,高耐久性を確保していました。
メカデッキは炭酸カルシウムを特殊樹脂に加えグラスファイバーで強化した高剛性・低共振のGベースユニットが採用され
ていました。また,シャーシへの基台となるベース材には,十分な厚みを持つメタル材を銅メッキ処理したカッパータイトが
使用され,振動を抑える構造となっていました。
ディスクを支えるトレイは,Gベースと同じ素材が用いられ,演奏中トレイの両サイドを2カ所,計4カ所をロックアームで固定
することにより縦方向のピッチングと横方向のローリングを抑える「NEWステイブルロック機構」が採用されていました。さら
に,左右のロックアームを一本のビームで連結することで,より強固なロックを可能とし,演奏時の耐振制を高めていました。
ディスクの回転中にトレイリッドを通じて入り込む空気振動の影響にも配慮してトレイが収納されるフロントパネルの開口部
に特殊ゴム材によるダンパーを設けて機密性を向上させた「アコースティック・シールド」も採用されていました。
光ピックアップは,高速アクセスを可能にするソニー伝統のリニアモーター・トラッキングメカで駆動され,さらに新開発の「ハ
イプレシジョン・デジタルサーボ」が搭載されていました。これは,光ピックアップからの信号をA/D変換し,デジタル処理で
フィルタリングやコントロールを行い,再びD/A変換して光ピックアップを駆動させるもので,演奏する1枚1枚のディスクに
合わせてサーボ量を調整でき,ディスクごとのコンディションを的確に検出する理想的なサーボコントロールが実現されてい
ました。併せて,デジタル化により低消費電力が実現され,電源部の負担の軽減により,オーディオ部への音質的影響も
抑えられていました。さらに,光ピックアップのドライブ回路が同相ノイズ成分の打ち消し可能な±2電源方式によるバラン
スプッシュプルで構成され,音質に悪影響を及ぼすノイズ成分をアースラインに流さないように配慮された「ファインドライブ」
が採用されていました。

CDP-777ESJの内部構造ファインセラミックインシュレーター

上記のように,CDP-777ESJは,メカデッキを中央に配置し,シャーシに加わる回転モーメントを最小にし,振動に対す
る安定性を高めたセンターマウント方式が採用され,電源部,メカ部,基板部を完全に分離した内部構成がとられていま
した。また,シャーシ剛性を高めるため,外周を取り囲むフレームと,フロントとリアの前後を渡すビームによってシャーシ
全体を強固にジョイントするソニー伝統のFBシャーシが採用されていました。シャーシ内部は銅メッキ処理され,トップパ
ネルにはアルミニウムを使用するなど,非磁性化が図られ,磁気歪みの発生が抑えられていました。筐体全体を支える
脚部には,ファインセラミックインシュレーターが搭載されていました。
シャーシ内部では,オーディオ回路基板とデジタル回路基板を分離したセパレートシート構成がとられ,そのうえでデジタ
ル回路基板をメカデッキ下部に配置してデジタル部からオーディオ部への干渉を抑えていました。デジタル回路,オーディ
オ回路,.電源回路の各基板には強度の高いガラスエポキシ製ES基板が使用されていました。
電源部は,デジタル・サーボ部とオーディオ部をそれぞれ独立給電する大型・大容量トランスを2個搭載し,シールドケース
内に防振対策を施した上一緒に封入したツインコアトランスが搭載されていました。さらに,D/Aコンバーター部に対して
は専用の電源回路が設けられ,電源を介しての干渉を防いでいました。機構的にも,電源トランスの振動を伝えないよう
に4カ所にゴムダンパーを使用してフローティング設置されていました。

フロントパネル面は,1988年のCDP-X7ESDより,伝統の20キーもなくなり,比較的シンプルな構成で,2代前の1990
年のCDP-X77ESA以来の曲面を下半分に取り入れたデザインとなっており,サイドウッドと合わせ,落ち着いた雰囲気と
なっていました。
比較的シンプルなパネル面ながら,付属のリモコンには,20キーもあり,ソニーのCDプレーヤーらしく多機能となっていま
した。リニアモーターメカニズムの高速性を生かし,20キー(リモコン)によるダイレクト選曲とミュージックカレンダーと称す
る15曲目までのプログラム表示,8モードのリピート機能,24曲ランダムメモリー機能,99曲のシャッフルプレイ機能など
洗練されたプログラムにより,高機能と操作性を両立していました。

以上のように,CDP-777ESJは,ソニーの「ESシリーズ」のCDプレーヤーのトップモデルとして,すぐれた音質と機能性
を両立させた1台でした。各部に多くの技術やノウハウが投入され,情報量の多いクリアで堂々としたバランスのとれた音
を実現していました。「ESシリーズ」のCDプレーヤーとして,オーソドックスなトレイタイプのモデルとしては最後の世代に
あたり,CDのオリジネーターであるソニーらしく高い完成度を実現していました。CD発売10周年にあたるこの年に発売
されたのも象徴的であったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新開発アドバンストH.D.L.C.搭載。
時に磨かれてひときわ輝く高性能
ESプレステージ機。


◎再量子化ノイズを無相関化。
 新開発スコア・デジタルフィルター。
◎ダイナミックレンジ131dBを実現。
 アドバンスト・パルスD/Aコンバーター。

●コンプリメンタリーPLM
●45ビットノイズシェイピング・デジタルフィルター

◎ジッターレスD/A変換を可能にした
  ダイレクト・デジタル・シンク。

●FETドライブ・ラインアンプ&DCサーボアンプ
◎サーボ量をディスクごとに調整する
  ハイプレシジョン・デジタルサーボ。
◎ノイズ電流のアースラインへの混入を
  なくしたファインドライブ。
◎高剛性・低共振で,メカデッキを
  強固に支えるGベースユニット。
◎高精度・高耐久性を実現した
  サファイア軸受けBSLモーター。
◎NEWステイブルロック&
  アコースティック・シールド。
◎振動に強い優れた剛性を
  実現したFBシャーシ。

●センターメカマウント・システム
●大型・重量級インシュレーター
●デジタルミニマム基板構成

◎デジタルオーディオシステムの
  発展に応える光デジタルアウト端子。
◎高音質のアナログ信号伝送を可能にする
  D/Aダイレクト・バランスアウト端子。

●フローティング2トランス電源



●主な仕様●

形式 CD標準フォーマット再生機
読み取り方式 非接触光学式
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.3dB
SN比 118dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上(EIAJ)
全高調波ひずみ率+ノイズ 0.0015%以下(EIAJ)
チャンネルセパレーション 110dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界以下(±0.001%W・PEAK)以下(EIAJ)
出力レベル LINE(UNBALANCED):2Vrms/2Vrms〜0V
DIGITAL(OPTICAL):−18dBm(発光波長660nm)
      (COAXIAL):0.5Vp-p(75Ω)
HEADPHONE:100mW(32Ω負荷)
電源電圧 AC100V,50/60Hz
消費電力 27W
大きさ 470(幅)×125(高さ)×375(奥行)mm
重さ 16.5kg


※本ページに掲載したCDP-777ESJの写真・仕様表等
 は1992年10月のSONYのカタログより抜粋したもので,
 ソニー株式会社に著作権があります。したがってこれらの
 写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
 ていますので,ご注意ください。

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