Nakamichi CDPlayer2
CD PLAYER ¥99,800
1990年に,ナカミチが発売したCDプレーヤー。ナカミチは,1984年のOMS-70からCDプ
レーヤーをスタートし,この年から1988年まで,OMSから始まる型番のCDプレーヤーを発売
していきました。そして,1990年になり,CDPlayer2(¥99,800),CDPlayer3(¥79,800)
CDPlayer4(¥49,800)という新しいシリーズを展開していきました。
CDトランスポート部には,ナカミチ独自の”Music Bank System”が採用されていました。これ
は,通常のCDプレーヤーのように,トレーに1枚のCDを載せて再生する感覚で,内部のストッ
カーに6枚のCDを内蔵させることができる機能を持たせたもので,結果として1枚+6枚で計7
枚の任意のCDの任意のトラックを自由に再生できるオートチェンジャー機能が,シングル・ディ
スク・プレーヤーのシンプルさと両立して実現されていました。このメカニズムにより,計7枚の
CDの連続演奏,50曲メモリー,7枚フルランダム再生が非常にスピーディーに動作で可能と
なっていました。
また,マグネットチャッキングによる形状,材質がしっかり検討された大口径ディスクスタビライ
ザーを搭載し,外部振動の影響を抑え,CDそのものの共振を抑えることで,フォーカスサーボ
エラーを低減し,オーディオ信号へのサーボ電流の影響を抑えていました。
サーボには,ディスクのキズに強い新開発の高安定サーボシステムを採用し,信号ピックアッ
プ能力を改善していました。そして,RFアンプをメイン基板にではなく,ピックアップトランスポー
トユニット側に配置し,光ピックアップ→信号処理回路の伝送経路を大幅に短縮していました。
ディエンファシス回路には,アナログ方式ではなく,デジタル・ディエンファシス回路を装備し,切
替回路などの歪要因を排除していました。
D/Aコンバーター部には,8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターが搭載され,その結
果,後段には3次というなだらかな特性のリニアフェイズ・ベッセル型アナログフィルターが使
用されていました。
D/Aコンバーターとしては,「EL=エンハンスド・リニアリティ=直線性補強型」と名付けられ
たナカミチ独自の「EL20ビットD/Aコンバーター」が搭載されていました。これは,CDから
ピックアップされた信号データを,デジタルフィルターで20ビット化し,20ビットデータを再演
算によって-24dBを境に高/低2組の16ビットデータ(データを,1~4,400と4,401~
66,000の2つに分けたもの)変換し,2つのデータをそれぞれ2基のD/Aコンバーターに
よって別々に処理し変換後に合成するというものでした。この方式では,-24dB以下(つまり
4,400以下)のローレベル信号がデジタル的に16倍に増幅されて処理されており,元の16
分の1のデータに戻すことにより変換誤差が圧縮され,音楽信号の80~90%を占めるロー
レベル信号では,通常の16倍の精度(つまり4ビット分を増やしたのに相当する精度)が保証
されるというもので,真の意味で20ビット相当の精度を保証するものでした。デジタルオーディ
オでは,信号を分解,処理,復元が可能であることを利用した巧妙な方式でした。
オーディオ回路は,カセットデッキのアンプ技術で定評のあるナカミチのすぐれた技術が生か
されたものとなっていました。
電源部には,回路セクションごとに独立して強力な電源供給を行い,相互干渉を防止したマル
チレギュレーテッド・パワーサプライ方式が採用されていました。さらにアースラインをめぐる
オーディオ信号へのノイズ混入を防止するため,グランドを分離させたアイソレートグランド方
式を採用していました。
アナログ出力は,固定と可変が各1系統装備され,可変出力は,モーターボリュームによりリ
モコンでの操作が可能でした。デジタル出力は,同軸1系統が装備され,OFFスイッチも装備
されていました。
シンプルに見える外観ながら,演奏機能も豊富に搭載されていました。削除したい曲,ディスク
を指定できる「デリートプレイ」,オール(ディスク全部)/デリート(削除した以外の曲)/シングルの
3モードを持ち,曲順を入れ替えてランダム再生する「3ウェイ・ランダムプレイ」,セットされたディ
スクの1曲目を10秒ずつ再生する「ディスクスキャン」,収納した全ディスクのタイムデータを記憶
する「タイムデーターメモリー」,オール/デリート/プログラムの3モードでリピートプレイが可能な
「3ウェイ・リピートプレイ」,曲やディスクを指定してメモリーする50曲までの「メモリープレイ」な
どが搭載されていました。また,ナカミチのほとんどのデッキと連動したシンクロ録音機能,ナカ
ミチのシステムリモコンにも対応していました。
以上のように,CDPlayer2は,1990年代に入って展開された新しいシリーズの中での上級機
として発売され,新しいマルチディスクプレイシステムや超弩級機1000mbなどにも採用された
独自のD/Aコンバーターを搭載するなど,意欲的な1台でした。派手な音ではないものの非常に
繊細で上質な音は,ナカミチのテープデッキにも通じるもので,独自の魅力を持っていました。
そして,翌年には本機をベースにさらに物量を投入したCDPlayer1が発売されることとなりまし
た。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
CDプレーヤの新しい指標。
コンパクトディスクの音は,
ここまで「音楽」に近付くことができる。
CDから「音楽」のすべてを引き出す,
かつてないクオリティ。
そして,「ミュージックバンク・システムTM」
の利便性もあわせもちます。
◎ミュージックバンク・システム
◎ディスクスタビライザー
◎エンハンスト・リニアリティ(EL)
20ビットD/Aコンバーター
◎8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター
◎リニアフェイズ3次ベッセル型アナログフィルター
◎新開発の高安定度サーボシステム
◎デジタル・ディエンファシス
◎マルチレギュレーテッド・パワーサプライ
◎アイソレートグランド
◎聴きたくない曲をカットできるデリートプレイ
◎オール/デリート/プログラムの
3ウェイランダム・プレイ
◎オール/デリート/プログラムの
3ウェイ・リピートプレイ
◎50曲のプログラムメモリー
◎Nakamichiのほとんどのデッキと
CD録音が可能
◎8センチCD対応(シングルモード)
◎デジタル出力端子
◎モーターボリュームによる出力レベル・
リモートコントロール(ライン出力)
◎ワイヤレスリモコン付属
●主な規格●
型式 | デジタルオーディオシステム(コンパクトディスク方式) |
読み取り方式 | 非接触光学式(半導体レーザー使用) |
エラー訂正方式 | CIRC方式 |
チャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
D/A変換方式 | EL20ビット・デュアルD/Aコンバーター |
デジタルフィルター | 8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルター |
標本化周波数 | 44.1kHz |
量子化 | 16ビット直線 |
ディスク回転速度 | 約200~500rpm(線速度一定) |
ワウ・フラッター | 測定限界以下 |
周波数特性 | 5~20,000Hz±0.5dB |
S/N比 | 105dB以上(IHF A-WTD) |
ダイナミックレンジ | 100dB以上 |
全高調波歪率 | 0.0035%(1kHz) |
全高調波歪率+雑音 | 0.004%(1kHz) |
チャンネルセパレーション | 100dB以上 |
出力レベル/インピーダンス (1kHz,0dB) |
ライン:2.0V/600Ω (固定出力) 2.0V/600Ω (可変出力,Output Level最大) |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 最大23W |
大きさ | 430(巾)×100(高さ)×375(奥行)mm |
重さ | 約8.0kg |
※本ページに掲載したCDPlayer2の写真・仕様表等は1990年10月
のNakamichiのカタログより抜粋したもので,ナカミチ株式会社に
著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等
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