CDP-R3の写真
SONY CDP-R3
CMPACT DISC PLAYER ¥300,000

1989年にソニーが発売したCDプレーヤー。「ESシリーズ」より一つランクが上にあたる高級機「Rシリーズ」
のCDプレーヤーで,このシリーズ初の一体型CDプレーヤーでした。1987年にソニーはセパレート型CDプレ
ーヤーCDP-R1+DAS-R1を発売し高い評価を得ていましたが,1989年にD/Aコンバーター部を中心に
モデルチェンジが行われ,CDP-R1a+DAS-R1aが発売されました。その一体型モデルともいえたのがこの
CDP-R3でした。

D/A変換部には,新開発の「ハイデンシティ・リニアコンバーター・システム」が搭載されていました。この「ハ
イデンシティ・リニアコンバーター・システム」は,1ビットタイプの「パルスD/Aコンバーター」の前段に「45ビッ
トノイズシェイピング・デジタルフィルター」を組み合わせたもので,マルチビット方式を採用していたそれまでの
ソニーのCDプレーヤーとは大きく異なるものとなっていました。
CDP-R3に搭載された「パルスD/Aコンバーター」は,マスタークロックの最高動作周波数50MHz,つまり
パルスの数にして毎秒5000万,1個の電子スイッチを毎秒5000万回もの高速でON/OFFさせることで発
生するパルス波形の密度の変化で音楽を表現し,PLM(Pulse Length Modulation)方式によってD/A
変換を行うという「CXD-2552Q」で,微少レベル再現性に優れた1ビット方式となっていました。CDP-R3で
この「パルスD/Aコンバーター」を2個パラレルで使用し,正相と逆相の相補的な出力関係で高調波歪み
を打
ち消すとともに,出力電流値を2倍にすることで,S/N比を高めるという贅沢な構成となっていました。
また,マスタークロックをD/Aコンバーターに直付けといえるほどまでに近接配置し,併せて,パルスD/Aコ
ンバーター上に,データを整え直す「ダイレクト・デジタル・シンク回路」を搭載していました。この「ダイレクト・デ
ジタルシンク回路」は,デジタル信号の揺らぎ・ジッターの除去をパルスD/Aコンバーターの最終段である電
子スイッチの直前で行うもので,デジタル回路とアナログ回路の境界エリアにこの回路を置くことで,原理的に
なくそうとするものでした。
CDP-R3に搭載されたノイズシェイピングは,「Sony Extended Noise Shaping」というもので,オーバー
サンプリング演算に,45ビットノイズシェイピング・デジタルフィルター「CXD-1224」を搭載して,全ステージ
にわたるフルノイズシェイピングと充分に大きな演算レンジを実現し,高精度なD/A変換を可能にしていまし
た。

CDP-R3のトレイロック,サーボ,モーター

CDP-R3では,外部振動の影響を最も受けにくいシャーシ中央にメカデッキを配置するセンターマウント方式
がとられ,併せて,新開発の「高剛性ステイブルロックメカ」が搭載されていました。この「ステイブルロックメカ」
では,構成部品から突出部を少なくして小型化し,これらの部品が互いに拘束構造となるように組み,ガタを追
放し,かつ全体をショートスパン設計として振動に強く,ねじれや曲げに対する強度を向上させていました。さら
にベースユニットとトレイに,組成が大理石と同じ炭酸カルシウムを樹脂に加えグラスファイバーで強化したGベ
ースユニットとGトレイを採用し,可動部となるGトレイには,演奏中2本のロックアームがトレイの両サイドをメカ
基台に固定する「トレイロック機構」を搭載していました。このほか,メカデッキ最上部には,5mm厚のアルミ押
し出し材によるトップスタビライザーを搭載して,メカデッキ部の剛性をより高めていました。

サーボ回路には新たに「GTSサーボ」が搭載されていました。これは,ディスク上のピット列の変動を連続的に
監視して,ピット列が本来持ち得ない急速な変動成分を除去するようにはたらき,必要以上に敏感な応答やサ
ーボ電流の変動を低減するもので,メカノイズが小さく,キズに対するムダな応答が少ないため音飛びしにくく
キズ通過後のピット列への復帰性もよいなどの特長をもっていました。さらに,サーボ回路のグランドラインをバ
スバーで分離・独立させ,音質の向上が図られていました。
ディスク駆動用モーターには,新開発の3相BSL(ブラシ&スロットレス)モーターが採用され,構造上振動が発
生しにくいBSLモーターを3相にすることで,コキングを排除し,安定したディスクの駆動を確保していました。

CDP-R3の内部

シャーシには,「FBシャーシ」が採用されていました。これは,十分な厚みと強度をもつメタル材を使用し,外周
を取り囲むフレームと,フロントとリアを渡す前後のビームにより,シャーシ全体を強固にジョイントしたもので,
このフレームとビームだけで筐体に要求されるほとんどの強度が確保されるようになっていました。メカ基板の
実装も振動的に最もニュートラルなビーム上に直接固定され,重量的に大きな電源トランスを防振対策を施した
メカデッキと同じビーム上に固定することで,ブロック全体としての重量を増加し,センターマウント方式と相まっ
て,良好なウェイトバランスが得られ,筐体に加わる振動モーメントもシンプルなものに抑えられるようになって
いました。また,脚部には制動性能の良いゴムを組み合わせたファインセラミックインシュレーターが装備され
ていました。

電源部は,デジタル・サーボ用を他と独立させ,専用にトランスを設けた2トランス構成となっていました。さらに
ひとつのトランスケースに2個のトランスを収納したツインコア・トランスとし,同一サイズの2個のトランスを並べ
ることにより,発生する機械的な共振も防止していました。全体容積からみても約1/2を占めるほどの余裕を
持った大形の電源部には,金メッキOFCリード・カーボン抵抗,オーディオ用アルミ電解コンデンサーなど,高品
質パーツが多用されていました。

出力端子は,光と同軸のデジタルアウト端子が各1系統装備され,他のD/Aコンバーターの接続可能となっ
ていました。アナログ端子として,ピンジャック・アンバランス出力とXLRターミナル・バランス出力が装備され
バランス入力装備のアンプと組み合わせると,バランス伝送もできるようになっていました。

以上のように,CDP-R3は,ソニーの一体型CDプレーヤーの最高級機として,上級機のセパレートモデルに
ほぼ迫る内容を備え,その上品な外観デザイン同様にクリアながら落ち着いた滑らかな音を持った高性能CD
プレーヤーでした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


セパレートの思想をワンシャーシにのせ,
新たなインテグレーテッドの高峰を
めざしました。

変換は,すぐれた動作原理のもと,
高い精度で行われるものが最良。
 ◎”音”という自然現象に,限りなく近いD/A変換方式。
  「ハイデンシティ・リニアコンバーター・システム」
 ◎時間軸の精度をさらに向上。
  ジッターレス再生を実現した「ダイレクト・デジタル・シンク」。
 ◎XLRターミナル・バランス出力をはじめ,
  オーディオシステムの発展をサポートする豊富な入出力端子。

メカは,素材よりも先に,
大きさ,長さへの配慮が大切。
 ◎機構部品を小型化し,振動やねじれに対する強度を高めた
  「高剛性ステイブルロックメカ」。
 ◎グランドラインを分離・独立させた「GTSサーボ」と
  新開発3相BSLモーターで,静粛性,安定性を向上。
 ◎不要振動や共振を排除した高剛性筐体「FBシャーシ」。
  良好なウェイトバランスを求めたコンストラクション。
 ◎余裕度の高い大型・大容量トランスの搭載をはじめ,
  Rシリーズならではの贅を尽くした高品位設計。
 
 

●CDP-R3 主な仕様●


 
形式 コンパクトディスク・デジタルオーディオシステム
ディスク コンパクトディスク
読み取り方式 非接触光学式読み取り(半導体レーザー使用)
レーザー GaAlAsダブルへテロダイオード λ=780nm
回転数 約500〜200rpm(CLV)
エラー訂正方式 ソニースーパーストラテジー 
クロスインターリーブ・リードソロモンコード
チャンネル数 2チャンネル(ステレオ)
周波数特性 2Hz〜20kHz±0.5dB
SN比 117dB以上(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上(EIAJ)
全高調波歪率 0.002%以下(EIAJ)
チャンネルセパレーション 110dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッター 測定限界以下(±0.001%W・PEAK)以下(EIAJ)
出力端子 ピンジャック:2.5V/50kΩ(アンバランス)
XLRターミナル:5V/600Ω(バランス)
同軸コネクター:0.5Vp-p/75Ω
光コネクター:−18dBm(発光波長660nm)
電源 AC100V,50/60Hz
メモリー 1ヶ月以上保持(電源OFF後)
消費電力 17W
大きさ 470(幅)×125(高さ)×410(奥行)mm
重さ 約18kg
※本ページに掲載したCDP-R3の写真・仕様表等は1989年12月
 のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権
 があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をす
 ることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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