ＰＩＯＮＥＥＲ　ＣＳ-６１０
３ＷＡＹ　ＳＰＥＡＫＥＲ　ＳＹＳＴＥＭ　￥３７，８００

１９７３年に，パイオニアが発売したスピーカーシステム。３ウェイの密閉型システムで，エントリークラス
のスピーカーシステムながら，ユニット，エンクロージャーなど各部にしっかりとした作りが施された本格
的な内容を持つ１台でした。

ＣＳ-６１０の最大の特徴は，ウーファーにありました。ウーファーは２５ｃｍ口径のコルゲーション入りの
コーン型で，振動板にパイオニアとしては初のカーボンファイバー混抄のコーン紙を用いていました。こ
の当時，日本のいくつかのオーディオブランドで，当時新素材として注目されていたカーボンファイバー
（炭素繊維）を振動板材料として導入する動きがありました。軽く，強く，弾性に富むカーボンファイバー
は，振動板の材料として多くのメリットがあると考えられたためでした。このカーボンファイバーをコーン
紙としてパルプと混抄することで適度なムービングマスとピストン領域の拡大を実現し，過渡特性の向
上が図られていました。これにより，クリアな低音とハイエンドの音質の向上によるミッドレンジとのつな
がりの改善が実現されていました。



ミッドレンジは，４．８ｃｍ口径のドーム型で，４０μ厚の深型の超硬ジュラルミンダイアフラムを採用して
いました。そして，前面に放射状フィンとディフューザーを装備して，指向特性の改善が図られていまし
た。
磁気回路の内部チャンバーには，数種類の吸音材を封入して切れの良い音質を実現していました。ま
た，センターポールとヨーク中央にバックチャンバー直通の通気口を設け，振動板背面の内部定在波
を抑えていました。ドームの中心保持にはハイコンプライアンスポリウレタン発泡体を採用して，ｆｏを下
げ，高いリニアリティを確保していました。

トゥイーターは，２．５ｃｍ口径のドーム型で，３０μ厚の超硬ジュラルミンダイアフラムを採用し，ミッドレ
ンジと同様に，前面に放射状フィンとディフューザーを装備して，指向特性の改善が図られていました。
ドームの中心保持には，ミッドレンジ同様に発泡ポリウレタンを使用して，ハイコンプライアンス化と低
歪率化を実現していました。

ネットワークは，高透磁率の大型フェライトコア，高耐圧のコンデンサーを使用し，トゥイーターには低損
失のマイラーフィルムコンデンサーを採用していました。そして，磁気的結合の生じにくい余裕ある部品
配置で安定した特性を確保していました。さらに，背面に中高音用のレベルコントロールが設けられ，レ
ベルバランスの調整が可能となっていました。
エンクロージャーは，板厚２０mmと内部補強で堅牢な構造となっており，さらに吸音材で仕切りを設けた
内部構造は，中低音域の音質向上と定在波防止を図ったものでした。

以上のように，ＣＳ-６１０は，エントリークラスのスピーカーシステムながら，新素材のカーボンを使用し
たウーファーユニットの採用，ハードドームの中高域ユニットの搭載など，パイオニアの意欲作でした。
それまでの同社のスピーカーよりも，クリアな明るい音を実現し，コストパフォーマンスの高い１台となっ
ていました。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

かつてないすみきった音質と絶賛された，
カーボンファイバーを
初めて導入したシステムです。

◎カーボンファイバー採用新開発２５ｃｍウーファー
◎明るく切れの良い中音，ドーム型ミッドレンジ
◎超音域まですぐれた指向特性をもつドーム型トゥイーター
◎安定した伝送特性を持つネットワーク
◎中低音域の音質向上を図ったエンクロージャー

●ＣＳ-６１０の規格●

※本ページに掲載したＣＳ-６１０の写真，仕様表等は，１９７４年
７月のＰＩＯＥＥＲのカタログより抜粋したもの，パイオニア株式会
社に著作権があります。したがって，これらの写真等を無断で
転載，引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意
ください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
 

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