YAMAHA CDX-900
NATURAL SOUND COMPACT DISC PLAYER ¥84,800
1986年に,ヤマハが発売したCDプレーヤー。ヤマハは,1982年のCD黎明期からすぐれたCD
プレーヤーを送り出していました。この年,高級機にはセパレート型が登場してきましたが,ヤマハ
は一体型にしっかり技術と物量を投入した意欲作を送り出していきました。この当時,D/Aコンバー
ターはマルチビットタイプであり,その中でより分解能を上げるためにハイビット化,ハイサプリング
化の流れがありました。ヤマハはその中でもトップグループを走っており,この年,最上級機として
CDX-2200を発売しました。その弟機として発売されたのが,CDX-900でした。

ヤマハは,当時「Hi-bit DIGITAL(ハイビット・デジタル)」テクノロジーを標榜したマルチビット方式
で,デジタルの解像度ともいうべき精度を追求した設計を進めていました。デジタルフィルターには,
自社製新開発の4倍オーバーサンプリングデジタルフィルターのYM3619が搭載されていました。
演算次数225次+41次という演算能力をもち,16ビット入力ながら18ビット出力にも対応してい
る「Hi-bit DIGITAL」にふさわしいものでした。サンプリング周波数を176.4kHzに変換する4倍
オーバーサンプリングにより,不要高域ノイズを,大きく高域に移行することで,後段に位相・振幅特
性にすぐれたゆるやかなカットオフ特性をもつローパスフィルターの使用が可能となっていました。

D/Aコンバーターには,当時最新の高性能DAC・バーブラウンPCM-56PをL・R独立で搭載し,ツ
イン・D/Aコンバーターとしていました。D/Aコンバーターでは,通常,デジタル信号が切り換わるた
びにグリッチノイズが発生し,これを取り除くために,後段にデグリッチ回路やサンプルホールド回路
が必要となっていましたが,PCM-56Pは,高速動作タイプで,不要グリッチノイズがきわめて少なく
なっていました。

後段のローパスフィルターには,位相特性にすぐれたベッセル型と振幅特性にすぐれたバターワー
ス型を組み合わせた5次のニューアクティブ型フィルターを搭載していました。
オーディオ部には,全段直結のDCアンプを採用し,DCサーボ等の低域時定数をもつ要素を一切
排除した完全DC直結として低域をしっかりと再生し,オーディオ帯域すべてにわたって群遅延歪み
を抑えていました。
デジタルノイズの混入を防ぐために,デジタル系,サーボ系とオーディオ系を光素子=フォトカプラ
で電気的に完全分離し,さらに,回路基板をセクションごとに独立させたセパレートシート構成を採
用していました。

ピックアップ部は,メインビームに加えて,前後のビームでトラックずれをリアルタイムで検出する3
ビーム方式の光ヘッドを採用し,制御系には,ヤマハの自社製シグナルプロセッシングLSIである
YM3616を搭載していました。このオリジナルのシグナルプロセッシングLSIは,設計ルール2μm
の小型フラットパッケージによる新開発のもので,信号処理用,サーボ回路コントロール用を1チップ
に高集積化して周辺パーツ群を大幅に削減して,回路にシンプル化を進めるとともに,低消費電力,
ローノイズ化を実現して,信頼性・音質をいっそう高めていました。そして,このLSIの精密な制御に
より,サーボ特性を改善し,トレース能力も高められていました。また,光ヘッドメカ部は,外部振動
によるオーディオ部への影響を避けるために,フローティング構造を採用していました。

電源部は,デジタル・サーボ系とオーディオ系を電源トランスから完全に独立させた2トランス構成と
していました。さらに,負荷電流の変動幅以上の電流を制御トランジスターに流し,Aクラス動作させ
ることにより一定電圧を保つシャントレギュレーターを採用し,オーディオ用ケミコンをはじめとする
高品質なパーツを投入することで,高安定化電源とし,電源ノイズの少ないクリーンな電力を各回路
に供給するようになっていました。

選曲機能は,10キーによるダイレクト選曲,インデックスサーチ,24曲ランダムプログラム,聴かな
い曲をカットするデリートプログラム,1曲/全曲/A-B/プログラムの4モード・リピート再生が搭載さ
れていました。
表示部は,曲番,インデックス番号,時間表示の他に,24曲ミュージックカレンダー表示が装備され
ていました。

以上のように,CDX-900は,最上級機CDX-2200の技術的特徴のエッセンスを受け継ぎつつ,中
級機としてコストパフォーマンスが高められた内容を持つ1台でした。当時のこのクラスのCDプレー
ヤーは,各社が次々と実力機を投入していた時期で,競争の中で,内容が充実していたことは,本機
からも感じられます。実際,わずか5ヶ月後の翌年1987年には,同軸タイプのデジタル出力を搭載
したCDX-900Dが発売されることになりました。


YAMAHA CDX-900D
NATURAL SOUND COMPACT DISC PLAYER ¥89,800


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



4fsハイビットDF+ツインD/Aコンバータ構成。
独立2トランス・シャントレギュレータ電源搭載。

◎透明感あるナチュラルな音。
 ハイビットデジタルフィルタ(4fs)
◎グリッチノイズを解消した
 新開発・独立ツインD/Aコンバータ。
◎フォトアイソレーション
 セパレートシート構成。
◎フラットな位相・振幅特性。5次ニュー
 アクティブ型フィルタ+完全DCアンプ。
◎カスタム設計によるCD専用
 新デジタル・プロセッシングLSI。




●CDX-900主な規格●

光ヘッド
3ビームレーザー
フィルタ ハイビットデジタルフィルタ+
5次ニューアクティブ型フィルタ
周波数特性 DC~20,000Hz±0.3dB
高調波歪率+雑音 0.003%(1kHz,EIAJ)
S/N比 110dB(EIAJ)
ダイナミックレンジ 100dB(EIAJ)
ワウフラッタ 測定限界以下
最大出力電圧 2Vrms(固定)
消費電力 15W
外形寸法 435W×107H×347Dmm
重量 6.5kg
主な機能
●24キー付・ダイレクト選曲フルモードリモコン
●カレンダー機能付8桁FLディスプレイ
●光ヘッドポジション表示付
●24曲ランダムプログラム再生/デリートプログラム再生
●リピート再生(全曲・1曲・プログラム曲・A-B区間)
●ランダムプレイ/スペースインサート/インデックス選曲など

 

※本ページに掲載したCDX-900の写真・仕様表等は
 1986年11月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,
 ヤマハ株式会社に著作権があります。したがってこれらの
 写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
 ていますので,ご注意ください。

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