Nakamichi CDPlayer1
CD PLAYER ¥250,000
1991年に,ナカミチが発売したCDプレーヤー。ナカミチは,1984年のOMS-70からCDプ
レーヤーをスタートし,この年から1988年まで,OMSから始まる型番のCDプレーヤーを発売
していきました。そして,1990年になり,CDPlayer2(¥99,800),CDPlayer3(¥79,800)
CDPlayer4(¥49,800)という新しいシリーズを展開し,翌年にCDPlayerシリーズの最上級
機として発売されたのがCDPlayer1でした。
外観上から特徴的であったのが,トップパネル上に設置された”Accoustic Stabilizer”でした。
3mm厚という分厚い非鉄系金属のパネルで,もっとも振動の発生しやすいメカニズム上部のトッ
プパネルを補強するとともに,厳密なサウンドチューニングの役割ももっていました。特に,後者
の目的のために,素材,大きさ,厚み,表面処理,設置位置などがカットアンドトライによってき
め細かく調整されていました。さらに,筐体そのものも,ボトムやリアパネルを含む外装パネルの
内側に2mm厚程度の鋼板を貼り合わせた2重鋼板のボディ構造を採用し,トータル約12.2kg
という重量級の剛性の高いボディとするとともに,厚みの違う鋼板を貼り合わせることによる振動
モードの分散で,パネルの鳴きを減少させ,有害振動による音質劣化を抑えていました。
CDトランスポート部には,独自の”MusicBank System”が採用されていました。これは,
通常のCDプレーヤーのように,トレーに1枚のCDを載せて再生する感覚で,内部のストッ
カーに6枚のCDを内蔵させることができる機能を持たせたもので,結果として1枚+6枚で
計7枚の任意のCDの任意のトラックを自由に再生できるオートチェンジャー機能が,シング
ル・ディスク・プレーヤーのシンプルさと両立して実現されていました。
また,マグネットチャッキングによる大口径ディスクスタビライザーを搭載し,外部振動の影
響を抑え,CDそのものの共振を抑えることで,フォーカスサーボエラーを低減し,オーディオ
信号へのサーボ電流の影響を抑えていました。
D/Aコンバーター部には,8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターが搭載され,その結
果,後段には3次というなだらかな特性にリニアフェイズ・ベッセル型アナログフィルターが使
用されていました。しかも,このフィルターには,特性追求に制約のあるICを使わず,ディスク
リート部品で構成し,裸特性を改善して位相精度を高めたフィルター特性を実現していました。
D/Aコンバーターとしては,「EL=エンハンスド・リニアリティ=直線性補強型」と名付けられた
ナカミチ独自の「EL20ビットD/Aコンバーター」が搭載されていました。これは,CDからピッ
クアップされた信号データを,デジタルフィルターで20ビット化し,20ビットデータを再演算に
よって-24dBを境に高/低2組の16ビットデータに変換し,(データとしては,1~4,400と
4,401~66,000の2つに分ける)2つのデータをそれぞれ2基のD/Aコンバーターによっ
て別々に処理し変換後に合成するというものでした。この方式では,-24dB以下(つまり4,400
以下)のローレベル信号がデジタル的に16倍に増幅されて処理されており,元の16分の1の
データに戻すことにより変換誤差が圧縮されローレベル信号では,通常の16倍の精度が保証
されるというものでした。デジタルオーディオでは,信号を分解,処理,復元が可能であることを
利用した方式でした。
オーディオ回路は,カセットデッキで培われたナカミチのすぐれたアンプ技術が生かされていま
した。ヘッドホン端子やヘッドホン・ボリューム,バリアブルアウトプットなどは,音質重視のため
に,音質劣化要因としてあえて排除した設計になっていました。出力は,オーディオ出力(固定)
1系統,デジタル出力(同軸)1系統のみに絞られていました。電源部には,アナログ部とデジタ
ル部を別巻線として相互干渉を防止したマルチレギュレーテッド・パワーサプライ方式が採用さ
れていました。特に,D/Aコンバーターとアナログフィルターには,L・Rそれぞれのローカルレギュ
レーターを配して安定性を高めていました。さらにアースラインをめぐるオーディオ信号へのノイ
ズ混入を防止するため,グランドを分離させたアイソレートグランド方式を採用していました。ま
た,デジタルフィルター以降の回路基板にコンポジット材を用いて強度アップを図ったほか,オー
ディオ信号系から配線材を追放し,厳選を重ねた高品位なオーディオパーツを投入していました。
シンプルに見える外観ながら,演奏機能も豊富に搭載されていました。削除したい曲,ディスク
を指定できる「デリートプレイ」,オール(ディスク全部)/デリート(削除した以外の曲)/シングルの
3モードを持ち,曲順を入れ替えてランダム再生する「3ウェイ・ランダムプレイ」,セットされたディ
スクの1曲目を10秒ずつ再生する「ディスクスキャン」,収納した全ディスクのタイムデータを記憶
する「タイムデーターメモリー」,オール/デリート/メモリー/ランダムの4モードでリピートプレイが
可能な「4ウェイ・リピートプレイ」,曲やディスクを指定してメモリーする「メモリープレイ」などが搭
載されていました。また,ナカミチのほとんどのデッキと連動したシンクロ録音機能,ナカミチのシ
ステムリモコンにも対応していました。
以上のように,CDPlayer1は,シリーズの最上級として,先行発売されていたCDPlayer2等を
ベースに,より高音質化をめざし,技術的にも検討が加えられ,物量が投入されていました。上品
で高域に向かって繊細な音は,ナカミチらしい魅力を持つものでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
オーディオマニアの目で,
情熱で,作りました。
ハイチューン・マシン”CDPlayer1”
◎外乱抑制&サウンドチューニング技術
”アコースティック・スタビライザー”
◎内外の有害振動を抑えこむ,
2重鋼板による高剛性ボディ
◎微小レベルの分解能に磨きをかけた
”トップグレードEL20ビットDAC”搭載
◎徹底した音質重視の設計と,
贅をこらしたオーディオ回路
◎「1+6」計7枚のCDを自在に繰れる
ミュージックバンク・システム
●ディスクの不要な振動を抑える,
マグネットチャック方式の大口径
ディスクスタビライザー装備。
●デジタルフィルター以降の回路基板
にコンポジット材を用い,強度をアップ。
●金メッキ・アナログ端子/デジタル出力端子
各1系統装備。
●8センチCD対応(シングルモード時)
●多彩なプレイ機能
●Nakamichiのほとんどのデッキと
連動したシンクロ録音が可能。
●システムリモートコントロール対応。
●ワイヤレスリモコン付属。
●主な規格●
型式 | デジタルオーディオシステム(コンパクトディスク方式) |
読み取り方式 | 非接触光学式(半導体レーザー使用) |
エラー訂正方式 | CIRC方式 |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
D/A変換方式 | EL20ビット・デュアルD/Aコンバーター |
デジタルフィルター | 8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター |
標本化周波数 | 44.1kHz |
量子化 | 16ビット直線 |
ディスク回転速度 | 約200~500rpm(線速度一定) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
周波数特性 | 5~20,000Hz±0.5dB |
S/N比 | 105dB以上(IHF A-WTD) |
ダイナミックレンジ | 100dB以上 |
全高調波歪率 | 0.0025%(1kHz) |
全高調波歪率+雑音 | 0.003%(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 100dB以上 |
出力レベル/インピーダンス | ライン:2.0V/600Ω (1kHz,0dB) |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 最大29W |
大きさ | 430(巾)×100(高さ)×375(奥行)mm |
重さ | 約12.2kg |
※本ページに掲載したCDPlayer1の写真・仕様表等は1991年6月
のNakamichiのカタログより抜粋したもので,ナカミチ株式会社に
著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等
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