ＰＩＯＮＥＥＲ　ＣＳ-１０
３ＷＡＹ　ＢＯＯＫＳＨＥＬＦ　ＳＰＥＡＫＥＲ　￥５７，０００（１９６７年頃）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￥７３，０００（１９７４年頃）

１９６７年に，パイオニアが発売したスピーカーシステム。当初オーディオ用スピーカーシステムは，大型のフロ
アタイプが主流でした。そして，１９５０年代後半に，ブックシェルフスピーカーが登場し，２台セットでスピーカー
を用いるステレオ時代に入り，スペースファクターのよいブックシェルフ型が次第に人気を得ていきました。そう
した中，パイオニアのブックシェルフ型スピーカーの主力機として登場したのがＣＳ-１０でした。

スペースファクターにすぐれたブックシェルフ型はエンクロージャーが相対的に小型になるため，低音が出にくい
という弱点が出てきます。そこで，低域特性をよくするためにいろいろな工夫がなされてきました。そうした中，
アメリカのＡＲ（Ａｃｏｕｓｔｉｃ Ｒｅｓｅｒｃｈ）社が，１９５４年に「エアーサスペンション方式」のスピーカーシステムＡＲ-１
さらに続いてＡＲ-３，ＡＲｰ３ａを発売し，高い評価を得ました。当時の従来のスピーカーシステムでは，コーンを
エッジとダンパーだけで支え，エンクロージャーは大型にして背圧をかけないというのが基本的な形でしたが，
「エアーサスペンション方式」では，比較的重いコーンをやわらかいサスペンションで支えるウーファーを開発し
小型の密閉型のエンクロージャーに取り付け，背圧（空気バネ）をサスペンションの一部として使うことで，口径
の大きなウーファーを比較的小型のエンクロージャーに取り付けてもｆｏ（最低共振周波数）を低くとれるように
なっていました。これにより，能率は低くなりますが，比較的小型のエンクロージャーでも低域の特性を伸ばす
ことができるようになっていました。こうした「エアーサスペンション方式」はＡＲ方式とも呼ばれ，同様の方式を
採用したブックシェルフ型スピーカーが海外でも国内でも続々と登場しました。中には，デッドコピーとも言える
ようなものも登場していました。
ＣＳ-１０は，パイオニアがこの「エアーサスペンション方式」を採用し，ＡＲに負けじと，独自開発したブックシェ
ルフ型スピーカーでした。



ＣＳ-１０は，基本的には，３ウェイのブックシェルフ・密閉型で，上述のエアーサスペンション方式が採用されて
いることが大きな特徴でした。
ウーファーは，３０ｃｍ口径のコーン型で，エアーサスペンション方式に対応した剛性の高いコーン紙が使用さ
れ，表面にはコーティング処理が施され，トランジェント特性が高められていました。エアーサスペンション方式
の中では比較的薄いコーン紙が採用され，ゴムのロールエッジが支えていました。駆動系は，大型のマグネット
を使用した強力な磁気回路とロングボイスコイルが採用され，大入力時にも充分な耐入力性を確保していまし
た。

ミッドレンジは，５ｃｍ口径のドーム型で，ベークライト（フェノール樹脂）系の振動板を採用していました。トゥイー
ターは，２．５ｃｍ口径のドーム型で，ミッドレンジ同様にベークライト系の振動板を採用していました。ミッドレン
ジ，トゥイーター双方にディフューザーも装着され，指向特性が改善されていました。
そして，エンクロージャー背面には，ミッドレンジ，トゥイーターそれぞれ専用の，３点クリックストップ式のレベル
コントロールが装備されていました。

エンクロージャーは，厚いラワン多層合板を使用した頑強な構造で，ユニットを含めた総重量も２２．５ｋｇに達す
るものでした。エアーサスペンション方式のエンクロージャーであるため，密閉構造がとられ，木部接合部やス
ピーカーユニット取付部分には空気漏れを防ぐためパテを使用していました。エンクロージャー表面は，天然木
ブラジリアンローズウッドを使用したオイル仕上げで，重厚な外観を実現していました。

以上のように，ＣＳ-１０は，パイオニア初のエアーサスペンション方式のスピーカーシステムで，独自の設計と
正攻法の作りにより，バランスのとれた物理特性の良さを感じさせる音を実現していました。当時のパイオニア
の意気込みが感じられる銘品であったと思います。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

中高音にドームスピーカー採用。
ブラジリアンリーズの格調高い
ブックシェルフです。

◎ウーファーは３０ｃｍ強力コーン型
◎中高音は５０mmφのミッドレンジと
　２５mmφのトゥイーターの組合わせ
◎共振が追放され，格調高い仕上げ
　のエンクロージャー

●ＣＳ-１０の規格●

※本ページに掲載したＣＳ-１０の写真，仕様表等は，１９７４年７月の
　ＰＩＯＥＥＲのカタログより抜粋したもの，パイオニア株式会社に著作権
　があります。したがって，これらの写真等を無断で転載，引用等をする
　ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
 

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