SONY CDP-R1a
COMPACT DISC PLAYER ¥300,000
1989年に,ソニーが発売したセパレート型CDプレーヤー。ソニーは1984年にCDP-552ESDとDAS-702ESのペア,
1985年にCDP-553ESDとDAS-703ESのペアでセパレート型CDプレーヤーの形を実現していました。しかし,これら
は,デジタル出力を装備した単体のCDプレーヤーにD/Aコンバーターを組み合わせたという形でした。そして,1987年に
CDトランスポートとD/Aコンバーターとを組み合わせた本格的なセパレート型CDプレーヤーとしてCDP-R1,DAS-R1
発売し,その先進的な内容やすぐれた性能で高い評価を得ました。その後継機として,CDP-R1a,DAS-R1aが発売され
ました。

トランスポート部のCDP-R1aは,CDP-R1がモデルチェンジしたもので,筐体サイズも同一で,デザインも細部をよく見な
ければ分からないほどそっくりですが,重量は約1kg重くなっており,2年分の技術開発の成果が盛り込まれ,内部はかな
りの変更が行われ,新しいモデルといってもいいほどのものになっていました。



CDP-R1aでは,CDP-R1同様に,外部振動の影響を最も受けにくいシャーシ中央にメカデッキを配置するセンター
マウント方式がとられ,併せて,新開発の「高剛性ステイブルロックメカ」が搭載されていました。この「ステイブルロック
メカ」は,CDP-R1のメカデッキに対して小型化・高剛性化が図られたもので,構成部品から突出部を少なくして小型
化し,これらの部品が互いに拘束構造となるように組み,ガタを追放し,かつ全体をショートスパン設計として振動に強
く,ねじれや曲げに対する強度を向上させていました。さらにベースユニットとトレイに,組成が大理石と同じ炭酸カルシ
ウムを樹脂に加えグラスファイバーで強化したGベースユニットとGトレイを採用し,可動部となるGトレイには,演奏中2
本のロックアームがトレイの両サイドをメカ基台に固定する「トレイロック機構」を搭載していました。このほか,メカデッ
キ最上部には,5mm厚のアルミ押し出し材によるトップスタビライザーを搭載して,メカデッキ部の剛性をより高めると
ともに,このトップスタビライザーをディスクに近接配置することで,天板を振動させて内部に侵入する音圧を効果的に
抑えるエアダンパー的な役割も果たす巧みな設計となっていました。
サーボ回路には,CDP-R1の「TSサーボ」を改良し,新たに「GTSサーボ」が搭載されていました。これは,ディスク上
のピット列の変動を連続的に監視して,ピット列が本来持ち得ない急速な変動成分を除去するようにはたらき,必要以
上に敏感な応答やサーボ電流の変動を低減するもので,メカノイズが小さく,キズに対するムダな応答が少ないため音
飛びしにくくキズ通過後のピット列への復帰性もよいなどの特長をもっていました。さらに,サーボ回路のグランドライン
をバスバーで分離・独立させ,他の回路のグランド電位に与える影響を大幅に減少させ,音質の向上が図られていま
した。ディスク駆動用モーターには,新開発の3相BSL(ブラシ&スロットレス)モーターが採用され,構造上振動が発生
しにくいBSLモーターを3相にすることで,コキングを排除し,安定したディスクの駆動を確保していました。

シャーシには,「FBシャーシ」が採用されていました。これは,十分な厚みと強度をもつメタル材を使用し,外周を取り囲
むフレームと,フロントとリアを渡す前後のビームにより,シャーシ全体を強固にジョイントしたもので,このフレームと
ビームだけで筐体に要求されるほとんどの強度が確保されるようになっていました。メカ基板の実装も振動的に最もニュ
ートラルなビーム上に直接固定され,重量的に大きな電源トランスを防振対策を施したメカデッキと同じビーム上に固定
することで,ブロック全体としての重量を増加し,センターマウント方式と相まって,良好なウェイトバランスが得られ,筐
体に加わる振動モーメントもシンプルなものに抑えられるようになっていました。また,脚部には制動性能の良いゴムを
組み合わせたファインセラミックインシュレーターが装備されていました。
電源部は,デジタル・サーボ用を他と独立させ,専用にトランスを設けた2トランス構成となっていました。構造上は樹脂
充填の上トランスケースに収めてトランスの鳴きを抑え,さらに,ひとつのトランスケースに2個のトランスを収納したツイ
ンコア・トランスとし,同一サイズの2個のトランスを並べることにより,発生する機械的な共振も防止していました。

フロントパネルは、最少限の操作ボタンのみのシンプルなものとなっていましたが,リモコンを使用することで,20キー
によるダイレクト選曲,最大20曲のプログラム演奏,曲をランダムに並び替えて演奏するシャッフル/デリートシャッフル
演奏,6モードのリピート演奏などが可能となっていました。また,プログラムした演奏曲順をメモリーするプログラムバン
ク,曲中の好みの箇所にオリジナルのインデックスを入れられるカスタムインデックス機能も搭載されていました。
デジタル出力端子は,光出力(TOSリンク),同軸出力に加え,往復2本の光ケーブルで結合するソニー独自のツインリ
ンクS端子が搭載されていました。

SONY DAS-R1a
D/A CONVERTER ¥400,000
CDP-R1aとのペアを想定されたD/AコンバーターとしてDAS-R1aが同時に発売されました。前モデルDAS-R1と
は,D/A変換部の方式そのものが変わるなど,全面的に変更が行われていました。



D/A変換部には,新開発の「ハイデンシティ・リニアコンバーター・システム」が搭載されていました。この「ハイデンシ
ティ・リニアコンバーター・システム」は,1ビットタイプの「パルスD/Aコンバーター」の前段に「45ビッ
トノイズシェイピ
ング・デジタルフィルター」を組み合わせたもので,マルチビット方式を採用していた
DAS-R1とは大きく異なるものと
なっていました。
DAS-R1aの「パルスD/Aコンバーター」は,マスタークロックの最高動作周波数50MHz,つまり
パルスの数にして毎秒5000万,1個の電子スイッチを毎秒5000万回もの高速でON/OFFさせることで発生する
パルス波形の密度の変化で音楽を表現し,PLM(Pulse Length Modulation)方式によってD/A
変換を行うとい
う「CXD-2552Q」で,微小レベル再現性に優れた1ビット方式となっていました。
この「パルスD/Aコンバーター」を2
個パラレルで使用し,コンプリメンタリー・モードで使用することで,正相と逆相の相補的な出力関係で高調波歪みを
ち消すとともに,出力電流値を2倍にすることで,S/N比を高めるという贅沢な構成となっていました。
また,マスタークロックをD/Aコンバーターに直付けといえるほどまでに近接配置し,併せて,パルスD/Aコンバーター
上に,データを整え直す「ダイレクト・デジタル・シンク回路」を搭載していました。この「ダイレクト・デ
ジタルシンク回路」
は,デジタル信号の揺らぎ・ジッターの除去をパルスD/Aコンバーターの最終段である電
子スイッチの直前で行うもの
で,デジタル回路とアナログ回路の境界エリアにこの回路を置くことで,原理的に
なくそうとするものでした。
45ビットノイズシェイピングデジタルフィルターは,「Sony Extended Noise Shaping」というもので,CXD-2552Q
専用に新たにプログラミングされた「CXD-1224」を搭載して,全ステージにわたるフルノイズシェイピングと充分に大
きな演算レンジを実現し,高密度なパルス列を生成する高精度なD/A変換を可能にしていました。
アナログフィルターには,新開発のカウエル・ローパスフィルター(通過帯域と除去帯域で等リップル性(equiripple)を示
すフィルタ回路の一種。各帯域のリップル量は個別に調整可能で,リップルの値が同じ同一次数の他のフィルタと比較
すると,通過帯域から除去帯域への利得の変化が最も素早い=ロールオフ特性が非常に急峻)が採用され,3次相
当のフィルター特性を持ちながら,高域の伝達遅れがなく,全帯域にわたり信号が同時に伝わるフィルターとしていま
した。

デジタル・サーボ部とD/Aコンバーター部を物理的に分けられるセパレート型CDプレーヤーは,相互干渉を避けられ
るなどの多くの利点をもっていますが,反面,マスタークロックをそれぞれがもっているため,再度コンバーターの側で
デジタルデータを組みたてるインターフェースが必要になります。しかし,ここで問題になるのがジッター(時間軸の揺ら
ぎ)の発生で,多数の回路を経由するほどクロックの精度が低下し,音質の劣化が起きる可能性があります。そこで,
CDP-R1aとDAS-R1aのペアでは,前モデルの「ツインリンク」を改良した「ツインリンクS」を採用していました。プレ
ーヤー側からコンバーターへのデータ伝送とは別に,コンバーター側からプレーヤーへクロック信号を送るインターフェ
ースを設け,両ユニットを往復2本の光ケーブルで結合するものです。これにより,D/Aコンバーターの動きに同期して
ディスクから読み出されたデータを送り出すことが可能となり,1マスタークロックによるインターフェースが構成されて
いました。さらに,マスタークロックをパルスD/Aコンバーターに直付けといえるほどにまでに近接配置し,パルスD/A
コンバーターのチップ上にデータを整え直すダイレクト・シンク回路を形成し,ジッターのないクリーンなD/A変換を実
現していました。ディバイス面も,高純度ツインPLLインターフェースをベースに,デジタルノイズの漏れ込みが少ない
ロジカル同期回路を開発し,これを内蔵したインターフェース用ICを開発・搭載していました。また,低ジッター光I/O
ユニットを採用し,特性の改善が図られていました。
入力端子は,ツインリンクオプティカル端子1系統に加え,他のCDプレーヤー,DATなどと接続できる光2系統,同
軸2系統のデジタルイン端子が装備されていました。出力端子は,ピンジャック・アンバランス出力とXLRターミナル
バランス出力のアナログ出力が装備され,32kHz/44.1kHz/48kHzのサンプリング周波数に自動対応するマル
チインターフェース機能を装備し,デジタルコントロールセンターとしても使用できる多機能なD/Aコンバーターとして
の側面も持っていました。



DAS-R1aにも,CDP-R1a同様に,シャーシには「FBシャーシ」を採用していました。十分な厚みと強度を持つメタル
材を用いた外周を囲むフレームと前後をつなぐビームによりシャーシ全体が強固にジョイントされ,フレームとビームだ
けで高い強度を持つ構造になっており,そこに特別な金具を使うことなく,振動的に最もニュートラルなビーム上に基板
を直接固定し,不要振動や共振を抑えていました。
電源部は,インターフェース用とオーディオ用それぞれ専用に2トランスを搭載し,異種信号を取り扱う回路間の相互干
渉を電源トランスから分離していました。電源トランスは,鳴きを抑えるために,樹脂充填の上ケースに収めていました。
以上のように,CDP-R1a,DAS-R1aは,ソニー初の本格的セパレート型CDプレーヤーCDP-R1,DAS-R1をベー
スとしているものの,同系統のデザインの筐体の中に一新された内容を組み込んだともいえるモデルでした。新たに小
型化・リジッド化された強力なCDドライブメカ,新開発の独自の1ビットD/Aコンバーターなど,この当時の最新技術を
組み込んだソニーならではの1台でした。音の透明度・クリアさは引き継がれ,また,1ビットながら繊細さだけでなく,力
強さや密度間も併せ持つ完成度の高いものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ふくよかな音場感,臨場感の再現へ。
メカも,そしてD/A変換も
精度をとることに注力しました。

◎”音”という自然現象に限りなく近いD/A変換方式。
 ハイデンシティ・リニアコンバーター・システム。
◎時間軸の精度をさらに向上。ジッターレスを実現した
 ツインリンクS方式とダイレクト・デジタル・シンク。
◎機構部品を小型化し,振動やねじれに対する強度を
 高めた高剛性ステイブルロックメカ。
◎グランドラインを分離・独立させたGTSサーボと
 3相BSLモーターで,静粛性,安定性を向上。
◎不要振動や共振を排除した高剛性FBシャーシ。
 良好なウェイトバランスを求めたコンストラクション。
◎大型・大容量トランスの搭載をはじめ,
 余裕度を大切に,クオリティを優先した高品位設計。
◎XLRターミナル・バランス出力ほか,オーディオ
 システムの発展をサポートする豊富な入出力端子。
◎20キーダイレクト選曲,プログラム演奏など,
 多彩なプレイ機能を操れるワイヤレスリモコン。




●CDP-R1a主な仕様●

形式 コンパクトディスク・デジタルオーディオシステム
ディスク コンパクトディスク
読み取り方式 非接触光学式読み取り(半導体レーザー使用)
レーザー GaAlAsダブルへテロダイオード λ=780nm
回転数 約500~200rpm(CLV)
エラー訂正方式 ソニースーパーストラテジー 
クロスインターリーブ・リードソロモンコード
ワウ・フラッター 測定限界(±0.001% W・peak) 
出力端子 同軸コネクター:0.5Vp-p/75Ω
光コネクター:-18dBm(発光波長660nm)
光ツインリンク・コネクター:ファイバー径0.2mm往復式(発光波長880nm)
電源 AC100V,50/60Hz
メモリー 1ヶ月以上保持(電源OFF後)
消費電力 14W
大きさ 470(幅)×125(高さ)×410(奥行)mm
重さ 約18kg




●DAS-R1a主な仕様●

サンプリング周波数 32kHz/44.1kHz/48kHz(自動対応)
入力端子 同軸コネクター(COAX1/2):0.5Vp-p/75Ω
光コネクター(OPT1/2):-18dBm(発光波長660nm)
光ツインリンク・コネクター:ファイバー径:0.2mm往復式(発光波長880nm)
出力端子 ピンジャック:2.5V/10kΩ(Unbalanced)
XLRターミナル:2.5V/600Ω(Balanced)
チャンネル数 2チャンネル(ステレオ)
周波数特性 2Hz~20kHz ±0.5dB 
(入力デジタル信号のサンプリング周波数44.1kHz以上にて)
高調波ひずみ率 0.002%以下(EIAJ)
SN比 117dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上(EIAJ)
チャンネルセパレーション 110dB以上(EIAJ)
電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 19W
大きさ 470(幅)×125(高さ)×410(奥行)mm
重さ 約17kg
※本ページに掲載したCDP-R1a,DAS-R1aの写真・仕様表等は
 1994年10月
のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式
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