YAMAHA CDX-1000
NATURAL SOUND COMPACT DISC PLAYER ¥89,800
1987年に,ヤマハが発売したCDプレーヤー。この当時,D/Aコンバータといえばマルチビット
タイプが主流であり,その中でより分解能を上げるためにハイビット化,ハイサンプリング化の
競争が起こり,ヤマハはその中でもトップグループを走っていました。この年,CDX-2000を最
上級機として,CDX-1000,CDX-800といったシリーズを発売し,このシリーズの中級機として
コストパフォーマンスを高めたモデルがCDX-1000でした。

CDがスタートして5年のこの頃,10万円を切る価格帯のCDプレーヤーが主流となり,各ブラン
ドが力を入れていたため,競争も激化していました。それだけに,上級機に搭載された技術を
積極的に投入し,実力派の機種が多く発売されました。その中で,ヤマハも上級機CDX-2000
の技術をしっかりと投入して作り上げたのがCDX-1000でした。

デジタルフィルタには,上級機と同じ,新開発の8fs×18ビットのFIR型デジタルフィルタ,自社
製のYM3414を搭載していました。このデジタルフィルタは,演算次数が225次+41次+21
次=287次となっており,高精度なデジタル演算により,8倍オーバーサンプリングとし,サンプ
リング周波数352.8kHzで,実に2.8μsごとのキメ細かなデジタルデータとなり,プリエコー
やポストエコーを含む帯域内リップルを±0.0001dB以内,帯域外ノイズを-100dBと極限ま
で抑えていました。この結果,ハイビットダイレクトスイッチをONにすると,ローパスフィルタを通
さないピュアダイレクト再生を可能にしていました。

D/Aコンバータは,18ビット動作のD/AコンバータをL・R独立のツインで搭載し,ローパスフィ
ルタにダイレクトに接続していました。実際に搭載されていたのは,バーブラウン製のグリッチレ
スDAC・PCM56Pで,16ビットタイプのこのDACを,「ダイナミック・フローティング」という方式
で18ビット動作させていました。デジタルフィルタからの18ビット信号の中から,信号レベルの
大小に応じて,上位16ビットまたは下位16ビットを選択してDACに送り込む仕組みでした。こ
うした仕組みにより,上位2ビットが使われていない大半の信号レベルで2ビット分シフトアップ
してDACに出力,後段で1/4にゲインを下げて18ビットのD/A変換を実現していました。この
結果,微少レベルの再現性が大きく高められていました。この方式は,前の世代のモデルであ
CDX-2200CDX-10000で初搭載されていたもので,デジタルボリュームの部分で処理
を行っていましたが,CDX-1000では,新開発の専用IC・YM3023で処理するようになって
いました。

オーディオ出力回路をV/I変換アンプとI/V変換アンプの2段構成とし,オーディオ信号を電流伝
送し,フィードバック回路を搭載し,音質を濁らせるリップルやノイズを排除する「カレントアイソレ
ーション方式」を採用し,クリーンな信号出力を実現していました。
電源部は,50Wのパワーアンプ並の別巻線・大型トランスを搭載し,低インピーダンス特性をも
つAクラス動作のシャントレギュレーター電源を搭載していました。これは,負荷電流の変動幅
以上の電流を制御トランジスタに流し,Aクラス動作させることにより,一定電圧を保ち,電源ノ
イズの少ないクリーンな電力を各回路に供給するもので,CDプレーヤーの要となるD/Aコンバ
ータ部に採用されていました。また,電源トランスの前に,フェライトコア,ACラインノイズフィル
タ,フェライトコアという3連のノイズフィルタが装備され,電源からのノイズ対策がしっかり行わ
れていました。

ピックアップ部は,3ビームタイプで,通常のギア駆動ながら,モーターとギアの間はゴムベルト
として,振動を伝えにくい構造としていました。メカユニットベースには,剛性の高い防振特性を
大きく高めた鋼板製の新開発DX710メカが搭載され,ゴムパーツによる3点支持でフローティ
ングされたアンチバイブレーション・フローティングサスペンションを採用し,不要振動の伝達を
抑えていました。また,パネル前面のフラップにより空気振動を遮断する構造となっていました。
ピックアップのサーボは,コンピュータがディスクの状況に即応し,「速い」「遅い」の2種類の中
から,常に適切なピックアップ応答速度を算出する「2WAYコンピュータサーボ」が搭載されてい
ました。CDの演奏時には,キズなどに対応した遅い応答スピードとし,選曲,サーチ等の時は
速い応答速度に切り換えることで,デジタル信号の乱れなどのエラーの発生が抑えられ,トレー
スの精度が向上し,しかも,余分なサーボ電流の発生も抑制され,アナログ系への影響も激減
し,音質の劣化が抑えられていました。
オーディオ回路部についても,振動の影響を抑えるため,硬質VMスタビライザを搭載して,オー
ディオ回路基板全体をカバーし,さらに,基板下にもアルミ製のシートホルダーを付設し,キャビ
ネット内で最も安定してる脚部上のボトムカバーに連結することにより,2重3重の防振対策とし
ていました。全体を支えるシャーシとなるボトムカバーには,2.6mm厚の銅メッキボトムカバー
を採用していました。キャビネット自身もトップカバーに制振材をはさんだアルミ押し出し材を使
用して,音質を損なう原因となるキャビネットの鳴きを抑えていました。

CDX-1000には,CDX-2000同様に,0.4dBステップのデジタルボリュームが搭載されてい
ました。ハイビットによる広いダイナミックレンジを生かしたもので,本体,リモコンでの精密な音
量調整が実現し,パワーアンプへのダイレクト接続での使用も前提にした機能で,ヘッドホン出
力も,このデジタルボリュームに連動していました。デジタルアウトは,光,同軸の2系統を搭載
していました。

選曲機能は,10キーによるダイレクト選曲,インデックスサーチ,マニュアル/デリート/オートの
3モード・プログラム,1曲/全曲/A-B/プログラムの4モード・リピート再生が搭載されていまし
た。プログラム選曲では,あらかじめテープの収録時間をセットするとマニュアルでプログラム
すると残りの収録時間が示され,オートでは自動的にA面,B面に自動的に振り分けてプログラ
ムできるテープエディット機能が搭載されていました。
表示部は,曲番,時間表示の他に,24曲ミュージックカレンダー,ボリュームレベル表示が装
備されていました。

以上のように,CDX-1000は,ハイビット化で性能を追求した高級機CDX-2000に準ずる内
容をもつ中級機として,性能的にも機能的にもコストパフォーマンスにすぐれた1台となっていま
した。ヤマハビューティーを感じさせる高域まですっきりと伸びた繊細な音は,独自の魅力をもっ
ていたと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新次元の音楽感動を。
S/N比120dBの驚くべきローノイズ特性,
ローパスフィルタレスのピュアDACダイレクト再生を
可能にしたヤマハ”ハイビット”CDプレーヤー。

高音質の世界に浸りきる,
ハイビットマスター

CDの持つ情報量を
限界まで引き出すSN比118dB。
スーパーローノイズの世界
 ◎8fs×18bitデジタルフィルタと
  18bit動作ツインDACの
  ハイビットシステム搭載
 ◎ピュアDACダイレクト再生が可能
徹底したDA分離により,
ピュアな再生音を実現
 ◎カレントアイソレーション
徹底した高剛性化,耐振構造の採用により,
ハイビットの高分解能力が
更にクオリティアップ
 ◎VMスタビライザ搭載
 ◎重量化ボトムカバーを採用
 ◎高剛性キャビネット
 ◎アンチバイブレーション・フローティング
  サスペンションを採用
すぐれたトレース能力により,
さらに音質が向上
 ◎2WAYコンピュータサーボ搭載
クリーンな電力供給により,
微細な音楽のニュアンスを忠実に再現
 ◎電源回路にシャントレギュレータ方式を採用
ハイビットCDをさらに使い切る先進機能
 ◎Dレンジ120dBのデジタルボリューム
 ◎デジタルアウト端子
 ◎収録時間にあわせてプログラム
  テープエディット機能




●CDX-1000主な規格●


 
周波数特性 2~20,000Hz±0.1dB(ダイレクト)
2~20,000Hz±0.3dB(フィルタード)
高調波歪率 0.003%以下(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 118dB以上(EIAJ)
ワウ&フラッター 測定限界以下
出力電圧 0~2Vrms(可変(
外形寸法 435W×107H×347Dmm
重量 9kg
※本ページに掲載したCDX-1000の写真・仕様表等は1987年
 10月の
YAMAHAのカタログより抜粋したもので,日本楽器製造
 株式会社に
著作権があります。したがってこれらの写真等を無断
 で転載,引用等
をすることは法律で禁じられていますので,ご注意
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